2010.04.25
三重県伊勢市に所在する久居駐屯地の創立記念行事に参加してきました。今年は2月から艦艇一般公開等に散発的
に参加していましたが、5月を前にしていよいよ本格的なイベントシーズンの幕開けです。今回初めて訪れた第10師団隷
下の久居駐屯地は、第33普通科連隊を中核として後方支援大隊や直接支援中隊、各業務隊が駐屯する、旧陸軍時代
からの歴史ある駐屯地と言う事もあり、とても楽しみにしていました。
GW前にしてはかなり冷え込みますが、当日の久居上空は見事な快晴。おいおい気温も上がって来るでしょう。
0830頃に駐屯地の正門に到着したのですが、既に記念式典会場は開放されており、観覧席にはぽつぽつと人が入って
います。とりあえず一般用のひな壇左翼最上段に場所を確保。ちょい逆光ぎみですが、記念式典は1100〜と、やや遅め
の進行なので、その頃には太陽は十分高い所まで上がるので問題は無さそうです。
式典会場となる訓練場入り口には、指揮通信車が停められています。うーん、カッコイイなあ。国道を挟んだ駐屯地側は
装備品展示会場になっているのですが、先程からひっきりなしに車輛が出入りしています。高機動車や軽装甲機動車が多
いのは、いかにも普通科が中心になっている駐屯地らしいですね。
そうこうしている間に0900になり、装備品展示会場が開門です。正門の目の前には『誠心』と刻まれた大きな石碑があり、
何だか襟を正させる雰囲気。
すぐに装備品展示会場になった芝生の広場が目に入ります。各種対戦車誘導弾がずらりと展示されていて、まだ人が少
ない時間と言う事もあってゆっくりと見て回る事が出来ました。89式小銃もありましたが、触れる事は出来ても持つ事が出
来なかったのがちょっと残念です。駐屯地創立記念行事の人気が高まるにつれて、結構無茶な振る舞いをする人も増えて
いると耳にする事が多いので、この辺は致し方ないのかもしれません。
M2重機関銃の前では、隊員さんが小さな子供に丁寧に説明していました。聞いている子供から興奮と高揚感が伝わって
来るのが、実にいい風景です。
3脚に据え付けられたMINIMIには、照準眼鏡が取り付けられていました。なんか珍しいですね。
売店の集まった広場に差し掛かりますが、まだ開門したばかりとあってかどの店も準備中。屋台グルメを楽しむために、
例によって朝食を抜いて来ているので流石に空腹です。取り敢えず隣の厚生センターに入ってみましょう。
中の売店はやはり普通科中心の部隊編成らしく、ポウチやプロテクター類の品ぞろえが実に豊富です。鉄帽と頭の間に
入れる円形クッションも売っていましたが、名称が『戦士の輪』(笑)。上手いなあ。
一角には求人情報を貼り出したブースがありましたが、民間よりも定年の早い自衛官には切実な問題ですね。任期制の
まま除隊する人も多いでしょうし。それでもこの不景気の中これだけ求人票が集まるんですから、やっぱり元自衛官という
のは人気がある様です。
トイレを済ませて屋台広場に出ると、あちこちの屋台からいい匂いが漂っています。まずは定番の焼きそばの屋台へ向
かいます。300円払って受領した熱々の焼きそばは、たっぷりの削りガツオと青海苔、紅生姜にまみれて実に美味しそう。
早速一口頂きますが、うん、美味い!ソースの具合が丁度良く、とてもジューシーな焼きそばです。それにしてもこの焼き
そば、凄い具沢山です。豚バラ肉とキャベツのボリュームが圧倒的で、肉野菜炒めにソバが混じっている、と言った方が
正確ですね。その分焼きそば全体のバランスとしてはちょっと難がありますが、豚肉の肉汁とたっぷりキャベツが、水っぽ
くないジューシーさを際立たせています。野菜が高い中、これだけキャベツを奮発してくれたのは驚きです。
大満足の久居焼きそばでしたが、何かもう一品食べたいなあ。ご当地ならではの伊勢うどんも魅力的でしたが、まだ開店
準備が整っていない模様。
お、何だかとてもいいニオイがします。フラフラと吸い寄せられて行くと、第3中隊による鶏セセリ炭火焼の屋台に辿り着
きました。大きな炭火コンロにかざした焼き網の上で、大量のセセリ(鶏の首の所の肉です)がもうもうと白煙をあげて焼か
れていてとても美味しそう。いま作り始めたばかりらしく、とりあえず整理券を貰いました。焼き上がったら知らせてくれるの
で、その間は他の屋台を見て回る事に。
