舞鶴ちびっ子ヤング大会

2010.07.31



    京都府舞鶴地方総監部で行われた、舞鶴地方隊ちびっ子ヤング大会に参加してきました。今回は土曜日に舞鶴、日曜日
   は富山県で行われる伏木港まつりに参加…という、夏の北陸遠征の一日目であります。
    大阪から車で2時間半、私の自衛隊イベント巡りの原点とも言うべき舞鶴地方隊に久々にやって参りました。舞鶴市内は
   昨夜まで雨が降っていたのか路面が濡れていますが、空は明るく晴れています。舞鶴造修補給所の敷地内が駐車場になっ
   ていて、すぐ目の前には補給艦ましゅうの巨大な艦体が!流石にでかいなあ。今日は艦内を見る事が出来るんでしょうか。


    駐車場から北吸桟橋正門まで歩きますが、舞鶴まで来ると随分セミの鳴き声が優しいですね。ニイニイゼミ、カナカナゼミ、
   アブラゼミあたりでしょうか。大阪に多いクマゼミの異様な騒がしさは暑苦しさを倍増させるので、舞鶴の柔らかなセミの声を
   聞いているだけでも涼しく感じます。
    正門前には既に20人ほどが列を成していて、真正面には護衛艦の艦橋構造物が見えます。


    しばらくして、0900開門。久々の舞鶴基地ですが、正面に見えたのは護衛艦しらねでした。その左手には護衛艦はまゆき
   右手には港内めぐりの曳船、その奥にはなんと潜水艦の姿が!おおお、まさかここで会う事になろうとは!先程駐車場から
   見えた補給艦ましゅうは、埠頭の一番右端でした。


    さて、まずは曳船による港内一周の申込みから始めるか・・・と思ったら、何と今年から高校生以下限定との事!んあ〜、
   がっくりです。まあ、イベントの性質上仕方ありませんね。楽しみにしていたのですが、またの機会を狙いましょう。
    いつまでも指をくわえて曳船を見ていても仕方ないので、隣の潜水艦の方へ行ってみます。停泊していたのはTSS3601
   練習潜水艦あさしお
。うーん、やっぱりこの、艦橋が垂直に立ちあがっているのがスッキリしていていいなあ。マッチョなおや
   しお型やそうりゅう型もいいんですけどね。艦内公開が無いのが残念でしたが、まあこれも仕方ないか。練習潜水艦とは言
   え、機密の塊ですからね。


    ふと足元を見ると、あさしおから運び出されたと思しきゴミ袋が山積みになっていました。シュレッダーにかけられた文書類が
   異様に細かく裁断されていた
のは流石ですね。あと、日清のスープヌードルの空きカップが大量に入っていました。へー、一部
   で有名なSDFヌードルじゃなく民生品を使っているのか。確かにこっちの方がカロリー控えめなので、潜水艦乗組員には向い
   ているかもしれません。
    潜舵の上でケーブルを操っていた乗組員が、狭いハッチにするりと入っていったのが実に物慣れた感じで、プロっぽい(って
   言うか、プロなんですけど)カッコよさがありました。
    一方、補給艦ましゅうは艦内で訓練が行われているらしく、近寄る事も出来ませんでした。うーん、見たかったなあ。


    さて、それでは護衛艦しらねの方へ行ってみようとふと横を見ると、何やら妙なものが目に入りました。救命イカダらしき黒い
   ゴムボート
が置いてあり、何故か中が水で満たされています。どうやら子供プールらしく、なるほど海自ならではですねえ。ロー
   ルバーの様な支柱が2本あり、どうやらこれはフライシートをかぶせる時のフレームになる模様。


    その脇には救命イカダの中に搭載されているサバイバルグッズが並べて展示してあり、舞鶴造修補給所のハッピを着た
   隊員さんが詳しく教えてくれました。飲料水、食糧、無線機、医薬品、教本、釣り道具、酔い止め、果てはエチケット袋まで
   入っていたのには驚きました。まあ本来の用途以外に色々と使えるんでしょうが、このグッズ類を使用せざるを得ない状況
   ですら、ゲロを吐くのに隣人に気を使うというのが実に日本人らしいですねえ。


    ちなみに食料はいわゆる『ガンバレ食』でした。へー、こんなのなんですね。初めて見ました。この救命イカダが25人乗り
   で、3日分の食料と水が入っているそうです。ここで説明してくれた隊員さんが無造作にガンバレ食の包装を破り、
    「どうですか?召し上がってみます?」
    えええええ、いいんですか?!戦闘糧食好きにとっては願っても無い機会ですけど…
    「ええ、展示してある奴は期限切れ間近なので、構いませんよ」


