護衛艦さみだれ一般公開in阪神基地隊

2012.06.23



    神戸市東灘区の阪神基地隊で行われた、護衛艦さみだれの一般公開に参加してきました。DD106護衛艦さみだれ
   は、汎用護衛艦としては初めてVLS(垂直発射装置)を採用し、平面構成による上部構造物のステルス化にも着手した
   むらさめ型護衛艦の6番艦で、はつゆき型護衛艦の後継として多くの新機軸が盛り込まれています。
    とりわけ排水量の増加はかなり強烈な印象で、基準排水量2950トンのはつゆき型と比べると、4550トンのむらさめ
   型は約5割増し。
ぱっと見の迫力は倍ぐらい違うんじゃないかと思わせる程、力強さに満ちた外観となっています。
    それにしてもむらさめ型は久しぶりだなあ。よく考えたら、4年前の呉地方隊展示訓練で乗艦させ頂いた護衛艦いなづ
   ま以来
なんですね。そういう意味では嬉しい一般公開であります。
    当日は土曜日だったので、午前の仕事を終わらせてから同行するHさんの車に拾って貰い、阪神高速道路を湾岸線
   めざして走ります。途中の橋の上から阪神基地隊に停泊しているさみだれの姿が見えましたが、やっぱりでかいですね。
   ここのところ小さなあぶくま型や掃海艇を見る事が多かったので、4550トンが一際大きく見えます。
    魚崎浜インター降りてすぐのコインパーキングに車を預けますが、思ったよりも空いていて驚きです。土曜日午後の阪
   神基地隊で行われる護衛艦一般公開と言う事で、相当な人出を覚悟して来たのですが、意外だなあ。埠頭の中を会場
   に向けて歩く人も殆ど見られず、もしかしたら日時を勘違いして来てしまったのか・・・と不安に駆られますが、一般公開
   は問題なく行われていました。ああよかった。


    正門を入った所で入場券の様な紙切れを渡されましたが、これは帰りに正門で返却するとの事。上陸札ならぬ乗艦札
   ですね。へー、阪神基地隊での一般公開はもう何度も来ていますが、こんなのは初めてです。最近海自のイベントに押
   し寄せる人の数が凄い事になっているので、その中で安全管理に責任を持つ為に、色々と試行錯誤を重ねているので
   しょうか。


    目の前には、長大な護衛艦さみだれの姿が。うーん、改めて見てもデカイな。カクカクと切り立った上部構造物、まさ
   に海面を切り裂くが如き艦首。こないだ見たあぶくま型護衛艦とは違って、話もシャレも通じなさそうな強烈な威圧感
   感じます。
    それにしても今日はやけに人が少ないですね。なんか気持ち悪いなあ・・・と訝しがりつつ、手荷物検査をパスして埠
   頭に入ります。


    舷門にいた隊員さんにパンフレットを貰い、高いラッタルを上がって行きます。そして隊員さんの敬礼を受けつつ、
   衛艦さみだれに初乗艦。


    先月高松港で見た掃海母艦ぶんごよりも一回り小さい排水量ですが、こちらは護衛艦だけあってぐっとスリムな体型。
   まるで日本刀の峰に乗っているみたい。目の前には16セルからなる前部VLSがありますが、たかなみ型とは違って
   板に完全に埋め込まれています。艦内容積は喰いますが、こちらの方がステルス効果は高いんでしょうか。


    艦首方向には、丸い砲塔が可愛らしい76o速射砲。流石にこの艦としてはやや物足りない大きさですが、むらさめ型
   の姉妹艦とも言うべきたかなみ型からは、イージス艦と同じ127o速射砲に変更され、対空戦闘能力は大きく向上してい
   ます。


    右舷舷側の3連装短魚雷発射管、上部構造物にあるハープーン艦対艦ミサイル等を見て回った後は、飛行甲板へ。
   おお、久しぶりに見た様な気がするなあ、LSO。殆ど金魚鉢みたいなものなので、暑くなるこれからは大変そう。
    SH−60J哨戒ヘリを2機収容できる広い格納庫内では、装備品展示が行われていました。酸素ボンベ、耐火服、防
   弾ベスト
と一緒に何故か缶飯まで並べてあります。


    防弾ベストは立入検査隊が着用するらしく、非常に重いシロモノ。係の隊員さんにお話を伺うと、これ以外にも小銃、
   予備弾倉、無線機その他諸々の装備
があるので、一通り身につけるとかなりの重量になるそうです。大変だなあ。
    また、特別警備隊の人達はこれよりももっと軽く動き易い防弾ベストを使用しているとの事。


    その隣ではロープ結索体験コーナーが展開していて、子供達が楽しそうにロープワークを体験しています。時折女の
   子の黄色い声
も混じり、さみだれの隊員さん達はなかなかコミュニケーション能力が高いなあ。


    広い飛行甲板には、SH−60J哨戒ヘリがブレードを伸展させた状態で展示してあります。いかにも使い込んだ様な
   外観
が、何とも言えない凄味を感じさせるなあ。額に幾つもの古傷を刻みこんだ、老練なプロレスラーを見る様です。
   機内も公開しているので、ちょっと覗いてみましょう。


    右側にあるカーゴドアから機内に入ると、操縦士席後方がスカッと空いています。お陰で空間的には余裕があるので
   すが、この天井の狭さは流石だなあ。
    操縦席を埋め尽くすスイッチ類はどれも長年使い込んだ雰囲気があって、後部の戦術情報処理装置のシートもフチの
   部分が擦り切れています。新しい機体では到底出せない味ですね。


