補給艦とわだ一般公開in姫路港

2011.07.18



    兵庫県姫路港で行われた補給艦とわだの一般公開に行ってまいりました。今年は春先の東北大震災や私の仕事の都合、
   天候不順などが重なって、なかなかイベントに参加する事が出来なかったのですが、7月半ばにしてようやく今年一発目のイ
   ベント参加となりました。
    本日公開される補給艦とわだは、護衛艦隊のさらなる機動性向上を目的に建造された艦で、行動中の艦艇に燃料や真水、
   生鮮食料、武器弾薬等を速やかに補給する為の能力が備わっています。
特にインド洋での国際貢献活動では、航行中の他
   国艦艇に対して寸分の狂いもない洋上給油を行い、海上自衛隊の練度の高さを見せたという影の功労者
でもあります。使い
   古された表現ですが、まさに“縁の下のアレクサンダー・カレリン”と言っても過言ではないでしょう(嫌な家だな…)。
    当日は九州に接近する台風6号の影響で早朝から雨が降り続き、うーん、初っ端からこれか…とため息をつきながらJR姫
   路駅に到着です。ここから姫路港まではバスで移動。今回の一般公開は、姫路ふれあいフェスティバルというイベントの一環
   として行われるのですが、降りしきる雨の下のイベント広場は閑散としていて、BGMのゴンチチがやるせなさに拍車をかけて
   います。埠頭に向けて歩いて行くと、あ、補給艦とわだの姿が見えました!


    いやー、流石にデカイですね。基準排水量は8100dと、おおすみ型輸送艦よりもやや小さいですが、艦橋構造物や前甲
   板のデリックポストに上背があるので、排水量以上に大きく見えるなあ。

    とりあえず乗艦受付テントの最後尾につきますが、どうやら乗艦規制を行っているらしく、なかなか前に進めません。その間
   も雨は降り続き、徐々に風も出て来たので横殴りの風雨にさらされます。
    埠頭では陸自車両がずらりと展示されていますが、隊員さんは戦闘服をずぶぬれにさせながら展示の準備を進めています。
   幸い気温は低くありませんが、慣れているとは言え大変だなあ。
    15分程待って乗艦OKのサインが出て、いよいよ補給艦とわだに初乗艦!乾舷が高いので舷梯も長く、その上舷梯の歩板
   が妙に丸っこい形なので、慣れていないと歩きにくい事この上無しです。まあこの艦の場合、補給品を満載した時とカラ荷の時
   では喫水が大きく変わり、舷梯の角度が一定しないのでどうしてもこういう形状の歩板にならざるを得ない
のでしょうね。
    と言う訳で、補給艦とわだへの第一歩。まずは艦橋前の通路を左舷から右舷に回りますが、前甲板には巨大なウインチやク
   レーン、ケーブル類をまとめたドラム等
が所狭しと並んでいて、艦艇の甲板にいるというよりも工場の中にいる様な気分です。
   なんかこう、いい歳してかくれんぼとかやりたくなりますね。


    右舷の扉から艦内に入ります。ラッタルを一層分降りたところは、どうやら補給物資を保管しておくための広大な倉庫区画
   しく、車両や航空機を積み込むおおすみ型ほど天井は高くありませんが、それでもかなり広々としています。
    艦の両側は広い通路になっていて、中央部の倉庫との間は、跳ね上げ式の巨大な防水隔壁で区切られています。


    ふと甲板を見ると、軌条の様なミゾがありました。飛行甲板にあるベアトラップ用のレールみたいだなあ。傍にいた隊員さん
   に尋ねると、
    「ああ、これはあそこにある作業車両用のレールですよ。艦の左右両側には前後に走るレールがありまして、中央部に保管
   してある物品を効率よく運ぶためのものなんです。」

    なるほど、隊員さんの指さす方向には、黄色い作業車両が置いてあります。どうやら体験試乗が行われているらしく、沢山の
   子供達が集まっていました。
    作業車両自体はかなり特殊な造りで、運転席は正面を向いているのにリフトの部分は90度横向きになっていて、艦内という
   特殊な環境で効率よく運用できる仕組みになっています。四角く黄色い大きな車体は実にパワフルそうで、なんだか『エイリア
   ン2』に出て来たパワーローダーみたいでカッコイイなあ。


