輸送艦ゆら・掃海艇まきしま一般公開in阪神基地隊

2012.02.12



    阪神基地隊で行われた輸送艦ゆらの一般公開に行ってきました。昨日は神戸港にて護衛艦いせさざなみを堪能しま
   したし、今年はいきなり豪華なラインナップですね。空気は冷たいものの空はよく晴れていて、今日もいいイベントになりそ
   うです。
    JR摂津本山駅からバスに乗り換え、魚崎車庫前で下車した後は阪神基地隊まで歩きます。いつもガランとして人気の
   ない埋立地ですが、今日は日曜の朝という事もあって一際しんとしています。
    15分ほどで阪神基地隊に到着。正門前には6〜7人が列を作っていましたが、私の前には大柄な強面スキンヘッドの人
   がいます。おお、もしかして怖い人なのかとちょっと怯んでいると、いきなり柔和な笑顔になって、
    「あ、どうぞどうぞ、前の方へ」
    と、順番を譲られてしまいました。どうやら上陸した隊員さんのタクシー待ちの列に間違えて並んでしまった模様。うーん、
   失礼しました。阪神基地隊は神戸の市街地まですぐなので、上陸を存分に楽しめそうですね。
    その後しばらくして、0900開門。金属探知機手荷物検査をパスして、久しぶりの阪神基地隊に足を踏み入れます。
    まずは東側岸壁へ向かうと、MSC677掃海艇まきしまのお姿が。あ、掃海艇の一般公開もやるんですね。事前の広報
   では公開艦は輸送艦ゆらしか発表されていなかったので、これは嬉しいサプライズです。
    まきしまは以前一度乗艦しているので、まずはLSU4171輸送艦ゆらの撮影から。ここで岸壁で警備していた年かさの
   海曹さんに声をかけられました。なんでもこのゆらは、実任務は今年いっぱいで来年は除籍になる艦との事。ああ、一昨
   年前のひえいの時もそうでしたが、そういう話を聞くと切なくなるなあ…。おおすみ型が3隻出揃い、LCACによる効率のい
   い物資や車両、兵員の上陸方法が確立される中、こういう小さな古い艦艇は遠からず姿を消していく事は分かってはいた
   のですが。


    またこの阪神基地隊の周囲は意外と水深が浅く、いせの様な大型艦は艦底のソナーが引っかかるので入港できないと
   の事。
    「こんごう型でも無理みたいですねえ。おおすみ型の輸送艦は大丈夫みたいなんですけど」
    色々とお話を聞かせて頂いたお礼を告げ、さて、ゆらに乗艦です。このゆら型輸送艦1番艦である輸送艦ゆらは、艦首
   部分に観音開きのバウドアーを持ち、平型艦底を利用して海岸線に乗り上げて艦内に収容した兵員や車両をだばあする
   という、なかなか直截的な艦であります。阪神大震災では物資の輸送に実力を発揮しましたし、大型艦が入港する際には
   巨大な防舷物を運んできたりと(今回は神戸港に入港したいせの支援で駆け付けたそうです)、多種多様な任務に対応で
   きる働き者の艦艇
であると言えますね。
    逆光をバックにしたゆらは独特の艦首形状を際立たせて見えます。とろりと凪いだ海面を吹く風に艦首の国旗がはたは
   たと揺れていて、いかにも艦が体を休ませている様。
    2年前に同型艦ののとを敦賀港で、一回り小さな輸送艇2号を四日市港で見ましたが、なんと言うかこの、何かに特化
   したスタイルというのは見ていて魅かれるものがあるなあ。

    ラッタルを上がった所で乗組員の方の敬礼を受けます。前甲板…と言っても音叉の様な形の狭いウォークスペースのみ
   で、艦の前半分の殆どは一段下がった車輛甲板が占めているのも独特だなあ。なんかこう、水を抜いたプールを見下ろ
   ろしている様な不思議な感覚
です。


    傍にいた隊員さんに尋ねてみると、やはりこのゆらは今年いっぱいの模様で、呉では除籍の準備が始まっているそう
   です。残念ですが、それまでに一度でも乗艦する機会に恵まれたのは、幸運だったと言うべきでしょう。
    それにしても、とても艦齢30年を越えたフネには見えません。どこを見ても錆一つ見当たらず、まだこれから30年位
   は働けそう。乗組員の人達に大事にしてもらったんだなあ…。


