2010.08.04
福井県は敦賀港で行われた、護衛艦ひゅうがの一般公開に行ってまいりました!私は一応仕事持ちで、基本的に日祝しか
動きが取れないんですが、もうお盆休みをふっ飛ばす覚悟で平日に強引に休みを取ってしまいました。大阪からだとJR湖西
線の近江今津駅で普通列車に乗り換えて敦賀入りするのですが、やっぱり平日の仕事を休んでまで来たと思しき大きなお友
達が沢山乗っています。しかし何なんでしょうか、この識別帽率の異様に高い列車は(笑)。
と言う訳で、敦賀到着。ここで富山県から参加の艦長さんとSAA水兵さんに、車で拾って頂きました。本来ならバスと徒歩で
鞠山岸壁を目指すところでしたが、お陰様で車内で涼んでいく事が出来ました。今日は朝から見事な位に晴れ上がっているの
で、極楽とはこのことですね。途中きらめきみなと館の近くで、左手にゆら型輸送艦の姿が見えましたが、ひゅうがの随伴で来
ているのかな?
埠頭に近づくと、かなり遠くからでもひゅうがの巨体が見えて来ました。おおおおおお、流石にデカイ!おおすみ型輸送艦の
当社比50%増という排水量もさることながら、乾舷の高さが半端ではありません。こうして見ると、飛行甲板の高さがはつゆき
型護衛艦の艦橋と同じ位あるんじゃないでしょうか。凄いなあ…。艦長さんとSAA水兵さんは、既に昨年の観艦式で一度乗艦
されているので落ち着いたものですが、初乗艦の私はテンションが上がります。
埠頭にはもう6~70人位の行列が出来ていて、つい今しがた乗艦が始まった模様。列の最後尾について撮影しながら待ち
ますが、本当にこのデカさは感動的ですね。舷側の小さな窓部分からはまだ新しい舫綱が何本も張られていますがこの巨艦
からすれば絹糸か素麺で縛られている程度にしか見えません。
ここでSAA水兵さんが、
「この間作った日本海軍の空母『龍驤(りゅうじょう)』のプラモデルを見てて思ったんですけど、輸送艦おおすみとほぼ同サイ
ズなんですよね。その空母よりも大きいひゅうがって、やっぱり凄いなあ…って」
うーん、大きさの実感って、人によっていろんな方法があるんだなあ。
乗組員用のラッタルからは半舷上陸の隊員さん達がゾロゾロと降りてきていますが、その中に立派なロードバイクを抱えた
隊員さんがいてびっくり。あれって、どう見ても私物ですよねえ。あんなのを持ちこめるの?まあ余剰スペースには事欠かない
艦だろうし、乗組員の体力練成とストレス解消にはもってこいなんでしょうけど、よその護衛艦では考えられないなあ。
よく見るとその隊員さんのウェアには『HYUGA』と描かれていて、この海上自衛隊最大の護衛艦に乗り込む事の出来る誇
らしさと気合が伝わってくる様。そしてその隊員さんの後からも続々と銀輪部隊が上陸し、敦賀の市街地に向けて出撃して行
きました。いやー、凄いな、そんなのアリなのか(笑)。
そしていよいよ護衛艦ひゅうがに乗艦!右舷のランプドアから格納庫へ入りますが、中はやけに暗く、先程まで目が眩みそう
な日差しの下にいたのでなかなか目が暗闇に慣れません。すると、艦首方向の天井にコの字型のスリットの様な明かりが見え
ました。あ、もしかしたら…やはり、甲板のエレベーターがゆっくりと降りて来たところでした。おおおおおお、やっぱりこれもデカ
イ!そして駆動音がとても静かなのも驚きです。もっとゴゴゴゴゴゴゴゴ、って感じで動くのかと思ったのに。
「このエレベーターが艦中央部と後部にふたつあるんですけど、どっちかが米国製でどっちかが英国製なんですよね」
と、艦長さん。え?日本の国産じゃなかったんですか?
