2012.10.07
兵庫県伊丹駐屯地にて行われた、中部方面隊創隊52周年記念行事に参加してまいりました。中部方面隊は
東は富山県から西は山口県まで、四国を含む2府19県の防衛警備を担任しており、全国を5つに分割した方面
隊の中でも最大の面積を誇る巨大組織であります。陸上自衛隊を大企業に例えると、さながら西日本統括本部、
とでも呼ぶべき存在でしょうか。
その総本山である兵庫県伊丹市ですが、清酒発祥の地として古い歴史を持ち、今も酒造がさかんな一帯でも
あります。そういう意味では、酒呑みが多い陸自隊員(最近は昔ほど豪快なエピソードを聞かなくなったのが残念
ですが)には向いている土地柄なのかもしれませんね。
その伊丹駐屯地で毎年秋に行われる創隊記念行事ですが、伊丹36普連のトウモロコシ屋台(笑)を筆頭として、
全国各地から自慢の名物を携えた部隊が集結し、さながら西日本物産展の如き様相を呈する事でも評価の高い
イベントであります。私は今年も屋台を満喫すべく、9月からの1ヶ月と少しで−3.5sのダイエットを実施。何だ
かダイエットの方向を著しく間違えている様な気がしますが(笑)、当日は朝食もしっかり抜いて、過酷な減量を乗
り越えて試合に臨む力石徹の様な気分でJR伊丹駅前に降り立ちました。
0830を過ぎたあたりで幸い第一便のバスに乗り込む事が出来ましたが、定刻の0845にならないと出発しないと
の事。そして車内のデジタル時計が0844になった頃から、車内係の隊員さんは自分の腕時計と車内の時計、後
方に待機している2輌目のバスの3つをきちきちきちと3点チェック。そして液晶表示が0845になると同時に、
「お待たせしました、それでは発車します」
うーん、流石。きちんと決められた作戦スケジュールに沿って、整然と部隊が行動している普段の様子が染みつ
いているんですねえ。どうせなら発車とかじゃなくて、「テーッ!」って言えばいいのに(笑)。そしてバスが路肩を離
れる際には、
「左、よし!左後方、よし!」
と、操縦手・・・もとい運転手を補助。返す返すも自衛隊の人だなあ。朝からいいものを見せて頂きました。
そして15分程で伊丹駐屯地の正門をくぐります。すでに沢山の人が駐屯地内に入っていますが、伊丹は広いし
見学ポイントも多いので、焦ることなくだらだらと式典会場へ向かいます。
一般見学スタンドはまだ沢山空席がありますが、全体的にはもう6割がた埋まってしまっていて、今年も人が本
当に多いなあ。高い秋の空には白い雲がゆるりと浮かび、今日はなかなか良さそうな秋の一日になりそうです。
さて、式典が始まるまでの間、あちこち歩き回るとしましょう。正門と西門からは続々と一般見学者の波が押し
寄せ、それに逆らうようにして屋台の立ち並ぶさくら通りへ。
ずらりと並んだ屋台群は開門直後から活気にあふれていて、やっぱり屋台は伊丹が一番充実しているなあ。
下見がてら一通り見て歩いていると、お、今年も居ました36普連の焼きトウモロコシの屋台!隊員さんも相変わ
らず私の事を覚えて居て頂いた様で、いきなりの大歓迎です(笑)。全員揃うのはもう少し後、との事だったので、
とりあえず他を一回りしてからもう一度来る事に。
正面の隊舎の前にはうどんの屋台があり、毎年人気なのか広い客席も充実しています。地本募集テントの隣
には丹波の黒豆と栗の即売所がありましたが、福知山駐屯地かな?
