2012.06.10
富山県新湊港で行われた、護衛艦じんつうの一般公開に参加してまいりました。DE230護衛艦じんつうはあぶくま型
護衛艦の2番艦で、富山県の中央を流れる神通川から名付けられた、訓練支援艦くろべと並ぶ富山県のご当地艦であ
ります。
私個人的にあぶくま型護衛艦にはどうも縁が薄く、これまで乗艦したあぶくま、せんだい共に上甲板のみの公開だった
為、今回こそは艦内を見たい!と意気込んでの遠征となりました。当日お会いしましょうと連絡していた富山県のH.N.艦
長さんにお話を伺うと、
「先週すぐ近くの伏木港でひゅうがの一般公開があったばかりですし、それほど混まないと思うので大丈夫でしょう」
との事。希望を抱きつつ、雨の北陸自動車道を一路富山県に向けてひた走ります。
当日朝の富山県内は、辛うじて曇り空。いつ降り出してもおかしくなさそうな天候ですが、せめて午前中だけでももって
くれないかなあ・・・。0740、本日の一般公開が行われる新湊港海王丸岸壁に到着です。おお、じんつうのマストが見え
て来ました!
低いところまで垂れこめた鉛色の雲の下の護衛艦。暗灰色の力の塊がうずくまっている様で、小さい艦なのに凄味が
あるなあ。あぶくま型独特の、地方隊のDEに必要なものをコンパクトにまとめた感じがたまりません。
はつゆき型の小型ハリネズミの如き重武装ぶりもカッコイイですが、こういうスッキリしたスマートな艦も美しいなあ。艦
中央部にあるアスロック発射機、2本の丸い煙突、ごちゃごちゃとしたマスト、後甲板で殿を務めるファランクス・・・今ど
きの護衛艦にはないカッコ良さに溢れています。
日課の甲板掃除も概ね終了し、じんつうの甲板には和やかな雰囲気が漂っています。埠頭では業務用白テントの展開
が始まり、陸自のトラックも入って来ました。売店や地本の隊員募集コーナーの設営でしょうか。
ちなみにこの海王丸岸壁には商船学校の練習船を務めた帆船海王丸が係留されていて、晴れた日にはその優美な
姿を見る事が出来ます。今日は残念ながらその純白の船体もくすんだ色合いですが、遠征して来た私にとっては降らな
いだけでも有り難いというもの。
しばらくすると、折り畳んだ自衛艦旗を両手に掲げ持った当直海士がやってきて、後甲板には続々と乗組員が集まっ
てきました。二等海佐の階級章をつけた艦長もやって来て、一同敬礼。
「おはようございます!」
「ん、おはよう!」
最後は隊司令と思しき一等海佐が登場し、0800、君が代の吹奏と共に艦尾の自衛艦旗がばっと放たれ、乗組員は一
斉に敬礼。ラッパの音色に合わせて粛々と自衛艦旗が掲げられて、護衛艦じんつうの1日の始まりです。
今日は風が無いので自衛艦旗はだらりと下がったままですが、やっぱりこれを見れるのは嬉しいなあ。早めに出発し
てきた甲斐がありました。
その後後甲板では分隊ごとに分かれての朝礼が始まります。さて私は、艦長さんとSAA水兵さんがやってくるまで埠
頭のあちこちをうろつきながらじんつうを撮影します。
新湊港は細長いコの字型なので、停泊する艦の真正面以外は全て見る事が出来るのがいいですね。すぐ隣に頼りな
さそうな高架道路が通っているのがちょっと気になりますが、曇天の下だとこれはこれで不思議な光景だなあ。
しばらくしてやってきた艦長さんとSAA水兵さんと合流。一般公開の始まる0900前になると少しずつ人も増えてきまし
た。とりあえずこの人数なら、念願のあぶくま型の艦内を見る事が出来そう。少し風が出て来て冷え込みますが、上空
を覆っていた厚い雲の切れ間からは青空も覗き、いい感じになってまいりました。
と言う訳で、0900、護衛艦じんつうへの乗艦が始まりました。ラッタルを上がって乗組員の人達の敬礼を受けつつ甲板
に足を踏み入れると、目の前には丸っこい煙突と巨大なアスロック発射機が。ああ、初めて乗艦した護衛艦きくづきを思
い出すなあ。
前甲板に回ると、艦首に立ちふさがる76o速射砲の丸っこい砲塔が目に入って来ました。排水量に合わせた可愛らし
いサイズですが、近くで見ると思いのほか重量感があります。
その後方には76o砲弾も展示してありますが、高級感のあるエンジ色の木箱に納められ、内部にはカーペットの内装
も施されていてVIPの様な扱いを受けています。なんだかぶ厚い絨毯が敷き詰められた執務室に収まった総監のような
風格があります。
左舷通路からは、外に設置されたラッタルを上がります。おお、艦橋に上がれそうですね!ラッタルを2層分上がると、
あっという間に艦橋後部の旗甲板に到着です。こんごう型だと5階分ぐらい上らないといけないので大変なんですけど。
国際信号旗を収めた箱の他にも機関銃用の架台、チャフロケット発射機が並んでいて、さほど広くもない甲板を更に
狭苦しくしています。はつゆき型やあさぎり型だと、ここにさらにファランクスまで搭載しているんですから、やっぱりあぶ
くま型はコンパクトなんだなあ。
さて、念願のあぶくま型の艦橋です。小型でスリムな艦に相応しく、艦橋も良く言えばコンパクト、悪く言えば狭苦しいと
いう印象ですが、狭い所に入り込むのが好きな性分の私としては、けっこう居心地が良さそう。
ふと機関の制御を行うパネルの前を見ると、丸イスにはZ旗のカバーが掛けられていました。各員一層奮励努力せよ!