    ここでHさんが、機首の左右から突き出ているピトー管が機関砲みたいですねえ、と一言。成程、確かに焼けた様な色
   あいがソレっぽい
なあ。すると係の隊員さんが、
    「ああ、それよく間違われるんですよ(笑)。飛行中にここに当たる空気の圧力差で、速度を計ります。上空の寒気で凍
   りつくと正確な数値が出ないので、実際にこの部分は発熱させています」

    との事。操縦席のドア後方にも同様のセンサーがあり、この部分も飛行中は高熱を発しているそうです。


    その後は左舷通路をぐるっと回り、艦橋へ向かいます。おお、まさか艦橋に上がれるとは思っても居なかったので嬉し
   いなあ。コンソールは今どきの護衛艦らしくタッチパネルが多用されていて、小さな子供が食い入る様にレーダー画面を
   見つめています。彼が将来護衛艦乗りになったとしたら、今の経験がその原点になるのでしょうか。


    それにしても、4550トンともなれば流石に艦橋は広々しています。ここのところあぶくま型や掃海艇ばかり見ていたの
   で、なおさらそう感じますね。そういう意味では、伝声管が無いのがちょっと寂しいなあ。機関やレーダー関係の操作盤
   は艦橋中央にまとめてあり、左右のスペースに余裕があるのが印象的。


    当直士官の立ち位置である艦橋正面に立つと、すぐ目の前にファランクスの白いレーダー部分が。なんだか自慢の
   三本毛をひっこ抜かれたオバQが突っ立っている様
です。こんごう型も同じようなファランクスの配置ですが、艦橋が低
   い分だけむらさめ型の方が邪魔だなあ。Qちゃんちょっとどいてよと言いたくなりますが、まあ航海には問題ないですし、
   慣れると特に気にならないのかな。
    ちなみに米海軍では、R2D2との愛称で親しまれているそうです。


    艦橋の広々かげんに比べると、ウイングは意外と手狭です。これは一段下の甲板に設置されているチャフ発射機真
   上のスペースを確保しないといけない為
で、艦橋真横のウイングや旗甲板はせいぜい通路スペース程度の広さしかあ
   りません。


    そしてむらさめ型とたかなみ型の特徴である、マスト真下の8畳程のスペースです。夏の体験航海ではこの場所が程
   よい日陰になり、風通しもよくなかなか快適。
F作業で釣りあげた鮮魚を干物にするにはうってつけですね。
    潮風に吹かれてのんびりしていると、いきなり一人の士長がラッパを吹き始めて驚いてしまいました。どうやらこの8
   畳間で、ラッパ吹奏展示が行われる模様です。


    今回は士長の司会で3曹がラッパを吹くらしく、普段とは逆の役割が面白そう。まずは一曲目に相応しく、起床ラッパ
   を高ら
かに演奏。ぱちぱちと拍手が贈られます。士長の司会はなかなか堂に入っていて、
    「えーと、先輩なので、ちょっとあれこれ(感想は)言いづらいんですけどね(笑)」
    と、巧みに笑いを誘っています。ちなみにこの起床ラッパ、短いながらも航海科員にとっては気の抜けない重要な曲
   しく、朝一番のこのラッパが上手く吹けないとその後の朝食がちょっと気まずい雰囲気になるとの事。逆に言えば、目の
   覚める様な見事な起床ラッパは、艦内勤務の一日の最高の滑り出しになる
のでしょう。
    その後2人は交代で何曲か披露して、最後は締め括りに相応しく夜の巡検ラッパ。これは45秒もかかる長い曲で、い
   つ聞いても哀愁のあるメロディだなあ。大きな拍手を浴びながら、さみだれ航海科員によるラッパ吹奏展示は終了です。


    ちなみにこのラッパ、全部で20曲以上あるとの事。うーん、全部覚えるのは大変ですね。とは言え普段は滅多に吹か
   ない曲も多く、日常的に吹奏しているのは10曲程だそうです。
    その後は前甲板に戻り、ハッチから艦内のトイレに。よく見ると目の前の壁には『AMMUNITION FAR SIDE』との
   注意書きが。なるほど、トイレの隔壁の向こうは76o速射砲の弾薬庫なんですね。これは落ち着かないな(笑)。


    以上で護衛艦さみだれの見学は終了。予想よりも遥かに空いていたので、ゆっくり見て回る事が出来ました。残念な
   がら科員食堂や機関室などを見る事は出来ませんでしたが、当初は上甲板だけの一般公開かと思っていたので艦橋
   に上がれたのはよかったなあ。
ポスターやメモ帳、うちわ等のおまけも充実していましたし、いい一般公開でしたね。
    それにしてもむらさめ型は本当にカクカクです。あぶくま型やはつゆき型の、ちょっと古めかしさを感じる造型もステキ
   ですが、こういう今風の護衛艦も捨て難いなあ。まあ、結局海自の艦艇なら何でもいいんですが(笑)。


    さて、この後は7月半ばから始まる各地の海自イベントまでちょっと一休みであります。あちこちに応募した体験航海
   のハガキ
もぼちぼち返って来る頃ですし、戦闘糧食でも食べながら夏のイベント参加計画でも練るとしましょう。
    それにしても阪神基地隊、今年に入ってからもう既に3回目の艦艇一般公開なんですね。まだまだ十分とは言えない
   海上自衛隊に対する国民の理解を深める為に、どんどん頑張って貰いたいものです。来月は阪神基地隊キッズサマー
   フェスティバル
もありますし、もう子供とは言えない私も邪魔にならない様に楽しませて頂こうと思います。
    あと、以前にも書いたのですが、是非とも阪神基地隊オッサンサマーフェスティバルの開催を前向きな方向で考えて
   頂けましたら・・・(笑)。




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