明野駐屯地創設54周年航空祭

2009.11.08


      三重県伊勢市で行われた、明野駐屯地航空祭に行ってきました。明野駐屯地には回転翼機の操縦・運用・整備・支援
     関する教育を行う航空学校や、第5対戦車ヘリコプター隊、第10飛行隊、飛行実験隊、その他気象・通信・整備の派遣隊
     が駐屯し、八尾駐屯地と共に中部方面航空隊の航空戦力の中核を成しています。
      当日は朝まだ暗いうちに自宅を出発し、松阪を経由して0739に近鉄明野駅に到着。航空祭にしてはかなり遅い時間の
     到着ですが、まあ今回は初参加ですし、撮影条件のよいエプロン最前列に拘らず、色々見て歩くつもりです。
      駅から駐屯地まではシャトルバスを利用し、初めての明野駐屯地に足を踏み入れます。沢山の人達がエプロン目指して
     歩いていますが、私は午後からのヘリ地上滑走試乗券を貰いに、D格納庫へ向かいます。
      前から20番手位に並びましたが、私の後方にはあっという間に2〜300人位の行列が出来てびっくり。やっぱり人気ある
     んですねえ。この調子では、定員に達するのはあっという間の模様です。試乗券の配布は0900から。あと小一時間はこ
     のまま待つ事に。基本的に私は単独行動なので、こういう時は交代で場所を確保しながら地上展示機を見に行ったりでき
     ないのが辛い所であります。屋台を楽しむために朝を抜いてきたし、お腹も減ったなあ…。
      そして0900、時間通りにヘリの地上滑走試乗券の配布が開始。ラミネート加工された試乗券を貰いました。これでよう
     やく地上展示ではない動いているヘリに乗れるのか。八尾では毎年毎年ハズレくじばかりだったので、感慨深いものがあ
     ります。
      さて、駐屯地内を見て回ります。先ずは空いているうちに装備品展示を見て回る事に。C格納庫にあった暗視眼鏡体験
     コーナー
へ行ってみましょう。


      既に20人程が行列を作っていましたが、これが全然進みません。プログラムには開門と同時に開始とあるのですが、何
     らかの事情で準備が遅れているのでしょうか。だとしたら別の展示に回ると言う手もありますが、私の後方には既に沢山の
     行列が出来ていて、離脱した途端に展示が始まったりしたら目も当てられないし…。
      何だかんだで30分程して、ようやく暗視眼鏡体験が始まりました。手荷物カウンターの前には実物の暗視装置が航空へ
     ルメットに装着してあり、思ったよりも小さいんですね。


      そしていよいよ私の番。バラキューダで偽装された三畳ほどの大きさのコンテナに入ると、まるで上空から戦場を見下ろ
     すかのような精密なジオラマ
がありました。まずは室内が明るい状態で暗視眼鏡をつけてみます。ジオラマで再現された山
     や道、建物や車輛が、緑色の明かりに照らされてはっきりと見る事が出来ます。
      ここで係の隊員さんの指示に従って暗視眼鏡を外します。うわ!全然見えません!まさに自分の鼻の先も見えない真っ
     暗闇。再び暗視眼鏡を装着すると、これがまたはっきりと見えるんですから驚きです。
      しかし凄いもんですね、暗視眼鏡。ジオラマにはごくごく小さな電球が幾つかあるだけなのですが、この極めて僅かな光に
     反射した映像の増幅を繰り返して、はっきりとした画像にするとの事。全く驚きです。
      真っ暗闇の中での戦闘で、敵がこちらを見ているのにこちらからは敵が見えないという恐怖感は、一体どれだけのものな
     んでしょうか。考えたくもありませんが。
      散々待った割にはあっという間に終わってしまいましたが、いやあ面白かったなあ。
      続いてフライトシミュレーター体験に挑戦です。思ったよりも行列が少なかったのでホッとしましたが、一人あたり5分位は
     かかるらしく、ここも全然進みません。もう放棄してしまおうかとも思いましたが、余所ではなかなか出来ない体験だしなあ。
      全く朝からここまで、ひたすら待ちまくりのイベント参加になってしまいました。開門からかれこれ2時間近く経っているのに、
     人の背中しか見ていない気がします。
こんなイベント参加も珍しいなあ…。


