和歌山駐屯地創立50周年記念行事

2012.04.28



    和歌山県日高郡に所在する和歌山駐屯地に行ってきました。和歌山駐屯地には第304水際(すいさい)障害中隊
   中心とした各部隊が駐屯しており、和歌山県唯一の陸自駐屯地として昨年紀伊半島を襲った台風12号の災害派遣
   活躍し、先の東日本大震災でも施設科独自の特殊車両を運用して、捜索救援や瓦礫撤去等の活動を行い、岩手県を
   中心に大きな働きをした駐屯地
であります。
    水際障害中隊とはまた聞き慣れない上に職種の内容が想像できにくい部隊名ですが、94式水際地雷敷設装置と呼
   ばれる大型の水陸両用車輛を駆使し、敵が上陸すると予想される海岸線に沈底機雷を敷設する、陸自でもかなり特殊
   な部隊ですね。東部方面隊を除く全ての方面隊に一個中隊ずつ配備されているのですが、ただでさえバラエティに富ん
   だ施設科の中でも群を抜いて『?』度の高い部隊
です。今日は他の駐屯地ではなかなかお目にかかれない色々を見る
   事が出来る様で、実に楽しみだなあ。
    当日は0640に大阪市内の自宅を出発、近畿自動車道をひたすら南下して阪和道、湯浅御坊道路に乗り継ぎ、0820
   和歌山県の御坊IC着。途中4qの渋滞に巻き込まれましたが、GW初日なのでまあこんなもんでしょう。
    しばらく一般道を走って、臨時駐車場のある煙樹ヶ浜キャンプ場に到着。長い防潮林を抜けると一気に視界が開け、
   目の前には広大な砂浜と凪いだ海、そして青い空。ああ、こんな風景は久しぶりです。


    駐車場の入口にいた笑顔の眩しいWACに尋ねると、駐屯地行きのバスがまもなくやって来るとの事。おお、急がね
   ば。しばらくしてやってきたマイクロバスに乗り込みますが、車内にいた係の隊員さんがこの時期にして既に真っ黒に
   日焼けしています。
うーん、さすがに南紀和歌山の自衛隊さんだなあ。
    マイクロバスは薄暗い防潮林の中をとろとろと走って、和歌山駐屯地に到着。初めて訪れた和歌山駐屯地は海沿い
   の山裾にちんまりと収まっていて、なんだか夏休みの小学校の様な雰囲気です。正門入ってすぐのところには大きな
   ソテツが植えられ、抜けるような青い空と緑の山々も相まって実に南国テイスト。2階建と3階建の小さな隊舎が二棟
   だけ建っているのも、不思議な微笑ましさを感じます。


    道路わきに置いてあったパンフレットを貰い、少し歩くとすぐに式典会場に到着。普段は資材置き場になっていると思
   しき砂利を敷き詰めた広場にはトラックが整然と並んでおり、お、向こうに見えるのは94式水際地雷敷設装置!
    式典会場南角が一般用イス席になっていてまだスカスカですが、むしろ招待者席後方にいた方がポジション的に美
   味しそう。折り畳みイスを置いて拠点を築きます。


    さて、まずはこの駐屯地の主役とも言うべき94式水際地雷敷設装置を見に行きます。うーん、相変わらずの堂々た
   る体格。
船の四隅にタイヤをつけた様な、一種独特の風貌がたまりません。施設科の車両はどれも個性的で、本当に
   面白いなあ。


    隊舎内の狭い廊下が小火器の展示コーナーになっていて、64式小銃89式小銃、MINIMI、84o無反動砲といっ
   たお馴染みのラインナップが、頑丈なチェーンで繋がれて展示してあります。
    その背後の壁にはベニヤ板が立てかけられ、東日本大震災や昨年の台風12号での災害派遣の様子が展示してあ
   りました。東南海地震の際に予想される津波のデータも公表されていて、和歌山県沿岸には地震発生後10〜20分
   後に、軒並み16〜24m規模の津波が押し寄せるとの事・・・。
以前まではどうにもリアリティの沸かない数字ですが、
   今となっては極めて現実的な恐怖を伴って実感させれらます。
    対面にある本部隊舎の前には屋外売店が出ていますが、食べ物系は綿菓子のみ。まあこの辺りはあらかじめ知っ
   ていたので、今朝はしっかりと朝食を摂ってやって来ました。


