桂駐屯地創立57周年記念行事

2011.10.02



    京都府桂駐屯地創立記念行事に行ってまいりました。桂駐屯地は京都府南西部に所在し、中部方面隊の補給、
   輸送、整備、通信、さらには不発弾処理等の後方及び全般的な支援
を行う重要拠点で、この部隊が正確に機能する
   事により他の部隊の円滑な作戦行動が可能になる
という、文字通りの縁の下の力持ち的な駐屯地であります。
    また、先の東日本大震災では現地に展開する部隊に対して重要な役割を果たし、人員や物資の輸送・整備のみな
   らず、被災者の入浴や食事といった生活面においてもきめ細やかな支援
を行った事で知られています。
    前々から一度訪れてみたい駐屯地の一つだったのですが、今年になってようやくその機会に恵まれ、当日は意気
   揚々と出発…の筈が寝過ごしてしまい、朝食を抜いて慌てて出発となりました…orz
    阪急電鉄京都線の洛西口(らくさいぐち)で下車すると、駅前の交差点の角がもう桂駐屯地です。正門のまん前を
   阪急電車が通っていて、まさに駅前駐屯地と言っても過言ではない交通至便ぶりです。


    到着したのは0850。既に開門されていましたが、京都の駐屯地というのはなんだか独特の雰囲気がありますね。
   昨年参加した大久保駐屯地もそうでしたが、正門横の警衛詰所がなんだか老舗旅館の新館風に見えます。こういう
   のも土地柄なんでしょうけど、面白いなあ。
    とりあえず人の波に乗って進んでいくと、式典会場と思しき広場に出ました。観閲壇の左右にパイプイスが並べられ、
   その両端が一般席になっていますが、流石に最前列は埋まっていますね。という訳で、まだスカスカの式典会場東側
   に拠点を築きます。

    既に時刻は0900を回っていますが人の数はまばらで、背後に並んでいる屋台テント群も割と小規模。岡山県三軒
   屋駐屯地
と似たような感じなのでしょうか。朝食を抜いて来たので、早くもお腹グーであります。
    すぐそばを小銃を下げた隊員さんが通ったのですが、ここはまだ64式小銃なんですね。最近は逆に新鮮に見える
   なあ、64式小銃。さて、屋台の前に、ちょっと駐屯地内を歩いてみましょう。


    敷地の一角には桂駐屯地給油所があり、ドラム缶が大量に転がっているのが普通のGSとは違いますね。給油時
   間は午前40分、午後60分
と、海自艦艇の酒保並の超短時間営業です。
    その奥は外来駐車場になっていましたが、そこに今津の第3戦車大隊からやってきた74式戦車がどんと鎮座して
   いました。うーん、成程、確かに外来車両には違いないなあ。


    その後は厚生センターの売店を見て回った後、いよいよ空腹が辛くなってきたので屋台へ向かいます。フランクフル
   ト、お面、スーパーボールすくい、ヨーヨー釣り、フライドポテト&串揚げ、唐揚げ串&ビーフカレー、と続きますが、
   きそばは無いのが残念です。
   
 とりあえずビーフカレーから行ってみます。屋台の隊員さんは実に陸自らしい体育会系社会人といった雰囲気で、テ
   ントの奥では野外炊具2号(改)で作られたカレーが湯気をあげています。300円払って一つ受領し、先ずは一口。


    うーん、何と言うか…特にどうという事も無いカレーですね。具はジャガイモ、ニンジン、タマネギといったトラディショ
   ナルなものですが、肉が一切れも入ってないし(涙)。福神漬がついてないのも、このぱっと見の華の無さの原因でし
   ょうか。味についてはそう悪くありませんが、市販のカレールーに何かの工夫を加えたという感じはありません。
    しかしこれは、食べた時間が悪かったかもしれません。まだ開門から間が無く、野外炊具2号(改)の釜いっぱいの
   カレーは、これから昼にかけて煮込みをかける段階だったのでしょう。言わば完成前のカレーを頂いてしまった様な
   もので、この時点でこのカレーの評価を云々というのは、ちょっと無理があるような気がしました。


    続いて串揚げの屋台に突入です。こちらでも野外炊具2号(改)が大活躍していて、どうやら注文が入るたびにタネ
   に衣をつけ、ツーオーダーで揚げている模様。おお、これはちょっと期待できそうですよ。
    売り子の隊員さんも朝からテンションを上げていて、この人達なら伊丹駐屯地や姫路駐屯地に行っても、十分タメ
   を張れる屋台を展開できそう。

