2009.07.20
前日の金沢港での護衛艦あぶくま一般公開に続き、北陸海自イベント遠征2日目は石川県七尾港で行われる多用途支援
艦ひうちとミサイル艇うみたかの一般公開を見学です。多用途支援艦は今まで見た事のない艦ですし、ミサイル艇は潜水艦
の次に好きな艦艇です。これを一気に見る事が出来るんですから、大阪から遠征してきた甲斐もあると言うもの。0750に富山
県氷見市を出発し、人通りの少ない夏の海沿いの道路を七尾市目指して走ります。
40分程で一般公開の行われる埠頭に到着。地本職員の方の誘導に従って駐車場に乗り入れると、すぐ隣にはPG828ミ
サイル艇うみたかの雄姿が!うーん、やっぱりカッコいいなあ。何と言うか、他の艦には無い『躊躇いの無さ』をビシビシと感
じます。艦橋構造物と煙突、船体のバランスもとてもキレイで、見るからに速くて強そう。一般公開は午後からですが、どこま
で見せてくれるんでしょうか。
次は午前中に一般公開が行われるAMS4304多用途支援艦ひうちへ向かいます。同型艦のあまくさを昨年の佐世保で
見たのですが、埠頭の高さが違うのか潮汐の関係か、ひうちの方が大きく見えますね。
しかし、改めて見ても妙な形の艦です。後甲板を低く広くとってあり、艦橋構造物が一段高い前甲板にぐっと押し出されて
何だか前につんのめりそうな感じ。後甲板に重くて大きいものを載せる事を前提にして作られた様な外観は、トレーラーの
頭の部分にそっくりです。前甲板も艦の大きさからすると不自然なほど狭く、ブルワークもあって余計に重く見えますね。
後甲板では、一般公開前のミーティングが行われていました。
左右のウイングから艦橋の前方をぐるりと取り囲むように通路があり、これは掃海艇と同じく作業性を考えての事でしょう。
うーん、見れば見るほどクッキングパパの荒岩主任にそっくりであります。うまいぞっ!
そうこうしているうちに、一般公開開始五分前の艦内放送が聞こえて来ました。しかし広い埠頭には今ひとつ人が集まら
ず、おまけに小雨まで降り始める始末。
とにかくひうちに乗艦です。パンフレットを貰い、舷門を通過…あ!何時の間にやらうみたかが出港している!分かって
居たら、出港シーンを見に行ったのに…。慌てて撮影しますが、鉛色の空と海に、ウォータージェット推進の白い航跡がキ
レイでした。しかし1300から一般公開なのに、今から何処へ行くんだろう。とにかく、入港作業は押さえておきたいものです。
ひうちの前甲板に移動。ブルワークがものものしい雰囲気ですが、この速射砲の無いやけに狭い甲板と言うのも違和感
ありますね。
艦内から艦橋へ上がります。ここでは見学者から船酔いについての質問があり、係の隊員さんが
「運動神経の発達している人の方が、三半器官が過剰に反応して酔いやすいですね」
と言っていました。へー、そういうものなのか。
ぱっと見は大きく見えた艦橋も中は意外にも手狭で、副長席のカバーは鮮やかな赤。一等海佐と言う事は、司令が乗艦
している模様です。しかしこの副長席、バケットシートみたいです。ウエストと太ももの所が立ち上がっていて、ホールドが
非常に良さそう。こんなものが必要とも思えませんが、色々と珍しい艦だなあ。
傍にいた隊員さんにお話を伺いましたが、この艦の主な任務は水上射撃標的の運用と、離島への物資輸送だそうです。
なるほど、トレーラーのヘッドという印象は間違ってなかったみたい。確かに後甲板に物資を乗せて、ようやく見た目が安定
するような気がします。それ以外の艦内生活に関しては、他の艦艇と殆ど変らないとの事でした。
そうこうしているうちに艦橋が徐々に混雑し始めたので、後甲板へ向かいます。バラキューダ用のクレーン近くに居た隊員
さんにお話を伺ったのですが、この方はかなり話し好きなようで、前任地が阪神基地隊だったと言う事もあって話が盛り上
がりました。水上標的バラキューダについての話になった時、
「操縦ですか?基本的に艦からの無線誘導で動かしていますが、人が乗って動かす事も出来ますよ。まあ射撃訓練に使
いますので、まず乗る事はありませんけどね。もっとも、乗せてやりたい奴はいますよ!ガハハハハ
ハハハハハ!」
と、豪快に笑っておられたのが印象的。実に面白い人でした。
舷門近くには乗組員全員のネームプレートがあり、数えてみると40人ほど。意外と少ないんですね。と言う事は、曹士でも
二段ベッドなんでしょうか。パンフレットには基準排水量980dとありましたが、船の大きさはもっとあるような気がします。
そして艦長さんは三等海佐の方でした。あれ?艦長席のカバーが赤青だったので、二等海佐じゃなかったのかな?三佐
って、青シートじゃなかったっけ?
