宇治駐屯地創立60周年記念行事

2011.10.23



    京都府宇治市に所在する陸上自衛隊宇治駐屯地の創立記念行事に行ってまいりました。宇治駐屯地には関西補給処本
   処
が置かれ、装備品の調達、補給、整備、入札、会計を一手に担う、まさに中部方面隊のロジスティックの要とも言うべき駐
   屯地であります。
    が、どうもその課せられた職責の重要度の割に地味な印象がぬぐえず、ネットで検索しても前年までのデータらしいデータ
   があまり見当たりません。今回の創立記念行事についても事前の告知どころか駐屯地のHPすら公開しておらず、初参加の
   私としては殆ど予備知識のないままのイベント参加となりました。
    当日早朝に最寄駅の京阪電鉄黄檗(おうばく)駅に到着。ホームに降りようとしたら電車とホームの間が40p位開いていて、
   危うく脚を突っ込みそうになりました。
周囲の人達はあせりまくる私を尻目にいとも当たり前のように下車していて、流石に京
   都は一見さんに手厳しいですねえ(泣)。

    それにしても宇治駐屯地、駅のまん前にあったので驚きです。先々週訪れた桂駐屯地も駅前すぐの交通至便ぶりでしたが、
   駅から正門までの距離で言えば宇治の圧勝です。


    電車の接続がよかったので、随分早く到着してしまいました。駐屯地正門付近には人も集まっておらず、しばらく駅周辺を
   ぶらつく事に。京阪とJRの踏切を越えた所には、黄檗新生市場という廃虚の様な市場通りがあったのですが、これがもう私
   の趣味にぴったりの強烈な物件で、思わず中に入って見入ってしまいました。日曜日の朝だからシャッターが降りている、と
   いう雰囲気じゃないですね、これ。中に入った途端に外界からのあらゆる感覚刺激が遮断される様な、時間の感覚までもが
   狂ってしまいそうな圧倒的な存在感。
思わぬところで思わぬお宝に遭遇でき、今日のイベント参加はもう成功したも同然であ
   ります。


    さて、そろそろ開門10分前です。駐屯地に戻りますが、正門前に並んでいるのは6人だけ。今日は鯖江や山口の駐屯地で
   も創立記念行事が行われていますし、浜松や小牧の航空祭も同日程だったなあ。かなり人出は分散されてしまったようですが、
   それにしてもこの時間でこの人数は驚きです。
    とりあえず列の最後尾につきますが、駅の方からは式服やスーツ姿の人達がやってきて、続々と駐屯地の中へ。全部来賓
   の人なのかな?なんだか凄い人数です。大企業の研修でも行われそうな雰囲気ですが、補給処という性格上、装備品や物
   品の納入業者の人達が招かれる事が多いのでしょうか。

    その後富山県から遠征して来られた艦長さんSAA水兵さんと合流し、0930開門。ぞろぞろと駐屯地内に入ります。駐屯
   地内の木々は紅葉が始まっていて、私の様な無粋者にも、なるほど秋の京都というのは雰囲気あるなあ…と思わせるものが
   ありました。
    PXの前には車輛が展示してあります。155o榴弾砲M1、74式自走105o榴弾砲、60式装甲車、60式自走106o無反動
   砲、
さらにはUH-1H、と、なかなかクラシックな雰囲気が漂うラインナップ。あ、向こうの方には61式戦車もあります。改めて
   見ても、現代の装備品とは隔絶した趣がありますね。


    それにしても、この60式自走106o無反動砲の性能諸元にあるスポッティングライフルって何なんでしょう?
    「ああ、無反動砲を撃つ前に、同軸線上にある12.7o機銃(M2重機関銃に非ず)で一発試射して、その着弾を確認して照
   準を修正してから無反動砲を撃つんですよ。弾道特性がほぼ同じなので使われてたみたいです」

    と、SAA水兵さん。へー、昔は随分のんびりした射撃風景だったんですね。それにしても、自分の無知識ぶりにはいつもな
   がら苦笑いを禁じえません(笑)。


    その後は本部庁舎裏の芝生広場へ。どうやらここが本日の記念式典会場らしいですが、もう気持ちいい位に人が居ません。
   一般見学者用のスペースもロープが一本張られただけで、適当に空いている所で見て下さい、という感じです。
    青い空に白い雲、緑の芝生に赤煉瓦の建物がなかなか絵になりますが、天気が良すぎてちょっと暑い位です。ロープ際は
   スカスカで、みんな奥の木陰に集まっているのには気が抜けてしまいます。先週の伊丹駐屯地が大混雑だったので、何だか
   膝カックンを喰らったような脱力感であります。


    後の方にはピクルス王子パセリちゃんがいましたが、よく見ると2人とも白目の所がドス黒く変色していて、ちょっと異様な
   雰囲気を醸し出しています。徹夜マージャンでボロ負けしたんでしょうか?それとも、本国からもう帰ってこなくていいからとか
   言われてしまったのでしょうか?