「やっぱり空母のエレベーターって特殊な技術で、実際に空母を建造している国のメーカーから導入したらしいんですよ。次
の22DDHからはサイドエレベーターになりますが、そっちはどうなるんでしょうね」
エレベーターが下がりきると、天井が抜けたようになっているのが不思議な光景だなあ。何だか、井戸の底から上空を見上
げていた貞子ちゃんの気分を満喫であります。
エレベーターは実にスムーズに上昇し、空がだんだん近づいて来る様。ふと周囲を見渡すと、殆どの人が口をあけて半笑い
になっているのが面白い。凄いものを見ると、やっぱりそういう表情になりますよね。多分今の私もそうなんだろうなあ。
あっという間に飛行甲板に到着。エレベーター自体は飛行甲板よりも20㎝程高い位置まで上がり、その後ゆっくりツライチに
なるまで降りて行きました。
うわあ、これがひゅうがの飛行甲板か!予想はしていましたが、護衛艦とは思えない開放感です。振り向くと背後には艦橋が
聳え立っていて、三方にわたって窓がずらりと並んでいるのも空母っぽいなあ。
そして驚いたのが甲板です。何と言うか、もの凄く荒れています。従来の鋼鉄まるだしの護衛艦とは違い、ひゅうがの甲板は
まるでコンクリートをわざと乱暴に塗りつけたみたいにトゲトゲしていて、冗談抜きで大根おろしが作れそう。
もう見るものすべてが珍しいのですが、一旦格納庫に戻って、ひゅうがグッズ販売コーナーへ。ここでひゅうが識別帽を無事
入手。他にも沢山のグッズ類がてんこ盛りで、お土産には事欠かないですね。
しかし改めて見ても広いなあ、この格納庫は。縦も横も、おおすみ型輸送艦とは比べ物になりません。ちょっとした体育館を
縦に2つ3つ並べた位の規模です。
それにしても、今天井に上がっているエレベーターって、結構隙間があるんですね。もっと甲板にピッタリなサイズなのかと思
っていましたが、こうして見上げていると隙間から太陽光が差しこんでいます。
さて、再び飛行甲板に向かいます。ふと見ると、エレベーターの脇には妙な注意書きのイラストが。エレベーターの責任者の
方なんでしょうか?
『ストッパーは、ホントに大丈夫か?俺の昇降機を壊すんじゃねぇ❤』
だそうです(笑)。
飛行甲板に上がると、既に沢山の人達が物珍しそうに歩いていますが、なにぶん艦の大きさが半端ではないので、随分と余
裕があるように見えます。
右舷にどこかでみた装置が寝っ転がっているなあと思ったら、洋上補給時に使用するスライディングパットアイでした。普通
の護衛艦なら、艦橋構造物と煙突の間にすっくと立っているのですが、ひゅうがでは航空機の発着艦の邪魔にならない様、普
段は横倒しにしてあるとの事。ちなみに使用時は、油圧駆動で起き上がるそうです。
その前には黄色も鮮やかなクレーン車輛が置いてありました。防舷物の揚げ降ろしに使用するのですが、どうやらひゅうが
は自前の防舷物を持っておらず、どこかに入港する度に輸送艦が運んできた防舷物をこのクレーンで揚げ降ろししているそう
です。なるほど、朝ちょっとだけ見えた輸送艦は、入港支援でやって来たみたいです。
艦首のCIWSの説明板には、長槍と丸い盾を持った重装騎兵が密集隊形を取っているイラストが描かれてありました。ああ
そうそう、ファランクスってそもそもそう言う意味でしたっけ。
右舷側には、甲板から一段低くなったキャットウォークが伸びていました。残念ながらクローズされていて歩けませんでしたが、
こういうのを見ると本当に空母って気がしますね。
甲板にはブレードとパイロンを折り畳んだ状態のSH-60Jが展示してありました。上空からこのひゅうがに着艦する時って、