唐揚げ、揚げ餅と続いた後は、高知駐屯地からの新高梨と山北みかんの即売所。高知は今年の3月に遠征
して冷たい雨にずぶぬれになった記憶が甦るなあ。三重県の久居駐屯地からは、揚げたこ焼きがやって来てい
ます。
徳島駐屯地からは、すだちと鳴門金時の即売所が。これも土地柄ですねえ。ここですだちを一袋購入。6〜7
個入りで50円は安いなあ。この大きさがバラバラで、全然粒が揃っていないのも好感が持てます。
吉田君で有名な島根県は出雲駐屯地からやってきたのは、名物出雲そば。駐屯地内の窯で焼いた陶器をずら
りと並べている兵庫県青野原駐屯地の隣には地元工芸品である萩焼を持ち込んだ山口駐屯地のテントがあり、
またよりによって似た様な屋台を隣合わせにしたものです。売上勝負で負けた方が廃部!という様なイベントでは
ないらしく、朝から大賑わいの野外売店通りの真ん中で、どちらものほほんと日向ぼっこをする様な風情を漂わせ
ていました。
そして36普連のトウモロコシに匹敵する賑やかな屋台を展開しているのが、お隣の千僧駐屯地からやってきた
第3特殊武器防護隊のテント。恒例の3特防グッズの他にカレーライス(1100〜)やたこせんの屋台も出していて、
テントの派手さも一際目を引きます。今年もやる気まんまんだなあ。
おお、愛媛県の松山駐屯地からはじゃこ天&じゃこカツ!石川県の金沢駐屯地からは名物白山そばが出てい
てこれはどっちも美味しいんですよねえ。
その他にもフランクフルト、かき氷、イカ焼き、フライドポテト、輪投げやくじ引き、ヨーヨーすくい、スーパーボール
すくいなどのテントが充実していて、見ているだけで楽しめます。
まずは毎年恒例の、金沢駐屯地からの白山そば。おお、相変わらず美味しい!今日は早くも気温が上がってき
ているので、この冷たさも御馳走のうちです。極限までさっぱりしつつもしっかりとした風味の感じられる白山そば、
本日の一品目としては実に満足のいく一杯でした。
つゆを担当していた隊員さんの手が空いた様なので、少しお話を伺います。やはりダシに塩だけで味付けしてい
るそうで、醤油は全然使っていないとの事。そばと言えば醤油の香りの立ったつゆが当たり前みたいに思っていま
したが、これも十分アリですね。今年も美味しかったですと伝えると、
「お客様からお褒めの言葉を頂きましたー!」
「ワー!」
と屋台が大盛り上がり。いやあ本当に美味かったです。来年もまた来よう。
人混みで次第に歩きづらくなるさくら通りを流していると、胸にレンジャー徽章をつけた隊員さんが前方からやっ
てきました。つい気圧されるようにして道を譲ると、その隊員さんはぺこぺこと恐縮されていました。当たり前なん
でしょうけど、レンジャーの人も普通の時は普通の人なんですね。
続いては、昨年食べて感動した松山駐屯地のじゃこカツを。揚がったばかりの熱々を頂きますが、あー、やっぱ
り美味しいなあこれも。表面はからりと揚がっているのに中のすり身はジューシーで、一緒に練り込まれたタマネギ
やニンジンの香りと甘さを、程良くつけられた塩味が上手く引き立てています。
次は出雲駐屯地からの出雲そば。ここのそばは隊員さんによる手打ちで、つゆは正統派の醤油味。おお、これ
もいけますよ。醤油の香るつゆがそばによく合っていて、とても本職ではない人のつくったそばとは思えない出来
です。先程の金沢駐屯地の白山そばとは好対照というか、まさに中部方面隊の西と東の大横綱であります。
とりあえず腹の中で一人で暴れていた力石徹も落ち着いたので、人だかりで賑わっている第3特殊武器防護隊
のテントに向かいます。どさくさにまぎれて彼女募集中のパネルも出ていて、相変わらずのバイタリティだなあ。
グッズ販売は特製入浴剤や3特防ワッペン、その他隊員さん使い古しのポウチ類の投げ売り等、今年も充実し