    しかしその顔色の割に、歩き方だけはやけにシャキシャキしていて、不気味度がさらに増しているのが何とも言えないなあ。


    お、部隊入場が始まりました。隊員の皆さんは全員制服姿で、これも補給処ならではの光景です。所々に警衛の隊員さんが
   立っていますが、その人達だけは戦闘服姿でした。
    式典会場には制服姿の隊員さんが並び、沢山の来賓の人達がパイプ椅子席を埋めていきます。しかしここまで一般見学者
   が少ない記念式典と言うのも初めて見ました。
割合で言うと、来賓>隊員さん>見学者…といった具合になりますが、これっ
   て余所の駐屯地創立記念行事と全く逆のパターンですね。


    本日の観閲部隊指揮官を務めるのは、関西補給処副処長の一等陸佐。さて、執行者である処長の入場は…と待っていた
   のに、いつの間にか処長が観閲席にいて驚きました。てっきり業務車で入場かと思いきや、観閲壇とイス席の間から忍者の
   様に滑り込んだ模様。
うーん、こういう所はもっと格式ばってもいいと思うのですが…。


    その後は国旗登壇、執行者式辞。しかしよく見ると、整列している隊員さんの後方に、制服ではないスーツ姿の人達が結構
   いますね。外部の人なのかな?
    傍らにいた隊員さんに尋ねてみると、自衛官ではなく防衛省からの事務官の人達だそうです。物品や数字、金銭に直接か
   かわる部署なので、色んな人がいるんですね。


    さて、ここでちょっと屋台を覗いてみましょう。まだ人がまばらな屋台テント群ですが、食べ物系はどうやら焼きそばと焼き鳥
   だけ。
もうちょっと京都ならではの特色のある屋台を見たかった様な気がしますが、この人の入りを見ているとそう贅沢も言え
   そうにありません。
    ここで艦長さんに焼きそばを御馳走になってしまいました。金沢でも御馳走になりましたし、全く恐縮であります。しかしこの、
   式典を途中で抜け出して食べる駐屯地焼きそばと言うのも味わいがありますね。授業中に早弁していた中学生時代を思い出
   してしまいました。


    さて、今度は来賓席の後方から式典を見てみます。うーん、式典の最中に自由にポジションを選んで移動できる、というのも
   新鮮だなあ。今日は朝から秋とは思えない陽射しなので、スーツ姿の来賓の人達は上着を脱いでもまだ暑そう。しかし隊員さ
   んたちは涼しい顔でビシッと直立不動なんですから、流石です。


    その後は装備品展示会場へ。いつもは式典終了まで会場に張り付いている私ですが、今日はちょっと違うペースなので面
   白いなあ。広場には各種車両迫撃砲類、そして災害救助装備品が並んでいるのがご時世ですね。スーツの上着を脱いだ
   来賓の人が珍しそうに01式軽対戦車誘導弾を担いでいますが、この人も式典を抜け出して来たのでしょうか(笑)。
    MINIMI、89式小銃、対人狙撃銃の向こうには、放射能線量計防護マスク、簡易防護服等が展示してありました。宇治
   駐屯地からも、それらの装備品が東北に持ち込まれたのでしょうか。


    展示車両は、96式装輪装甲車、軽装甲機動車、93式近距離地対空誘導弾、81式短距離地対空誘導弾、FH−70榴弾
   砲、
そして74式戦車。短SAMは運転席に座れましたが、発射機を操作するのは別のユニットなので、運転席は極めて簡素
   なトラックそのものでした。


    さて、今度はPXへ行ってみます。途中に駐屯地内の地図が掲示してありましたが、余所の駐屯地とは随分様子が違い、沢
   山の小さな建物がそれぞれに独立して散らばっています。この辺は多種多様な物品の管理を行う補給処ならではなのかなあ。
    隊員さん達が暮らす生活隊舎の他に、洗濯工場、被服工場、メッキ工場、化学整備工場、木工所、燃料試験室というもの
   まであります。倉庫類も多種多様で、私的にはこの糧食倉庫というのが一番気になりますね。
    ちなみに駐屯地内を南北に延びる幾つかの通りには『1条通り』『2条通り』といった名前がつけられ、この辺も京都らしい美
   意識ですねえ。