    遠慮なく一欠けらだけ食べさせてもらいましたが、うーん、何と言うか…甘くてボソボソして…。ソバボウロと離乳食、食パン
   の白い所をドロドロになるまで煮込み、固めた後に乾燥させたらこんな感じでしょうか。
まあ不味くはありませんが、普段は
   積極的に食べたいとは思わない味
ですね。とは言え、遭難&漂流、という極限状態ではとてもそんな事は言ってられないで
   しょうね。
    同封されている用紙にはちゃんと『がんばれ!元気を出せ!救助は必ずやってくる!』と印刷されてあり、何
   だか見ていると目頭が熱くなりそうでした。


    ちなみに飲料水は一人1日500ml。本当に最低限なんでしょう。
    興味深かったのは釣り道具で、疑似餌のついたハリスと25号のオモリが入っていました。成程、イカ位ならどうにか釣れそ
   うではあります。


    他にも、中越大震災で舞鶴造修補給所が関わったエピソードなど、色々と詳しく聞かせて頂きました。
    隣のテントには隊員募集のブースが入っていたのですが、お馴染みピクルス王子パセリちゃんのかぶりものが置いてあ
   りました。何だか討ち取られた大将首みたいでちょっと不気味。ピクルス王子は相変わらず目の焦点が合ってないし…。


    その後は出港して行く曳船を未練がましく見送って、いよいよ本日の一般公開の目玉と言うべきDDH143護衛艦しらね
   乗艦です。しらねは初めてなので嬉しいなあ。


    ラッタルを上がって飛行甲板に出ますが、全然人の気配が無く、ただでさえ広い飛行甲板が一際広く感じます。ヘリを三機
   運用できる艦なので、格納庫もかなりワイド。


    右舷舷側を通って艦橋前部に出ます。アスロックランチャーと5インチ速射砲がふたつ縦に並んでいるのは、いかにも古い
   艦らしい風格を感じるなあ。
5インチ速射砲は角を丸めた立方体で、トップにはバブルウインドゥがあり、有人操作の雰囲気
   がプンプン。
しかし今日みたいな天気だと、中は蒸し風呂状態なんだろうなあ。近くに居た幹部の方に聞いてみると、
    「いえいえ、暑いどころか寒いんですよ、中は。電子機器が詰まっていますので、それを冷やすための空調が効いてるんで
   す。むしろ冬の方が辛いですね。みんな中で厚着して、震えながら操作しています」


    へー、聞いてみないと分からないもんですね。ちなみにこのしらね、3年前のCIC火災事故のゴタゴタと修理がようやく終了
   したばかりらしく、現在は慣熟訓練の真っ最中との事。
    「いつでも全力を出せるよう、びしびしと鍛えまくっています!」
    そしてしらね艦橋へ。中はやっぱり空いていて、すごく広く感じます。こんな快適な一般公開って久しぶりだなあ。


    艦橋内に沢山ある掲示物を読んでいると、何故か海を泳ぐイノシシの写真がありました。どうやら舞鶴湾を航行中に、見張
   りの人が泳ぐイノシシを発見したそうなのですが、場所は何と沖合10km!へー、イノシシってそんなに泳ぎが達者なのか。
   この時のしらね新聞号外がなかなかの傑作で、
    『動静把握及び情報収集のため、追尾を開始したところ、動静不規則に逃走を図った。本艦の左約50mまで近づいて確認
   したところ、危険性はないものと判断し情報収集を終了した。このイノシシがどこから海に入ったか、どこに向かおうとしていた
   かなどは、いっさい不明である。某国新手の工作員の可能性もある事から、今後このイノシシの動向に注目する必要があり
   そうだ』

    だそうです(笑)。


    また、説明してくれた乗組員の方も面白い人で、
    「まあ捕まえてボタン鍋、と言う訳にもいきませんしねえ(笑)。仮にやったとしても、なんせ300人近く乗っていますので、上
   の人が美味しく頂いて終わりなんじゃないですか?僕の所になんか回ってきませんよ〜(笑)」
    
ちなみにこの隊員さんが別の艦にいた時、ワイヤーがスクリューに絡まって身動きが取れなくなった漁船を救助した事があ
   ったそうです。その時の船長さんがお礼に巨大なカツオを一本丸ごとくれたそうで、その時は乗組員全員で大いに舌鼓を打っ
   たとの事。

