2009.10.24
岡山県の日本原駐屯地創設記念行事に参加してきました。日本原駐屯地には第13高射特科中隊、第13特科隊、第
13・14戦車中隊、第13・14後方支援隊、業務諸隊が駐屯しており、隣接している日本原演習場では中部方面隊各地
から部隊が集結し、様々な状況を想定した演習を行っている事でも知られています。
自宅から中国自動車道津山ICまでは約180q。近いとも遠いとも言えない微妙な距離ですが、0800津山ICに到着。53
号線をしばらく走り、0810には日本原駐屯地に到着です。
開門時刻にはまだ間があり、演習場を通る道路に出来た車列の最後尾につきます。道の脇には警告板があり、射撃
演習期間中は赤旗を掲げると書いてありました。なるほど、なかなか嫌味が効いていますね。
開門は0900かな…と思っていると、にわかに車列が動き出して駐屯地内へ。隊員さんが立哨している入り口近くには、
『本日の記念式典の妨げになる方々の立ち入りにつきましてはご遠慮願います』
との立て看板が。ああ、ヒマな人達が来るんですね。ご苦労な事です。誘導された駐車場に車を止めて、さあ出発です。
初めて訪れる日本原駐屯地は山の中にあり、敷地内の高低差が激しく長い坂道や階段が印象的。ジャージ姿で走って
いる隊員さんがいましたが、ここなら同じ距離を走ってもかなりの鍛錬になりそう。
式典会場の一般観覧席右側最前列に陣取ります。若干逆光ぎみですが、空は曇っているので大したハンデにはならな
いでしょう。初参加ですし、まずはオーソドックスなポジションで様子を見る事に。
1000からの式典開始まではまだ一時間以上あるので、さっそくあちこち見て歩きます。朝食を抜いてきたので、いい加減
お腹も減りましたし。
駐屯地内はかなり広々としていています。入場者がまだ少ない時間と言う事もあって、実にのんびりとした雰囲気。
総合案内テントの横には、35o2連装高射機関砲がありました。両脚を踏ん張っている姿は安定感がありますが、4つあ
るタイヤを折り畳んでいるので、何だかへたり込んでいる様にも見えます。
その反対側には、105o榴弾砲。正面に大きな防弾板があるレトロなデザインで、これもなかなか味わいがありますね。
厚生センター前の屋台広場はまだ閑散としていますが、焼きそばの屋台からは早くもソースの焦げるいいニオイが。吸い
寄せられるように向かいますが、屋台には『銃剣道訓練隊売店』と墨で大書きしてあり、焼きそばの屋台と言うよりも何やら
道場の様な雰囲気。ちょっと怯みます。
300円払って受領した焼きそばはキャベツと肉がたっぷりで、熱々の脂っ気とソースの強い味ががっちりと絡み合う見事な
出来栄え。紅生姜もみじん切りではなく細切りタイプで、味のメリハリと歯ごたえが楽しめます。ボリュームも十分ありますし、
これはいきなり伊丹と並んだか?実に美味しい駐屯地屋台焼きそばでした。
調子に乗ってもう一品、駐屯地業務隊による作州会うどんです。出て来たうどんはなかなかの豪華版で、具はかまぼこ2枚
に椎茸煮つけ、天カス、青ネギ、鰹節。プラスチック容器から伝わるダシの熱さが何とも嬉しいなあ。
ダシは薄口で、大量に入った天カスのコクと相まって実に美味。うどんは角のしっかり立った太めの冷凍うどんで、ダシとの
相性も非常にいいですね。いやあ、もうすっかり熱いうどんが美味しい季節になったんだなあ…と感慨にふけりつつ、最後の
一滴まで残さず頂きました。
大満足で厚生センターの入っている武蔵館へ。館内には常設のPXの他に、特設お土産売り場が出来ていました。どちらも
人で一杯です。PXでは人に頼まれていた物を買ったのですが、レジにいた2人の女性の感じがとてもよかったです。こういう
所は客商売の様で客商売じゃないし、いつもより極端に忙しくなる日なのであまり愛想のいい人は多くないのですが。
厚生センターを出て改めて屋台広場を見渡します。どの屋台も派手に飾らず、売り物の商品名を書いた看板を出している
程度。姫路や伊丹のようなネタまみれの屋台も楽しいですが、これはこれで誠実さと言うかつつましさが感じられていいなあ。
土地柄なのでしょうか。
腹ごなしに駐屯地内をウロウロと歩き回ります。銃剣道訓練隊の自衛隊選手権七連覇、という誇らしげな垂れ幕がありま
した。しかし七連覇というのは半端ではありません。体格の小さな日本人にとっては重要ですからね、銃剣道は。
総合受付テントの後ろにある、広報パネル展示に向かいます。しかしこの建物、何故か『MUNCHEN 日本原』とあります。
ミュンヘン?何でドイツ?首をかしげつつ館内に入ります。
館内にはお決まりの大画面プロジェクターによる自衛隊PR映像が流れていて、その奥は駐屯地資料室になっています。
