三軒屋駐屯地創立54周年記念行事

2009.11.15



      岡山県岡山市で行われた、三軒屋駐屯地創立記念行事に行ってきました。伊丹、日本原、姫路、明野と続いた陸自創立
     記念行事五週連続五連発の最後を務める三軒屋駐屯地は、今回が初参加です。施設隊弾薬支処が所在する山奥の小
     さな駐屯地と聞いていますが、果たしてどんな所なのか楽しみだなあ。
      それにしても最近のこのHP、どのあたりがでどのあたりがなんでしょうか。我ながらいい加減なものです。まあ私が
     面白ければいいんですけど。
      早朝に自宅を出発し、山陽自動車道の岡山ICで国道53号線に降ります。岡山大学前の見事な銀杏並木に見とれながら
     JRの線路沿いに走っていくと、三軒屋駐屯地に到着です。正門前には開門待ちの行列も無く、駐車場のあちこちにぱらぱ
     らと人が散っている程度。そして開門直前になっても雰囲気はそのままで、0900の開門後はそれぞれが三々五々駐屯地
     に入って行く…という感じです。気合を入れて一時間前に来ましたが、何だか力が抜けるなあ。
      初めて訪れる三軒屋駐屯地は山の谷間に沿って伸びていて、なだらかな上り坂を登った所に貯水池があり、その奥が式
     典会場となるグラウンドです。取り敢えず観閲壇左手の一般席最前列につきますが、こんなにだらだら歩いていても最前列
     が確保できる
んだから凄いなあ。
      お世辞にも広いとは言えないグラウンド、膝ぐらいの高さしかない観閲台、その左右にちょっとだけ並んだパイプイス席。
     何だか普段見ている駐屯地記念行事とはずいぶん趣が違います。これはちょっと面白いかも。


      さて、取り敢えず場所は確保したので、駐屯地内を歩き回る事にします。まずはトイレ標識に沿って歩いて行くと、野外支
     援車
がありました。トラックのコンテナ部分がトイレになっていて、排泄物を瞬時に電磁波で焼却して粉末状にしてしまうとい
     うスグレモノです。ニオイも全くないのが驚き。駐屯地祭などで何気なく使っていますが、よく考えたら凄い装備です。
      しかしこの駐屯地、随分寂しい場所にありますね。冬の始まりという季節がそう感じさせるのかもしれませんが、地味とい
     うか落ち着いていると言うか…。今日は年に一度のお祭りでそれなりに人がいますが、普段はしんとしているのではないで
     しょうか。
      隊舎と隊舎の間に作られた屋台広場もこぢんまりとしたものですが、何か村の小学校の年に一度のバザーみたいな、ア
     ットホームな雰囲気がいいですね。おでん、手打ちうどん、焼鳥、フランクフルト、カレー、チョコバナナ、ワッフルと、食べ物
     系は一通り揃っていますが、焼きそばが無かったのは残念。楽しみだったのになあ、駐屯地焼きそば…。


      例によって朝食を抜いてきたのでお腹が減っていますが、先にPXから覗いてみましょう。隊舎内のPXはコンビニと一緒
     になっていて特に見るものはありませんでしたが、施設科という仕事柄なのか、手袋類が非常に充実していました。
      再び屋台広場に出ると、四角い野外炊具2号(改)でゆで上げられた大量のうどんが、大きなざるにあげられて冷水で揉
     み洗い中でした。真っ白い滑らかなうどんが何とも色っぽい。さっそく一つ注文です。
      おお、これはなかなか美味しそう。トッピングは刻み海苔と鰹節、青ネギと天カスですが、いずれの具も景気よく盛ってあ
     ります。今の季節は、器越しに伝わってくる熱さも御馳走のうちですね。


      先ずは一口。うん、美味い!しっかりとしたコシ、つるりとした口当たりも心地よく、これは昨日今日作り始めた手打ちうど
     んとは思えません。うどんの切り幅にムラがあり、微妙に茹であがりの堅さが違っているのも、いかにも手打ちうどんと言っ
     た感じでいいですね。鰹節の量がやや煩いような気がしますが、本職ではない屋台のうどんとしては驚きの出来と言えます。
     
おかわりの誘惑にかられましたが、次はカレーの屋台に行ってみましょう。
      テントの中では寸胴鍋が大きな業務用コンロに乗せられて、美味しそうなニオイが漂っています。一つ200円なりを払って
     待っていると、隊員さんは器にごはんを盛り、寸胴鍋にひしゃくを突っ込んでカレーをかけ始めました。
      あのー、そのひしゃく、出来ればお玉に替えてほしいんですけど…その、モロに、その…いえ、何でもありません…(泣)。