    「へー、給養員の人達はそんなでかい魚もおろせるんですか!」
    「ええ、それ位は軽くできますよ(笑)」


    さて、最後はDD126護衛艦はまゆきに乗艦。こちらは埠頭の端っこと言う事もあって更に人が少なく、隊員さん達は手持
   無沙汰の模様。上甲板だけの公開だったのであっという間に見終わってしまいましたが、艦橋構造物の脇でヘンな掲示物を
   発見。『あぶない!』と大書きされた乗艦者向けの注意喚起ポスターなのですが、ピカチューがロープで縛られて恍惚の表情
   を浮かべています。
うーん、確かにアブナイ…。まあピカチューのプライベートなので口を挟む事は差し控えたいですが、ポケ
   モンってこんな番組だったのか…今度見てみようかな(←オイ)。


    その後は舞鶴音楽隊の演奏を見学し、空自と陸自からの展示車両を見て回ります。滋賀県にある空自饗庭野分屯基地
   らはペトリオットが、同県の陸自今津駐屯地からは74式戦車が、京都府の陸自福知山駐屯地からは指揮通信車、軽装甲
   機動車、偵察オート、野外炊具1号(改)
が出動していて、かなり豪華な顔ぶれです。


    正門脇には売店があり、特にめぼしいものは無しか…と思っていたら、凄いタマを発見です。なんとSDFヌードルとSDF焼
   そばが山積みになっていました!
部隊内で糧食代わりに隊員さんに支給されていたものですが、販売も始めていたとは。迷
   わず2コずつ買い込みましたが、この後の航空基地巡りでかさ張って仕方無さそうなので、売店の人にお願いすると快く預か
   ってくれました。


    と言う訳で、身も心も軽くなって航空基地行きのシャトルバスに乗り込みます。そう言えば北吸桟橋には食べ物の屋台が見
   当たりませんでした。そろそろお腹が減ってきたので、航空基地の方に何かあればいいのですが。
    バスは山道をしばらく走り、すぐに航空基地に到着。航空基地なんか航空祭の時位しか縁がないので、この人気の少ない
   ガランとした雰囲気は何だか変ですね。


    ああ、何だかいいニオイがします。お、あったあった、カレーと焼きそばの屋台です。どうやら一つの屋台でまとめて売ってい
   るようですが、こういうのは珍しいですね。普通は別々の売り場になっているのに。どうやら舞鶴の第23航空隊は、世界に先
   駆けてマルチロール屋台の開発に成功した模様です。

    カレーは甘口と辛口が選べるらしく、辛口カレーと焼きそばを一つずつ注文。これで合わせて500円なんですから、破格の
   安さであります。
    カレーは目の前で寸胴鍋からかけてくれましたが、焼きそばはどうやら作り置きの模様。そう言えば、カレーの香りはしても
   ソースの焦げる香りはしなかったなあ。
    トレーを受領し、隣の休憩所になっている格納庫へ向かいます。空いた席に座り、先ずはカレーから頂きましょう。
    うん、なかなか美味しいカレーです。大きな乱切りのジャガイモとニンジンがゴロゴロで、薄切りの豚肉もチラホラ。カレーと
   しての個性よりもトータルバランスを重視した味
で、食べた人の90%以上は合格点を出す内容です。押さえるべき所をしっか
   り押さえた感のある、海自らしい伝統的なカレーと言えますね。


    焼きそばの方は完全に冷めきっていて、作った時はそれなりの味だったのでしょうがこれは評価外。まあ、200円の焼きそ
   ばにどうこう言っちゃいけません。山岡士郎じゃあるまいし。
    格納庫の中が真っ暗なので、目の前の青い海、緑の島々、空に浮かんだ白い雲、そしてずらりと並んだヘリコプターがまる
   で映画館のスクリーンの様。ここの人達は、こんな風景の中で毎日過ごしているんですねえ。何だか羨ましいなあ。


    さてお腹も一杯になったし、さっそく基地内を見て歩きましょう。その前に喉が渇いたので売店に寄り、ペットボトルのポカリ
   を購入。隊員さんが差し出したくじを適当に引くと、『当たり』と書いてありました。途端にどよめきが上がり、え?何か貰える
   の?もしかしてヘリに乗せてやる!とか?
と思いましたが、
    「おめでとうございまーす!もう一本どうぞ〜♪」
    うーん、何だか変な所で運を無駄遣いしてしまったような気がしました…。
    エプロンには沢山のヘリコプターが地上展示されています。陸自からのAH−1S対戦車ヘリコブラの隣には、鮮やかな救難
   カラーのUH−60Jが。しかしいつ見ても、水が入った甕を両手で持ち上げる修行を師匠に強要されているジャッキー・チェン
   みたいですね、UH−60Jって。


