青野原駐屯地創設36周年記念行事

2012.05.27



    兵庫県小野市に所在する青野原(あおのがはら)駐屯地の創立記念行事に参加してまいりました。青野原駐屯
   地には第8高射特科群を中心として第302高射直接支援中隊第434会計隊、第318基地通信中隊青野原
   派遣隊、第131地区警務隊青野原派遣隊、駐屯地業務隊
が駐屯し、改良ホークの後継となる03式中距離地対
   空誘導弾
を運用して重要拠点の防空を担っている駐屯地です。平たく言えば、国境を勝手に越えてやって来る敵
   の航空機や巡航ミサイルをボコボコにして差し上げる・・・
と言う、3倍ジェットキンチョールみたいな部隊ですね。
    当日は0645に自宅のある大阪市内を出発し、途中時間調整の為の小休止を挟みつつ0830に青野原駐屯地に
   到着です。駐屯地脇の官舎入口から駐車場に入りますが、えらく分かりづらいところが一般駐車場になっていま
   すね。係の隊員さんがいなければそれと気づかないであろう、ステルス駐車場であります。駐車場のフェンスの向
   こうには車輛がずらりと並んでいて、その奥には観閲壇らしき紅白の鯨幕が見えました。


    しばらく時間を潰して、0900開門。結局駐車場側の入り口には殆ど人は集まらず、なんだか拍子抜けした気分
   でホテホテと式典会場に向かって歩きます。正門の方からの人の波もパラパラ、といった程度で、のんびり歩き
   ながらも一般用のイス席最前列を確保。業務用の白テントが幾つも併設されていて、今日は日差しがきつそうだ
   から有り難いなあ。


    それでは部隊入場が始まるまでの30分間、駐屯地内をウロウロと練り歩くとしましょう。式典会場の奥には早く
   
155oFH−70榴弾砲が2門展開していて、祝砲を2発発射。駐屯地の周囲に住宅が殆ど無いので、朝っぱら
   からかなり大胆な事をやってくれるのが面白いなあ。
    式典会場の横には巨大なOD色のテントが張ってあり、ちょっとした教室位のスペースがあります。内部は鉄骨
   のフレームが組まれていて天井も高く、最早テントと言っていいのか分からないレベルです。内部では装備品の展
   示と広報写真展、PRビデオの上映会が行われていました。


    89式小銃、64式小銃、84o無反動砲化学防護衣に混じって、隊員用の寝袋が展示されているのが珍しい
   なあ。展開してからの待機時間が長くなりがちな、高射特科らしい展示内容です。


    さて、次は屋台の方へ行ってみましょう。焼き鳥、フライドポテト、揚げたこ焼き、焼きそば、たません、ラーメン
   等が軒を連ねていますが、どこもまだ準備中の模様。気になる焼きそばの屋台は10時からの開店で、うーん、
   ロに記念式典と重なる
なあ。
    ここで顔見知りのマニアの方を見かけたので挨拶したのですが、よく見ると似た顔の別の人でした…。何食わ
   ぬ顔でそのままやり過ごしてしまいましたが、あちゃー、やってしもうた…。


    厚生センター内のPXはまだ開門直後とあって空いていますが、特にめぼしいものは無し。ワゴンには『防人の
   誉カレー』
『ホーク煎餅』が山積みになっていました。
    トイレの前には体脂肪計や血圧計等が並んだ健康コーナーがあり、懐かしのエキスパンダーが置いてあったの
   には驚きです。う−ん、久しぶりに見たなエキスパンダー。これって本当に効果あるんでしょうか。


    厚生センターの外には、お馴染みのエアドーム式滑り台がありました。よく見ると、87式自走高射機関砲の形
   をしていますね。レーダーの所とかかなり細かく作り込んでいて、よく出来ているなあ。


    それより、『子供専用の遊具です』という注意書きがあるにも関わらず、使用されている写真はどう見ても大人
   なんですが…。この人達も子供なのか(笑)?凄く楽しそうではありますが。


    ふと見ると、青野原病院が何故かテントを出しています。救護所ではなく白衣体験試着などのイベントを行って
   いて、肺年齢測定を行う機械も持ち込まれています。非喫煙者の私は自信満々で測定に臨む事に。無線機のマ
   イクみたいな端末に思い切り息を吹きつける仕組みなのですが、毎日坂道の自転車通勤をこなしているので結
   構いい数字が出るのでは…と思っていたら、なんと『66歳』という判定が…。
    えー…俺の肺って、66歳…なの?どどどどどこか悪いんでしょうかと怯えながら係の人に尋ねますが、涼しい
   顔で、
    「んー、現時点では特に問題ありませんよ」
    との事。花も恥じらう40歳なのに66歳の肺をもつ俺のどこが問題無しなんだよう!もう一度チャレンジさせて
   下さいと言いそうになりましたが、何だかとても見苦しい気がして、すごすごと引き下がってしまいました。