室内のドアには空手部員募集のポスターがあり、流派は芦原会館でした。成程、陸自には合うかもしれませんね。
掲示されてあった施設の沿革によると、この建物は大阪万博で使用されたドイツのミュンヘン市館が寄贈され、この地に
移築されたものだそうです。なるほど、それでミュンヘンだったんですね。スッキリしました。
式典会場後方には古の車輛展示が。見るからに古臭くも味のある車輛が並んでいます。60式装甲車と言うのがありまし
たが、こんな乗用車みたいな車両に10人も乗れるのでしょうか。
その隣にある60式自走106o無反動砲は更にコンパクトで、ちょっと幅広な軽自動車みたい。これはカッコよくもカワイイ
車輛だなあ。普通にコインパーキングにも入れそうです。
さて、そろそろ式典開始時刻です。観覧席に戻ると、ちょうど音楽隊が入場してきた所でした。
89式小銃を抱えた隊員さん達が続々と行進し、観閲部隊指揮官が入場。そして最後は、駐屯地司令が黒塗りの業務車で
登場です。余所の駐屯地では1/2dトラックで乗りつける司令もいますが、この辺はどういう区分けなんでしょう。そう言えば
礼装で出てくる司令や、戦闘服で出てくる司令もいます。趣味の問題でしょうか。
その後は国旗登壇、来賓祝辞と続きます。ここで艦長さんとSAA水兵さんにメールを入れますが、2人とも横須賀で行われ
ている海上自衛隊観艦式の一般公開に出かけている最中との事。いいなあ…。私は落選したのが悔しくて、一般公開すらも
見に行く気が起きませんでした。
その後部隊は解散し、観閲行進へと続きます。観閲部隊指揮官を乗せた1/2dトラックを先頭に、指揮通信車、そして何
故か救急車が続きます。珍しい組み合わせですね。指揮官の人は体調が悪かったのでしょうか。
さらに水タンクを牽引した1.5dトラック、野外炊具一号(改)を牽引した3.5dトラックが登場。やけに生活臭いと言うか、不
思議な車輛構成です。
そしてこの駐屯地の一方の主力とも言うべきFH−70榴弾砲が続々と行進です。その後は81式短距離地対空誘導弾と
93式近距離地対空誘導弾が登場。放送によるとこの短SAMと近SAM両部隊は、射撃演習の全国大会で優秀な成績を
収めた部隊だそうです。
この後も対空レーダー車輛、重レッカ、96式装輪装甲車、78式戦車回収車、偵察警戒車、偵察オートと続いて、この駐
屯地のもう一方の主力である74式戦車が登場!あれ?間に入っているやけに地上高の低い装甲車は何でしょう?後で調
べたら、73式装甲車でした。強そう&カワイイという、なかなか不思議なビジュアルです。
そして締めの74式戦車が続々と続いて終了です。しかしこの日本原駐屯地、聞きしに勝るパウダーサンドです。大型車両
が目の前を通過した後は煙幕みたいな細かい砂がもうもうと立ち上り、視界を著しく遮られます。しかし砂塵の中に消えて行
く74の後ろ姿なんかは、まるでイラクに居るみたいな絵になります。これはこれでカッコイイなあ。
最後は国旗が降壇し、記念式典は終了。銃剣道の展示に続きます。よく考えたら自衛隊イベント巡りを初めてかれこれ5
年近くになりますが、銃剣道と言うものをちゃんと見るのは初めてです。
まずは全国七連覇と言う偉業を達成した隊員が一人ずつ紹介されますが、全員が面をつけているので顔が分かりません。
中央即応連隊じゃないんですから、折角の晴れがましい場で顔が出ないと言うのも寂しいものがあります。まあそうなると籠
手や面を外さないといけないので、色々と面倒なんでしょうけど。
紹介された選手たちは、全員が練士六段以上と言うツワモノ揃い。凄いですね。
まずは基本稽古。木銃を構え、裂帛の気合とともに鋭い突きが決まります。その後は1対1の三本勝負。高段者同士なの
で、素人目にも張りつめた様な緊迫感が伝わってくる試合でした。
続いて音楽隊の演奏です。これがただの演奏とは一味違い、音楽に合わせて榴弾砲をドカドカ撃つと言う凄いシロモノ。元
はアメリカ陸軍の曲で、実際に演奏と砲撃のコラボレーションを行う曲だそうです。
音楽隊が演奏を始めると、グラウンドの向こうから小型の榴弾砲を牽引したトラックが、砂塵を巻き上げながら突入してき
ました。トラックから飛び降りた隊員さんは、テキパキと荷物をおろして榴弾砲を展開します。おお、あんなに重そうなのに、人
力で展開するんですね。面白い。
素早い動作で射撃準備を整えると、曲のサビの所で本当にドンガドンガと撃ち始めました。砲自体はそれほど大きくない
のですが、これはかなりの見ものです。閉鎖機を開放する度に、もうもうと白煙を上げる金色の薬莢が滑り出てくるのが面
白い。
結局演奏が終わるまでドカンドカンと派手に撃ちまくり、最後はあっという間に撤収して行きました。いやあ、凄いものを見
