2010.04.29
さて、今回は昨年に引き続き2度目の参加となる、大阪府和泉市の信太山駐屯地創立記念行事です。信太山駐屯地に
は第37普通科連隊、第3後方支援大隊第2中隊、第3普通科直接支援中隊が所在しており、部隊編成は前回参加した三
重県の久居駐屯地とよく似ています。
今回は友人のHさんと一緒に参加したのですが、当日午前中の降水確率は50%。昨夜からの雨は明け方まで降り続き、
自宅を出発する前にはなんとか止みましたが、空はどんよりと曇ってまたいつ降り出してもおかしくない天候です。
途中で間違って別の電車に乗り込んだりしながら、どうにか0845には信太山駐屯地に到着。すでに開門されていて、駐屯
地内はGWまっただ中とあって沢山の人達で賑わっていました。
そしてこの頃から上空が劇的に明るくなり、明け方までの雨が嘘の様な見事な快晴。予想よりも早く前線が通過してくれた
模様です。むしろ地面が濡れている分砂埃が立たず、最高と言ってもいいコンディションとなりました。
訓練場横の観覧席は既に8割がた埋まっていますが、最上段の丁度良さそうな位置に場所を確保。式典の始まる1000ま
では駐屯地内を歩き回ります。例によって朝を抜いてきたので、お腹も減ってきました。
式典会場わきの用廃車輛の野外展示を眺めながら屋台広場に向かうと、すでにあちこちのテントから美味しそうな匂いが
漂っています。ここの隊員さんは相変わらず売り子が上手いですね。大きな声で巧みに客引きをしているのは昨年と同じ光
景です。
しかし本当に人が多いなあ。昨年はGW空けの日曜日での開催でしたが、今年は連休の真ん中なので、小さな子供を連
れた家族連れが目立ちます。何か航空祭に来ているみたい。
さて、毎回恒例の駐屯地屋台グルメですが、まずは昨年感動したつくね串焼きから行ってみましょう。おおぶりのつくねが
3個串に刺さって80円。テントの中では普段小銃や対戦車誘導弾を担いで走り回っている屈強な隊員さん達が、炭火を囲
んで小さな串をちまちまと焼いているのが何だかユーモラスです。1年ぶりの信太山のつくねはやっぱり美味しく、タレが炭
火で焦げるか焦げないかの焼き上がりも絶妙。つくねの挽き具合も滑らかな絹挽きで、あっという間に3本ペロリと平らげて
しまいました。
続いて昨年買い逃した焼きそばの屋台に突入。350円払ってフガフガと鼻息荒く焼きそばを受領しますが、これが見るか
らに貧相ながっくり焼きそばでちょっとショック。青海苔も削りカツオも紅生姜も無く、具は小さなキャベツとニンジンがちょっ
とだけ。しかもおまけに見事なまでに冷めきっています。
味ももうどうしようもない位に悲しみに満ちた焼きそばで、この1年間引きずってきた昨年の食べ損ねの怨念は一体どう
すればいいんだ、と茫然としてしまいました。昨年買い逃したのは、きっと焼きそばの神様が
「おいK、ここのはやめとけ」
と言っていたのでしょう。まあ日本には八百万の神様が居るんですから、焼きそばの神様がいても何ら不思議ではあり
ません。しかしそれならそれで、もっとはっきり言えよ神様。
とりあえず空腹は癒えましたが、なんだかモヤモヤが残ったので、ちょっと食べすぎの様な気がしますがうどんの屋台に
向かいます。ここでかすうどんと言う実に大阪らしいミもフタもないネーミングのうどんを購入。薄黄金色の繊細なダシはな
かなか美味しく、さぬきうどんの対極に位置する様なフワフワのやわらかうどんによく合っています。
ふと見ると、広場中央に設置された74式戦車のエアドームの砲身部分が、プイと横を向いたままになっています。何だか
涙目で拗ねているみたいで、妙にカワイイなあ。