      そしてようやく私の番が回ってきました。ちなみに私の前の人は、空中でヘリをねずみ花火みたいにくるくる回転させた挙
     句、あえなく墜落。
成程、レバーの操作はじわじわと小さく行うのがコツみたいです。
      係の人に操作方法をひと通り教わってシートにつきます。右手のサイクリックスティックで姿勢を安定させ、ラダーペダル
     で方向を変えつつ左手のコレクティブピッチレバーで出力を調整…うん、じわじわとではありますが、画面の中に滑走路が
     見えて来ました。ゆっくりと高度を下げ、もう少し、もう少し…というところで着陸失敗してしまいました
      まあ、何だかんだで大きく姿勢を乱すことなく滑走路上空までは持って行ったんですから、初めてにしては上出来でしょう。
     次はもっと上手くやれると思いますが、流石にもう並びたくないなあ。
      その後はトイレに寄り、1030、ようやく屋台広場に向かいます。もう空腹で目が回りそう。まずは焼きそばから行ってみ
     ましょう。鉄板で炒めた肉野菜に、大釜でゆでた中華めんをどさっと乗せ、盛大に湯気が上がった所にソースをだばぁ。う
     ーん、見ていると実に美味しそう。
      ちなみに隣のテントにはうどん屋さんが出ていて、屋号は『コブラ亭うどん』今ひとつ食欲が湧かない屋号です。


      で、焼きそばです。うーん、値段なりの味ですかねえ。一応キャベツと豚肉が入っていますが、何か一味足りないような。
      どうもこの手の屋台焼きそばの味は、イベントの規模が大きくなるのに反比例するみたいです。比較的小規模な陸自駐
     屯地記念式典は美味しいのが多いのですが、空自の航空祭では美味しいのに当たった試しがありませんし。
      式典会場では記念式典の真っ最中らしく、ヒゲ隊長閣下の声が聞こえます。
      屋台が並んでいるイベント広場の中央では、毎度おなじみの巨大なエアドーム式の滑り台が。一瞬何の形をしているの
     か分かりませんでしたが、よく見るとAH−1Sコブラでした。ローターが無いと分かり辛いですね。


      さてお次は、伊勢うどんというのを食べてみましょう。例のコブラ亭うどんも気になりますが、行列がなかなか消化できて
     いないのでパスします。
      初めて食べる伊勢うどんは、なんじゃこりゃと言いたくなる位のド太いうどんでした。薄切りかまぼこ二枚と青ネギがどっさ
     り乗っていて、ダシの代わりに醤油をサッとかけてあります。まずは一口。
      うーん、なんじゃこりゃ。物凄く太いうどんなのにふにゃふにゃで、表面も荒れまくりでボロボロです。まるで鹿の子模様に
     化粧包丁を入れてあるみたい。いかにも、初めて打ってみた手打ちうどん、と言った感じです。少なくとも、製麺所で作った
     うどんを仕入れているとは思えません。しかし味は意外に美味しく、塩気よりも旨みと甘みを感じるたまり醤油とうどんがよく
     合っています。
      うん、これ、結構いけますよ。おろし生姜なんかをちょっと入れたい所ですが、それは伊勢うどんの流儀に反するのでしょ
     うか。


      その後はエプロンの地上展示機を見て回ります。丸っこい卵型のOH−6D観測ヘリがカワイイなあ。
      UH−60JA多用途ヘリは流石にボリュームがあります。機内にも入れましたが、キャビンはがらんどうでかなり広いなあ。
     海自に配備されているほぼ同型のSH−60J哨戒ヘリは、この部分にソナーだの何だのがぎちぎちに詰まっているので非
     常に狭いのですが。OH−1OH−6Dと同じ観測ヘリですが、実にスマートで魚みたいです。


      その後はCH−47輸送ヘリ、AH−1S対戦車ヘリ、AH−64D戦闘ヘリ、UH−1J多用途ヘリと見て歩いた所で飛行展示
     が開始。30機編隊からなる祝賀飛行は、堂々たる隊列を組んで上空を通過して行きました。


      急に静かになったエプロンに、今度はAH−64D戦闘ヘリアパッチが車輛に牽引されて登場です。車庫入れの要領で、ア
     パッチが目の前でくるりと180度ターンしてみせるのがモデルさんみたい。
      左右に張り出したエンジンメインローターの上のお餅が激しい自己主張を行っていますが、よく見るとキャノピー後方に
     は小さなワイヤーカッターがありました。一見して無骨なアパッチですが、まるで寝ぐせがついたみたいでちょっとカワイイで
     すね。


      先ほど上空を通過したヘリ群が帰ってきました。そして各機が順番に、地上10m程をゆっくりと観閲行進。車がゆっくり走
     るぐらいの速度なので、撮影しやすくて有り難いなあ。
      赤白と黒白にペイントされたOH−1観測ヘリがペアを組んで登場しますが、何だかフィギュアスケートの男女ペアを見てい
     るみたいで非常に優雅でした。


