訓練支援艦くろべ一般公開in和歌山港

2013.05.25



        和歌山港で行われた訓練支援艦くろべの一般公開に参加してきました。ATS4202訓練支援艦くろべ
       衛艦隊の対空戦闘能力の向上のために建造された艦で、高速標的機ファイヤー・ビーチャカVをそれぞれ
       4機ずつ搭載しています。マスト基部に配置された4面のフェイズドアレイレーダーにより同時4機の運用が可
       能
で、僚艦の射撃評価も行うという、いわば射撃標的機の洋上基地とも呼べる専門性の高い艦であります。
        現在はイージス艦に対する訓練支援機能を持ったATS4203てんりゅうとともに、様々な艦の対空戦闘能力
       を鍛えて回っていますが、くろべの竣工が平成元年、てんりゅうは平成12年・・・と、一回り年齢が離れた姉妹
       艦
であり、さながらくろべがサザエさんならてんりゅうはワカメちゃんと言えるでしょう。




 埠頭から眺める訓練支援艦くろべ。今日も沢山の人達
が見学に訪れています。
 ちなみにここ和歌山港の最寄り駅である南海和歌山港
は極端に発着本数が少なく、土曜日午前の仕事を終
えてすっ飛んできた私は、途中の和歌山市駅から50分
近く歩く羽目になりました。

 余っていたプリペイドカードを消化しようとセコイ事を考
えて今回は電車で来たのですが、やっぱり車で来ればよ
かった・・・。






 訓練支援艦独特のマスト形状。基部のカクカクした部分
フェイズドアレイレーダーが埋め込まれ、無人標的機の
飛行管制
を行います。お陰でその上部のマストがかなり圧
縮された状態になり、各種センサーやアンテナ、レーダー
機器類が右に左にはみ出しています。

 それにしても逆光が・・・。日没直前は水平線に沈む夕
日をバックに停泊艦艇を撮影できる和歌山港
ですが、明
るいうちに撮影するなら午前中に限りますね。





こちらは格納庫付近。着水した無人標的機を回収する為
クレーンが折りたたまれています。
 ファイヤー・ビーだけでも1トン近い重量があり、おまけ
に回収時は機体内に海水を飲み込んでいるので、かなり
危険な作業
になるとか。
 発射作業自体は少々艦が揺れても問題なく行えますが、
着水後の無人標的機への玉掛けはダイバーが海に飛び
込んで行うので、波の荒い日は訓練中止になるそうです。





 1500と遅めの到着になりましたが、この時点でも舷門に
は200人近い行列が。
しかし売店や各種展示物を並べた
テントに沿った気のきいた行列配置だったので、さほど退
屈する事もありませんでした。
 ちなみに当日の和歌山港には台風を思わせる強風
吹き荒れ、業務用テントを吹き飛ばされないように隊員さ
んたちが支柱にしがみつく
程。
 途中でいくつかのテントが安全のために撤去されました
が、展示されていた戦闘糧食T型の缶飯はさすがに微動
だにせず。
実に頼もしい。





 結局30分ほど待って、いよいよくろべに初乗艦。右舷
舷側から艦橋後部のラッタルにとりつき、そこから一旦煙
突前部に上って再び艦橋後部へ。
 こういう見学コースは珍しい気がするのですが、谷間を
吹き抜けるような突風
に耐えながら急なラッタルを上がっ
ていくと、なんだか山登りでもしている気分になります。








 煙突前部と艦橋後部をつなぐ通路上から。よく見ると、用
具入れの上に溺者救助訓練用の人形が寝っ転がっていま
した。隊員さんたちは上陸時間を削って艦内警備に忙しそ
うなのに、なかなか図々しい奴であります。
 他の艦では、壁に縦に吊り下げられたり無茶苦茶に折り
たたまれたり・・・と、今一つ扱いの悪い彼ですが、くろべで
の待遇はかなり恵まれています。







 くろべの露天艦橋。撮影が下手くそなのでイマイチ伝わ
りにくいのですが(泣)、2000トンクラスの艦にしてはかなり
広々
としたトップです。
 あちこちにテラス状の見張り台ありましたが、無人標
的機の回収作業の際の安全監視
に使われる模様。