    そうか…66歳だったのか、俺…じゃあ年金くれよ!!(ちゃんと払ってます)
    朝食を抜いてきた上にいきなり気分がささくれ立ってしまったので、気を取り直すべく焼き鳥を2本購入。炭火で
   焙られた焼き鳥は外側はカリカリなのに中はジューシーで、66歳のヨボヨボの私の傷ついたハートを慰めてくれま
   した。


    正門近くの広場には、高射部隊の試作品車輛の野外展示が行われていました。なかなかお目にかかる機会の
   無い珍しい装備品だと思いますが、高射特科の装備品と言うものをあまり知らないので、そのレアさ加減が今ひ
   とつピンと来ない
のが残念と言うか申し訳ないというか。
    再び屋台広場に戻ります。出来ればもう一品腹に入れておきたいなあ。あ、この『さんちゃんラーメン』、コレ行
   っときましょう。出て来たさんちゃんラーメンは、いかにも昔風のあっさりした色合いの醤油ラーメン。具は焼き豚、
   青ネギ、もやし
とごくシンプルで、スープに軽く浮いている油滴もスッキリ透明なのが美しい。これはコショウが合い
   そうだなあ。
    一口食べてみると、ほほう、期待を裏切らない伝統的な醤油ラーメンですね。背脂だのWスープだの醤油とんこ
   つだのと何かと凝り過ぎな今どきのラーメンっぽくないラーメンだったので、懐かしくも美味しく頂けました。


    さて、ようやくお腹も落ち着きました。野外売店通りの前には、部隊入場を前にした隊員さんが整列を始めてい
   ます。私もそろそろ確保した拠点に戻るとしましょう。


    しばらくすると、部隊の入場が始まりました。先ずは千僧駐屯地から参加の第3音楽隊を先頭に、青野原駐屯
   地に所在する各部隊
が続々と入場。


    観閲部隊指揮官を務めるのは、第8高射特科群副群長を務める二等陸佐。続いて本式典の執行者である、
   8高射特科群群長兼ねて青野原駐屯地司令である宮本一等陸佐
が、黒塗りの業務車でやってきました。
    さらに国旗が入場し、来場者一同も起立。部隊は国旗に敬礼。


    執行者による部隊観閲の後は、式辞が披露されました。その中で第8高射特科群群長は、『国の最後の砦であ
   る陸上自衛隊』『地域の皆様からより一層信頼される駐屯地たれ』
の2点を強調されていました。


    続いて来賓祝辞、来賓紹介、感謝状受賞者紹介、祝電披露等が粛々と行われ、最後は
    「観閲行進のー体勢を取れー!」
    の号令と共に部隊は解散。この後の観閲行進の準備に取り掛かります。


    伊丹市千僧駐屯地からやってきた第3特殊武器防護隊除染車3型が、カラカラに乾いた式典会場に散水を
   実施。この車両は昨年の東北大震災の復興支援に於いて、放射性物質に汚染された地域の除染のみならず、
   沿岸地域での消毒作業
も担当して伝染病の発生を未然に食い止めたとの事。改めて頭が下がる思いです。ま
   だ被災地は復興の足がかりすら掴めていない状況ですが、あの極限状況の中、よく頑張ってくれたなあ。


    そして観閲行進が始まりました。まずは第3音楽隊が、お馴染みの行進曲『大空』を演奏しながら入場開始。続
   いて青野原駐屯地の警備担任地区にあたる市町村の旗が、高々と掲げられながら式典会場に入ってきました。


    そして当駐屯地の基幹部隊である、第8高射特科群の車輛が続々と登場。対空戦闘指揮装置を皮切りに、
   空レーダ装置、人命救助セット、救急車
と続きます。


    各中隊からは、主力装備である03式中距離地対空誘導弾が入場し、その巨大な車両を見せつけています。他
   にも03式中距離地対空誘導弾(以下中SAMと表記)とセットで運用される様々な車輛を持ち込んでの堂々の観
   閲行進を披露です。さして知識の無い私にはどれも同じような車両に見えますが、まさに見上げんばかりの巨大
   な車輛
なので、ものすごい迫力だなあ。


    ちなみに青野原に駐屯する第339高射中隊は米国で行われた対空実射訓練に参加し、命中合格の成果を挙
   げて堂々の帰国
を果たしたとの事。パチパチパチ。
    他にも搬送通信用の機材や、整備用の各機材が続々とやってきました。
    そして最後は、大阪府八尾駐屯地から参加のOH−6D観測ヘリUH−1J多用途ヘリが華を添えて、観閲行
   進を締め括りました。