以上で多用途支援艦ひうちの一般公開は終了です。
埠頭のテントでは定番のお子様制服試着体験が行われていて、実物の航空機用ヘルメットがありました。鷲のエンブレム
が描かれて居ているので、沖縄に居たファントムの部隊のものかな?
隣のテントには、アンケートコーナーと救護班。アンケートに記入すると、カレンダーや空自ボールペン、戦闘機の写真等
を沢山頂きました。それにしても空自ばかりだなあと思っていたら、空自専門の募集だったようです。海自のイベントなのに
図々しいというか何と言うか。しかしこういうのって、普通陸海空纏めて募集するもんじゃないのかなあ。
救護班はヒマそうで何よりです。この季節なら熱射病や日射病の対策で来ているのでしょうが、今日は朝から曇って肌寒い
位です。二か月前の和歌山港では、インフルエンザ騒ぎで陸自の応援まで借りての体勢だったなあ。あっという間に洟もひ
っかけられなくなったインフルエンザウィルスは、どんな気持ちなんでしょう。
さて、うみたかの一般公開が行われるのは1300から。あと2時間近くあります。どこかで時間を潰さなきゃ。
その後は近くにある能登食祭市場という巨大な道の駅を見て歩き、、一般公開が行われている埠頭が見えるウッドデッキ
の広場に出ます。空は曇っていますが、やっぱり海は気持ちいいなあ。目の前には先ほどまで乗艦していたひうち、その前
にはうみたか…え?うみたか?もう帰って来たの?
艦尾から白波を立てている所を見ると、たった今帰って来たばかりの模様。一時間も出ていないんじゃないのか?それな
らそれで、埠頭で待てば良かった…orz。仕方ない、まだ時間はかなりありますが、うみたかを見に行くとしましょう。
朝とは別の場所に停泊しているので、また違ったアングルからの撮影です。しかしこの、ひたすら攻撃に特化したようなス
タイルが見ていて気持ちいいですね。艦尾の90式対艦誘導弾は三本搭載されていました。
その後1300からはミサイル艇うみたかの一般公開開始。おお、乾舷が低い!甲板が狭い!そして76o速射砲がでかい!
砲塔部分が平面を多用したステルスシールドなので、狭い甲板も相まって余計に大きく見えます。
その横で隊員さんが砲身のウォータージャケットについての説明を行っていますが、それよりも砲身真下にある防舷物が
気になります。船のサイズに合わせてか一抱えできる程度の小ぶりな代物ですが、これが専用のバスケットに入ってロープ
で固定されています。普通は甲板かどこかに括り付けてある程度ですが、高速航行が売りのミサイル艇だけあり、小さく軽
い防舷物はこういうバスケットにでも縛り付けておかないと、とてもではありませんが固定できないのでしょう。しかし、なんだ
か揺り籠に入っているみたいでカワイイなあ。
傍にいた隊員さんに、艦内生活は他の護衛艦に比べるとどうですか?と尋ねると、
「ああ、食事が随分違うみたいですよ。」
どうやらこの装備満載の小さな船にはキッチンは無いらしく、基本的にレトルト品や冷凍食品をレンジアップして三食賄っ
ているそうです。普通海自艦艇と言えば、美味い食事が当たり前みたいになっているのに、その恩恵にあずかれない艦も
あるんですね。お米もサトウのごはんばっかりだそうですし、流石にちょっと気の毒な話です。
「なもんで、ちょっとでも寄港すると、みんなで街に出て食べるのが楽しみで仕方ないですね。昨日は七尾市内に繰り出し
ましたし、その前は金沢でした。鶏の唐揚げが美味かったですねえ」
そうか、揚げたての唐揚げなんか一番縁遠いんだろうなあ。まあ艦の性質上、長期航海と言うのは考えられないのでまだ
救いがありますが、今夜も北陸の美味しいものをお腹いっぱい食べてください…。
その後は舷側いっぱいに幅を取っている艦橋下部から艦内へ。おお!艦内も見れるみたいで嬉しいなあ。艦内に入って
すぐ右側が司令部区画で、その向かいが士官室。こんな狭い船にまで司令部を置かないといけないのでしょうか。そもそも
こんな殺るか殺られるか度の高い刺客みたいな船に、司令部が必要なのかなあ。
ラッタルを上がるとすぐに艦橋でした。うわあ、狭いなあ。前後左右がギリギリまで切り詰められたスペースに、人数分の
シートが据え付けられているのでものすごい狭苦しさです。そうそう、荒れ狂う日本海を40ノット以上のスピードでぶっ飛ば
せる様、この船は乗員全員が着席して運用できるようになっているのでした。しかも肘かけまであり、走り屋さんみたいな四
点式のシートベルトまで用意してあります。一見カッコイイですが、実際は想像を絶する世界なんだろうなあ。
隊員さんにお話を伺うと、確かに座って仕事が出来るのはこの艦の大きな魅力だそうです。ただその反面、シートのクッシ
ョンが良すぎて、腰痛を訴える乗組員も多いとの事。この辺りはなかなか思うような加減にはなりませんね。
しかしこの艦橋、艦橋と言うよりはコックピットと言う方が正確ですね。スイッチ類が正面ではおさまらず、天井部分にまで
広がっているのもまさに航空機の感覚です。普通ならスペースに余裕のある艦長席周りも、周囲が通信機やパソコン、訳の
分からない機器類に囲まれて非常に圧迫感があります。
そして一番気になったのが、艦長席右側についている戦闘機のスティックみたいなシロモノ。何だこれは、艦艇でこんなの
を見るとは思いませんでした。
傍にいた隊員さんに尋ねると、これは艦外にある赤外線カメラの操作レバーだそうです。なるほど、艦長席からちょっと上
を見ると、小さなモニターがついていました。確かにこっちの方が片手で操作できるし、とっさの時も間違いなくホールド出来
るので便利そう。面白いですねえ。
そしてこのミサイル艇の艦長席もカバーは赤青。艇長は三等海佐だったと思うのですが…?私の思い違いだったのかな?
