2010.08.01
さて、昨日の舞鶴地方隊ちびっ子ヤング大会に引き続き、北陸遠征2日目となる本日は富山県伏木港で行われた伏木港
まつりに参加です。DDG172護衛艦しまかぜは体験航海が行われ、PG824ミサイル艇はやぶさの一般公開も華を添える
という、なかなか豪華な顔ぶれ。どちらも大阪ではあまりなじみの無いタイプの艦艇なので、楽しみでした。当日朝はやや雲
り気味でしたが、会場である伏木港万葉埠頭に到着する頃には徐々に空が青みを増し、体験航海に相応しい青空となりま
した。
気合を入れて早い時間に到着したのですが、駐車場でなにわナンバーに驚いていた地本職員の方と話しこんでいる間に
0800を過ぎてしまい、自衛隊旗掲揚と君が代吹奏を見逃してしまいました(泣)。
初めて訪れた伏木港万葉埠頭ですが、これが驚きのスケールです。これを全部、埋め立てて造ったのかと思うと気が遠く
なりそう。そして埠頭の正面に停泊しているのは、DDG172護衛艦しまかぜ!流石に基排4650dはでかいですね。この
夏に何度も見たはつゆき型の五割増しです。今となっては、たかなみ型やむらさめ型汎用護衛艦とほぼ変わらない大きさで
すが、やっぱり見た目のインパクトと言うか存在感が違うなあ。
先ずは艦尾から。格納庫の無い広い飛行甲板、艦尾に向いた5インチ速射砲、高校生のヘアブラシみたいな対空レーダー、
丸っこい煙突…うーん、実に味わい深い。
そしてしまかぜの醍醐味は、やっぱり艦首からのアングルでしょう。長く伸びた鼻面、ターターランチャー、ブルワーク、ナッ
クルライン!今どきの護衛艦では見られない、しまかぜらしさがもうプンプンです。いいなあ。
そのしまかぜの隣には、PG824ミサイル艇はやぶさのお姿が。もともと200dぽっちの小さなフネですが、それでもこの、
まるで切り込み隊長の様に防御を捨てて攻撃一辺倒に割り切ったようなスタイルが、見ていて実に清々しい。昨年石川県七
尾港で見たうみたかと全く同じですが、これも一般公開が楽しみです。
よく見るとはやぶさの周囲に張ってある立ち入り禁止ロープにははやぶさの説明書きが吊るしてあり、これはなかなか親切
なアイデアですね。このミサイル艇には調理施設が無いので、必然的に食事は冷凍弁当やレトルト食品を温めるしかないの
ですが、掲示してある画像を見る限り、隊員さんが気の毒な内容でした。もうちょっと何とかならないのかなあ。ミニトマトやキ
ャベツなどの、比較的日持ちのする野菜だけでも積み込めないものでしょうか。カイワレ大根位なら艦内でも育てる事が出来
ますし。昨年うみたかでお話を伺った隊員さんは、『その分寄港先で、みんなで食べに出るのが楽しみです』と前向きでしたが、
何とかならないのかなあ。
ちなみに食堂はイス10脚だけのごく小さなものですが、肘かけと立派な背もたれのついたイスにシートベルトが装備してあり、
ちょっと想像できない様な揺れの中で食事をする事もあるみたい。
ちなみに主機は5400馬力のガスタービンエンジンを三機搭載。メーカーは航空機エンジンでお馴染みのGEで、なんとあの
A−10攻撃機のエンジンと同じものを搭載してあるとの事。それだけでもこの小さなフネが、途方も無いパワーを持っている事
がよく分かります。
そしてこの頃には上空の薄雲が散り始め、8月らしい強烈な陽射しが頭上から襲いかかり始めました。やっぱり晴れた空の
下の護衛艦はいいですねえ。
しばらく埠頭でまったりと時間を過ごしていると、富山市からやってきた艦長さんとSAA水兵さんと合流。今回の体験航海の
乗艦券は艦長さんに確保して貰ったので、順光なのに後光が差して見えました。最近は応募者が多く一枠取るのも大変な中、
本当に助かりました。
手荷物検査を受けてパンフレットを貰い、いざ護衛艦しまかぜに乗艦!まずは飛行甲板に出ますが、やっぱり艦尾に向い
た5インチ速射砲が目に入りますね。その両側の低い位置に張りだしたCIWSも珍しいポジションだなあ。
その後は艦内に入り、科員食堂へ向かいます。ここでしまかぜグッズ売り場を発見、しまかぜ識別帽を入手する事が出来
ました。しかしこの食堂、何だかL字型をしていて妙な造りですね。かなり古い艦なのにどこもかしこもピカピカで清潔なのが
素晴らしい!調理室の中がちょっとだけ見えましたが、若い給養員さんが凄まじいスピードで野菜を刻んでいたのには驚か
されました。
その後は左舷舷側に出て、出港作業を見守ります。やってきたタグボートはライトグリーンとホワイトのツートンカラーが鮮や
かで、船名が「にほんかい」「らいちょう」というのが土地柄だなあ。見た目は小さなタグボートですが、舫を放たれたしまかぜ
をぐいぐいと埠頭から引きはがします。
そしてしまかぜは伏木港万葉埠頭を出港。軽快に行き足を上げますが、よく見ると右舷艦尾には先程のタグボートがしまか
ぜを見送るように並走していて、これは珍しい光景。
さて、ようやく一段落…と行きたいところですが、この後の武器操方展示に向けて艦首へ移動。せっかくのしまかぜです。や
っぱりターターランチャーが動いている所を見たいですし。