    メニューは3種類で、オージービーフ若狭小浜産のシロイカ、あと国産豚バラ。取り敢えずシロイカと国産豚バラ
   にしましょう。しばらくして出て来た串揚げは、からりと軽く揚がっていてすごく美味しそう。ソースはウスターソース
   特製ソース
の2種類が用意され、どちらも“二度づけお断り”方式のペットボトルに入っています。この辺の特徴の出
   し方も、なかなかいいですね。


    という訳で、ウスターソースにつけたシロイカを一口。ほほう、冷凍モノをそのまま揚げたのとは全然違って、衣のカ
   リカリサクサクした歯応え
がいいですね。繊細さと獰猛さが何の違和感もなく両立していて実にイイ。シロイカの甘さと
   ウスターソースのスパイシーな風味もよく合っていて、これは美味しいなあ。
    もう一方の豚バラですが、脂肪の旨みが特製ソースの甘さとよく合っていて、これもかなりの出来栄え。しかしこの特
   製ソース、焼き肉のたれ風のコクがあってイケますね。隊員さんに尋ねてみると、やはり焼肉のたれをベースにして色
   々と工夫を加えているそうです。
    「お客さん!フライドポテトもいかがですかっ!」
    とサジェッションもしっかりしていて、数字(売上)に対する個々の隊員の意識の高さに驚かされます。国防のために
   血と汗を流す現場の人を、あからさまに軽視している現政権
下の自衛隊ですが、ちゃんと給料が出ているのかどうか
   ちょっと心配になってしまいました。


    その後は本部隊舎に寄ってトイレを済ませます。エントランスには様々な掲示物が貼り出してありますが、その中に
   新たに着隊した新隊員の2等陸士の紹介を兼ねた歓迎のポスターがありました。この辺りは、小回りの効く小所帯な
   らではの、行きとどいたアットホームな雰囲気があっていいですね。
    式典会場東側の拠点に戻ると、部隊の入場が始まりました。続々と行進してくる隊員さんの襟元のスカーフが、紫
   と藍色ばかり
なのが新鮮だなあ。後方支援隊補給処が中心の部隊編成ですが、その中でも特色を放っているのが
   第103不発弾処理隊です。


    それにしても、部隊整頓が行われている最中にも、駐屯地のすぐ前を阪急電車がガタゴト走って行くのが珍しいです
   ね。
三重の久居駐屯地も近鉄沿線にありましたが、桂駐屯地は本当に目と鼻の先です。
    そして各部隊長が入場した後は部隊の紹介が行われ、観閲部隊指揮官を務める後方支援隊副隊長の一等陸佐
   観閲官である駐屯地司令の一等陸佐が入場。部隊はつけ剣を行います。


    続いて国旗奉迎、捧げ銃、君が代吹奏と式典は粛々と執り行われ、観閲官による部隊観閲。
    観閲官式辞、国旗奉送、来賓祝辞、来賓紹介。その間も整列した隊員さん達は微動だにせず、静かながらも張りつ
   めた空気が漂っていました。


    以上で式典は終了。代わって兵庫県千僧駐屯地からの第3音楽隊が、いつもと変わらない見事な音楽演奏を披露
   してくれました。曲目は、『国民の象徴』『雷神』『ビルボード』の3曲。いかにも自衛隊らしい堂々たる演奏でしたが、も
   うちょっと子供向けのくだけた曲があってもいいですね。ある意味、小さな子供にこそ色々見て感じて貰いたいイベント
   なので、途中で退屈させない工夫も必要な気がします。


    大きな拍手に送られるようにして音楽隊が退場した後は、いよいよ訓練展示です。前段と後段に分けられて、前段
   は小銃と徒手による格闘展示が行われるとの事。会場北側の木陰で準備していた隊員さんが出て来て紹介が行わ
   れた後は、個々に小銃を構えた姿勢で前進開始。今回はWACも参加しての訓練展示になるらしく、なるほど遠くの方
   に女性自衛官の姿が見えます。


    まずは小銃を構えた状態での前回り受け身を披露。くるりと回転して受け身を取り、すぐに後方を警戒します。
    その後は銃剣をつけた状態を想定して、銃剣術の基本動作を一通り。キビキビとした動きに大きな気合の声が入り、
   少人数とは言え迫力があります。


    続いては徒手による格闘展示。突き、蹴り、肘、膝、と様々な基本動作を行いますが、着用している防弾ベストだけ
   でも5sもある
ので、見た目以上にキツそうだなあ。小銃も含めると、合計10sにもなってしまいます。