どんな気分なんでしょう。想像するだけで何だか気分が高揚してきます。
しかしこのひゅうが、就役してまだ一年と少し位なのに、甲板がやけにサビサビなのが気になります。近くにいた隊員さんに
聞いてみると、あれ?さっき黄色いクレーン車輛の所で質問した隊員さんだ。
「ああ、表面の塗装と言うか加工がかなり特殊なので、これはこんなもんですね。特別痛んでいる訳ではありませんよ。実際
のアメリカ海軍の空母もこんな感じで、あれもかなり錆が浮いてだんだらになってます」
表面がかなり荒く仕上げてある所為か、簡単に錆落とし…と言う訳にはいかなさそうですね。
「仮にやるなら表面の塗装と加工を剥がさないといけませんが、もうとんでもない手間がかかりますね。雨や湿気があると駄
目なので、甲板全体をテントで覆っての作業になります。ですから、完全にドック入りしてからでないと無理ですねえ」
うーん、こんな巨大な艦を作るのもそうだけど、維持していくのも大変なんだなあ。
しかしこの、卸し金みたいな飛行甲板はマジで怖いです。半袖で転倒したりすると、あっという間に血だるまになりそう。
あとあのエレベーターが、甲板から浮いた状態まで上がってからツライチに戻るのも謎でしたが、どうやらエレベーターは一
度甲板よりも高い位置まで上がってからロックピンを入れて固定し、その後改めてロックした状態のまま甲板の高さまで降りて
くる…という仕組みになっているそうです。確かに見てみると、飛行甲板の少し下の位置に、巨大な丸いピンが幾つも並んでい
ました。
甲板とエレベーターの間の微妙な隙間については、これは波浪や熱で甲板が一時的に歪んだりたわんだりした時に、エレベ
ーターのフチが甲板に干渉しない様、最初から敢えて隙間を作って設計してあるとの事。なるほど、電車の線路の繋ぎ目が敢
えて余裕を持たせてあるのと同じ理屈なんですね。
しかしそうなると、その隙間から艦内に雨や海水、それこそNBC兵器等が入り込んで来ないか心配ですが、ちゃんとエレベ
ーター周囲にタイヤチューブ状のパッキンがかませてあり、甲板に固定した状態で中に空気を送り込んで膨らませて、隙間を
完全に塞ぐ仕組みになっているそうです。いやー上手い事になってるもんですね。
艦橋の近くにはもう一機SH-60Jが固定してあり、機体にはひゅうがのシンボルである火の鳥のスペシャルマーキングが
施されてありました。そしてよく見ると、機体番号も『ひゅうが181』になっています。え?ひゅうが専用の機体があるの?
近くにいた隊員さんに質問すると、このSH-60Jはやはりひゅうが専用に搭載されたヘリですが、内部のエンジンが抜かれ
ていて、実際には飛ばないドンガラだけのSH-60Jだそうです。
「へー、最初から展示する為だけのヘリを摘んでるんですか!凄い話ですねえ」
「いえいえ、展示専用じゃないんですよ。甲板から格納庫まで機体を移動させる訓練で使用する、言わば実物そのものの教
材みたいなもんですね。この艦の備品のひとつです 」
うーん、流石にスケールが違いますね。さっき私物の自転車で出撃して行った隊員さんもそうですが、とにかく艦内スペース
に余裕があるのでしょう。もしかしたら、ひゅうが自転車部なんてのもあるのかも…。
「ええ、この艦は自転車好きが多いみたいなんですよ。たまたま艦長がそういうのに寛容な人なので、『ん?自転車?オッケ
ーオッケー!』だそうです。他の艦長だったら駄目だと思いますけどね(笑)」
そう言えば、たしかこのひゅうがの艦長さんって、福井出身の方じゃなかったっけ?