その後は厚生センター内のPXを物色。何か面白いものでもあればと思いましたが、特に目を引く様なものは無し。自衛
隊オリジナルラーメン『標的』を越えるイカしたブツはなかなか出て来ません。
その後トイレを済ませ、式典会場に戻る頃には部隊の整列が始まっていました。続いては各部隊の紹介が行われ、観閲
官である駐屯地司令が入場して国旗掲揚。うーん、空は見事に晴れ上がり、訓練場の芝生も朝までの雨を吸ってキラキラ
と輝いています。まさに一発大逆転の素晴らしい晴天。先週の久居も天候に恵まれましたし、今年は何だか幸先いいなあ。
観閲官による力強い式辞の後は、来賓の国会議員による祝辞が披露されます。その後は祝電披露や関係団体への感謝
状の発表など、いつも通りの内容がいつも通りに続きます。そして部隊は、観閲行進のために一旦撤収。
準備が整った所で、まずは音楽隊が演奏しながら目の前を行進。続いて観閲部隊指揮官が座乗する指揮通信車がゆっ
くりと通過して行きました。昨年は最前列に張り付いて眺めていましたが、今年は後方のヒナ壇最上段から。また違ったアン
グルになるので、これはこれでいいですね。
軽装甲機動車が続いた後は、第37普通科連隊の各中隊を中心に第3後方支援大隊第2中隊、第3普通科直接支援中
隊、予備・即応自衛官による部隊が続々と行進を開始です。
車輛は偵察オートを皮切りに、無線車、小型ドーザ、発煙車、除染装置、バケットローダ、野外炊具一号(改)、水タンク、
救急車、高機動車、軽装甲機動車、重レッカ、FH−70榴弾砲、93式近距離地対空誘導弾、81式短距離地対空誘導弾、
81式自走架柱橋、化学防護車、96式装輪装甲車と続き、トリは74式戦車が務めました。
そして航空部隊は、この後の訓練展示に参加すると思しきOH−6DとUH−1Jが一機ずつ、上空をパスして行きました。
音楽隊が退場して急に静かになった訓練場では、今度は信太山駐屯地名物の菊水太鼓の演奏が始まりました。その間
訓練場では、この後の訓練展示に向けての準備が着々と整えられていきます。東端にはバラキューダを張った敵陣地が作
られ、その中では敵役を演じる隊員さんがドーランでお化粧の真っ最中でした。その手前では、有刺鉄線による防御網も
構築されています。
菊水太鼓の勇壮な演奏が終わった後は、今度は音楽隊とラッパ隊による合同ドリル。隊員さんの駐屯地内での一日に
沿って、様々な場面でのラッパを高らかに鳴らしながら、音楽隊の演奏に合わせた一糸乱れぬ見事なドリルです。哀切を
帯びた曲の後はワンテンポ置いて元気でリズミカルな曲を持ってきたりで、曲の構成も実にメリハリが効いてるなあ。駐屯
地創立記念行事に訪れた人たちのために、様々な演出やひと工夫ふた工夫を盛り込んだのが良く分かる、実にサービス
精神に溢れた素晴らしいドリルでした。途中マイクトラブルがありましたが、ここ数年の音楽隊の演奏の中ではピカイチと
言っても過言ではないでしょう。
そしていよいよ訓練展示開始。まずは2名のレンジャー隊員が、訓練場正面のレンジャー訓練塔の垂直に近い壁から吊
るされたロープを、腕力だけを使ってあっという間によじ登って行きます。その後は隣の訓練塔との間に張り渡されたロー
プを使って移動。途中でお約束の様に落下しますが、くるりと体を捻ってあっという間にリカバリー。勢い余ってバランスを
崩してしまい、結局ロープをまたいでくるくると2回転していたのはご愛嬌ですね(笑)。
2人目のレンジャーは定番のモンキー渡りを披露しますが、これがものすごいスピードであっという間に渡り切ってしまい、
観客席からはどよめきが起こっていました。あれはモンキーよりもスパイダーと言った方がいいですね。