    隊舎の前でも装備品展示が行われていて、M2重機関銃を先頭に軽装甲機動車、87式偵察警戒車、96式装輪装
   甲車、偵察オート
がずらりと並んでいます。96式装輪装甲車は滋賀県今津駐屯地の第3戦車大隊からの参加ですが、
   今津から和歌山までって、軽く3時間はかかったんでは。日本一小さな駐屯地の節目の日を飾るためとはいえ、第3
   師団の助け合い精神には目頭が熱くなります。


    その他には災害救助関連の装備品も並べられ、整備工場の脇では巨大なエアートランポリン子供電車が陣地を
   構築していました。
    さて、そろそろ式典会場の方へ戻ります。すぐ左手には大きなテントベルトコンベアー状のローラー台、あと何に使
   うのかさっぱり分からない装置がどんと置いてあります。


    そしていよいよ記念式典開始。まずは第3音楽隊が登場し、続いて和歌山駐屯地に駐屯する各部隊が続々と入場。
   先頭はこの駐屯地の基幹部隊である第304水際障害中隊です。
    ところで、水際って『すいさい』って読むんですね。私はてっきり『みずぎわ』かと思っていたので、人前で堂々と間違っ
   た読み方をして危うく恥をかくところでした。


    観閲部隊指揮官を務めるのは、第304水際障害中隊副中隊長である3等陸佐。部隊は観閲部隊指揮官に敬礼。
    ぱっと見は小規模な部隊整列ですが、ピシッと張りつめた様な緊迫感が漂います。周囲の海や山がのほほんとした
   雰囲気なだけに、それが余計に強調されているなあ。


    そして本式典の執行官を務める、和歌山駐屯地司令兼ねて第304水際障害中隊長がパジェロで入場。他の駐屯地
   では連隊長クラスがつく司令職ですが、この和歌山駐屯地では中隊長がそれを務めるだけあり、部隊全体に若々しい
   空気
が漂っていますね。司令自身も阪神の城島選手をスッキリさせた様な、なかなかの男前です。


    続いて国旗入場、捧げ銃。執行官による部隊観閲と式典は進みますが、部隊観閲は徒歩なんですね。入場の際に
   は車輛を使っていたのですが、この辺は司令のポリシーなんでしょうか。日本一小さなこの和歌山駐屯地には、よそ
   にはない濃密で家族的な空気
があるのかもしれません。


    執行者式辞の後は、来賓祝辞、来賓紹介。参加者が少ないせいか、サクサクと進みます。
    見学者の数も少ないせいか、式典の途中であちこち移動しながら撮影できるのは有り難いなあ。昨年の宇治駐屯
   地もこんな感じでした。
    今日は朝から陽射しがキツイですが、駐屯地を吹きわたる海風が心地よくとても快適です。この辺りは、今が一番
   いい季節なのかも。真夏はかなり辛そうですが、日が落ちてしまえばヘタな都市部の駐屯地よりも涼しくて過ごしやす
   そうです。


    祝電披露、感謝状贈呈者紹介を行って、以上で式典は終了。ここで部隊は退場し、兵庫県千僧駐屯地からやって
   きた第3音楽隊による演奏が始まりました。マイクの不調で一曲目の曲名がよく分かりませんでしたが、二曲目以降
   はアニソンとデキシーランドジャズを披露して、見事な演奏に大きな拍手が贈られました。


    続いて訓練展示です。アナウンスによると、どうやら94式水際地雷敷設装置に訓練機雷を搭載する一連の作業
   披露してくれるとの事。ほほう、他の駐屯地ではなかなか見る事の出来ない珍しい訓練展示、これは美味しいなあ。
    先程見たテントは、どうやら車両から降ろした機雷をいったん保管する為のテントらしく、実際の機雷敷設作業は夜
   の闇の中で行う
ため、明りが外に漏れない様に作業中はこうして遮光性のあるテントで覆うそうです。
    会場中央に走ってきた隊長によって今訓練の概要が隊員達に下達され、隊長の号令のもと、各自が一斉に持ち場
   に走って行きます。


    テントの出入り口を覆った暗幕の中からパレットに乗った大きな機雷が引き出され、ローラー台の上をゴロゴロと移
   動。そして装填装置が機雷を敷設装置に押しこみ、空になったパレットが外されます。まるで食品工場で缶詰が段ボ
   ール箱にパッキングされて行く過程を見ている様
ですが、隊員さんの目は真剣そのもの。


