護衛艦くらま一般公開in神戸港

2013.10.27



        兵庫県神戸港にて行われた、護衛艦くらまの一般公開に参加して来ました。DDH144護衛艦くらましらね型
       護衛艦の2番艦で、艦の後半分に巨大な格納庫飛行甲板が配置され、哨戒ヘリ3機の運用が可能という世界
       的に見ても珍しい運用思想のもとに建造された艦です。
        また、前甲板には2基の54口径5インチ単装速射砲が背負い式で配置され、今時の艦艇には無い戦艦っぽさ
       
があるのも魅力の一つと言えますね。
        今回は日曜日一日のみの一般公開であり、会場となった第4突堤は大阪や神戸といった都市圏からのアクセ
       スも容易なので、さぞかし混雑も酷いだろうと覚悟完了しての参加でしたが、ポートターミナル駅で降りて送迎デッ
       キから埠頭を見渡すと、意外なほど空いています。っていうか、殆ど人がいません。あれ?どうなってるの?
        若干淋しい気もしますが、まあ今日はゆっくり見学出来るかな。くらまは初乗艦なので、ある意味これは有難い
       
気もします。



 まずは神戸大橋を徒歩で渡り、対岸のポートアイランド
北公園
から撮影。駅に到着した時は曇っていたのですが、
公園の防波堤につく頃には雲が切れて西日が差してきま
した。
 光線状態も良好で、背後の六甲の山並み三ノ宮の近
代的な都市
、そしてが見事に一体となって、非常に絵
になる撮影スポット
です。
 周囲には釣りを楽しむ人達が沢山いて、ひっきりなしに
行きかう貨物船や遊覧船が、港町神戸らしい雰囲気を醸
し出しています。



 近くにあるヨットハーバーからやってきたプレジャーボー
がくらまに急接近。これもまた港町神戸らしい光景では
ありますが、こんな小型船舶が護衛艦に簡単に近寄れる
のはどうなんだろう。
平和な証拠・・・でいいのかなあ。
 体験航海でも、大きな護衛艦に執拗に付きまとうストー
カーの様な小型漁船や民間船舶
が見られますが、自動
車と違って大型船舶は急に停止する事も方向転換する
事もできません。

 あらぬ疑いをかけられたり事故を誘発する様な危険な
行為は、くれぐれも慎んでもらいたいものです。



 左側手前に見えるのは、神戸港の遊覧船ロイヤルプリ
ンセス
の後部デッキ。沢山の人がくらまの威容に見入っ
ています。
 私は一度も乗った事が無いのですが、あそこから撮影
してみたいなあ。








 第4突堤に戻る途中の、神戸大橋の歩道からくらまを撮
影。艦の真正面を俯瞰で撮影できるのは、結構珍しい気
がします。対岸のポートアイランドまで徒歩で簡単に行き来
できますし、この橋の存在は有難いなあ。
 最新鋭のDDであるあきづき型護衛艦に、全長全幅や基
準排水量でほぼ並ばれてしまったDDH護衛艦くらまですが、
くらまの方が大きく見えるのが不思議です。艦齢を重ねた
が故の重厚感というか、熟女の魅力というか(笑)。
 背負い式の二段砲塔も、見た目の力強さがあっていいも
んですね。



 ポートターミナルから見た、二段砲塔。手前の低い方が
51(ごじゅうひと)番砲塔、後の高い方が52(ごじゅうふた)
番砲塔
と呼び分けられています。
 性能や用途は全く同じですが、よく見ると細部が微妙に
違っていて、手前の51番砲塔の方が若干新しい仕様にな
っています。
 左肩に見えるバブルウィンドウは照準手席で、今時珍し
い有人砲塔。砲塔内は機器を冷却する為のクーラーがガ
ンガンに効いていて、中にいる砲手は夏場でも凍えるほど
寒い
とか。



