護衛艦あぶくま一般公開in金沢港

2009.07.19


      7月の19〜20日にかけて、石川県で行われた二つのイベントに参加する為に遠征してまいりました。深夜0時に大阪を
     出発し、途中の徳光PAで車中泊。初日は金沢港無量寺埠頭で行われる護衛艦あぶくまの見学です。
      北陸自動車道を金沢西ICで降り、しばらく走ってウッドデッキもお洒落な無量寺埠頭に到着。石川地本の人の誘導に従
     って、まだスカスカの駐車場に乗り入れます。
      目の前には、曇り空をバックにしたDE229あぶくまが。いやあ、さすがに存在感あるなあ。この、最近の護衛艦には無
     いゴテゴテした感じがたまりません。艦中央のアスロックランチャーの後方にある丸い煙突、艦尾にいるCIWS。うーん…
     いいなあ。
      あぶくま型は以前から一度乗りたかった艦だったので、石川県まで出て来た甲斐がありました。関西では見る機会が少
     ない貴重な艦ですしね。


      埠頭では、10人ほどの隊員さんがメモを片手に艦橋を見上げています。何が始まるのかと眺めていると、どうやら手旗と
     旗流信号の訓練でした。
      あぶくまの左ウイングに出た海士が次々と繰り出す手旗を見て、真剣な面持ちでメモを取っています。白い制服で革靴が
     黒と言う事は海曹かな?それにしては階級章も無いし、なんで今頃こんな事を…あ、曹候補生の実習か何かかな?こうい
     う実際の訓練の様子を目の当たりにする機会は滅多にないので、貴重なものを見せて頂きました。


      埠頭の端の方には大きなマストの模型があり、地元防衛協会と石川地本による祝入港の幕が張ってありましたが、その
     脇のベンチに旧海軍らしき軍服で座っているお爺さんがいました。海軍の大先輩?昔の階級章が読めないのでどんな位
     にいた方なのか分かりませんが、そのふんぞり返り具合から見るとタダ者では無さそう。それにしても、この朝早くから昔
     の軍服を引っ張り出して来るとは、なかなかステキな人であります。いわゆる“海軍爺さん”でしょうか。
      埠頭では、先ほどから艦首の辺りで釣り糸を垂れている人達がいますが、護衛艦には全く興味は無さそう。この辺りの人
     にとっては、よくある風景なんでしょうか。うらやましいのう。時折小さな豆アジが釣れていました。
      陸自からの応援と思しき車輛が来て、職員の方たちがテキパキと手慣れた様子で業務用白テントを幾つも組み立ててい
     きます。やけに大掛かりですが、そう言えば午後からは体験航海が行われるのでした。
      連休の朝という事もあり、埠頭には子供たちの姿がチラホラ。今回のあぶくま入港はみなとフェスタ金沢というイベントの
     一環なので、昨日からこの辺りはお祭りの雰囲気みたいです。
      「第○分隊、○○士長、面会」
      という艦内放送が。地元出身の隊員さんに、家族か友人が会いに来たのでしょうか。


      艦尾に回ると、後甲板の一層下がテラス状の空間になっていて、何人かの隊員さんが煙草を吸いながら談笑しています。
     作業着姿の曹士たちに混じって幹部の人も一服していて、コミニュケーションが取れている模様。
      埠頭では、実に機嫌の好さそうなゴマ塩頭の60歳位の人がやってきて、見ず知らずの私に向かって
      「10時ぐらいから、ばーっと降ればいいのに!なっ!」
      と、まるで三文ミュージカルみたいな大きな身振りで話しかけて来ました。返事は全然期待していなかったのか、それだけ
     言うとふらふらとフェリーターミナルの方へ消えて行きました。な、なんだったんだ。
      するとその人の暗黒パワーのなせる業なのか、それまで少しだけ晴れていた空からパラパラと雨が。なんなんだあの人、
     魔法使いか何かなのか?
      見る間に雨が強くなり、慌てて車に戻ります。風もかなり出て来たようで、地本のテントがバタバタと波打っています。うぬ
    ぬ、本当に魔法使いだったのか?えらい迷惑な事です。
      突然降り出した雨は30分程で止み、空も明るくなってきましたが、風は相変わらず強く地本テント前では午後からの体験
     航海を行うかどうかを検討しています。ちょっと聞き耳を立てていると、どうやら中止の判断は風速10mが目安の模様。
      テントには子供用制服試着コーナーもあり、そのそばには水兵服を着た犬のトミーくんと、南極観測員らしきペンギンの
     アイシーちゃん
が愛嬌をふりまいていました。しかし何だなあ、親しまれやすいようにと言う意図は分かりますが、余りにも
     弱っちそうです。
南極観測のアイシーちゃんはまあいいとして、ヘラヘラ笑ってるトミーくんにはもうちょっとしっかりして貰い
     たい。
さっきの海軍爺さんに一喝して頂きましょうか。