    そして1対1、1対2〜3、といった様々な状況を想定しながらの約束組手。ナイフで切りかかってきた敵を捌いて組
   み伏せ、奪ったナイフでとどめを刺していました。


    最後は会場中央に整列し、大きな掛け声を上げながら退場。観客席からは大きな拍手が贈られました。
    続いて訓練展示後段に入ります。展示開始を告げるラッパが鳴り響く中、12.7oM2重機関銃を搭載したパジェロ
   を先頭に、荷台に幌をかけた7tトラックが2輌入って来ました。


    すると上空に敵勢力のヘリコプターが侵入してきて、地上に展開する陸自部隊に攻撃を開始。M2重機関銃が応戦
   して敵ヘリを追い散らしますが、2輌の7tトラックは被弾した模様で、それぞれエンジンと後輪に大きなダメージを受け
   て動けなくなっています。
さらに部隊の中央には敵の残していった不発弾があり、非常に危険な状況に。


    ここで報告を受けた第103不発弾処理隊が駆けつけて不発弾の種類を確認し、すみやかに処理作業を開始。今回
   はロケットレンチという特殊な装置を使用し、不発弾本体から信管を抜き取りにかかります。


    素早く準備が整えられ、スイッチを押すとロケットレンチに仕掛けられた火薬が爆発。信管は無事に不発弾本体から
   切り離されました。
不発弾の無力化が確認された後は、被弾した2輌の7tトラックを救出すべく、後方支援隊の人員と
   物資を乗せたトラックと、3輌の重レッカが到着しました。


    まずはアウトリガーを展開した重レッカがアームを引きのばし、後輪に被弾した7tトラックの後部を軽々と持ち上げま
   す。破損した後輪はデフとシャフトごと取り外され、すぐに新しいユニットと交換。こうしている間にもいつ先程の敵ヘリが
   戻って来るか分からないので、まさに時間との闘いです。


    あっという間に後輪ユニットの交換を終えた7tトラックが降ろされている最中にも、エンジン部分に被弾して立ち往生
   している7tトラックの回収作業が行われています。
    車体への玉掛けが着々と行われ、2輌の重レッカがタイミングを合わせながら7tトラックを空中に持ち上げます。おお
   お、凄いなあ。オペレーターの呼吸がちょっとでもズレると、あっという間に7tトラックは真っ逆さまです。


    そして吊り下げられた7tトラックの下に特大型(とくおおがた)トレーラーがバックで進入。あんな巨大なトレーラーを、
   一発の切り返しもオツリも無しに、ピタリと定位置につけています。地上に分かりやすい目印がある訳でもないのに、す
   ごい技術だなあ。
    そして7tトラックは軽々とトレーラーに積載され、取りついた隊員さんがこれまたテキパキと固定作業に入ります。全
   ての作業が時計の秒針の如くカチカチと進む中、不発弾の処理と被弾した車輛の修理回収が終了。一気に現場から
   撤退です。


    重レッカの前で周囲を警戒していた隊員さんが、背中に背負った64式小銃をついっと動かして運転席に滑り込む様
   子
は、もう一連の完成された動作になっていて、いかにもプロらしいカッコ良さがありました。


    最後はM2重機関銃を搭載したパジェロを先頭に、トラックや重レッカが一斉に撤収。トラックの助手席や荷台にいる
   隊員さんが、最後まで小銃を構えて上空や周囲を警戒していました。


    いやー、地味ながらも桂駐屯地の特色を前面に出した、かなり見応えのある訓練展示でした。派手さはありませんが、
   秒刻みで命がけの救出作業を行う緊迫感はひしひしと伝わって来ましたね。この頃には上空を覆った雲が切れ始め、
   ようやく空が明るくなって来ました。
    さて、午後からの装備品展示まで、駐屯地内をぶらぶらしてみます。人でごった返す屋台通りを抜けると、あとは隊舎
   と工場、倉庫が立ち並ぶだけの殺風景な駐屯地。木々のあちこちが紅葉し始めていますが、今年は寒くなるのが早い
   ですね。

    広報資料館に入ってみます。駐屯地の歴史や不発弾処理隊の実績、沢山の感謝状や表彰状が所狭しと展示してあ
   りますが、床に大量に転がっている不発弾が桂駐屯地らしいなあ。
    敷地の端の方には、見事に朽ちかけたプレハブ小屋がありました。総務部主任倉庫とありますが、なんかもう扉を開
   けただけで倒壊してしまいそう
な、廃虚ヌーボーと言っても過言ではない超優良物件です。廃虚好きの私としては、
   オヤジが援交女子高生を舐め回すが如く観察したかった
のですが、傍を通った隊員さんがあからさまに不審者を見る
   目でこちらを眺めていた
ので、泣く泣く撤退の運びとなりました。トホホ。


    その後は正門脇にあった75式155o自走榴弾砲74式戦車の野外展示を見て回り、装備品展示の行われる式
   典会場に向かいます。
    着陸したばかりのUH−1Jはまだローターブレードをゆっくりと回転させていて、FH−70榴弾砲は砲身と脚部を展開
   させて準備を整えています。さらに指揮通信車、89式偵察警戒車、96式装輪装甲車、74式戦車、03式中距離地対
   空誘導弾、81式短距離地対空誘導弾
が次々と入場した後は、黄色いフォークリフトがでかいバスタブの様なものを運
   んで来ました。ターボチャージャーが2つついてますが…あ、74式戦車のエンジンユニットか!?