    機雷を満載した敷設装置は、安全確認の後にクレーンへの玉がけが行われ、ゆっくりと慎重に94式水際地雷敷
   設装置に積み込まれました。その間も車輛の周囲では、89式小銃を抱えた隊員さんが周囲を鋭い目で警戒してい
   ます。


    そしてマフラーから黒い煙を勢いよく噴きあげながら、94式水際地雷敷設装置はゆっくり前進。実際の敷設作業で
   は、この後車体ごと海に突っ込み、車体後部のスクリューを回して前進しながら海岸線沿いに次々と機雷を投下して
   いくそうです。


    
以上で訓練展示は終了。派手な戦闘訓練ではありませんが、余所ではなかなかお目にかかる事の無い部隊の緊
   迫した現場の雰囲気
を垣間見る事が出来たので、とても興味深かったですね。
    さてこの後は、駐屯地外の一般道路で行われる観閲行進です。隊員さんに観閲行進のコースを確認しつつ、何処
   から見ようか検討にかかります。せっかくの新緑の季節ですから、木々をバックにして撮影するのもいいなあ。
    しばらく歩くと、前方に紅白の鯨幕を巻いたトラックが見えて来ました。成程、ここが臨時特設観閲壇な訳ですね。
   その正面には音楽隊が整列していて、ちょっとした舞台になっています。うん、今回は初参加ですし、ここから観閲行
   進を見る事にしましょう。


    しばらくすると、駐屯地の方から続々と車輛がやって来ました。私のすぐ隣では、小さな子供達が歓声を上げながら
   車両に向かって手を振っています。


    大型ドーザバケットローダ等の施設科車輛が目の前を次々と通過して行きますが、交通規制を敷いていないので
   合間合間に一般車両が普通に紛れ込んでいるのが面白いなあ。


    そしてトリは、何と言っても94式水際地雷敷設装置です。うわあ、こうして見ると流石にでかいな!公道を実際に走
   っているのを目の当たりにすると、駐屯地で見るよりも存在感が5割増し位に感じます。うーん、やっぱりカッコイイ。


    以上で観閲行進は終了。上空では大阪府の八尾駐屯地からやってきたOH‐6D観測ヘリUH-1J多用途ヘリ
   華を添えてくれましたが、残念ながら車輛行進とのタイミングが合わなかったらしく、アナウンスの隊員さんがすまなそ
   うにお詫びしていました。
    とは言え、訓練展示といい観閲行進といい、限られた準備期間と様々な制限の中で色々と工夫して見せようとしてく
   れた事には感謝です。
来年もぜひ来たいので、次のお楽しみに取っておきましょう。
    あと、ちょっと気になっていた事を傍にいた隊員さんに質問です。第304水際障害中隊の車両に貼られていたこの
   マークですが、一体何なんでしょう。


    「ああ、これは部隊のシンボルマークです。人魚と機雷をモチーフにしていまして、画像を拡大して見て頂くとよく分か
   ると思いますよ」

    うーん、いたのか、おっさんの人魚・・・。いや、そりゃあ人間にだって魚にだって、男もいれば女も居るでしょうけど、
   正直あまり見たくなかったなあ、筋肉ムキムキ髭面ロンゲのおっさん人魚って・・・。甘い妄想に浸っていたのに、いき
   なり現実という名の平手打ちを喰らった様な、当たり前と言えば当たり前なのですが何だか微妙に理不尽な気分であ
   ります。
    さて、このあたりで和歌山駐屯地を後にします。午前中のみの駐屯地開放でしたがが、天気も素晴らしく来た甲斐が
   ありました。


    あと余談ですが、式典の様子を撮影している最中、いきなり愛機のデジタル一眼が動かなくなってしまいました。慌て
   て電源のオンオフを何度か繰り返すとどうにか動いてくれましたが、その後も動いたり動かなかったりの繰り返し。5年
   に渡って過酷な運用に耐え抜いてきた我がX2
にも、とうとうこの時が・・・。やばい、明日は地元大阪府の信太山駐屯
   地創立記念行事
に参加する予定なのに・・・。
    鮮やかに晴れあがった南紀の空とは対照的に、暗澹たる気分を抱えながら大阪に向けて車を走らせました。




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