    薄暗い倉庫区画のあちこちでは、手旗信号体験ロープ結索体験、艦内通信で使用する無電池電話の通信体験などの催
   しものが行われていて、海の日に見学に来た子供達が実に楽しそうに隊員さん達と触れ合っています。
    右舷側の通路に出ますが、うーん、なんだか艦艇の中にいる気がしませんね。地下駐車場というか、地下鉄のトンネルの中
   にいる様な気分です。


    ふと足元を見ると、甲板の一部がベルトコンベアー状になっています。黒いゴム板でできたベルトは前後に3分割されていて、
   動く歩道みたいになっていました。傍にいた隊員さんに尋ねてみると、
    「はい、これ自体がベルトコンベアーになってまして、3つのうちの中央のベルトが、そのまま上の甲板に繋がるエレベーター
   になってます。で、上の甲板から運び込まれた物資がそのまま左右のベルトと連動して、滞ることなく振り分けられる、という仕
   組みですね」

    へー、上手く出来てるんだなあ。手際良く作業すれば、殆どエレベーターを止めることなく物品を艦内各所に流せるとの事。
   地味ながら、非常に面白い補給艦ならではの装備ですね。


    艦尾方向に向かうと、食料品を保存する為の巨大な冷凍冷蔵庫が公開されていました。異様にだだっ広い内部には、巨大
   なラックが自動給弾装置のように配置され、ここも非常に効率よく物資の出し入れが出来るようになっています。なんというか、
   工場をそのまま丸ごと冷蔵庫にしてしまったみたいなスケールだなあ。
扉も異様に頑丈で、まるで銀行の金庫みたいです。


    ちなみに先の東北大震災では、宮城県沖で懸命の救助捜索活動を展開した海自艦艇を支える為に、何と25200人分の
   食料を積み込んでフル回転していたそうです。
すごいなあ。インド洋に派遣された際も、艦や隊員の『腹減った、喉が渇いた、
   アレが足りない、コレが足りない』
という要求に見事に応えてみせた事から、補給艦が“おふくろさん”と呼ばれていたというの
   も頷けますね。


    その後は後部にある飛行甲板へ。発着スポットは一箇所だけですが、大型ヘリによる輸送も出来るよう、かなり広々としてい
   ます。ちょっとした公園位のスペースがあるので、これなら陸自のCH−47でも余裕で運用できそう。


    続いて艦内へ。冷水器の横には立派な花束が飾られてあり、殺風景な艦内にほんのりとした潤いを与えているのが微笑まし
   いなあ。でもよく見ると、これって造花なんですね。すごくよく出来ているので、ぱっと見では気付きませんでした。
    その隣の部屋には、『先任海曹室』と書かれた小さな表札が。どうせならもっと、道場みたいな重々しい看板にすればいいの
   に
と思いましたが、まあ威圧感を与えるだけが先任の仕事ではありませんし。その職責の重さは変わらなくとも、求められるも
   のは時代によって微妙に変化していくのかもしれませんね。


    艦橋構造物の後部から、ラッタルを上がって旗甲板へ。まず目に入ったのが、M2重機関銃をとりつける防弾板つきの架台
   ですが、その前に積み上げられた土嚢が実にものものしいなあ。
    旗甲板とツライチになっているウイングはとても広く、チャフロケット発射機も並んでいるのに実に広々として開放的。あー、こ
   んな場所で海を見ながら仕事が出来るのは、なんだか羨ましいなあ。まあ、実際はそんなのんきな仕事ではないとは思います
   が。


    さて、いよいよ艦橋へ。おお、艦の横幅があるだけあって、実に広々とした艦橋ですね。艦長席の前には、艦長の識別帽と鉄
   帽が展示されてありました。
    巨大な艦の割には舵輪はごく小さく、こんなのをくるくる回すだけでこの巨艦が動く、というのが何だか不思議。速力指示機も
   古いシンプルな造りで、いい雰囲気だなあ。