      そしてトリは私の大好きなCH−47輸送ヘリが務めましたが、何故か地上をころころと滑走しての行進です。恐らくパワー
     があり過ぎて、強烈なダウンウォッシュを避けるために敢えて地上滑走にしたのでしょう。
      次は各機の機動飛行です。OH−6DAH−1S、AH−64Dが次々と登場し、それぞれの運動性能を誇るかのように上
     空を飛び回ります。中でもOH−1のソロフライトは強烈で、ヘリなのにヘリらしからぬ激しい機動を連発。途中でパタンとひ
     っくり返るのでは…
と、何度もヒヤヒヤさせられました。


      さらにOH−6Dの4機編隊による機動飛行。縦一直線のフォーメーションから、一気にダイヤモンド編隊に移行。おおお、
     まるでブルーインパルスです。スモークが無いのが残念だなあ。
      AH−64Dアパッチもヘビー級のボディをひらりひらりと翻し、運動性能とパワーをアピール。そして観閲壇正面で高度を
     下げ、地上すれすれでホバリング。私の居るエプロン中央からでは人の頭越しにしか見えませんが、最前列の人達にとっ
     てはたまらんでしょうね。


      最後は各機が高度を下げ、式典会場をゆっくりと通過。おお、コックピットの中でパイロットたちが手を振っています。
      いやあ堪能しました。今年は所用で八尾駐屯地の記念式典に参加できなかったので、ヘリに関しては溜飲を下げた感じ
     です。


      さて、これで終わりかと思っていたら、ここで訓練展示が始まりました。会場左手から軽装甲機動車を牽引したCH−47
     登場。車輛の着地と同時にロープを切り離し、エプロン正面では派手な地上戦が始まりました。しかし今いる位置からでは
     その様子が全く見えず。うーん、成す術が無いとはこの事ですね
      最後は再びCH−47がやってきて、4名の普通科隊員をロープで牽引して帰って行きました。正直、何が何だか分からな
     いままに終わった訓練展示でしたが、次回は最前列から見る事にしましょう。


      以上で午前中のプログラムは終了、エプロンに居た人たちがゾロゾロと動き始めます。私も地上滑走体験の行われるD格
     納庫へ移動します。そしてここでも1時間近い待ち時間を過ごし、ようやく受付に辿り着く事が出来ました。隊員さんに脱脂綿
     を丸めた耳栓
を貰い、一通りの説明を受けた後はいよいよエプロンへ。
      おお!目の前でCH−47チヌークがぶんぶんと巨大なローターを回していて、そのエンジン音とダウンウォッシュに圧倒さ
     れます。以前八尾で見た地上展示のチヌークはお昼寝中みたないもんでしたが、このチヌークはやる気満々です


      後部ランプから機内に入ると、中はほぼ真っ暗。丸い窓からの太陽光が、機内をモノクロの世界にしています。金属パイプ
     にハーネスを通しただけのシートに体を預けますが、意外と座り心地がいいですね。
      そしてこれも意外でしたが、機内が思ったよりも静か。試しに耳栓を外してみましたが、どうやらエンジン音やローターの音
     は外の方が煩いみたいです。機内はキルティング加工の保護マットで覆われていて、ヘルメットさえしていれば少々ぶつけて
     も問題なさそう。一度に乗り込めるのは40人程ですが、みんな珍しそうに機内を見渡しています。


      そして機体がすーっと動きだしました。これも意外にスムーズな滑り出しで、何だか旅客機に乗っているみたい。滑走路の
     中央あたりに来た所で、ふわりと浮いた感覚が。窓の外を見ると、あっという間に格納庫を見下ろす高さまで上昇していて、
     そのままゆっくりと前進。
      この時感じたのが、周囲に何かの影が一つも無いと言う事。当たり前ですが、空の上では雲以外に太陽を遮るものは一
     つも無い…と言う事に、今更ながら感動です。


      そしてCH−47は徐々に高度を下げ、実にスムーズに着地。着地のショックも無く、あれ?いつのまに?という感じでした。
      いやあ、あっという間の体験試乗でしたが、面白かったなあ。今まで八尾で何度も抽選を外していたので、今日は色んな
     意味で八尾での仇をとったような1日です。

      その後は屋台の並ぶイベント広場へ向かい、音楽隊の演奏を見学。曲目はなかなかくだけていて、キャンディキャンディ
     や明日のジョー、銀河鉄道999など、懐かしのアニメソングメドレー。働くお父さんを応援するという趣向らしく、リゲインの
     CMの曲
なんかもありました。最後はアンコールに応えてもう一曲披露し、演奏会は終了。格闘展示に移ります。