 艦橋構造物中央部から突き出ている、2本の煙突。前の
方はレーダーマスト、後の方はレーダードームと構造を共
有する形になっていて、これはマック構造と呼ばれます。
 構造の単純化と軽量化、重心の低下を目的とした設計方
で、マスト(MAST)+煙突(STACK)からMACKと名づけら
れました。エンジンの排気は、後方に突き出ているみた
いな所から排出されます。
 ただ、現代の主流であるガスタービンエンジンは、蒸気タ
ービンに比べて排気温度がかなりの高温になるので、セン
サー機器への悪響を考慮してマック方式の採用は見送ら
れる傾向にあります。


 後部の第2煙突と前部の第1煙突の間、甲板の高さを
合わせるように坂道が出来ています。その下にはなんか
無理矢理っぽい設計のラッタル
もありますし、両舷に設置
されたCIWS甲板を下から支えるフレームを見ても、なん
だか有機的な見た目
というか過渡期的な印象があります
ね。こういうのも古い艦の魅力だなあ。
 CGの映像からそのまま飛び出してきた様な、すっきりの
っぺりのあきづき型ズムウォルト級も機能美に溢れてい
ますが、私的にはこっちの方が好き(おっさんの懐古趣味
だなあ)ですね。



 後部の格納庫。SH−60J(K)哨戒ヘリを3機収容する事
できる、幅広な間口です。
 格納庫の上部には個艦防空用の短SAM(シースパロー)
発射機
が鎮座していますが、この短SAM発射機を初めて
搭載したのがくらま。
 他にも近接防空のCIWS(ファランクス)や、潜水艦探知
可能距離を飛躍的に高めたTASS(戦術曳航アレイ・ソナ
ーシステム)を初搭載したのもこのくらまであり、その後の
護衛艦の装備品運用の先駆けとなりました。




 くらま艦橋。まっすぐ垂直に切り立った形状で、左右のウ
イングも含めてなんかジャイアントロボみたいですね(笑)。
 右舷のおでこに設置されたタライみたいなものは、衛生
通信用アンテナ
です。最近の艦では球形状のものに変更
されているので、やはりこれも今となっては時代を感じさせ
る装備品です。
 正面に突き出ているテラス状のフレームは、補給用のス
テーション
。他の艦艇や陸上からの物資の受け渡しの他
に、真下にあるアスロック発射機への装填の際にも使用
するそうです。



 さて、いよいよ護衛艦くらまに乗艦です。埠頭に降りると
建物の陰になるので、すごく冷え込みますね。肌寒い秋に
なるとイベントシーズンの終わりも近くなり、独特の感慨が
あります。
 それにしてもシュッと伸びた切っ先のような艦首、日本刀
の鎬筋のようなナックルライン、背負い式の2段砲塔、厳
めしい表情の艦橋。精悍さと力強さを兼ね備えた、実に美
しい艦
ですね。くらま。





 甲板から見上げたアスロック発射機艦橋。アスロック
発射機は実際に見るとものすごい大きさなので、はつゆき
型やあさぎり型といった小さな護衛艦では、なかなか全体
を撮影しにくい
んですよね(広角持ってないんで)。くらま位
の艦幅があると、余裕でフレームに収まる
のが嬉しいとこ
ろであります。
 こうしてみると、艦橋右舷の二つの衛星通信アンテナが
不自然と言うか、なんだか後付けっぽいなあ。実際のとこ
ろはどうなんでしょう?




 格納庫脇にある、整備員待機室。この区画で、整備員
達はヘリの帰還を待つ事になります。休憩室を兼ねてい
るので大きな冷蔵庫が置いてありましたが、艦の動揺に
備えてちゃんと後の柱にハーネスで固定してあります。
 よく見ると扉が勝手に開かないようにベルクロで固定し
てありますが、
 「それでも海が荒れて揺れが酷い時は、扉が勝手に開
いてえらい事になってしまいます(笑)」

 との事。




 L字型の格納庫の中央部には薄いグリーンに塗られた
支柱
がありますが、よく見るとのウインチとワイヤーケー
ブルで天井部に収納できる
ようになっています。
 直上にある短SAM発射機を設置した際、格納庫の強
度不足
を補うため、真下につっかい棒的に後付けした
の事。
 「ヘリの出し入れや整備作業等で邪魔な時は、天井に収
納しています。あと、短SAMの発射訓練の際には必ず下
ろします。発射機そのものもかなり重いんですが、発射時
の衝撃も相当なものですので・・・」