      何だか泣きそうな気分でカレーを受け取ります。見た目はもったりと重そうな、ジャガイモ完全融解カレー。まずは一口。
      うん、ジャガイモのダシの効いた、マイルドな甘口カレーです。少し後から軽い辛味も効いて来て、タマネギの甘さもいい
     感じです。ゴロゴロの豚肉がなかなかの存在感で、これで200円は安いなあ。『昔食べた懐かしい味のカレー』を想像する
     と、殆どの人がこんなカレーを思い浮かべるのではないでしょうか。
規模は小さいながら、三軒屋駐屯地の屋台はなかな
     か侮れないものがありますね。
      その後は用廃車輛の野外展示を見に行きます。途中で半長靴の泥を落とすエアコンプレッサーがありました。駐屯地で
     はお馴染みの装備ですが、よく見るとコン太くんという名前が貼ってありました。そうか、そう言う名前だったのか。


      展示車両は、74式戦車、60式装甲車、61式戦車、60式自走無反動砲、OH−6という顔ぶれでした。ここは車輛の上に
     乗ってはいけない様で、お陰で人の入らないキレイな画像を撮影出来ましたが、やっぱりこういうのは子供がジャングルジ
     ム代わりにしている方が見ていて楽しいですね。


      駐屯地内にはちょっとした日本庭園があり、その脇では招待者用の受付テントが出ていました。
      さて、時刻は1000。そろそろ席に戻りましょう。隣り合わせた人と寒い寒いと震えていると式典が始まり、、それに合わ
     せたかのように上空が晴れ上がりました。お、いい感じです。
      一般席後方にあるスピーカーからは行進曲が流れ始め、駐屯地所在部隊が行進を開始。うーん、流石にこの規模では
     音楽隊は呼べないのでしょうか。まあこっちの方が色々ラクチンそうではありますが。音の割れたスピーカーから流れる行
     進曲が、何だか小さい頃の運動会を思い出させます。

      先ずは上級先任陸曹長を先頭に、弾薬支所、施設隊、施設直接支援隊、基地通信分隊の各隊が行進してきました。全
     部合わせて100人いるかどうかの小所帯です。施設隊の隊員達だけが戦闘服で、半分以上が制服なのが新鮮だなあ。
     誰も小銃を携行していないのも珍しいような気がします。


      ざっとみてWACは3人しかおらず、そのうち2人は普通のビジネススーツを着ています。片方はモロに金髪ですし、外部
     の人も混じっているのでしょうか?
      部隊整列が終わった所で、観閲官である駐屯地司令が徒歩で登場。業務車を使わないんですね。来賓や地域住民の方
     々を招いての年に一度の記念式典なのに、親玉である司令がトコトコ歩いて登壇というのも何だかなあ…。こういう所はも
     っと格式ばってもいいような気がしますが、このあたりはトップの人のカラーなんでしょうか。


      この後は国旗登壇、君が代吹奏、観閲官式辞、来賓祝辞、祝電披露と、粛々と進行して式典は終了。訓練展示までの間
     には、宇治駐屯地から来た鳳凰太鼓の演奏が行われます。ええ?宇治から来たの?もっと近場には無かったのでしょうか。
      それでも総勢8人からなる鳳凰太鼓はなかなか迫力があり、京都からの移動の疲れを見せない見事な演奏を披露してい
     ました。


      そしていよいよ訓練展示が開始。会場左手のフェンスを越えた山のふもとに敵陣地があり、部隊は右手から陣地の攻
     略を図るとの事。フェンスと山の間には小さな川があり、狭いグラウンドをいっぱいいっぱいに使う面白いアイデアです。
      先ずはUH−1J多用途ヘリによる上空からの偵察。何か聞いた事のあるBGMだなあと思ったら、ナイトライダーのOP
     でした
。どうせならエアーウルフにすればいいのに…。恐らく30代後半以上の式典参加者はみんなそう思った事でしょう。


      上空を旋回して敵の状況を確認したUH−1Jと入れ替わりに、今度は偵察オートが突入してきました。軽快にグラウンド
     を走り回った後は素早く車体を倒し、小銃を構えます。そこから送られた情報をもとにして、二台の1/2dトラックが突入開
     始。パジェロとジープ一輌ずつの編成ですが、どちらも4人乗りの上にM2重機関銃を装備しているので、なかなかの重武
     装。パジェロはキビキビと走りますが、ジープはさすがにコーナーでのロールがきつそう。しかし絵になるのは断然ジープの
     方ですね。ちょっと鳥山明っぽい雰囲気が堪りません。


      後方からは軽装甲機動車が侵入し、64式小銃を携行した隊員さんが飛び出してきました。そして車輛からの射撃支援
     を受けながら、各所に配置してあるライナープレートに匍匐前進で取りつきます。