    しばらく待って各車両の展示準備が整い、グラウンドが開放されました。さっそく先程の74のエンジンを見に行きます。
   いやー、改めて見ても流石にでかいですね。クラッチなんかマンホールのフタみたいです。エンジン本体の前にはピス
   トンやコンロッド、クランクシャフトも展示してありますが、2000tクラスの乗用車のエンジンのピストンがサバ缶だと
   すると、74のピストンはまるでペンキ缶ぐらいありました。
クランクシャフトは競輪選手の大腿ぐらいありますし、こんな
   ものがエンジン内で流れるように動いているとはちょっと想像しにくいなあ。クランクケースも大型犬の小屋ぐらいありま
   すし。
    それにても何でこんなものが、と思ったのですが、傍にいた隊員さんに聞いてみると、今津から桂の補給支処整備部
   に輸送され、点検整備を受けたブツを展示してみました、との事でした。


    96式装輪装甲車89式偵察警戒車にはガラス製の風防がついています。指揮通信車の前面ガラスには防弾板が
   下ろされていて、なんだか凄味がありますね。
    その他各種誘導弾89式小銃、MINIMI、対人狙撃銃がずらりと展示され、実際に手にとってその重さに驚く人達
   が沢山居ました。そのうち一人がMINIMIの機関部を開けていましたが、内部は工場から卸したてのようにピカピカで、
   塵一つない整備っぷりに驚きです。


    装備品展示会場の正面では、福知山駐屯地から参加の福知山酒呑太鼓が演奏を開始。いかにも精強で鳴らしてい
   る第7普連
らしい勇壮かつ迫力に満ちた太鼓演奏ですが、力強過ぎて演奏中にバチが幾つも折れて吹っ飛んでいまし
   た(笑)。


    続いて第3音楽隊による音楽演奏。こちらは子供向けのぐっとくだけた曲目が多く、子供達がアニメソングに合わせ
   て楽しそうに歌っています。
    最後は03式中距離地対空誘導弾。この車両に限らない事ですが、以前から大型車両に感じていた疑問を隊員さん
   に訊いてみます。スペアタイヤが車輛上部に搭載されていますが、これをクレーンも無しに装着するのって大変そうな
   …というか、無理っぽく感じるんですけど…?
    「えー、一応スペアタイヤは積んでますけど、パンクしたとか言う話は聞いた事無いですね。交換自体は、車輛の四
   隅にアウトリガーがありますので、ギリギリの高さまで持ち上げればやってやれない事はないです。ただ、このタイヤと
   ホイールだけで250s位ありますので、車輛の上に積んである状態から地面に下ろすのは、確かに人力だとちょっと
   …きつそうですね(笑)」

    との事でした。


    今日はいきなり寝過ごしてしまうと言うアクシデントがありましたが、初参加の桂駐屯地、かなり楽しめましたね。式典
   の最中に晴れたり曇ったりがコロコロ変わるので撮影がややこしかったですが、訓練展示はここならではの特色がしっ
   かりと出ていたし、見応えがありました。

    ただ、装備品展示に桂駐屯地独自のものが少なかったかったのが残念と言えば残念ですね。戦車や装甲車は余所
   からの借り物ですし、後方支援や補給ならではの装備品をもっと見たかったような気がします。隊員さんが、
    「こんなものを展示しても、誰も喜ばないだろうなあ」
   と思うものを見たがる人間は、結構多い様な気がします(笑)。


    さて、呉地方隊展示訓練、桂駐屯地と始まった11年イベントシーズン後半戦ですが、来週は大阪府八尾市に所在
   する八尾駐屯地創立記念行事に参加する予定です。私の自宅から一番近い駐屯地なのですが、毎年土曜日に行わ
   れるので、仕事の絡みもあって参加できない事が多かったんですよね。久々の八尾駐屯地で、回転翼機を堪能してく
   る予定です。来週末の高く澄んだ秋空を期待しつつ、桂駐屯地を後にしました。




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