ています。目玉は3特防の隊員さんお手製の3特防プレートで、ODに塗装された木の板に、ガスマスクのイラスト
と3NBCの文字が描かれています。
「お部屋のインテリアに是非!トイレの前に置くのもお勧めですよ〜!」
と、ここの隊員さん達は相変わらずトンチが効いています。
「ご自宅の前にかけておけば、泥棒よけにもなります!」
って、普通にガスマスクをした泥棒が来そうな気がするんですが・・・。
ここで3特防のワッペンを一つ購入。シンプルさがカッコイイ、実にいいデザインだと思いました。
あ、いましたいました、いつものトウモロコシの人・・・って、何かいっぱいいるし(笑)。どうやら今年はトウモロコ
シ軍団をパワーアップさせたそうで、4名の隊員さんが真っ黄色になっていました(笑)。いきなり囲まれて握手攻
めにあってしまいましたが、これ、どう見ても私が怪人たちに襲われているとしか見えない絵ヅラだなあ。すでにこ
のHPの秋の風物詩となりつつある人達ですが、変な義務感を押しつけていないかちょっと心配(笑)。
記念に一枚お願すると、
「おい、ヤングコーン!撮影や!集合ー!」
で、見事に4人で決めポーズ。うーん、この屋台の人達は毎年パワフルすぎます(笑)。どこの中隊なんですかと
か聞こうと思っているのですが、毎年圧倒されて忘れてしまってますし。
「いい場所とれました?今年は火力増量ですから、凄いですよ〜」
あ、そう言えば訓練展示もあるんでした。なんかもう私の中では、伊丹の記念行事はこの人達がメインみたいな
気分なんですけど。
という訳で、トウモロコシを一本購入して屋台の中の皆さんも撮影させて頂いて、大声のお見送りを受けながら
屋台を後にします。
いやー、朝っぱらからそば2杯とじゃこカツ、トウモロコシでもう腹いっぱいですね。さて、そろそろ10時を過ぎる
頃。式典会場に戻ります。
式典会場真横に展示されている野外入浴セットは、今年は広島県海田市(かいたいち)駐屯地の第13後方支
援隊からのもみじの湯。真っ赤な暖簾が鮮やかですね。会場の脇では部隊の集合が始まっていて、急いで確保
した席に戻ります。それにしても今年も凄い人数だなあ。
しばらくすると、部隊の入場が始まりました。スタンド席の後方からは、西日本各地からやってきた式典参加部
隊が続々と入場。本日は方面隊規模の記念行事だけあって、参加人員900名、車輛140輌、航空機9機とい
う堂々たるスケールだそうです。
部隊が整頓したところで、本日の観閲部隊指揮官を務める第3師団長山下裕貴陸将が入場し、式典参加部隊
の紹介が始まります。
その後は来賓の方々が揃うまで、部隊はしばし待機。そして本日の観閲官である中部方面隊総監川村仁陸将
が黒塗りの業務車で入場。部隊は捧げ銃を執り行います。続いて国旗が入場し、部隊は着剣した小銃で捧げ銃。
そして流れる様に巡閲へ。観閲官を乗せたパジェロが目の前を通過し、部隊は次々と敬礼。
観閲官式辞、来賓祝辞、来賓紹介、祝電披露が行われ、ここでこの後の観閲行進のために部隊は一旦退場。
あれ?なんかやけに短い式典だったような・・・。
中部方面隊の記念行事という事で、毎年何人もの来賓が祝辞を披露したり長々と来賓を紹介したりするのが常
でしたが、今年は随分短くまとめた様な。私がぼーっとしていたからでしょうか。
部隊が退場していきなり静かになった会場に、第3特殊武器防護隊の除染車が4輌入り、散水を開始。
そしていよいよ観閲行進の始まりです。まずは行進曲『大空』を演奏しながら、中部方面音楽隊と第3音楽隊に
よる合同音楽隊が入場。軍楽隊ならではのキビキビした所作がかっこいいなあ。
観閲壇前を通過した後はくるりと回って正面に正対。ここで曲目が『かけがえのない大地』に切り替わり、第10・
3師団及び第13・14旅団の防衛警備区にあたる2府19県の旗が、パジェロに乗って続々と登場。