    厚生センターのPX入口にはバナナ、ミカン、トマトがザル売りされていますが、これは誰に向けて売っているんでしょう。よく
   見るとパプリカも売っていますが、これを隊内で買ってどうするんだろう…。
    売店の規模はさほど大きくありませんが、駐屯地周囲にコンビニが見当たらなかったせいか、お菓子やカップめん、レトルト
   カレーの充実ぶりが印象的でした。

    何かネタになるブツは…と見ていると、お、陸上玄米茶というシロモノを発見!陸自らしくはありますが、また何で玄米茶…
   と思ったら、特上玄米茶の見間違いでした。特上と銘打ってあるのに沢山入って350円、という低価格ぶりですが、まあ玄米
   茶なので、高級化にも限度がありますね。他にも玉露なんかもあるのが、やっぱり京都らしいなあ。


    その後は駐屯地資料館である彰史館を見学。いかにも歴史を感じさせる時代がかった内装がいい感じで、展示物は京都
   と宇治駐屯地の歴史に関するものが並んでいます。が、十手が展示してあるのには驚きました。いやいやいやいや、遡りす
   ぎです京都。


    彰史館を出ると、周囲には古い木造の隊舎が多くてドキドキします。いやー、私好きなんですよ、こういうの。余所の駐屯地
   だと一つか二つなのですが、宇治はあっちこっちにあるので嬉しいなあ。
    古い木造隊舎同士の間にはこれまた古い渡り廊下がありますが、ここなんかはモロに山奥のお寺の雰囲気ですね。他に
   も村の集会所風山奥の分教場風の隊舎が多く、痛んで外れかけた雨どいに積もった落ち葉が腐葉土化して、そこから樹
   木の芽が生えているところなんかは、ちょっとやそっとでは出ない味があります。


    何て言うんですかね、山奥の廃校に全裸で忍び込んだ時の様な妙なドキドキ感というか(いや、やったことないですけど)、
   分の中の記憶にない記憶を掘り起こされるような、現実感と非現実感の境目が無くなって行くような不思議な感覚
に囚われて
   しまいました。
    続いては彰史館展望塔。レンガ造りの5階建ての塔の屋上が展望台になっていて、なんだか映画『帝都物語』に出て来そう
   な独特の空気
が堪りませんね。外套を着た怖いアゴの人が出てきたらどうしよう。
    内部は鉄骨で組んだ階段が各階らせん状になっていて、敵を1人ずつ倒さないと上の階に行けなさそうな感じですが、まあ
   そんなこともなく無事最上階に到着。地上6階に相当する展望塔ですが、周囲に背の高い建物が無いので見晴らしがいいで
   すね。残念ながら内部および外の風景の撮影は禁止でしたが、遠くの方には比叡山が見えました。


    その後は赤レンガ隊舎を見て歩きます。所々に白ペンキの剥げた木造隊舎もあり、割れた窓ガラスをベニヤ板で補修して
   あるところなんかは、もうきゅんときますね。私的に。

    外来宿舎も赤レンガでステキですが、各部屋の名前が『比叡』『平安』『洛南』『朱雀』『光源氏』と言うのがこれまた(笑)。
    ふと側溝を見ると、豊富な水の中に沢山のグッピーが群れていました。なんでまたこんな所に?京都の厳しい冬をどうやっ
   て越してるんでしょう?さらに奥の方にはザリガニまで何匹もいて、一体どういう生態系なのか滅茶苦茶気になりました。


    最後はもう一度赤レンガ隊舎と古い木造隊舎を見て回り、宇治駐屯地を後にしました。観閲行進や訓練展示こそありませ
   んでしたが、初めて訪れた宇治駐屯地、私の趣味の琴線に触れるものが多くて非常に楽しめました。
    その後はSAA水兵さんの先導で京都市内の模型店とミリタリーショップを巡りました。私はこの手の店に殆ど縁が無いので
   すが、いやあミリタリー系の趣味にも色んな分野があるんですねえ。


    さて次回は二週間あけて、いよいよ2011シーズン後半のヤマともいうべき兵庫県は姫路駐屯地の創立記念行事です。
   練展示はFH−70榴弾砲の撃ちまくりが強烈ですし、屋台の食べ物はどれも折り紙つき。
さらには最早姫路のメインイベント
   となった感のある姫路レンジャー劇場も行われます。今年は60周年と言う節目の年であり、例年以上に色々と力を入れるそ
   うなので、今から楽しみで仕方ありません。期待しています駒井3曹!




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