隣のテントでは、同じく第3中隊による『よろず屋』が出ていました。自衛隊グッズ販売かと思ったら、どうやら隊員さんの
不要になった私物を持ち寄ったバザーらしく、着なくなった服やスキー用具、寝袋マット、果てはボウリングのマイボウルま
で並んでいました。他にも実際に使用していたと思われる、破れ・汚れのあるポウチ等の装備品類も投げ売りされていて、
なかなかの賑わいです。ちなみにマイボウルは立派なケース付きで1000円。隊員さんに勧められましたが、これを抱えて
大阪まで帰るのもアレだなあ。
しばらくしてセセリが焼き上がり、300円を支払って受領。おお!これも美味い!旨みが濃厚で歯応えがあって、炭火で
燻されたスモーキーさもたまりません。味付けは見た目よりもしっかりしていて、鶏肉の旨みをギュッと濃縮した様な味わい
に全然負けていません。ガツガツと一気に食べてしまいました。
よく見るとパックの底にはサイズを合わせたキッチンペーパーが敷いてあり、にじみ出た余分な脂をしっかりと吸収してい
ます。うーん、芸が細かいと言うかポイントを押さえていると言うか、駐屯地屋台グルメとしては絶品と言えます。やっぱり地
元の鶏肉なのかと思ったら、宮崎直送でした。
揚げたこ焼きの屋台もありましたが、何故か看板には真っ赤なタコ型戦車に乗って無邪気にはしゃぐシャ○のイラストが。
しかし屈託が無さそうで、何かが吹っ切れたように楽しそうだな、○ャア…。
隊舎の入口には大きな鏡があり、出入りする隊員さん達がしきりに身だしなみをチェックしていました。
さて、時刻は1030。式典開始までまもなくなので、そろそろ式典会場まで戻ります。観覧席はほぼ満席で、その脇には立
ち見の人達が層を成しています。気温もかなり上昇していて、マウンテンジャケットを脱ぐと風がとても気持ちいいなあ。
そして第十音楽隊を先頭に、部隊が続々と入場を開始。顔面にフェイスペイントを施した屈強そうな一団はレンジャー資
格者による部隊で、やっぱり何か違いますね。なんというか、纏っている空気と言うか何かが。ちなみに隊長を務める二等
陸尉さんの胸には、レンジャー徽章の他にも空挺徽章が輝いていました。凄いなあ。
続いて第33普通科連隊の各中隊が続々と入場。予備・即応自衛官の部隊も続きます。
観閲部隊指揮官の二等陸佐が入場した後は、来賓が入場。その中には御存じヒゲ隊長こと、佐藤正久参議院議員も。
顔見知りが多いせいか、気さくな笑顔であちこちに挨拶されていました。
そして国旗登壇。今日は晴れている上に風があるので、日の丸がキレイにはためいていい感じです。
駐屯地司令の一等陸佐による部隊観閲が始まりましたが、車両に乗る際に余所の駐屯地でよくある踏み台を使わなか
ったのはよかったですね。司令に対する敬意なんでしょうけど、あれは何だかイイ大人を子供扱いしているみたいで、見て
いてちょっと滑稽な感じがします。
その後は駐屯地司令による力強い式辞が披露されました。声が大きく独特の抑揚をつけた話し方で、なかなか聞かせ
る式辞でした。
さらに来賓祝辞、地域後援者や協力団体への感謝状の発表などがとり行われましたが、ふと見ると観閲部隊指揮官の
後方に掲げられた旭日旗がずり落ちて半旗みたいになってしまっています。あちゃー、縁起でもない。さっとその場で直せ
ばいいのに、やっぱり微動だにしてはいけないんでしょうか。
そして部隊は一旦撤収し、音楽隊を先頭とした観閲行進が始まりました。観閲部隊指揮官を乗せた指揮通信車が続き、
さらにレンジャー資格者の部隊、第33普通科連隊各中隊、予備・即応自衛官の部隊が続々と行進です。部隊の合間合間
には、各中隊の担当する市町村の旗が掲げられています。
車輛は軽装甲機動車、120o迫撃砲RTを牽引した高機動車、79式対舟艇対戦車誘導弾を搭載したトラック、偵察オート、
電子交換装置、無線車、小型ドーザ、資材運搬車、発煙車、除染装置、バケットローダ、水タンク車、弾薬輸送車、救急車、
人命救助セット、化学除染車、といったシブめが続いた後は、いよいよ花形とも言うべき戦闘車両が登場。
87式偵察警戒車、FH−70榴弾砲、96式装輪装甲車、74式戦車の後は、締めの航空部隊です。OH−6D観測ヘリ
とUH−1J多用途ヘリが2機ずつ、そしてトリはCH−47輸送ヘリが務め、久居駐屯地上空を通過して行きました。