そして曲目は『抜刀隊』に切り替わり、勇ましい演奏に合わせて部隊の入場が始まりました。先頭を務めるのは、
観閲部隊指揮官が座乗する第3師団司令部及び付隊からの指揮通信車3輌。
さらに福知山駐屯地からの第7普通科連隊が登場し、高知駐屯地の第50普通科連隊が続きます。
お隣の千僧駐屯地の第3偵察隊からは、指揮通信車、軽装甲機動車、偵察オート、87式偵察警戒車。
金沢駐屯地からは、第14普通科連隊。海田市駐屯地からは、第46普通科連隊。松山駐屯地からは、74式大
型トラックに牽引された第14特科隊の155oFH−70榴弾砲。
隊員さんを乗せた車輛が目の前を次々と通過するたびに、スタンド席を埋めた人達からは大きな拍手が送られ
ます。国民の生命や財産を守るために、身の危険を顧みることなく任務に当たる隊員さん達に贈られる、ささやか
な感謝の表れなのでしょう。拍手をしている人達はもちろん、行進している隊員さん達も誰一人として戦争なんか
望んでいる訳が無いのですが、それでも変な人の変な耳が聞けば、この温かい拍手も軍靴の響きになるんです
から、人体って不思議ですね。
姫路駐屯地からは、第3高射特科大隊の93式近距離地対空誘導弾と81式短距離地対空誘導弾。誘導弾を
格納した筐体に描かれた、蜘蛛と誘導弾のマークがおどろおどろしくもカッコイイなあ。
青野原駐屯地の第8高射群からは、捜索兼射撃用レーダ装置と03式中距離地対空誘導弾。ステルス性能を
意識したような平面構成の大型8輪車輛が、いかにも今風のデザインです。
中部方面情報隊、中部方面通信隊の車輛がやって来た後は、桂駐屯地の中部方面後方支援隊からの重レッ
カ、青野原駐屯地の第302高射直接支援中隊からの重装輪回収車。
桂駐屯地の中部方面輸送隊からの74式大型トラックの荷台には、36普連の資材運搬車がちょこんと乗り込ん
でいてカワイイなあ。
同じく桂駐屯地の第103不発弾処理隊からは、不発弾回収車。荷台には大きな不発弾の模擬弾が搭載されて
いました。
地元伊丹駐屯地の中部方面衛生隊からは、救急車と野外手術システム。同じく伊丹からの中部方面会計隊の
パジェロが続いた後は、大久保駐屯地の第4施設団からの92式浮橋、ちょっと名前が分かりませんがトラックに
搭載された巨大な渡河ボートみたいなの、そして92式地雷原処理車。
この92式地雷原処理車がなかなかのインパクトだったようで、巨大なロケット発射機を2つ乗せた巨大な車輛が
キャタピラを軋ませながら目の前を通過すると、スタンド席からはどよめきが上がりました。前方についているショ
ベル状の排土装置も、なんだかしゃくれアゴの様な妙な愛嬌があります。
そして観閲行進の華とも言うべき、今津駐屯地の第3戦車大隊からの74式戦車が4輌、エンジン音を響かせな
がらやって来ました。式典会場のコーナーではいかにも重そうな鋼鉄の車体の向きを軽々とかえて見せ、砂煙を
あげながらの怒涛の行進でした。
そして上空北側からは、締めの航空観閲部隊が登場です。八尾駐屯地と明野駐屯地からの、UH−1J多用途
ヘリ×4、OH−1観測ヘリ×1、AH−1S対戦車ヘリ×4による、きっちりまとまった混成編隊飛行でした。
以上で観閲行進は終了。その間ずっと演奏を続けていた中方・第3合同音楽隊は、拍手を受けながら退場です。
再び除染車による散水が行われ、会場中央には隊員さん達がわらわらと出て来て、グラウンドに杭を打って鉄
条網の敷設を開始。この後の訓練展示の準備です。
ここで今訓練展示の概要が説明され、会場南側の陣地に立てこもった敵対抗部隊に対し、会場北側から陸自
部隊が攻め込んで陣地を奪還するシナリオとの事。指揮を務めるのは、第36普通科連隊第1中隊長の一等陸
尉さんだそうです。
まずは訓練展示開始のラッパが高らかに鳴り響き、状況開始。上空にはOH−1観測ヘリが飛来し、くるくると旋
回しています。