「そうなんですよ、敦賀出身です。昨日入港したんですが、地元テレビ局の取材なんかも来ていて、今敦賀じゃちょっとした
有名人になってますよ」
その後は艦尾のVLSを見に行きます。全部で16セルと、この規模の艦にしてはちょっと頼りない数なのが気になりますが、
そもそもこのひゅうがが単独で作戦行動に当たると言う場面はまず考えられないので、こんなもので十分なんでしょう。
その近くには、甲板の一部が武器専用エレベーターになっていました。たたみ三畳分位の大きさのエレベーターに、魚雷の
模擬弾が展示してありました。
艦橋の下から3人の隊員さんが出てきて、ラッパを吹奏しながら甲板を行進し始めました。あ、音楽演奏もあるのか。隊員さ
んを追いかけて後に続きますが、3人はぐるぐると歩き回り、何だかハーメルンの笛吹き男に誘導されたネズミの様な気分で
あります。
そして艦の中央部で司会の2等海曹さんが挨拶を始め、続いて2人の3等海曹さんが次々とラッパを披露。へー、課業はじ
めのラッパって、正露丸のCFで流れている曲だったのか。知りませんでした。
ここで艦長さんが、先程購入した識別帽の後頭部にあった謎の刺繍を発見。ぱっと見ても何の意味があるのか分かりませ
ん。傍にいた隊員さんに質問してみますが…またさっきの隊員さんでした…。1か所にとどまらず、甲板のあちこちをぐるぐる
と歩き回っていると言うのに、何で行く先々で同じ隊員さんとばかり鉢合わせするんでしょう。謎すぎる…。
ちなみにこの刺繍の意味ですが、さかさまにすると 漢数字の『一八一』になり、ひゅうがの艦番号181にかけてあるそうで
す。そしてよく見ると、海に浮かんでいるひゅうがを正面から見た図案にもなっているとの事。なるほど、そう言えばそう見えま
すね。
ちなみにこの刺繍はこのひゅうが艦内で販売している識別帽すべてについていて、隊員さんの識別帽と全く同一のものだそ
うです。
「この艦以外で、たとえば各地のイベントでのグッズ売り場や、地方隊の売店で売られている識別帽には、この刺繍は入っ
てないんですよ」
なるほど、聞いてみるものだなあ。
それにしても先程から気になっていたのですが、このひゅうが、微妙に右側に傾斜している様な気がします。これってやっぱ
り、艦橋構造物が右側によっている所為なんでしょうか?近くにいた隊員さんに質問してみると、ちらりと甲板を見渡して、
「ああ、確かに0.3~0.5度ほど傾いていますね。右舷の端に黄色いクレーン車輛がありますが、あれの所為ですよ」
え?あれ一台だけで、そんなに影響するものなんですか?
「ははは、ああ見えて、あれ一台だけで28トンもあるんですよ。反対側にあるSH-60Jが満載でも10トンそこそこですから、
その差ですね。艦橋は最初からあの位置にあって左右が釣り合うように設計してますので、何もなければそのまんまで水平に
なりますよ」
傾斜したまま航行しても大丈夫なんですか?やっぱり出港する時に、重量物は艦の中央に寄せたりするんですか?
「この程度なら全然問題ないですね。まあ敢えてバランスを取るなら、クレーン車を移動させるよりも艦内のバラストタンクで
調整する方が簡単ですねぇ」
ここでふと振り返ると、先程から何度も顔を合わせていた例の隊員さんがすぐそばに立っていたのでびっくり。流石に妙に気
まずくなり、お互いに気付かないフリをしてしまいましたが、一体何なんだ・・・もしかして、尾行されてるのか?ここで艦長さんが
ぼそっと一言、
「もしかして・・・公安か何かの潜入じゃないのかな・・・」
えーと、私は全然思い当たる節がないんですけど、艦長さん、一 体 何 を や ら か し た ん で す か ?