  


      そしていよいよあぶくまに乗艦です。舷門の隊員さんに敬礼で迎えられ、先ず目にしたのがアスロックランチャー。艦の
     中央にコレがあると言うのは、なかなかに時代を感じさせます。


      一般公開直前に乗組員の方がモップを掛けていたのですが、今も小雨がパラついているので甲板は濡れて滑りやすい
     状態。右舷に回って艦内に入り、そこからラッタルを二層上がるともう艦橋。この辺りは小さい艦ならではです。
      初めてのあぶくま型の艦橋は、やはり艦のサイズ相応に狭苦しい感じ。一方ウイングは後方に旗甲板とチャフ発射機が
     あるせいか、広々とした印象です。上部指揮所も開放的ですが、射撃指揮装置などがタケノコの如くにょきにょきと生えて
     いて、開放感の割には歩きにくい造り。甲板には大きく『29』と、艦番号が白ペンキで描かれていました。ゴリライモのシャ
     ツに『ゴ』と書いてあるようなものでしょう。


      左ウイングから再び艦橋へ。お、この二等海佐の階級章をつけた幹部の方が艦長さんなのでしょうか。ボクサー時代の
     渡嘉敷勝男に似た若い方で、いかにも溌剌として俊敏そう。秋山真之中佐とちょっとイメージが被ります。
      天井からは伝声管がにょっきり伸びていました。傍にいた隊員さんに伺うと、艦橋真上の上部指揮所との通信で、現在
     も使っているそうです。なるほど、故障しようが無い構造なので便利なんですねえ。


      後甲板に回ると、中央にCIWSが牢名主の様に鎮座していました。この艦ではしんがりを守る重要なポジションらしく、ち
     ょっと誇らしげ。


      最後にもう一度艦首に向かうと、76o速射砲の傍にいた隊員さんが、
      「この砲は、10q先の軽自動車を狙って当てる事ができます」
      と説明していました。砲術の方かな?何だか自分の子供を自慢しているようで、ちょっといい光景でした。
      1100、見学を終えて上陸です。欲を言えば、艦内の科員食堂や機関室なんかも見たかったなあ。しかし、相当古い艦な
     のに、すごくきれいにしていたのが印象的でした。地元ではなかなかお目にかかれない艦種でしたし、雨も酷くならず満足
     のいく一般公開でした。


      そこから富山県高岡市に移動です。昼食はJR高岡駅近くの『キッチンひらた』。いかにも昔風の店構えが気に入って飛
     び込んだのですが、なんかもう、30年位前から時間が止まったような洋食屋さんで、滅茶苦茶気に入りました。こんな雰囲
     気が残ってる店は、そうないでしょう。ふとカウンターを見ると、小さかった頃の自分がハンバーグをパクついているような、
     そんな店です。
味、量、インパクトともに申し分無く、久々にコックさんのつくった料理を楽しめました。

      その日は富山県氷見市に住む母方の祖母の家で一泊。翌日の石川県七尾港での艦艇一般公開に備えます。夕方から
     は80過ぎのバアサンとふたりで居酒屋に飲みに行き、お前は女心が分かっていないと説教まで食らうと言う、実に味わい
     深い夜になりました。




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