    艦首のラッタルから車輛甲板に降りると、やっぱりプール掃除みたいです。中央には、黒いゴムボートが置いてありま
   した。
    壁面には沢山の写真が展示してあり、どうやら先の東日本大震災でゆらが派遣された時の記録との事。傍にいた朴
   訥そうな海士さんが説明してくれましたが、石巻塩釜で救援活動に当たったそうです。


    残念ながら艦内の公開は無く、その後は後甲板をぐるっと回って上陸。華々しく最前線で戦うという種類の艦ではあり
   ませんが、支援艦らしい独特の個性を持った艦でしたね。除籍となるのは本当に残念ですが、秋の観艦式で最後の花
   道を飾って貰いたいものです。

    これまで護衛艦隊を支え国防の一端を担い続けた輸送艦ゆらに、心の中で敬礼。最後の最後まで、事故に気をつけ
   て頑張って下さい。


    その後は南側岸壁に停泊していたMSC676掃海艇くめじまへ。こちらは一般公開は行っておらず、撮影だけさせて
   貰いました。後甲板に搭載してある機雷処分具S−7 1型阪神タイガースの虎のイラストが描かれているのが土地
   柄だなあ。昨年姫路で乗艦した補給艦とわだの、とわだ猛虎会の皆さんに見せてあげたいものです。とわだ艦内に溢
   れかえる広島カープファンに包囲され、日々心細い思いをしているとわだ猛虎会にとっては、何よりの激励になるような
   気がします(笑)。


    続いては、一般公開が行われるMSC677掃海艇まきしまに乗艦です。びよんびよんとしなるラッタルを上がると、狭い
   前甲板には機雷処分用の20o機関砲がどんと立ちはだかっていました。
    傍にいた隊員さんに識別帽を撮影させて貰うと、
    「これ、こないだ貰ったばかりの新しいやつなんですよ」


    お話を伺うと、つい先日別の掃海艇から異動でやってきたばかりとの事。やっぱり同じ掃海部隊でも、前のフネとは雰
   囲気は違いますか?と尋ねると、
    「そうですね、やっぱりフネそれぞれに気風が違いますね。舞鶴とか呉とかの土地柄にも左右されますけど、概ねその
   フネに最初に乗り込んだ人達のカラーが残るみたいですよ」


    逆光に抗いつつ苦心して20o機関砲を撮影していると、担当の海士の人が気を利かせて向きをくるりと変えてくれま
   した。有り難いことであります。よかったら構えてみますか?と言って貰えたので、ちょっと触ってみる事に。
    しかしこれ、サスマタ状の肩当てがかなり固く、体を固定するベルトで背中を締めつけると肩に食い込んでめちゃくちゃ
   痛い
のには参りました。うーん、これを実際に撃ったら大変だろうなあ…とため息をついていると、
    「いやー、砲自体はガッチリ甲板に固定してますので、意外としんどくないですよ。それより、射撃音で耳がおかしくなり
   そうですけど(笑)」

    ちゃんとしたイヤーマフじゃなくて耳栓を突っ込むだけらしいので、さぞかし五月蠅いんだろうなあ。


    ふと見ると、機関砲を操作する際の足場になる円形の台座には、“GOGO!”と滑り止めのペイントが。なるほど、これ
   が掃海屋(語感が悪いなあ)の心意気ってやつでしょうか。
    「そうですねえ、やっぱり心意気、ですよ」
    との事でした。


    その後はラッタルを上がって艦橋へ。掃海艇独特の、木造部分の多い柔らかな雰囲気の艦橋です。フネ幅そのもの
   が狭いので、護衛艦の横長艦橋と違ってほぼ正方形なのも珍しい。正面の窓には遠心力で水滴を吹き飛ばす装置が
   ついていて、なんか漁船みたいです。


    艦橋には陸自の隊員さんが2人いました。車両展示でやって来たけど、まだ人が少ないので交代で掃海艇を見学に
   来ている模様。陸の隊員さんにとっても海自艦艇はなかなか興味深いらしく、嬉しそうに艇長席に座ってマイクを持ち、
    「宇宙戦艦ヤマト、発進!!」
    とやっている所がお茶目ですね。その2人が艦橋から出て行った後、説明係の海自の隊員さんに
    「さっきの陸の人が艇長席に座ってましたけど、この掃海艇の人があれやったら、かなり怒られるんですか?」
    「やっぱり選ばれた人だけが座る事を許される席ですからねぇ。私なんかがやったら、そりゃあもう(笑)」