訓練展示までの小休止の間、まずは30人近い人数によるラッパドリルが披露されました。へー、ラッパドリルって初めて
ですね。一糸乱れぬ演奏の途中からは音楽隊も加わり、見事なコラボレーションです。シンプルなラッパに吹奏楽の奥行き
が加わり、実によく練られた演奏でした。
次は格闘展示。会場左右から、総勢100人近い隊員が着剣した89式小銃を抱えていきなり突入してきたのは、流石にド
迫力。まずはその場で、銃剣による基本動作の展示が始まりました。突く、払う、受ける、切る、等の動作の一つ一つをキビ
キビと行い、続いて銃剣同士による1対1の模範演舞を披露。銃剣にはアルミホイルが巻かれていて、振りかざす度に太陽
を浴びてギラギラと輝いていました。遠くから見ていても銃剣が強調されるので、これはいいアイデアですね。
さらに素手による対銃剣格闘と対ナイフ格闘が行われ、様々な場面を想定して相手を崩し、そこから蹴りを入れたり投げ
たり関節を極めたり、といった約束組手を披露していました。
そしていよいよ訓練展示の開始です。上空をOH−6D観測ヘリが舞い、続いて現れたUH−1J多用途ヘリからは4名の
隊員がロープ降下を開始。素早く着地した後は、先に潜入していたギリースーツ姿の隊員の支援を受けながら素早く散開、
敵陣地に向けて銃撃を浴びせます。
後方からは偵察オートが2台突入し、素早く車体を倒して遮蔽物にしています。スピンターンした時の遠心力を利用して、
背負っていた89式小銃を片手だけで操って地面に伏せた時にはきっちり正面に構えていたのは地味に凄いなあ。
さらに後方からは87式偵察警戒車が重機関銃を発射しながら侵入。偵察オートはすかさず立ちあがってターンをかまし、
脱兎のごとく撤収…の筈が、ここで隊員さんがバランスを崩してステンと転倒。ああ、まあそういうこともあるでしょう。すぐに
リカバリーして脱出…かと思いきや、隊員さんはその場から動きません。あれ?変なコケ方をして足でも痛めたのかな?
その間にも後方からは大量の高機動車が展開され、あちこちで120o迫撃砲RTと81o迫撃砲L16が組み上げられて行き
ます。まるでビデオを早送りしているかのような、異様なスピード。
訓練場の奥の方では、FH−70榴弾砲が轟然と火を吹き始めました。さらにトラックの荷台からは対戦車誘導弾が下ろさ
れて、テキパキと射撃体勢が取られます。うーん、あんな重そうな装備を抱えてすごいスピードで走っています。
そして74式戦車が轟音をあげながら突入し、続いて入って来た96式装輪装甲車の後部ハッチからは小銃を抱えた隊員
が飛び出してきました。そこから部隊は鉄条網を越えて敵陣地に突入するのですが、見ていると先頭の隊員が鉄条網に覆い
かぶさって、後続の隊員達はその背中を踏みつけて突っ込んで行きます。へー、そんなやり方なんですね。隊員さんが装着
している防弾ベストはセラミックプレート入りなので、確かに鉄条網なんかへっちゃらでしょう。しかしそれでも辛い役割ですね
え。
そして部隊は敵陣地を制圧し、訓練展示は終了。午後からは各種車輛の体験試乗やヘリの地上展示などがありました
が、夕方から所用があったのでここで泣く泣く久居駐屯地を後にしました。乗りたかったなあ、指揮通信車…(泣)。
天候も良く楽しめましたが、要所要所に見せ方をもう一工夫してもよかったかもしれませんね。折角レンジャーの教育訓
練を行っているんですから、レンジャーの凄味をもっとアピールできるような見せ方があってもよかった気がします。
また、戦車による故障車輛の回収も行われましたが、観覧席と故障車輛、戦車の位置が一直線になってしまったので、
観覧席からは故障車輛しか見えず、折角の試みが今ひとつ何をやっているのか分かりませんでした。
しかし、来年もぜひ参加したいと思います。近鉄の急行を使えば交通費もかなり安く上がりますし、屋台の食べ物は感動
的に美味しかったですし。
さて、次は4日後の祝日に、地元大阪の信太山駐屯地創立記念行事です。信太山は近場だし去年参加して要領は分かっ
ているので、とにかく晴天だったらいいなあ…と思いながら、久居駐屯地を後にしました。
何だか嬉しそうなシャ○。「元気ハツラツ」「食欲旺盛」って、そんなキャラでしたっけ?(笑)
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