    そしてこの基地の主役であるSH−60J。傍にいた隊員さんに、以前から疑問だった機体のムラと言うか、クセについて聞
   く事が出来ました。
    「ああ、やっぱりありますよ。乗りにくい機体と乗りやすい機体がありますね。整備する人間の個性ではなく概ね機体独自の
   ものですが、SH−60Jはまだマシな方です。あっちにあるOH−6はもうムラが多くて大変で、以前乗ってた時はキツかった
   ですね」

    どの辺が苦労させられるんですか?
    「具体的には、スティックやレバー、ペダルの固さと言うか…押し具合ですね。教育中はしょっちゅう試験があるんですけど、
   その度に
どうか82番機には当たりませんように・・・って祈ってました。でも、そんな時に限って82番機が割り振られてしまう
   んですよね(笑)」

    ああ、なんか分かる気がしますね、そういうのって(笑)。
    「で、何度やっても上手く行かずに涙目になっていると、教官の人もその辺が分かってて、『おい○○、お前何番機でやりた
   いんだ?』
って言うんです。そしたら『75番機でお願いします〜』って(笑)」
    うーん、こういう人間臭いエピソードっていいですねえ。実際に隊員さんに聞いてこそ、という気がします。


    隣にも同じSH−60Jがありましたが、何か雰囲気が違うなあ。よく見ると車高というか、操縦席の位置も少し高いみたいで
   すが・・・あ、これ、JじゃなくてKの方か!
    パイロットの方にお話を伺うと、JとKの実任務は殆ど同じで、新型のKでないと出来ない事と言うのは無いそうです。ただ、
   操縦に関してはKの方がやや難しく、Jの方が素直な特性との事でした。
    そうこうしている間にも滑走路ではSH−60Jが何機も入れ替わり立ち替わり離着陸を繰り返し、滑走路までの距離が短い
   のでかなり迫力があります。


    その後は整備格納庫でSH−60Jの作業展示。どうやら折り畳んだ状態のブレードとパイロンを展開するとの事。
    まずは作業展示を前にして、司会の海曹長さんがSH−60Jの説明を行います。続いて整備のトップと思われる一等海尉
   さんを先頭に、10名からなる隊員さんが続々と行進してきました。まずは一等海尉さんによる作業内容の概要が説明され、
   整備班の最先任らしき海曹さんから細かい注意事項が伝達されます。


    そしていよいよ作業開始。機体後部のパイロンを折り畳んだ状態で、先ずは水平尾翼に当たる右スタビライザーを展開。
   続いてパイロン、左スタビライザーの順に広げられていきます。どのパーツもかなりの重量があるのですが、大きなバーを
   梃子代わりに使って、慎重に作業を進めています。


    続いて後方に束ねられたブレードの治具を外し、最後は自動でメインローターを展開・・・の筈が、何故か動きません。する
   と司会の曹長さんが、
    「…どうやら外部の電源が入っていなかった模様です」
    うーん、これはネタなのか?
    その後電源の接続が確認され、ブレードは無事展開。思ったよりもゆっくりゆっくり広がっていくブレードでしたが、そりゃそ
   うですね。こんなのがシャキーンと広がったら怖いもんなあ。


    と言う訳で、作業展示は無事(?)終了。なかなか一般公開では見る事の出来ない作業なので、実に興味深かったです。
    庁舎内のトイレに向かいますが、途中で飲酒運転・窃盗・薬物・セクハラ禁止のポスターが目に入りました。隊員さんが描い
   たらしく、ぱっと見はヘタながらも、なかなか味わいのあるイラストです。上官にお尻を触られるWAVEが妙にカワイイなあ。


    さてこの後はヘリの飛行展示が行われるのですが、夕方までに富山入りしないといけないのでこの辺りで舞鶴基地を後に
   します。北吸桟橋に戻り、預けてあったSDFヌードルを忘れず受け取り、駐車場に向かいます。
    駐車場までの道の途中にはツタに覆われた赤レンガの倉庫群があり、これもまた舞鶴らしい風景ですね。


    その後は北陸自動車道敦賀IC目指して、27号線をひたすら東に進みます。途中でSAA水兵さんに教えて頂いた佐久間
   艇長生誕の地に寄り道し、墓参して行く事が出来ました。
佐久間艇長のお墓は静かな竹藪に囲まれた実に穏やかな場所に
   あり、持参したペットボトルの水をお供えして、脱帽して黙祷。


    その後は北陸道をひた走り、1815富山県氷見市の祖母の家に到着。その夜はお酒も程々にして、明日の伏木港まつりで
   行われる護衛艦しまかぜの体験航海のために、早めに布団に入りました。




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