2012.02.11
神戸港で行われた護衛艦いせ・さざなみ一般公開を見に行ってきました。2月を半ばにして早くも今年一発目のイベント参
加となりましたが、昨年末の福知山駐屯地から2ヶ月しか経っていないので、なんだか冬眠中に叩き起こされたというか、深
夜に非常呼集がかかったような気分であります。
今回公開されるのは、昨年就役したばかりのDDH182いせと、一緒に訓練を行っていたDD113さざなみ。いせは昨年夏
の呉地方隊展示訓練にて淡路島沖で見たのですが、艦内を見るのは初めて。うーん、今年は最初からいきなりでかいタマが
来てくれましたね!
ちなみにいせは、ひゅうが型護衛艦の2番艦で、護衛艦としての対空対水上対潜攻撃力を持ちつつ回転翼機の運用性を
大きく向上させ、近代戦に必要な高密度情報ネットワークと指揮管制能力の要となる、まさに新時代の海上自衛隊を象徴す
る艦であります。
JR大阪駅から三宮駅へ移動し、そこからポートライナーに乗り換えます。お、神戸港第4突堤に停泊している護衛艦さざな
みの艦尾が見えて来ました!という事は、対岸の北公園からはいせを真正面から見れますね。いせをバックにしたさざなみ
…というのもいい絵になりそうですが、やっぱり今日は新造艦のいせを見たいですし。
改札を出て、駅に隣接したポートターミナルに入ります。普段なら朝の陽光が正面の窓いっぱいに差し込む温室の様な3F
待合室ですが、今日はいせの巨大な艦橋構造物が目の前に立ち塞がっています。うーん、凄いな。外は晴れているのに、薄
暗く感じます。
1Fに降りると、既に沢山の人達が乗艦待ちの列を作っていました。空港のイミグレみたいですが、暖かい建物の中で待て
るのは有り難いなあ。まだ気温は低い時間帯ですし。それでも2連休の初日とあって、子供連れの家族が多いです。
しばらく待って金属探知機と手荷物検査をパスし、いざ埠頭へ。うーん、いせの乾舷が恐ろしく高いので、埠頭が暗いなあ。
岸壁の幅が狭いのもありますが、何だか高層ビルの谷間にいるみたい。
寒さに震えながら舷門の隊員さんの敬礼を受け、舷側歩板からいせの艦内へ。パンフレットが入った記念のクリアファイル
を頂きましたが、なかなかかっこいいデザインですね。
格納庫はひゅうがと同様にとにかく広く、いせグッズの臨時売店には沢山の人が群がっていました。前後のエレベーターも
見学者を満載して、頻繁に飛行甲板との間を行き来しています。
後部エレベーターの近くにはトーイングカーや艦上救難作業車が展示してありますが、ん?何だこの馬蹄型の見慣れない
機械は。傍にいた隊員さんに尋ねてみると、艦載ヘリの下部を固定して、有線電動で艦内を移動させるための装置との事。
なるほどよく見ると、鉄人28号みたいなコントローラーがついていますね。うーん、動かしてみたい…。
それでは後部エレベーターから飛行甲板に上がります。ちなみにこのエレベーター、格納庫と飛行甲板の2ヵ所に操作パネ
ルがあり、上下で同時に操作しないと動かない仕組みになっているそうです。考えてみれば当然ですが、一人で勝手に動か
す事は出来ないんですね。
エレベーターは重量感を感じさせないスムーズな動きで、すぐに飛行甲板へ。おお、やっぱりひゅうが型の開放感は格別で
すね。空気が乾燥している所為か、空の青さと高さが感動的です。
飛行甲板にも沢山の人がいますが、やっぱりこれだけ広いと散らばってしまうので、人でひしめきあう様な事はありません。
艦首のファランクスは赤外線カメラがギラリと光り、なかなか頼もしげ。風があるので国際信号旗がバタバタとはためいて
いるのも絵になります。
甲板にはSH−60Kが展示されていて、どうやらコックピットも開放されている模様。折角なので、順番待ちの列に並びます。
それにしても甲板は、ひゅうがと変わらない凶悪なザラザラぶり。冗談抜きで大根おろしが作れそうです。隊員さんに伺って
みると、
「靴の底もすり減りますが、ヘリコプターのタイヤの消耗が大変ですね(笑)。あっという間に摩耗するんですよ」
との事。あのタイヤ一本でも結構なお値段だと思うので、作るのも大変ですが維持するのはもっと大変ですね。
隣ではSH−60Kの速度についておばちゃんが隊員さんに質問していましたが、『新幹線にちょっと負ける』ぐらいだそう
です。質問に答えていた隊員さんは、
「Jの方だったら勝てるんですけどねえ(笑)」
と笑っていました。へー、新しいKの方が遅いのか。まあ、最高速度第一という運用ではありませんからね。
別の隊員さんに、ひゅうが型への着艦について尋ねてみます。この隊員さんは実際にいせに着艦させたヘリパイの方で、
やっぱり甲板が広いと降りるのも楽ですか?と質問すると、
「そうですねえ、他の艦に降りる時と大差ないですよ。広いから楽と言えば楽かもしれませんが、指定の位置にきっちりと
降ろす事が私達の信念みたいなもんですから、甲板が広いから楽…という感覚はないですねえ」
なるほど、ちょっと失礼な質問だったかもしれません。反省。
しばらくして、ようやくコックピットに座る事が出来ました。足元もガラス窓になっているので着艦には不便なさそうですが、思
ったよりもインパネ周りの高さがあって、前方下部は結構見えにくいなあ。先程お話を伺ったヘリパイの方は私と同じ位の背
丈だったので、こんなもんなんでしょう。
足元から突き出ているスティックが変に曲がった形状なのが以前から謎だったのですが、戦闘機と違って真横から乗り降り
するので、こうでないと足が通り難いんですね。
それにしても、だだっ広い飛行甲板です。これだけ広いと、降雪時の雪かきも大変なんでは…と変な事が心配になり、傍に
いた隊員さんに聞いてみましたが、
「うーん、確かに大変でしょうねえ(笑)。幸いそこまで寒い所に行った事がないのですが、箒で掃いてかき出すか、水でも撒
くのかなあ…」
艦尾付近には黄色いクレーン車が展示してありました。てっきり防舷物の揚げ下ろしに使っているのかと思いましたが、実
際はVLSにミサイルやロケットを装填する際に使用するとの事。防舷物に関しては、今回は民間のクレーン車をチャーターし
たそうです。
さて、この辺でいせを後にしましょう。今回も格納庫と飛行甲板のみの公開でしたが、いつか艦内も見てみたいなあ。
埠頭には一台の自転車が置いてあり、物品番号のタグが貼り付けてありました。あ、もしかして、いせ搭載の公用自転車
かな?