その後2人のレンジャーは、三階建ての屋上位の高さをもつ訓練塔の上から、壁面をかけ下りるようにしてロープ降下。
高い所の苦手な私は、なんかもう見ているだけで足がすくみそう(汗)。
そして上空にはOH‐6D観測ヘリが飛来し、UH‐1J多用途ヘリのドアからは4人のレンジャーがロープ降下。先に潜入し
ていた隊員と合流した後は、すぐに訓練場に散開して行きます。
そろそろ偵察オートが現れるタイミングですが、姿が見えないなあ…と思っていたら、後方に止めてあったトラックの幌が
取り除かれ、荷台から2台の偵察オートが飛び出して来たのにはびっくり。おおお、今年は凝ってますね!しかしあの偵察
オート、肩ぐらいの高さの荷台からジャンプして見事に着地を決めています。凄いなあ。
着地後一気に加速した偵察オートは、次々と高いジャンプを見せながら訓練場に突入。すぐにターンを決めて倒したオー
トに隠れるようにして、敵陣地に射撃を加えます。その後方からはさらに2台の偵察オートが現われて、立位での射撃姿勢
のまま突入です。
さらに訓練場中央に展開してきた高機動車からは迫撃砲が下ろされ、その場でテキパキと射撃準備が整えられます。その
後方にはFH‐70榴弾砲が展開され、敵陣地に向けて轟々と支援射撃を開始。いやー、いくら空包とは言え、これだけ離れて
いても流石に迫力がありますねえ、FH‐70は。
そして後方からは、74式戦車がガロガロとエンジンを響かせながら登場。敵陣地にぴたりと砲塔を向け、すかさず空包発
射。これまた内臓を揺さぶるような強烈な発射音です。
高機動車と軽装甲機動車が訓練場の泥を跳ね上げながら突入し、急停車の後は小銃と防弾ベストで身を固めた普通科
部隊が飛び出してきました。すぐに飛びこむようにして地面に伏せた後は、後方からの射撃支援を受けながらズリズリと匍匐
前進し、敵陣地に肉薄していきます。あれ?よく見ると、89式小銃にはダットサイトが装着されています。てっきりアレは屋内
でしか使用しないと思っていました。
そんな中、敵からの反撃を受けた隊員が被弾して倒れ込みました。薄れゆく隊員の意識を繋ぎとめようと、同僚が大声で
何度も名前を呼ぶシーンはなかなかの緊迫感。結局被弾した隊員は軽装甲機動車の後ろまで引きずられ、駆け付けた救
急車で後方に搬送されて行きました。怪我人を引きずる時も、出来るだけ低い姿勢で移動していたのが印象に残りました。
その間にもFH‐70と74式戦車からは敵陣地に向けてドカドカと砲撃が続けられ、普通科部隊も激しい銃撃を浴びせなが
ら敵陣地に向けて進んでいきます。そして最後は鉄条網とその周辺の地雷原を爆破し、普通科部隊は一気に突貫。見事に
敵陣地を制圧しました。
いやー、昨年に引き続き、大迫力の訓練展示でした。微妙にあちこちバージョンアップしていたのも見事でしたね。今回が
初の陸自イベント参加となるHさんもかなり驚いていたので何よりでした。
さて、この後は装備品展示を見て回ります。かなりの人出でごった返していましたが、まずは12.7o重機関銃から。陸自
だけでなく海自艦艇にも装備されている機関銃ですが、弾倉や防弾板を取っ払うと随分スリムになるんですね。
さらに携帯地対空誘導弾スティンガーや01式軽対戦車誘導弾、110o個人携帯対戦車誘導弾を触ったり担いだりしてそ
の重さに驚嘆した後は、いよいよ対人狙撃銃です。
初めて構えた対人狙撃銃は何だか異様に重く、細身の見た目の印象を裏切る強烈な存在感でした。ちゃんとチェーンで
繋いでありますが、やっぱり実際に持って構える事が出来るというのはいいですねえ。私の前にいた女の子は構える事すら
できず、持ち上げようとしてふらついていました。
さらにMINIMI、89式小銃に触らせて貰った後は、9o拳銃も持つ事が出来ました。触るのも持つのも初めてですが、弾