 だそうです。


 飛行甲板に展示されたSH−60K哨戒ヘリ。SH−60J
の後継として配備が進められ、各種センサー類や情報処
理システム、通信装置能力が大幅に向上
しています。
 機体の大型化に伴ってJよりも僅かに最高速度が遅くな
りましたが、それでも隊員さんによると、
 「新幹線といい勝負して、ちょっとだけ負ける位です!」
 主な任務は各種センサー類を駆使して海中に潜む潜水
艦をあぶり出したり
、護衛艦とのリンクを生かして空中レー
ダーサイト
の役割を果たす事ですが、Kからは魚雷だけで
なく対潜爆弾対艦ミサイルも搭載できるようになり、Jに
比べて使用できる武器の幅も大きく広がりました。


 格納庫のキャットウォークより。格納庫だけでもヘリを縦
に並べる事が出来るサイズ
なので、大型ヘリの発着艦も
可能な広大な飛行甲板と合わせると、かなりの面積があ
ります。
 艦艇乗り組みは運動不足に悩まされるので、長期航海
では時折甲板を開放して艦上体育が行われます。
 板をぐるぐると走り回ったり、マットを敷いてストレッチを
したり
、グローブと防具をつけて軽いスパーリングをした
り。

 ただ、甲板は硬い鋼鉄製なので、ちゃんとしたシューズ
を履かないと、結構足首や膝、腰に来るそうです。


 マストにはためく国際信号旗。上から順番にW・E・L・C
・O・M・E
。くらまから見学者への、歓迎のしるしです。
 ちなみにこの国際信号旗、一枚一枚の図案に二つの意
があります。一つはそれぞれ固有のアルファベット文字
もう一つは、一枚ごとに船舶通信で頻繁に使用されるメッ
セージ
が当てはめられています。
 例えば左が黄で右が青の旗は、、アルファベットでは『K』
旗の意味としては『本艦は貴艦と通信したい』になります。
 ちなみにWELCOMは7文字なのに、旗は8枚揚がって
いますが、一番上の旗は『以下の信号旗はアルファベット
で読んでね!』
という意味。よって、7文字のアルファベット
に対して、8枚の旗が掲げられています。


 くらま艦橋。天井が白ペンキで塗装されている為、、随分
明るい印象。渡辺篤史風に言えば、
 「大型艦らしく幅広で明るい艦橋。若い隊員さん達がすく
すく育ちそうです」

 しかし天井が明るいと、艦橋にある機器類の液晶画面に
移り込んでしまって表示された情報が見えにくい
時がある
為、最近の護衛艦の天井はで塗りつぶされています。
 まあ、古いしらね型の艦橋はあまり電子化されていない
ので、白いままになっているのでしょうね。




 操舵装置の真上にある、伝声管。これも旧型艦ならでは
の装備品ですね。艦橋の真上に位置するトップ(露天艦橋)
との通信で使用しています。
 単純極まりない構造なので故障のしようが無く、あると意
外と便利
だそうですが、ただ一つだけ欠点が。
 通信口のあるトップは文字通り雨ざらしになっているので、
蓋をしていてもどうしても伝声管の中に雨粒が入りこんでし
まう
との事。
 そのため伝声管の途中には下向きにぐねった部分があ
り、下部には水抜き用のドレンコックが取り付けられていま
す。画像にてご確認頂けるでしょうか?




        以上で護衛艦くらまの見学は終了。艦齢30年を超える老朽艦であり、現在建造が進められているいずも型護
       衛艦2番艦
の就役と入れ替わるようにして2016年には除籍される見通しのくらまですが、最後までしっかりと
       上防衛の砦として、また第2護衛隊群の顔としての役割を全うし、堂々と退役してもらいたいものですね。
        はたかぜ型護衛艦2隻分の艦齢延伸措置の為の予算が通過し、一昔前の戦艦らしい味わいを持った護衛艦
       
の姿はまだしばらく見る事は出来そうではありますが、また見学できる機会があれば是非訪れたい艦でした。




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