    ラッタルを降りて後甲板へ向かいます。ふと舷側の縁を触ってみると、太陽を浴びた木の温かさが感じられ、改めてこ
   の掃海艇が木造船だという事を実感しました。普通の艦艇だと、冷たい鋼鉄の感触なんですけどね。
    その掃海艇も、これからは強化プラスチック製が主流になるとの事。木造船は磁気を帯びにくいので機雷が反応しない
   し、万が一の触雷の際の耐衝撃性も非常に優れている
らしいのですが、材料となるアメリカ松の供給が安定せず、職人
   技を受け継いだ技術者の確保も年々困難になっているそうです。今はどの分野もこんな感じなんでしょうか。
    掃海艇の後甲板には処分艇掃海具、ケーブル、フロート類が所狭しと搭載してあり、整然と並べられてはいますが
   足の踏み場もない位。まさに特殊な用途に特化したフネですね。


    その後は敷地内で行われている陸自の車両展示に向かいます。兵庫県千僧(せんぞ)駐屯地の第3後方支援連隊
   らは野外入浴セットが持ち込まれ、ボイラー装置と貯水タンクも展開して実際に浴槽にお湯を張っていました。
    災害救助関連の装備品も並べられ、お、第3特殊武器防護隊からは除染車と化学防護車がやって来ています。3特
   防は毎年伊丹駐屯地にやって来て独特のサービス精神あふれる屋台を展開し、最近では私の毎年の楽しみの一つと
   なっているのですが、あれはやっぱり3特防独自のカラーなんですか?と隊員さんに尋ねると、
    「いやー、あれはウチの隊長のカラーですよ(笑)。来てくれた人にとことん楽しんで貰え!って(笑)」


    あと、指揮通信車の所にいた隊員さんに質問です。以前から気になっていたのですが、移動中に途中のガソリンスタ
   ンドで給油したりするんでしょうか?
    「うーん、途中で給油はした事ないですねえ。一応20L入りの予備燃料タンクを2本積んでますけど、これも使った事
   はないと思います。万が一何かのトラブルで給油せざるを得ない時は…普通にお金払うんでしょうねえ(笑)」

    他には軽装甲機動車偵察オートがありました。ここでも偵察オートの隊員さんに2〜3質問を。
    偵察オートの整備は基本的に偵察隊員自身で行うらしく、航空機みたいに機付長の様な人が居る訳ではないそうで
   す。そのため偵察隊員にはその人専用のオートがあてがわれ、今日はこのオート、明日は別のオート…という運用に
   はならないとの事。なるほど、言わば自分の愛馬な訳ですね。流石に騎兵の伝統を受け継ぐ人達です。
    ちなみに偵察オートの単位ですが、輌でも台でもどちらでもよく、部隊でも人によってバラバラだそうです。


    お、フル装備の陸自隊員さんがウロウロしています。お願いして撮影させて貰いましたが、防弾ベストに各種ポウチを
   いっぱい付けていて、おまけに襟元にはハイドレーションシステムのチューブが覗いています。すごく物々しいいでたち
   ですが、肝心の89式小銃がゴム製の模擬銃なのが拍子抜けですね(笑)。せめて訓練用の電動ガンという訳にはいか
   なかったのでしょうか。


    その後は高機動車の体験試乗へ。車高が高いのでどうしても天井が低く、固いベンチシートも相まって快適とは言い難
   い乗り心地ですが、パイプで組んだフレームに幌が張ってある所は、実にスパルタンな雰囲気だなあ。暖房がガンガンに
   効かせてあったのは有り難かったですね。 


    すぐ近くの神戸港第四突堤でいせとさざなみの一般公開が行われていた所為か、人が少なく実に快適な一般公開であ
   りました。輸送艦ゆらは秋の観艦式で是非もう一度見たいですが、乗艦券がなあ(泣)。どこかに落ちてないかなあ。
    2月というシーズンオフの2連休ではありましたが、非常に内容のあるイベント2連発でした。本格的なシーズン開幕は
   4月以降になりますが、今年もいろんな所でいろんな艦に出会える事を楽しみにしています。




トップページに戻る
イベントレポート目次に戻る