    しかし気になるのが、艦橋内のあちこちにある『ようこそ、とわだへ!とわだ猛虎会』という掲示物です。阪神ファン?
    隣にいた幹部の方に尋ねてみると、どうやら艦橋に詰めている阪神ファンで作った集まりだそうですが、とわだって、確か
   島県の呉所属
だったんでは…。
    「そうなんですよー、おかげでカープファンが多くて多くて…」
    なるほど、で、せめてささやかな(全然ささやかじゃないけど)抵抗をしている、と。今の所構成員は3人だけ、という小所帯だ
   そうですが、こういうのって集団的自衛権ってやつなのかなあ。ところで、隊員さんはどこのファンなんですか?
    「もちろん阪神ファンです!」
    あ、会員さんだったんですね(笑)。それにしても、わざわざ阪神の試合の日程表まで掲示する事はないでしょうに(笑)。でも、
   私物の持ち込みが制限される中、せめて大事に大事にとってある日程表だけでも飾ろうという隊員さんのいじらしい阪神愛
   は、ちょっと胸を打たれるものがありました。


    艦橋の一角にはラッパ吹奏体験コーナーがあり、隊員さんが見事なラッパを披露しています。何人かの子供も負けじとラッパ
   に挑戦していますが、顔を真っ赤にしても妖怪人間ベムのBGMみたいな音しか出ず、そのたびに笑いが沸き起こっていました。


    その後は艦橋後方のラッタルを降りて、一層下の補給管制室へ。ここで甲板作業を監督しつつ、燃料や水、物品の補給を
   コントロールする模様。
    次は司令室。艦長室と同じ作りになっているらしく、シンプルながらもゆったりとしたソファや絵画が置いてあるのは、それだ
   け艦外からの来客が多いと言う事なのでしょう。


    さらにラッタルを降りて行くと、大量のDVDソフトを収納したキャビネットがありました。どうしても長期航海が多くなる艦だけ
   に、こういったささやかな娯楽は充実させておかないと。キャビネットには『保管庫 ビデオカセット 性区:B』とちゃんと物品タ
   グが貼りつけてありますが、性区:Bというのが微妙に気になります。うぬぬ、ほのかにエロDVDのにほひがするなあ。もしか
   して、隊員さんの中にAVソムリエがいて、属性別にちゃんと管理してくれているんでしょうか。さすがだなあ…と思いましたが、
   中身は普通の洋画中心のラインナップ。あれ?
    ひょっとしたら生活居住区、の略なんでしょうか。でも、それだと性区じゃなくて生区だよなあ。うーん、謎です。


    科員食堂の前には、今も東北の被災地で汗を流す隊員さんに全国からよせられた、沢山の感謝と激励のメッセージが掲示
   してありました。
ここに貼り出されてあるのはほんのごく一部ですが、こうして国民の感謝と敬意が現場の隊員さん達に伝わる
   のはとてもいい事ですし、その職務の崇高さが国民に理解されつつある、というのもとてもいい事ですね。ただそれが、多くの
   人々の途方もない痛みをも伴ってしまっている
事が、どうにも悲しくやりきれないとしか言いようがありません…。
    科員食堂の壁には給養員達が作った食事の写真が掲示してあり、どれも本当に美味しそう。いいなあ、食べてみたいなあ。


    最後は再び後甲板に出て、舷門の隊員さんにお礼を告げて上陸。いやあ、初めて見た補給艦とわだ、実に興味深い艦でし
   たね。最後は艦尾を撮影して、今年一発目の艦艇一般公開を締め括りました。朝から降り続いていた雨は、いつの間にか止
   んでいました。


    埠頭に展示してある陸自車両にも多くの人が押し寄せ、興味深そうに眺めています。偵察オート、高機動車、指揮通信車、
   FH−70榴弾砲、81式短距離地対空誘導弾、
と、艦艇イベントにしてはなかなか豪華なラインナップ。


    それより、埠頭の片隅に止めてある7dトラックが気になるなあ。恐らくFH−70榴弾砲を牽引して来たのでしょうけど、あれ
   も立派な装備品なんだから、いっしょに展示してあげればいいのに。