      徒手格闘術の教官が、真っ白な道着姿で登場。8名の戦闘服の隊員も続きますが、よく見ると全員の胸にはレンジャー
     徽章が輝いています。

      先ずは2人1組になっての杉板の試割り。パカパカと景気よく割れる度に歓声が上がります。続いては、教官による蹴りで
     のバット折り。2本の木製バットを、足刀による蹴り一撃で真っ二つにしていました。空手の演舞なら脛で蹴るのですが、自
     衛隊徒手格闘では足刀を使うんですね。確かに戦場で蹴り技を使うなら、つま先か足刀になるのでしょう。


      それにしてもこの教官の人、物凄く悪そ…いや、強そうです。服装を変えたら、ちょっと声をかける事が出来そうにありま
     せんね(笑)。
      次はミットを使っての突き蹴りの基本稽古相手の姿勢を崩してひっくり返すまでの約束組手と続きます。一撃必殺では
     なく最小限の動きとリスクで確実に相手を制圧する技術体系に見えました。


      そして今度は、ゲリラに拉致された隊員を救出するという想定の訓練展示です。出て来た4人のゲリラは、顔つきからして
     これまたいかにも悪そう。明野の人達はガラが悪いんでしょうか(笑)。しかし先週姫路のレンジャーを見たばかりなので、
     つになったらこの人たちは漫談を始めるんだろう…
と、普通に思ってしまいますね。恐るべし姫路レンジャー、です。


      まずはゲリラの一人が、人質である隊員に暴行を加えます。あれ?マジで蹴ってる?。会場の雰囲気が一気に緊迫して
     きました。そこに駆け付けたレンジャー隊員がゲリラに飛びかかり、見事に救助。仲間の異常に気付いたゲリラの増援駆け
     つけて、ここからはまるでアクション映画の様な立ち回りが展開されました。


      あくまで見せるための格闘なので派手な動きが多いのですが、手数や技の種類が豊富で、かなり練り込まれたシナリオで
     す。突き蹴りはかなりまともに当てています。普段の鍛え方が普通ではないので、来ると分かっている打撃ならこの人達には
     問題無いのでしょうが、流石にすごい迫力ですね。会場を囲んだ人達は固唾を飲んで見守っています。
      かなり高い位置からの投げも披露しています。幾ら下が芝生とは言え、あれはキツそうだなあ。おお、ゲリラがレンジャーに
     飛び蹴り!
蹴られるのが例え背中でも、あの半長靴では堪らんなあ。しかしレンジャーは、平然と反撃に移ります。凄いなあ。


      最後はラスボスである教官が、グレーのツナギで登場。頭のてっぺんからつま先まで悪そう…いや、強そうです。レンジャ
     ーは2人がかりで必死に立ち向かいますが、さすが教官、1対2というハンデをものともしていません。


      しかし一人のレンジャーが教官の突きをかわして懐に入り、タックルからのリフトで地面に投げ落とします。起き上がって来
     た所にもう一人のレンジャーが、助走をつけた強烈な飛び蹴り!うわあ、本当に蹴り込んでる…。
      堪らず倒れ込んだ教官にトドメを差し、人質は無事救出。大迫力の格闘展示は終了に、会場からは大きな拍手が送られま
     した。いやー、本当に凄い迫力でした!パチパチ。


      この後はレンジャー隊員による子供ミット打ち教室が始まり、私はこの辺で明野駐屯地を後にしました。
      
      正門を出た所で、市長候補の選挙カーが通り過ぎましたが、
      「ご来場の皆様、お疲れ様です!航空祭は楽しんでいただけたでしょうか?」
      いや、別にあんたが主催した訳じゃないでしょ。何だかタダ乗りされてるみたいで、ちょっとムッと来ました。
      帰りは明野駅まで歩きましたが、なんだか街並みが八尾と似ているんですよね。どこがと言われても説明が難しいのです
     が、何かの共通点があるのでしょうか。

      朝から何だか待ちまくりの初参加となりましたが、見るものどれもが珍しく、実に楽しい駐屯地記念行事でした。次回は駐
     屯地記念行事と言うよりも、航空祭だと思って参加した方がもっと楽しめそうですね。天気も良かったので、この時期なのに
     日焼けしてしまいました。
      さて、今年のイベントもあとは三軒屋駐屯地、築城基地を残すのみです。今日の様な天候であればいいなあ…と思いつつ、
     帰りの近鉄特急に乗り込みました。




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