      M2重機関銃とMINIMIの空包射撃はなかなか派手で、バリバリと景気よく撃ちまくっています。この駐屯地の両側には
     切り立った山々が迫っているので、空包音が反響して普段以上に迫力のある訓練展示になっていますね。


      さらに偵察警戒車指揮通信車が狭い訓練場内に入り乱れ、上空のUH−1Jからも援護射撃が始まります。後方から
     普通科の増援部隊が駆け付ける中、私のすぐ前に居た隊員さんが被弾してひっくり返りました。すかさず2人の隊員さん
     がジープまで引きずって行き、後方へ搬送して行きます。


      その後方では高機動車に牽引された120o迫撃砲RT、93式近距離地対空誘導弾が展開を開始。さらに1.5dトラック
     レッカーに吊り上げられて、3.5dトラックの荷台に乗せられています。被弾して動けなくなった車両を回収しているという想
     定の模様ですが、文字通りの「親亀の背中に子亀をのせて…」でした。


      さらに上空のUH−1Jからは4人の隊員がロープ降下を開始。後方からは92式地雷原処理車までもが轟音をあげなが
     ら突入してきました。そして箱型の発射機をおっきさせ、その姿はまさに襲いかかろうとするコブラの様。


      あれ?なんだあのノンタンみたいな小さいキャタピラ車両は(笑)。施設科の輸送車両?なんかもう、なんでもありと言うか
     カオスと言うか、凄い展示訓練だなあ。いいぞ!もっとやれ!
      そして俺を忘れて貰っちゃ困るぜと言わんばかりに、FH−70榴弾砲が空包射撃を開始。グラウンドが狭い上に山で囲ま
     れているので、空包の射撃音が強烈です。うーん、、凄い!しかしその肝心のFH−70榴弾砲ですが、指揮通信車と軽装
     甲機動車の後ろに隠れてしまい、私の位置からでは砲身しか見えませんでした。とほほ。


      最後は普通科隊員が胸の高さぐらいあるフェンスを軽々と飛び越えて、敵陣地に突入。流石に鍛え方が違うなあ。私だっ
     たら、ヒイヒイ言って結局乗り越えれるかどうかでしょうね。
情けない話ですが(笑)。


      そして敵陣地からは白旗が上がり、これにて訓練展示は終了。いやあ、最初は正直こんな狭い所でできるのかなと思い
     ましたが、実に盛りだくさんのド迫力の展示でした。厳しい地形の制限を逆手にとって、部隊の人達が練りに練ったという感
     じですね。いやはやお見事!御苦労さまでした。
      その後は演習場からUH−1Jがやってきてグラウンドに着陸。車輛の野外展示が始まりました。残念ながら先ほどのノン
     タンみたいなキャタピラ車両は来ませんでしたが、偵察オート、偵察警戒車、81o迫撃砲L16、120o迫撃砲RT、FH−70、
     75式ドーザ、92式地雷原処理車、近SAM、軽装甲機動車、指揮通信車
、となかなかのラインナップ。
      FH−70は尾栓部も見る事が出来、後方から砲身内を覗くとキレイなライフリングが切ってありました。


      近SAMは車内にある誘導装置まで引っ張り出して展示してあり、この画面を見ながら終末誘導を行うそうです。もっと複
     雑な装置なのかと思いましたが、意外にシンプルな造りでした。


      指揮通信車の所に居た隊員さんにお話を伺いました。普通乗用車と同じ様にエンジン始動はキーで行うらしく、ミッション
     は前進6速後進1速。各ギアでハイ&ローの選択が可能で、慣れるとマイカー感覚で乗れるそうです。ただ、運転手の乗車
     は天井部分のハッチからしか出来ないので、雨の日は大変との事。この車両が駐屯地に来た金曜日はたまたま雨脚が強
     く、降りる時はずぶ濡れになってしまったそうです。

      片道2時間半のプチ遠征でしたが、実にのんびりとした雰囲気で、とてもいい感じの駐屯地創立記念行事でした。訓練展
     示は面白かったですし、ここならではの施設科の車両も沢山見る事が出来ました。
      唯一悲しかったのがひしゃくでサーブされるカレーでしたが、私の想像力が逞しすぎたのでしょうか(笑)。210円にしても
     イイですから、お玉を一本買って下さい。なんなら来年、私の家のお玉を寄贈してもいい位です。
      それにしても、こういう色々があるから自衛隊イベント巡りは止められませんね。さて、あとは2週間後の築城基地航空祭
     で、今年のイベント参加を締め括ります。昨年みたいな見事な快晴だったらいいなあ…と思いつつ、車に乗り込みました。




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