隊員さんに聞いてみるとまさしくその通りで、よく見ると電動アシスト付きでした。1番艦のひゅうがでは普通の自転車だっ
たので、やっぱり2番艦は違うなあ。航空機の運用のみならず、地上戦力に関しても機動力を大幅に向上させてきましたね。
おっと、以前から疑問に感じていた事を質問するのを忘れていました。沖合での錨泊時に降ろす艦首の錨ですが、あれっ
て海底に引っかかって抜けなくなったりはしないんでしょうか?
「へ?錨がですか(笑)?うーん、抜けなくなって困ったという話は聞いたことないですねえ(笑)。一応海図で確認して、砂地
の海底に降ろしてますよ」
だそうです。
さて、続いてはDD113護衛艦さざなみに向かいます。ラッタルを上がって舷門に出ますが、流石にいせの後だと狭苦しい
なあ。さざなみも基排で4650dと十分立派な体格なのですが(笑)。
頂いたパンフレットにはさざなみのイメージキャラクターである漣太郎(さざなみたろう)がドンと描かれていました。
『気は優しくて力持ち。艦も乗組員も、そんな金太郎さんの様な存在であってほしい』
という願いを込めて、初代艦長がデザインしたそうです。なるほど、なかなかの男っぷりですね。しかしそのムチムチボディ
故、何だか特定の偏った嗜好の人達にモテそうなのが気になります(笑)。よく見ると衣装もセクシーですし。
目の前には、ひゅうが型独特の切り立ったような色気のない艦尾が立ち塞がっています。それに対するさざなみの艦首
は刃の切っ先の様に精悍で、艦橋前にドンと鎮座した127o速射砲の堂々たる存在感もあってすごく強そうですね。
左舷通路を通って艦尾に向かうと、ここでもSH−60Kに沢山の人達が群がっていました。
結局さざなみも艦内の公開は行われませんでしたが、これだけ人が集まるとちょっと無理っぽいでしょうね。またの機会を
楽しみにしましょう。
埠頭からさざなみを見上げると、青空に聳え立つマストとはためく国際信号機が見えました。ああ、艦艇ファンのいい休日
です。
その後は対岸の神戸ポートアイランドへ徒歩で移動。途中の橋の上からはいせを真正面から見る事が出来るので、ジョギ
ングやウォーキング途中の人達が驚いたように見入っていました。
それにしても、神戸港は本当に絵になりますね。なだらかな六甲の山並み、青い空、穏やかな海。それらに神戸の街並み
が何の違和感もなく溶け込んで、自然と人が調和しているのが実に素晴らしい。
アバウトなおっさんと図々しいおばはん、チンピラ、ホームレス、そして橋下市長がシンクロナイズドスイミングをしている様
な我が大阪との格差に、毎度のことながら悄然とする思いであります。
そんな神戸も、17年前の阪神淡路大震災ではとんでもない状況だったんですね。国の将来の舵取りを託すにはあまりに
も頼りなさ過ぎる現政権ではありますが、東北だってきっと復興出来るはず。
少し歩いて、神戸ポートアイランドの北公園に到着。おお、いせが目の前に!ここは光線状態も良好ですし、右手に延びた
防波堤からは角度を変えて撮影できるのが有り難いなあ。普段は釣り人でにぎわうこの場所ですが、今日はカメラを抱えた
人達の方が多いぐらいでした。
さて、この後は阪神基地隊に移動して、いせの入港支援でやってきた輸送艦ゆらの一般公開を…と行きたいところですが、
所用のため大阪へ戻ります。2度手間になりますが、ゆらは明日のお楽しみという事で。それでも季節外れの艦艇一般公開
にしてはかなり贅沢な顔ぶれだったので、大いに満足でした。
結局この一日で5000人近い見学者が押し寄せたそうで、いせとさざなみの乗組員の皆様はちゃんとリフレッシュ出来たの
かどうか、ちょっと心配ですね。当日の警備や案内に携わったいせ&さざなみ、ならびに阪神基地隊及び兵庫地方協力本部、
そして兵庫県警の皆様、寒い中有難うございました。
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