 右ウイングから、くろべ艦橋に入ります。ここまで真夏の
様な陽射し
台風並みの強風に翻弄されてきたので、す
ごく快適に感じます。
 クーラーはなく扇風機があるだけでしたが、航行中は窓
をあけていれば海風が吹き込むので、けっこう快適だそう
です。








 艦橋右側に備え付けられた、赤青シートカバーの艦長
。まさに選ばれた人間しか座ることの許されない場所
ですが、当日は沢山の子供たちが嬉しそうに座って艦長
気分
を味わっていました。
 現くろべ艦長はよほど足が長いのか、足元には手製の
フットレスト
が備え付けられていましたが、赤青の配置
椅子とは逆なんですね。なにか意味があるのかな?単に
作り間違えただけなのかも・・・。






 艦橋から右舷通路に出ます。この排水量の艦の割に
通路が広々としていますが、これは無人標的機を回収す
る際に、少しでも艦が揺れないように若干幅広な設計に
なっている
のでしょうか。
 甲板上ウォークエリアの滑り止め加工が比較的新しか
ったので、つい最近手が入れられたのかもしれません。







 艦首に設置された、76o62口径単装速射砲。この艦唯
一の固定武装で、それだけに気合いに満ち溢れてるよう
に見えます。
 ちなみに無人標的機を一度飛ばすだけでも結構な予算
を食う
ので、発射時は1時間ぐらいかけて4〜5艦まとめ
てお相手するそうです。
 となると、ついでに自艦の射撃訓練もやるんでしょうか。
必然的に実弾射撃訓練の回数が多くなるので、訓練支援
艦の射撃員の人たちは意外と護衛艦の砲術顔負けの腕
利き揃い
なのかも・・・。





 広々とした後部の飛行甲板。ヘリも楽々発着艦できます
が、基本的に無人標的機の為にある飛行甲板です。
 無人標的機の発射は左舷に向けて行われ、発射機ごと
移動させるためのFの字状の軌条が2つ、格納庫から伸
びていました。
 甲板奥の方に展示されていたのはチャカV。残念なが
ら今回は、ファイヤー・ビーはありませんでした。






 まるで巡航ミサイルそのものの様な、チャカV。標的を
曳航して飛ぶファイヤー・ビーとは違ってこれそのものが
射撃標的
なので、晴れて命中した時は木端微塵になりま
す。
 低高度を管制に頼らない自立飛行が可能・・・というか
なりインテリな装備品ですが、それだけに調達価格は高
で、世界的にも運用できる国はそう多くありません。
 射撃員としては気持ちよく一撃で仕留めたいところです
が、懐の厳しい海自としてはなるべく大事に何回も何回
も使いたい・・・
。難しいところですね。





 F字状の軌条の途中にある分配機(っていうのかな?)
これが45°回転することで、発射機を各発射スポットに
誘導します。
 以前てんりゅうで見たときは軌条がむき出しでしたが、
くろべでは使い古しの舫綱をはめ込んで、軌条を保護し
ていました。








 埠頭では、大阪の信太山駐屯地からやってきた第37
普通科連隊
が沢山の車両を持ち込んで、展示に華を添
えていました。
 土曜日午後ということもあり、沢山の家族連れが珍しげ
に車内をのぞき込んだり記念撮影を楽しんでいます。
 ちなみによく見ると、この軽装甲機動車冬用タイヤ
履いていました。隊員さんに尋ねると、
 「ああ、少し前まで寒い所で演習してましたんで(笑)」
とのことでした。





        今年は春先から天気に祟られっぱなしのイベント参加が続きましたが、毎年初夏恒例の和歌山港、ようやく
       晴天の下で艦艇を堪能する事ができました。
とはいえ、終始強風に悩まされた上に目にゴミは入るわカメラは
       風波をかぶるわ
で、どうも今年は楽をさせてくれないなあ・・・。


        さて、明日は京都府の大久保駐屯地の創立記念行事に参加です。今日に引き続いての好天が予想されま
       すし、大久保自体も3年ぶり。しかも私の好きな施設科です!週末のイベントはしごとか久しぶりだなあ・・・と
       感慨に浸りつつ、南海電鉄和歌山市駅に向けての一人行軍を開始しました。




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