中央の操舵席はお馴染みの舵輪ではなく、航空機みたいなハンドルがついていました。脇にはスロットルレバーもあり、も
う航空機の雰囲気そのまんまです。面白いなあ。頭上には艦の進路や速度、風速や対水速度、ドリフト速度、真風速等をひ
と目で確認できるモニターが。少ない人員で幾つもの仕事をこなさないといけないので、色んな表示や機器類の配置が合理
的で見やすく使いやすくなっています。
ウイング後方からラッタルを降りて、艦中央へ。ここには複合艇RIBが搭載されており、そばにいた隊員さんにお話を伺い
ます。今度は私の趣味である戦闘糧食について。
「基本的に積み込んだ食事が無くなるまでに帰るので、日常で缶メシを食べる事はまずないですね。ただ、一応決まりで
何日分かは積んでありますが、この船には調理場と言うものがありませんので、どうやって温めればいいんでしょうねえ…」
と、相談されてしまいました(笑)。この小さな船に風呂ガマがあるとも思えませんし。まあ電子レンジがありますが、21人
分をいちいち缶から出して温めると言うのもかなり面倒くさそう。
ここでうみたかグッズ販売を発見!RIBと船のすき間みたいな所に押しこむ様にして出店してあるのが、この小さく盛り沢
山の船らしいなあ。無事識別帽を入手です。昨日のあぶくまもさっきのひうちも入手できなかったので、ホッとしました。
ただ、うみたか固有の識別帽でなく、第二ミサイル艇隊のものでした。と言う事は、同じ隊に属しているPG824はやぶさ
と共用なのでしょうか。まあ実際に乗員の方が被っている識別帽もこのデザインですし、私のコレクション的には全く問題あ
りません。一隻当たりの乗組員がどうしても少ないので、安くあげるために部隊単位で作ったのでしょうか。でも、くまたかの
識別帽は佐世保で買えたしなあ…。この辺りは謎ですね。
最後は後部甲板。90式対艦誘導弾が八の字に組んでありました。よく考えたら、すぐ傍で見るのは初めてです。護衛艦
ではどの艦も上の方にあるのを見上げる事が多かったですし。ハープーンとの区別がつきやすいフタのポッチですが、近く
で見ると八角形。てっきり丸いのかと思っていました。
と言う訳で、小一時間のミサイル艇うみたかの見学を終了。艦橋にも上がれたし識別帽も買えました。ミサイル艇ならでは
の話も沢山伺えたし、大満足で上陸です。
艦尾のウォータージェット推進機ですが、航空機の推力偏向ノズルの様な実に複雑な形状。原理的にはほぼ同じですしね。
さて、この後は大阪までひとっ走りか…と、うみたかとひうちを眺めながら埠頭でしみじみしていると、ここで知らない人に声
をかけられました。
「いやあ、朝からおられたので、こういうのがお好きな方かと思いまして」
はい、大好きです!この方は富山市内から来ているハンドルネーム艦長さん。お話を伺うとそのマニア度もかなりの重症
で、イベント参加歴も私とは違って相当なもの。よく見るとカメラもレンズも、私のエントリーモデルとは違ってとても高そうです。
小松基地航空祭にも毎年参加されている模様。富山はいいなあ、戦闘機基地が隣県にあって。大阪には何もないんです…。
その後もしばし情報交換を兼ねた雑談を交した後、
「それじゃまた、どこかのイベントで」
ほう、なかなかいい別れの言葉ですね。今度から私も使わせて貰いましょう。北陸方面には脚を伸ばす事が多いので、そう
遠くないうちにお会いできるような気がします。
その後は富山に戻って所用を済ませ、大阪に戻りました。天候はやや危うかったですが、あぶくま、ひうち、うみたか、と言
った今まで見なかった艦に触れる事が出来、実に満足の一泊二日の北陸遠征でした。
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