「こちらオメガ!敵後方に陣地を確認!」
すぐに陸自本隊から第3偵察隊の偵察オートが出撃。会場手前で高いジャンプを決めた偵察隊員は、前線付近
に展開している敵の装甲車を発見。一気に距離を詰めて小銃を射撃し、威力偵察を実施です。
不意を突かれた敵の前線部隊は、慌てて機銃で応戦。偵察隊員はその反撃の規模と早さなどの敵の情報を収
集し、後方の本隊に報告。偵察オートの撤退を支援すべく87式偵察警戒車が砂塵を巻き上げつつ突っ込んで来
て、派手なテールスライドを披露。スタンドからは歓声が上がります。
偵察オートが無事撤退したところで、敵対抗部隊陣地の後方にある隊舎の屋上に、3名のレンジャー隊員が登
場!おお、今年はこんなこともやるんですね。一般見学者からどよめきが上がる中、軽々と飛び降りたレンジャー
はあっという間に着地。すぐに散開して敵後方からの情報収集・撹乱・奇襲を行います。
「こちらレンジャー!一個小隊規模の敵を確認!」
陸自本隊では情報の分析評価が行われ、報告を受けた中隊長は火力戦闘部隊の展開を下命。93式近距離地
対空誘導弾と155oFH−70榴弾砲がやってきて、すぐに砲撃準備が整えられます。
「このFH−70榴弾砲は、ここ伊丹駐屯地から大坂城まで砲撃する事が可能です」
とのアナウンスが流れると、会場からは驚きの声があがります。いや、ちょっと、うちが近所なんでそれは勘弁し
て貰いたいんですが(笑)。
さらに高機動車に牽引された120o迫撃砲RTもやってきて、後部ドアから飛び出した5名の隊員さん達が早送り
の様な動きで砲撃準備に取り掛かります。ここでアナウンスが
「この迫撃砲は、ここ伊丹駐屯地から甲子園球場まで砲撃する事が可能です」
再び驚きの声が上がりますが、今度はちょっとだけ悲鳴が混じっているのはお土地柄、ですねえ(笑)。
ここで敵対抗部隊からの航空機が接近しますが、先に展開していた93式近距離地対空誘導弾がそれを撃墜。
そしていつの間にやら会場中央には、ギリースーツに身をくるんだ狙撃部隊がやってきて草むらに身をひそめてい
ます。ちなみに標的は、装甲車の上にいる機関銃の射手。
しばしの沈黙の後に、見事狙撃は成功。射手は『うわー、や、やられたー』とばかりに両手を広げて倒れ込みま
した。観客席のあちこちからは、その名演技を称える声が上がります。
そしてあっという間に砲撃準備を整えたFH−70榴弾砲が、敵陣地に向けて轟々と砲撃開始。しかし展開したF
H−70榴弾砲があまりに観客に近い為、実際の空包は築山の後方にて行われます。ズドン、という大きな音と共
に、木々の間から砲炎がちらりと見えました。弾頭が空気を切り裂く効果音が鳴り響き、
「だんちゃーく(弾着)、今!!」
の号令の直後、敵陣地の手前に投げ込まれた発煙筒が煙を噴き上げます。その一瞬の隙を逃さず、本隊から
は軽装甲機動車群が一気に前進。飛び出して来た普通科隊員はすぐに地面に伏せ、敵陣地に向けて激しい銃撃
を浴びせます。
敵対抗部隊も小銃射撃で応戦しますが、陸自火力戦闘部隊による支援砲撃が雨あられ降り注ぎ、徐々に押さ
れ始めました。
ここで鉄条網手前まで肉薄した普通科隊員が、06式小銃躑弾を銃口に取りつけ、独特の姿勢から発射。見事
敵装甲車に命中し、真っ赤な煙が噴き上がります。
更に上空にはAH−1S対戦車ヘリコブラが進入し、地上の敵装甲車に向けてロケット攻撃を開始。見事大破さ
せます。
敵の攻撃力が弱まった隙をついて、陸自本隊からは92式地雷原処理車が出撃し、目の前に立ちふさがる鉄条
網と地雷原の処理に取り掛かります。鉄条網手前まで突進してつんのめる様に停車した後は、
「おっしゃー!一発やったるで!」
とばかりにマフラーから黒煙を噴き上げ、持ち上げたランチャーからロケットを発射。飛翔体に牽引された導索
に仕込まれた爆薬が辺り一面の地雷をまとめて吹き飛ばし、今度は75式ドーザがやってきてロケットの啓開した