艦首のターターランチャーですが、近くで見ると思ったよりも小さいなあ。発射機自体もシンプルな造りです。この発射機が艦
隊防空の花形だった時代があったんだなあ。汎用護衛艦にもVLSが当たり前になっている現代にあっては、流石に時代遅れ
の感が否めませんが、果たしてどんな動きを見せてくれるのでしょうか。
しばらくして、武器操方展示が開始。それまで沈黙していたターターランチャーから静かな駆動音が聞こえ、青色のSM‐1対
空ミサイルがシュカッと装填されました。おおお、想像していたよりも速いんだなあ。もっと重々しく装填されるのかと思っていま
したが、あっという間の出来事でした。
SM−1の訓練弾を抱え込んだランチャーは、仰角を変えながら上空全周にわたって睨みを利かせるようにくるくると回転。
そしてあっという間にSM-1を艦内に収納してしまいました。
続いて艦首の5インチ速射砲が駆動開始。甲板から一層分高い位置にあるので、前の人の頭が邪魔にならないのが有り難
いなあ。その後は艦橋真下のアスロック発射機も動き始めました。
そしてしまかぜは反転し、伏木港へと戻るコースに入ります。ああ、もう折り返しか。本当に体験航海の1時間ってあっという
間に終わるなあ。
その後は再び艦内へ。あれ?何でこんな変な所にダムウェイターがあるんだ?調理室からは結構離れていますが、この真
上あたりに士官室があるのかな?なにぶん2〜3世代前の艦なので、現代の護衛艦に比べると動線なんかも随分違うのかな
あ。
機関室は比較的年かさの隊員さんが多く、和やかで余裕のある雰囲気。よく見るとイスには青色のカバーがかけられ、形も
ゆったりしたシロモノ。他の艦はあからさまにコスト優先の安い事務用回転イスが多かったような気がしますが、艦齢が高い
ぶん、途中でイスの更新があったのかもしれません。
トイレもやはりはつゆき型やあさぎり型に比べると随分広く感じられます。流石に新品同様と言う訳にはいきませんが、本当
に隅から隅まで清掃が行きとどいているのが分かります。洗面所も明るくキレイ。洗濯機も結構新しいのが揃っていました。
その後は艦橋へ向かいますが、ラッタル横の司令公室が開放されていました。隊員さんに聞いてみると、
「はい、ここでは作戦会議なんかが行われます」
明るいグリーンのカバーがかかったゆったりしたイスが並んでいましたが、全体の印象としてはかなり殺風景。錦鯉の絵が
あったのが辛うじてインテリアらしいのですが、この辺りもやっぱり時代を感じさせるなあ。以前横須賀で乗艦した護衛艦たか
なみは、士官室ですらちょっとしたラウンジの様な雰囲気だったのですが。
艦橋は意外と狭いなあ。やっぱり新しい護衛艦に比べるとごちゃごちゃして見えるのが原因でしょうか。その分ウイング周り
はやけに広々としていて、機銃の架台には何とM2重機関銃がずどんと搭載されたまま展示してありました。普段は架台だけ
というパターンが殆どなんですけどね。しかし実際にM2重機関銃を載せてみると、改めて防弾板の頼もしさと言うか逞しさを
痛感してしまいます。
そうこうしているうちに、あっという間に伏木港に戻ってきました。艦橋では当直士官と思しき一等海尉さんが、キビキビと操
艦しています。あと6〜7年もすれば、立派な艦長さんになっているんでしょうか。
そしてしまかぜは無事入港。相当な人数が乗艦していた模様で、上陸にはかなりの時間を要しました。埠頭ではこのキツイ
陽射しの中、ピクルス王子のかぶりモノをした陸自隊員がいて、子供達の歓声に手を振って応えています。日焼けした黒い腕
と白い手袋が鮮やかですが、流石に鍛えこんだ陸自の人とは言え、この暑さの中でかぶりモノはキツそうだなあ。
続いてミサイル艇はやぶさの一般公開に向かいます。いやあ、いいなあミサイル艇。ステルスシールドが施された艦首76
o速射砲のカクカクがたまりません。すぐ足もとの小さなカゴに防舷物が収納されていて、やっぱりサイボーグ009に出てい
た001みたいでした。
しかしこの76mm速射砲、よく見ると甲板の付け根の所までステルス形状が徹底されています。更には艦橋真下の艦内通
話装置らしきものまで傾斜をつけた板で覆われていて、やっぱり他の艦艇とは一味も二味も違いますね。
相変わらず異様に狭い通路から、これまた狭い艦橋へ上がります。昨年の七尾港の時は天気が良くなかったせいもあって
空いていましたが、今日は流石にけっこう混雑しています。隊員さんにゆっくりお話を伺いたかったのですが、ちょっと余裕が
なさそうです。
ウイング後方の探照灯は、フネのサイズに合わせて凄く小さくなっています。なんだかウチにある炊飯器のお釜みたいで、
ちょっとカワイイなあ。
ここで気付いたのですが、各所にある手すりも四角形でステルス形状になっています。ここまで徹底するかと驚きましたが、
艦尾にズドンと鎮座している艦対艦ミサイルのキャニスターは丸いままなんですね。まあこれは仕方ありませんが、折角細か
な所まで気を配っているのに、ある意味台無しのような…。このキャニスターも、近いうちにステルス化されるのでしょうか?