しかしこの調子だと、大阪に戻ってからもあの隊員さんに会いそうで怖いなあ。
その後は格納庫へ降りて、グッズ売り場に居たWAVEの方にお話を伺いました。最近は広報で日本各地を巡業して回って
いるそうです。夏休みと言う事もあって海自イベントシーズン真っ盛りですし、やはり注目を集める艦に乗っていると大変ですね。
そう言えば今月末に行われる伊勢湾マリンフェスタにも来るんですよね、この艦は。それにも参加する予定ですと言うと、
「ぜひ遊びに来て下さいね~」
は~い、また遊びに行きま~す。
格納庫内の天井を見上げると、鉄骨がむき出しの部分と白いシートで覆われた部分がありました。あの白いシートって何な
んだろうとふと思い、傍にいた隊員さんに尋ねてみましたが、どうやら予想もしなかった質問らしく、すぐに別の隊員さんに聞き
に行かれました。分かりません、で済ませる事も出来たのに、ひゅうがの人は親切だなあ。
しかしその隊員さんも分からなかったらしく、他の複数の隊員さんを巻き込んでちょっとした騒ぎになってしまいました。いや、
あの、ちょっと聞いてみたかっただけなんですけど…。今更もういいですよとも言えず、これはエライ事になってしまったと焦っ
ていると、向こうの方から曹長さんがやってきて、
「このシートは断熱防湿の効果がありまして、重要な区画がある所に張ってあるんですよ。この上は確かCICだったかな?」
との事。いやー、お騒がせして申し訳ありませんでした。
そうこうしているうちにあっという間に午前の一般公開終了時間が近づき、ひゅうがを降りました。いやー、それにしても凄い
艦でした。
埠頭にはお好み焼きの屋台が出ていて、鉄板の上でソースが焦げる香りに目が眩みそう。ついフラフラと吸い寄せられます。
しかしよく見るとこれが普通のお好み焼きではなく、小さなお好み焼きを二つ重ねて間に豚肉を挟みこんだ、『お好み焼きハ
ンバーガー』とでも呼ぶべきシロモノでした。POPには『歩きながら食べられる、二段重ねのお好み焼き』とあります。うーん、
お好み焼きと言えば店の鉄板で食べるもの、という固定観念のあった私には、何だか意表を突かれた気分です。焼いていた
おやじさんにお話を伺うと、敦賀駅前でやっているお店らしく、部活帰りの高校生達がハンバーガー感覚で歩き食いしていると
の事。へー、面白いなあ。お腹もすいていたので、一つ焼いて貰います。直径10センチほどのふたつのお好み焼きは、まさに
バンズそのもの。
熱々の所を頂きますが、おお、これは美味い!何と言うか、試合開始早々に奇襲技で一本取られてしまったような痛快なお
好み焼きです。ソースとマヨネーズ、豚肉の濃厚な味とキャベツの瑞々しさが丁度いいバランスで、なるほどこれなら歩きなが
らでも食べる事が出来ます。同じジャンクフードですが、野菜が多いしハンバーガーよりも体に良さそうだなあ。店は敦賀駅前
の『ぼちぼち』さんです。今度来たら是非寄ってみよう。
改めて埠頭からひゅうが全体を見渡します。なんかもう、笑ってしまう位デカイなあ。出来たばかりの艦なので、どこもかしこ
もピカピカです。内火艇や短魚雷発射装置も全て艦内引き込み式で、航行中のステルス性にはとにかく気を使っている模様。
よく見ると、舷側にずらりと並んだ救命いかだのタルも、全て反射板で覆われていました。
艦尾には大きなテラス状のスポンソンが張り出していて、ここにもCIWSが後方に睨みを利かせています。やっぱり沖合に
出たら、アメリカ海軍みたいにここから海に飛び込んで海水浴をしたりするんでしょうか。
埠頭の端っこに、同じ形と色の自転車が2台並べて置いてありました。もしやと思って見てみれば、やはりひゅうが搭載の自
転車だったらしく、ちゃんと物品番号のタグが貼りつけてありました。しかしこの几帳面な並べ方と言うか、前輪を分度器で測
った様に同じ角度に揃えてあるところが実に海自らしいなあ。何となく以前那覇空港で見た、エプロンに整然と並んだP-3C
を思い出してしまいました。
いやあ、お盆休みをふっ飛ばして来た甲斐がありました。夏休みとは言え、平日なのでゆっくりと見る事ができましたし、天侯
も言う事無し。実に楽しかったです。その後は近くに停泊していた輸送艦を見物する為、きらめきみなと館に移動です。停泊し
ていたのはゆら型輸送艦2番艦、LST4172のとでした。おおすみ型輸送艦とLCACが出来てからは随分影が薄くなった艦で
はありますが、こうしてひゅうがの入港支援で元気に働いている様子を見ると、なんだかホッとしますね。