大地の整地作業を実施。
ここで中隊長は、敵陣地に向けての突撃命令を下します。対抗部隊との銃撃戦がさらに激しくなる中、ついに74
式戦車を2輌投入。一気に敵陣地との距離を詰めて、空包を発射します。見学スタンドのすぐ目と鼻の先なので、
ものすごい迫力に大きなどよめきが上がります。
直撃を受けた敵陣地からの反撃が止まったところで、74式戦車と96式装輪装甲車は地雷原を突破。後部ハッ
チからは普通科の小銃小隊が飛び出してきて、激しい銃撃戦の中じりじりと敵陣地に迫って行きます。
そして小隊長の号令一下、敵対抗部隊の立てこもる陣地に向けて吶喊。見事制圧に成功し、以上で訓練展示は
終了。会場からは、大きな拍手が送られました。途中いきなり上空が曇り出して雨がぱらつく場面もありましたが、
実に伊丹らしい見事な記念式典と訓練展示でありました。
その後は会場を離れる人の流れに乗りながら、装備品の展示を見て回ります。除染用のシャワー室天幕や94
式除染装置、化学防護車、化学防護服、災害派遣関連の装備品などがずらりと並び、沢山の人達が説明に聞き
入っています。
03式中距離地対空誘導弾の隣には、何やら見慣れない車輛が。07式機動支援橋という名称で、81式自走架
柱橋の後継として、河川に戦車などの重量車輛が通過できる橋をかける車両との事。
人の流れに乗って再びさくら通りに向かいます。果物が山と積まれていた高知駐屯地の屋台ですが、順調に売
れた様で、残るはみかん2袋。完売は時間の問題でしょう。トウモロコシの屋台は大盛況で、朝からあのテンション
が全く落ちていないのは凄いなあ。
通りの要所要所にはゴミ箱が設置され、常に隊員さんがついて管理しているので、ゴミが溢れかえったり散らか
ったりという事は全くありません。
第3特殊武器防護隊のテントも相変わらずの大賑わいで、グッズ売り場の隊員さんは押し寄せるお客さんに対
応しながら巧みにコミュニケーションを取っています。一人の男性が連れの女の子に誰か独身隊員を紹介してあ
げて、と声をかけると、
「あ、それやったらええのん居てますよ!そこのカタログの他にも在庫が山ほどいてますんで、気に入らなかった
ら遠慮なく言うてください!」
当の女の子はカタログを一瞥して
「うーん・・・とりあえず盛り合わせで」
と真顔で言っていたのには笑ってしまいました。焼き鳥屋かここは(笑)。しかしよくよく考えれば、焼き鳥も男も単
位は1本2本なので、あながち間違いでもない様な・・・うーん・・・。
お、3特防の隊長が作る特製カレー、まだ残っている模様です。少し小腹も減ってきた事ですし、最後に一つ食
べて締めとしますか。
テントの中で忙しそうにご飯やカレー、福神漬を盛りつける隊員さん達は明るく活気があり、この辺は部隊のカラ
−なんですね。しばらくして出て来た3特防カレーですが、大ぶりの鶏肉がごろごろで美味しかったです。辛味もし
っかり効いていて、秋にしては強い日差しもあり、額には汗が浮きました。
スーパーボールすくいの屋台の前には、すくった数のランキングが貼り出されていて、現在のトップは何と394個
もすくってしまったしゅんすけ君!2位のりほちゃんが228個ですから、ダントツの1位です。ただのお子ちゃまとは
思えませんが、一体何者なんだ?
さて、そろそろ私も帰るとしましょう。今日も本当に楽しかったなあ。最後にトウモロコシ屋台に寄って挨拶すると、
「おい!お前ら!先生がお帰りやぞ!」
「ウオオオオオオッス!!」
せ、先生って・・・私も一体何者なんでしょう(笑)?なんだか暴力団事務所の若い衆に見送られる悪徳顧問弁護
士の様な気分を味わいつつ、伊丹駐屯地を後にしました。
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