しかしこのミサイル艇は基本的に日本海の不審船対策として作られたので、船体後部のステルス性と言うのは関係ないの
かなあ。逃げる不審船を後方から追いかけ回して、いざとなれば撃沈する、というパターンが多い様な気がしますし。
ここで艦長さんが、キャニスターの外側についている小さな円筒形の物体を目ざとく発見。よく見ると小さな字で『履歴簿入
れ』と書いてありますが、何だろうこれは。傍にいた隊員さんに聞いてみると、どうやら車で言う車検証や整備記録に当たる
ものが入っているそうです。
ちなみに艦対艦ミサイルは右舷に一本、左舷に二本搭載されてありました。甲板上にある重量物が左右でこれだけ偏って
いると、操艦に影響しないんだろうかと尋ねてみると、
「ああ、やっぱりそれはありますね。いま左側が一本分空いているのは、このあと訓練用の対艦ミサイルを搭載する予定な
んですよ」
へー、対艦ミサイルって、射程があり過ぎて日本近海ではなかなか射撃訓練が出来ないと聞いていましたが、ここなら出来
るんですね。
「いえいえ、あくまで訓練弾なので、そんなに飛びません。とりあえず、きちんと発射するまでの過程の訓練ですんで」
成程、納得しました。
埠頭には、富山地本の誇るマスコットキャラ『イッカー三兄弟』のパネルが展示してありました。せん○くんの100万倍はカ
ワイイよく出来たキャラですが、よく見るとちゃんと一人一人に細かい設定があるんですね。
長男のイッカー君は23歳の3等陸曹、北島三郎の北の漁場が十八番のカラオケ好きで、一時は歌手になろうと考えたそう
です。
次男のひかる君は20歳の空士長。冒険好きでホタルイカなのに立山登頂にチャレンジし、遭難しかけた(そりゃそうだ)とこ
ろを雷鳥の雷太君に助けられたとの事。良かったですね、普通は食われると思うのですが。幸い雷太君はお腹いっ
ぱいだったんでしょう。
しかし、新田次郎が逆立ちしても考えつかないであろう斬新な設定です。そもそも富山県人と言えば、堅実かつ真面目で教
育水準が高く、何事にも粘り強いという大阪人とは正反対の県民性です。そんな富山地本の人達が勤務中に頭を捻ってこの
設定を考えたのかと思うと、何とも言えない可笑しさがこみ上げますが、よく考えたら真面目だからこそ、という気もしますね。
その後はすっかり人気の無くなった伏木港万葉埠頭を後にして、近くの道の駅に移動して3人で昼食。その後は再び伏木に
戻ってしまかぜの一般公開に参加しようと思ったのですが、これが凄い人出。艦橋に上がりたかったのですが、艦内通路で
もはや一歩も動けなくなる有様。やっぱり全国的に人気が出てきてるんですねえ、自衛隊イベントって。
結局艦橋を諦めて、人気の少ない後甲板へ回ります。5インチ速射砲の所に展示してあった教練用砲弾はダイキン工業
製、装薬包は中国化薬叶サでした。中国化薬って、もしかしたらあの元気バッチリの中国化薬ですかと隊員さんに尋ねると、
笑って頷いてました。
ちなみに実際の砲弾は中国化薬製で、ダイキン工業が作っているのは教練用の模擬弾のみとの事。へー、実弾もダイキン
工業かと思っていました。
1年ぶりの北陸遠征でしたが、今年は艦長さんに乗艦券を手配して頂き、昨年とは大違いの好天もあって実に楽しめました。
次は2カ月後の小松基地航空祭での再会を…と思いましたが、その前に敦賀港で行われる護衛艦ひゅうが一般公開で再び
顔を合わせそう。お二人は既に昨年の観艦式で一度乗艦しているのですが、私にとってはひゅうがは初めて。夏休みをぶっ
飛ばして、平日に休みを取ってでも見に行く価値のあるイベントと言えます。
その後私は所用を済ませ、1700に富山を出発。途中北陸自動車道と名神自動車道で何度か渋滞に捕まりながら、どうに
か2230に大阪市内に帰りつく事が出来ました。また来年の北陸遠征が楽しみです。
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