    それにしても、最後の航空観閲以外は全て自前の装備品だけで行った観閲行進でしたね。地味と言えば地味
   なラインナップですが、私的には大いに満足でした。そりゃ余所から呼んできた戦車や装甲車が混じれば見栄え
   はしますが、駐屯地の特色が色濃く表れたという意味では、こっちの方がいい様な気がするなあ。何処に行って
   も同じ顔ぶれ…というのもつまらないですし。


    そして国旗が退場し、記念式典は以上で終了です。
    その後は第3音楽隊による音楽演奏が披露されました。曲目は『凱旋』『坂本九メドレー』『国民の象徴』の3曲。
   一曲目の『凱旋』は、陸上自衛隊創立50周年時に中央音楽隊に所属する一等陸曹が作曲したそうで、本当に色
   んな人材が揃ってるんですねえ。


    見事な演奏を披露した第3音楽隊は、大きな拍手に送られるようにして退場。入れ替わるようにして国立兵庫教
   育大のチアリーディング部
の人達が入場してきて、元気いっぱいのパフォーマンスを繰り広げます。
    その際にアナウンスで注意事項が伝達され、一般の写真撮影は禁止との事。なんでもチアリーディングの撮影
   は、著作権を侵害する行為にあたるそうです。へー、知らなかった。誤解されない様、レンズカバーをつけておき
   ます。
    最後はいよいよ訓練展示です。目の前にはバラキューダで擬装した業務用テントが運び込まれ、対抗部隊役
   務めると思しき雨衣姿の隊員さん達がやってきました。


    会場にはBGMが流れ、飛来したOH−6D観測ヘリが上空から対抗部隊の立て籠もる陣地を発見。すぐに後
   方の陸自本隊に報告します。
    本隊からは2輌の偵察オートが飛び出してきて、派手なジャンプやターンを披露しつつ敵陣近くまで斬り込み、
   威力偵察
を実施。他の駐屯地とは違って式典会場が白い砂利なので、太陽光が反射して視界がやけに眩しい
   なあ。


    続いて87式偵察警戒車も突入開始。まるで悪い子を探すナマハゲの様に、砲塔をくるくると回転させている
   が面白い。


    ここで対抗部隊も反撃を開始。パンパンと、乾いた空包音が晴れた空に鳴り響きます。対抗部隊の反撃の様
   子から敵戦力の規模を分析
した偵察隊は、ここで脱兎のごとく撤収。
    入れ替わる様に上空にはUH−1J多用途ヘリがやってきて、開いたカーゴドアからは4名のレンジャー隊員
   ロープ降下開始。残念ながら式典会場の向こう側に着地していたのでその様子は見えませんでしたが、4名のレ
   ンジャーは対抗部隊の後方に素早く回り込みます。


    さらに軽装甲機動車指揮通信車が突入してきて、対抗部隊との距離を詰めながら激しい銃撃戦を展開。後方
   ではこの後の小銃小隊による突撃を支援すべく、第3特科隊の155oFH−70榴弾砲が2門、着々と砲撃準備を
   整えています。


    そしてFH−70は砲撃開始。私のポジションからは残念ながら砲身の尖端しか見えませんでしたが、一瞬のオレ
   ンジ色の火球とともに轟音が鳴り響きます。
おお、写ったかな?


    砲弾は対抗部隊陣地の周囲に次々と着弾。怯んだ対抗部隊の反撃が止まった一瞬の隙をついて、陸自部隊
   は一気に前進。最後は軽装甲機動車から小銃小隊が飛び出して突撃をかけ、対抗部隊は散り散りになって逃
   げて行きました。


    以上で訓練展示前段は終了。引き続き、高射特科部隊が展開する後段が行われます。『M.I』のBGMが流れ
   る中、まずは部隊の先行班が陣地に進入。その誘導を受けて、中SAMの発射装置射撃用レーダー車輛、運
   搬装填装置
が次々と入場。どれも本当に巨大な車輛なので、戦車や装甲車とはまた違った迫力だなあ。


    私の目の前には、航空自衛隊饗庭野(あいばの)分屯地から参加のペトリオットが立ちはだかります。このペトリ
   オットを運用する第12高射隊は、4月に北朝鮮から発射された弾道ミサイルへの対処防衛のために、沖縄県石
   垣島に展開
した部隊だそうです。確か海自の輸送艦おおすみで現地に送り込んだんでしたっけ。


    ペトリオット発射機はすぐにトレーラから切り離され、キャニスターを佇立させて上空に迫りくる敵機を睨みつけ
   ています。
    さらに陣地そのものの防空を担う81式短距離地対空誘導弾93式近距離地対空誘導弾も続々と展開。軽装
   甲機動車や74式戦車が走り回る一般的な訓練展示とはまた違った、大掛かりで物々しい雰囲気に包まれます。
    射撃用レーダ装置は立ちあげた空中線をくるくると旋回させ、接近してくる敵航空機の捜索・捕捉・追随・識別を
   開始。