せて貰いました。余所の駐屯地では見た事がありませんが、日本原ならではなんでしょうか。
その後はグラウンドの散水が行われ、いよいよ訓練展示が開始です。トラックの荷台からススキの束を次々と運び出し、
グラウンド各所に設置して行きます。敵勢力側のFH−70榴弾砲が展開され、周囲には鉄帽に赤テープを巻いた敵役の
隊員さん達が散らばって、89式小銃を構えています。
そして上空をOH−6D観測ヘリが旋回し、敵の状況を上空から観測。その情報を受けて五門のFH−70榴弾砲が自走
で展開し、素早く射撃体勢が整えられます。FH−70榴弾砲の自走は初めて見ました。けっこうスピードが出るんですね。
後方からは短SAMと近SAM、レーダー車輛が現れて、そのすき間を縫うようにして偵察オートが突入。見事なジャンプ
を決めた後は、立った状態のまま小銃射撃を浴びせます。
偵察警戒車が砂煙をあげながら侵入し、ぐるぐると砲塔を回転。猛スピードで走りまわりますが、どの方向に走っていても
砲塔はぴたりと敵の陣地を向いています。しかしこのパウダーサンドが有り難いですね。迫力が際立ちます。
そしていよいよFH−70榴弾砲五門による空包射撃が開始。かなり遠い位置なのですが、強烈な轟音が響き渡ります。
ここでもパウダーサンドは実にいい仕事をしてくれて、一発撃つ度にもうもうと砂煙が上がります。
それにしても、強烈な空包射撃の大盤振る舞いですね。一体いつまで撃つのかとびっくりしていると、今度は軽装甲機動車
が突入。ルーフの上からMINIMIをバリバリと撃ちまくります。上空からもUH−1J多用途ヘリによる援護射撃が始まりました。
さらに74式戦車も突貫してきて空包射撃。FH−70榴弾砲よりも遥かに低い位置で射撃を行うため、撃った瞬間の砂煙の
立ち方も強烈です。いやあ、凄いですね、日本原の訓練展示は。
最後は軽装甲機動車から飛び出した普通科隊員が、後方からの援護射撃を貰いながら突入。見事陣地を制圧して訓練展
示を終えました。いやー、実に迫力のある訓練展示でした。隊員さん達も頑張りましたが、影のMVPはこのパウダーサンド
ですね。カメラも頭もコナコナになってしまいましたが、非常に見ごたえがありました。
しかし周囲のマニアの人たちからは、
「今年は戦車回収なかったなー」
とのボヤキが。へー、そんな事もやってたんですね。しかし銃剣道展示などで日本原ならではのカラーは充分に出ていたの
で、それはまた次回のお楽しみ、と言う事にしておきましょう。
さて、後は駐屯地内をぶらぶら歩いて回ります。先ほどの古の車輛展示が行われていてる場所に行くと、植木が妙な形に
刈り込まれているのが目に入りました。何だこりゃとちょっと離れて見てみると、見事に『ニホンバラ』と刈り込まれていました。
所々バランスが崩れているのでプロの植木屋さんの仕事ではないでしょうが、これを駐屯地の人が作ったのかと思うと驚き
です。よく出来ていますね。
いやあ、こういうゆったりのんびりの駐屯地記念行事はいいですね。みなさんゴミのマナーも守っていて、実にいい感じです。
厚生センター前の屋台広場も賑わっていますが、酷い混雑と言う程でもなく、ここものんびりした雰囲気。それでも銃剣道訓
練隊の焼きそばは早々に売り切れていて、早いうちに食べておいて正解でした。
ふと隣を見ると、カレーうどんをパクついている子供を発見。あれ?カレーの屋台はありましたが、カレーうどんなんてあった
っけ?もしかしたら、お父さんのカレーをうどんに入れたのかな?まだ小学校低学年ぐらいなのに、なんと楽しみ方を心得てい
る子供でしょうか。エライ!君はきっと、人生を楽しむ達人になれるぞ!
駐屯地正門近くには古い回転翼機が野外展示されていました。OH−6J、V−107といった今はもう使われていない機体
の脇には、今なお現役で飛んでいるUH−1Hが。どれも長い間の雨ざらしで外装が痛んでいて、曇天の下で眺めていると一
寸グッとくるものがありました。隣では三人の白人が珍しそうに眺めて歩いていましたが、どこから来た人なんでしょう。
74式戦車の体験搭乗を見に行きます。こないだ伊丹で乗ったので今回はパスしましたが、伊丹よりも遥かに長い未舗装路
を74が爆走している様は感動的。直線距離があるので、トップスピードもかなり出ていました。先頭車両の巻き上げた土埃の
中から次の車輛が突然飛び出してくるのは、絵的に非常に面白かったなあ。来年はここで乗ってみます。
初参加の日本原駐屯地でしたが、実に楽しめました。次回のお楽しみも色々見つけましたし、是非来年も参加したいと思い
ました。
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