    さて、そろそろお昼前という事で、お腹が減ってまいりました。幸いイベント広場の屋台の方も賑わってきているみたいです
   し、何か食べて帰りましょう!
    まずは姫路名物『すじこんチャンポン焼き』。初めて聞く食べ物ですが、うーん、何じゃこれは。どう見てもただの焼きそば
   すが、よく見ると麺の太さがばらばらというか滅茶苦茶というか。これは中華そばうどん?ああ、そう言う意味のちゃんぽん
   なのか。てっきり焼きラーメン的なちゃんぽんを想像していたのですが、なんというか、普通に焼きそばでいいんじゃないのか
   という突っ込みは駄目なんでしょうか(笑)。
自炊をした事がない初一人暮らしの大学生が作った料理みたいですが、それでも
   この野放図なパワーというか、勢い任せのノリみたいなのは感じますね。なんだかんだ言っても鉄板で焦げたソースの香りが
   たまらなく、結構美味しく頂きました。


    特設ステージでは、怪しい催し物が行われています。ネコの扮装をした妙な一団の中に、巨大な大福モチのような物体が、
   ノゾノゾと蠢いていました。これが姫路城のマスコットである『しろまるひめ』だそうですが、なかなかカワイイなあ。


    さて、まだお腹には余裕があるので、もう一品行っときましょう。次は高砂名物『にくてん』です。それが何なのか確認せずに
   食べる所が、こういうご当地B級グルメの行き当たりばったり的醍醐味というか私のちょいM癖なのですが、出て来たブツは、
   どこからどう見てもお好み焼きです。
    とりあえず食べてみますが、うーん、やっぱりただのお好み焼きです。いや、なんだこのゴロっとしたのは。これ…ジャガイモ
   ?お好み焼きにジャガイモ?ななななんじゃこれは。

    頭の中を「?」で一杯にしながら貰ったパンフレットを見てみると、どうやら兵庫県高砂近辺では、昔からお好み焼きの事を
   「にくてん」と呼んでいて、おでんから流用した牛スジとコンニャク、ジャガイモが入っているのが特徴だそうです。
うーん、じゃあ
   やっぱりお好み焼きだろコレ…という突っ込みもナシですね(笑)。にくてんという言葉の響きから、豚肉入りの天ぷらみたいな
   のを想像していたので、試合開始早々にカウンターの胴廻し回転蹴りをモロに喰らってしまった様な気分でした。


    まあ、これもご当地屋台グルメの醍醐味みたいなもんだよなあ、と自分を慰めつつ、ジャガイモ入りお好み焼きという超カー
   ボン食
を平らげました。さすがにお腹いっぱいであります。
    ステージでは先程からの怪しい踊りが続いていて、いつの間にか観客席から引っ張り出された子供達が参加しています、そ
   の中に一人だけ、ものすごく嫌そうな表情で踊りを拒否している女の子がいて、思わず笑ってしまいました。
    この不気味な一団に混じってダンスを強要されている、そんな自分の理不尽な境遇を呪っているかのような表情がとても味
   わい深く、非常にイイ光景でした。
    ここでしろまるひめが、姫路城の改修工事を行いたいが、お金が無くてこまっちんぐ!と、急に愚痴りはじめました。きみは
   居酒屋のオッサンか!
いきなりのKY発言に思わず失笑してしまいましたが、私もしがない自営業者なので、気持ちはわかる
   なあ…。しろまるひめも呑気な顔をしていますが、お金に関しては色々と気苦労が絶えないようで、観客達に募金を呼び掛け
   ていました。


    最後はやけにカオスなものを見せられてしまいましたが、今年一発目のイベントとしては十分満足のいく内容でしたね。雨に
   は振り回されましたが、初めて見る補給艦とわだは見るもの全てが珍しく、姫路まで来た甲斐がありました。
    さて、来週はいよいよ待ちに待った舞鶴地方隊展示訓練です。乗艦券は無事確保出来ましたし、今年は富山からの艦長さ
   ん
SAA水兵さんと一緒に、護衛艦ちょうかいに乗り込みます。あとは天気の心配だけですね。自衛隊ファンとしてのシーズン
   が、ようやく開幕したような夏の一日でした。




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