    運搬装填装置は、搭載している地対空誘導弾を射撃し終わった発射装置に対して、新たな誘導弾を装填する
   為のロボットアーム
を機動させています。言わば、走る予備弾倉ですね。巨大なアームの先端にはテレビカメラ
   
取り付けられていて、発射後の車両への再装填は全て自動化されているとの事。てっきり専門のオペレーターが
   操作するのかと思っていましたが、凄い事になっているんだなあ。


    ここで瀬戸内海方面より複数の敵航空機が接近、との情報が伝達され、部隊はすぐさま対処行動を開始。防空
   陣地には
サイレンが鳴り響き、BGMの効果もあって会場にはピリピリした空気が漂って来ました。
    「こちら小隊長!射撃準備完了!」
    低空を超高速で接近してきた敵航空機を射撃用レーダ装置が捕捉し、まずは一番射程の長いペトリオットが発
   射されました。シュゴー、という効果音が流れますが、BGMに紛れて聞こえにくいのがちょっと勿体ない。実際は
   もの凄い音がするんだろうなあ。


    敵航空機は見事撃墜されましたが、残存機がさらに接近して来ました。ここで準備を整えた中SAM発射機が誘
   導弾を発射。しばらくの沈黙の後に、レーダ装置が目標の消失を報告。撃墜を確認です。


    いやー、この、発射してから目標撃墜までに妙に長い時間があるのが、高射特科ならではですねえ。結果が分
   かるまでの間の、肌がヒリヒリするような現場の緊張感が伝わってくる様です。


    ここで別方向から侵入して来た敵航空機に対しては、より近距離での対処が可能な81式短距離地対空誘導弾
   
93式近距離地対空誘導弾が威力を発揮し、これも撃墜。さらに防空網をかいくぐって接近してきた敵ヘリコプタ
   ー
に対しては、待ちかまえていた対空機銃が銃弾の雨を浴びせて見事撃墜。敵航空勢力の壊滅に成功です。


    以上で訓練展示は終了。高射特科の訓練展示は初めて見ましたが、予想以上に迫力があってびっくりしました。
   
青野原駐屯地は最近まで訓練展示を行っていなかったという話を聞いていたのですが、BGMを上手く使って緊張
   感を演出
し、初めて見に来た一般見学者にもその任務の一端を分かりやすく説明して見せた、見事な訓練展示で
   した。

    さて、それでは焼きそばの屋台に向かいますが、なんと訓練展示の最中に売り切れてしまった模様。あっちゃー、
   もう売り切れとは…(涙)。


    その後は式典会場に展開した車輛装備品展示を見て回ります。先程の訓練展示でも驚いたのですが、03式中
   距離地対空誘導弾を運用するのに色んな支援車輛が必要なんですね。てっきり単体で迎撃を行うのかと思ってい
   ましたが、射撃用レーダ装置装填装置、射撃統制装置通信装置など、一つの基地に匹敵する様な大部隊
   す。さらにその陣地を守る短SAM近SAMも必要となるので、凄い規模なんですねえ。


    最後は駐屯地資料館を見学しようと思ったのですが、何故か開いていませんでした。うーん、残念。
    以上で青野原駐屯地を後にしました。折角ここまで来たのですから、高速に入る前に私の趣味の一つである
   元の市場およびスーパー巡り
をしようとJR青野原駅まで足を伸ばしたのですが、これがもう惚れ惚れする位に何
   も無い駅前
だったのでびっくりです。夜になったら、冗談抜きで真っ暗闇なんじゃないでしょうかこの一帯は。青野
   原の隊員さん達は一体どこで息抜きをしているんだろうか
と、余計な心配をしてしまいました。
    いやあ、それにしても久々に色々あった陸自イベントでありました。いきなりお前は66歳だ!と切り捨てられたり、
   知らない人に朗らかに挨拶してしまったり、焼きそばを食べ損ねたり、おまけに撮影した画像を誤って何枚か消去
   してしまったり…。
    まああちこちのイベントに参加していれば、そういう事もあるでしょう。あの日青野原で知らないオッサンにいきな
   り挨拶されて驚いておられた方
がこのHPをご覧になっていたら、斯様な次第でしたので気軽に忘れて頂ければ幸
   いです。
すみませんでした(笑)。


    さて次は、2週間あけて富山県新湊港で行われる護衛艦じんつう一般公開に参加です。富山県の艦長さん
   AA水兵さん
とお会いできるのも久しぶりだなあ。
    そろそろ梅雨のシーズンに入るので、いささか天候が気になりますが、2012シーズン前半戦もいよいよ佳境に
   入って来ました。
7月からは海自イベントが連発なので、今回の様なマヌケな失敗の無い様、気を引き締めて臨み
   たい
と思いました。




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