そして1300を待って、輸送艦のとに乗艦。事前にHPなどでの告知は行われていなかったので、殆ど人は集まっていません
が、お陰でゆっくりと見て回れそうです。
ラッタルから艦橋真下に上がると、この輸送艦最大の特徴である車輛甲板が見降ろせます。残念ながら車輛甲板に降りる
事は出来ませんでしたが、へー、こんなふうになってるんですね。この型の輸送艦は初めてなので、実に興味深いなあ。
物凄く狭い左舷舷側を艦尾に向けて歩いて行くと、艦内への入口がありました。中に入るとそこは科員食堂で、20人も座れ
ばもういっぱい。しかしこの艦の乗員は32名なので、士官室が別にある事を考えると、けっこう余裕のある食堂なのかもしれ
ません。中央にコカコーラのデカイ自販機がどんと置いてあるのも、随分とオーバースペックのような気がします。
トイレに入ってみますが、ここも艦の規模の割には意外と広々としています。洗面所も、古いながらも広くて使いやすそう。ま
あ、この艦は物資だけでなく人員の輸送も行うので、この辺りは最初から余裕を持たせてあるのかもしれません。
それよりこの食堂、何だか妙に暑いなあ。空調は動いているのですが、設備が古くて効きが悪いのかな?乗組員の方に尋
ねてみると、
「ああ、この食堂は、扉1枚向こうが機械室なんですよ。今日は甲板への扉が開けっぱなしと言うのもありますが、普段から
こんな感じかもしれませんね」
艦橋に上がるラッタルの横には、ちゃんと酒保がありました。カーテンがかかってあって中は見えませんでしたが、でかい自
販機といい広い洗面所といい、艦は古くて小さいですが意外と住み心地はいいのかもしれません。
普通艦橋って横に長いものですが、のとの艦橋は正方形に近い独特の間取りです。なんだか掃海艇に近いかなあ。
そして艦橋で見慣れないものを発見。これって、機関室にあるコントロールパネルじゃないのかな?どうやらこの艦には機関
室と言うものはなく、機関の制御は艦橋にあるこのパネルで行っているそうです。へー、やっぱり特殊な用途の支援艦って面
白いなあ。
ウイングから艦橋の後方に回ると、トップに搭載されていた20㎜機関砲が見えました。へー、固定武装もあったんですね。
確かに兵員の上陸作戦でも活躍する艦なので、機関砲があっても全然不思議ではありませんが。と言う事は、やっぱり砲雷
科って部署があるんでしょうか?傍にいた隊員さんに尋ねると、
「あー、この艦では運用科って呼んでますね」
なるほど、確か多用途支援艦でもそうでしたっけ。
あと、この輸送艦は意外にも航続距離が長く、燃料を満載すれば本州を無給油でぐるっと一周してしまうそうです。もちろん
空荷が前提でしょうけど、結構やりますね、ゆら型輸送艦。
以上で輸送艦のとの見学は終了。残念ながらのとグッズの販売はありませんでしたが、今まで見た事の無い種類の艦だった
ので、ひゅうがに匹敵する位の見応えがありました。
最後は敦賀駅までSAA水兵さんに車で送って頂き、10月の小松での再会を約束して大阪行きの新快速に乗り込みました。
いやあ、ひゅうがと言いのとと言い、実に内容の濃い敦賀遠征でした。ひゅうがの艦内が見れなかったのは残念ですが、まあ
出来たばかりの最新鋭艦ですし、あれも見たいこれも見たいというのはまだ早いのかもしれませんね。艦の大きさに比べると
乗組員の数が少ないので、一般公開だけでも中での仕切りは大変だったのでは、と思います。
しかし出来れば、艦内見学ツアーみたいなものがあれば嬉しいですね。10人1班ぐらいの編成で、前後を隊員さんで挟んで
監視をしつつ、旧海軍の艦内旅行よろしくひゅうがを一回りする、というのは如何でしょう?先着順だと混乱しそうなので、事前
に公募して抽選して。いつかこの艦で体験航海に出る日が来るのだろうか…と思いつつ、大阪に戻りました。
これは、後日SAA水兵さんから提供して頂いたプラモデルの比較
画像です。上から順番に、
輸送艦 おおすみ 全長178m 基排8900t
日本海軍空母 龍驤(りゅうじょう) 全長180m 基排8000t
護衛艦 ひゅうが 全長197m 基排13500t
ひゅうがは製作途中なので艦底のパーツのみですが、それにしても
こうして並べてみると、いかにひゅうがが巨大な艦かと言う事がよく
分かりますね。SAA水兵さん、画像ありがとうございました。
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