倉がシングカラムなので見た目よりもずっと握り易いグリップです。弾倉を抜かせて貰いましたが、これもやっぱり非常にス
リムですね。
スライドの引き始めはちょっと重いですが、一旦動くとまるで鏡の上を滑るようにスライドし、チャキンと金属音を立ててス
トップ。ガタつきや不自然な抵抗は一切なく、まさに精密機械のような印象。気分はすっかり仁王頭勇斗です。
なるほど、これから見ればグロックなんかはオモチャみたいに見えるんでしょうねえ。あれはあれで非常に優秀な拳銃み
たいですが、やっぱり雰囲気が全然違います。
ああ、何だか無性に欲しくなってきました、9o拳銃のモデルガンが。
ちなみのこの小火器の展示会場のすぐうしろはちょっとした広場になっていて、沢山の家族連れが初夏の日差しを浴び
ながらお弁当を楽しんでいるのですが、さっきから小銃や拳銃を手に取る人達がしきりにそっちに向けて構えていたのには
笑ってしまいました。狙われている人達は気付いていなかったのかもしれませんが、なんという落ち着かないランチだ(笑)。
とは言え、つい何かを狙ってみたくなる気持ちは分かるので、次回からは人気のない所に射撃標的でも置けばいいと思
いますね。
さらに隊員さんの担ぐ15s近い重量の背嚢を実際に背負って悲鳴を上げたりした後は、暗視装置体験コーナーに向か
います。昨年の明野駐屯地ではこれを体験する為に1時間近く待つ羽目になりましたが、ここでは暗視装置の数が揃えて
あったので、ものの10分程で順番が回ってきました。暗視装置を初めて体験するHさんにとって、これもかなりの衝撃だっ
た模様です。真っ暗なテントの中なのに、あらゆるものがはっきりくっきりと見えるんですから無理もありません。ちなみに
この暗視装置、両目タイプのは一式130万円、片目だけなら60万だそうです。
最後は再び式典会場に戻り、車輛装備品の展示を見学です。化学防護車の横では個人用防護装備に身を固めた隊員
さんとの記念撮影コーナーがありましたが、いわゆるガスマスクそのまんまなので何だかグロテスクですね(笑)。強化外骨
格的というか、ミカドロイド的というか。
小さなお子さんを連れた若いお母さんが、嬉しそうにガスマスク姿の隊員さんと並んで撮影して貰っていたのも、なんとも
珍妙な組み合わせでした。まあこれも平和だからこそ、なのでしょう。Hさんは74式戦車に子供達が群がってジャングルジ
ムになっていたのが非常に気に入った模様で、大笑いしていました。
81式自走架柱橋は、実際に目の前で橋を展開していました。これも初めて見る光景なので、実に興味深いなあ。
FH‐70は砲弾がガイドレールに乗せた状態で展示してありましたが、これも凄い存在感ですね。確かに砲弾の直径は
155oほどですが、これが炸薬で打ち出されて2〜30qも飛んでいくのか…。凄いパワーです。何だか直径が300o位あ
る様に見えました。
いやあ、今年は観覧席の場所の選択もバッチリでしたし、色々見て回れて実に楽しい信太山駐屯地記念行事でした。展
示内用もすばらしく練り込まれていましたし天候も言う事なし。今シーズン序盤を占う意味では、久居、信太山と満点に近い
イベント参加でした。唯一残念だったのが焼きそばでしたが、よく見ると駐屯地の隊員さんたちによる屋台ではなく、どうや
ら外部からの参加による屋台の様でした。あのつくね串やうどんを作れる隊員さん達なら、さぞかし美味しい焼きそばを作
れるはず!来年はぜひ、隊員さん特製の本当の信太山焼きそばを堪能したいものです。
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