という心構えなんだと思いますが、Z旗の上に座るのは何だか畏れ多い様な気がしますね(笑)。
右ウイングから甲板を眺めていて気がついたのですが、前甲板のウォークスペースだけでなく、76o速射砲や甲板の
ハッチの周囲にも滑り止め加工が施されているんですね。幾何学的で複雑な形状なのが目を引きますが、このあたり
は色んな意味で護衛艦建造計画の過渡期にあったあぶくま型ならではなのでしょうか。それにしても、先月見た護衛艦
せんだいもこんな感じでしたっけ?あの時は人が多すぎて気がつきませんでしたが・・・。
その後は艦橋内のラッタルから艦内へ降りて行きます。機関室兼応急室も幅ギリギリな感じで、よく見ると他の艦には
当然ある応急監視制御盤が見当たりません。別区画にあるのかなと思ったら、機関室の奥まった部分に位置をずらして
設置してありました。このあたりも、限られた船体容積の中で試行錯誤を繰り返した跡なのでしょうか。
ここで艦長さんが面白いものを発見。室内の隅っこの方に、アルミの水筒がいくつもぶら下げてありました。物品タグが
ついているので、私物ではなく官給品の模様。へー、こんなの使っているんですね。当直前に科員食堂でお茶を貰って持
ち込むんでしょうか。しかし艦長さん、よくこんなの見つけたなあ。流石であります
科員食堂の手前には、じんつうグッズ販売コーナーが。識別帽の正面には大きく『神通』と書かれていて、なんか強い
パワーを感じます。
科員食堂もこぢんまりとしていて、4人掛けのテーブルが6つ並んでいます。壁の一部には大きなガラス瓶がずらりと並
び、きっちりと収まる様に木枠で囲ってありました。中身を取り出し易いように、ちゃんと角度をつけてあるのが芸が細か
いですが、これって隊員さんのDIYなのかな?他の護衛艦ではこんなの見た事ありませんし、これもあぶくま型ならでは
なんでしょうか。
ちなみにガラス瓶の中にはふりかけや焼き海苔の小袋が入っていて、食事の時は好きなように食べてもいい模様。そ
の横にはテレビやDVDプレーヤーのリモコン類が二つに切ったペットボトルに収納されていて、こういう艦内の生活臭さ
みたいなものが伝わって来るのは興味深いなあ。
片隅には『じんつう書庫』があり、覗いてみると蔵書の半分近くは世界の艦船のバックナンバー類でした。こういう仕事
についていると、逆にこの手の本は縁遠くなるのかと思っていましたが、じんつうの人達はそうでもなさそうです。
その隣には小さな冷蔵庫があり、『保存食』と書かれた貼り紙が。保存食?容量的に戦闘糧食ではなさそうですが、夜
ワッチの隊員さん用に冷弁(作り置きのお弁当)でも保管してあるのでしょうか?傍にいた隊員さんに尋ねてみると、
「ああ、保存食と言うよりも、食事の時に使う醤油やソース、マヨネーズやドレッシング類を入れてるんですよ」
との事。そう言えばどの艦にもそういうのがありましたね。
調理場の受け取り口はカバーが掛かっていて中の様子はよく見えませんが、スタンバイされた茹で卵やブロッコリー、
トマト、ヤングコーン、奥の方には美味しそうな揚げものがバットに並べてありました。
艦内見学は以上。ラッタルを上がって後甲板に出ます。舷門には行列こそ出来てはいませんが、じんつうを見に訪れ
た人達が絶え間なく続いていて、なかなか盛況ですね。それでも先々週の玉野港のせんだい一般公開とは違ってゆっく
りのんびり見て回れたのはよかったなあ。
艦尾に聳え立つファランクスですが、よく見るとあちこちが新品の様にピカピカです。最近バージョンアップでも行ったの
かな?他の大型艦艇ではあまり目立たない装備品ですが、あぶくま型では艦尾を守る重要なポジションを任されて、
「さあ来るなら来やがれ○○○野郎!」
と、気合を入れている様に見えました。
以上で護衛艦じんつうの見学は終了。いやー、苦節8年目にしてようやくあぶくま型の艦内を見る事が出来ました。こ
のあたりで急に空模様が怪しくなって大粒の雨が降り始め、どうやら今回は天候も味方をしてくれた模様。えーと、次も
よろしくお願いします(笑)。ぼちぼち夏の海自イベント情報も出揃って来ましたから、あとは梅雨前線と台風の心配だけ
ですね。
ちなみに今回の遠征では、艦長さんとSAA水兵さんから地元の日本酒のお土産まで頂いてしまいました。いつも乗艦
券を確保して頂いたり情報を寄せて頂いたりなのに、お気遣い有難うございました。満寿泉(ますいずみ)という銘柄の
お酒で、口に含んだ瞬間に広がる鮮やかな香りが非常に美味でありました。風味は全然違いますが、印象としてはジャ
スミンによく似た性格のお酒ですね(また分かった様な事を・・・(笑))。
それにしても、このカメ一号というのが面白いなあ。まるで特殊潜航艇か生物型決戦兵器の様なネーミングが、実に
お二人らしいセンスだと思いました(笑)。亀一郎じゃなくて本当に良かった・・・。
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