2008.07.26
和歌山港夏の恒例行事、護衛艦の体験航海に行ってまいりました。今回乗艦させて頂くのはDD−129護衛艦やまゆき
であります。はつゆき型は個人的に大好きな艦種ですし、今日は朝から素晴らしい快晴。気分よく出発です。
南海電鉄難波駅にて和歌山行きの特急に乗り込みます。岬公園を過ぎた所でふと車内を見渡すと、15人ほどの乗客が
全員眠っていました。何ともシュールな光景です。一瞬BR法という単語が脳裏をよぎりますが、私も眠りこけることなく、無
事に和歌山着。ここから乗り換えて和歌山港まで移動です。
和歌山港駅からしばらく歩くと、花王の工場が見える広大な埠頭に到着。正面にはDD−131せとゆき、その後方には
DD−129やまゆきが停泊しています。はつゆき型二連発!もうホクホクです。
埠頭には陸自の高機動車と軽装甲機動車が一台ずつ展示してありました。逆光でOD色の車体が黒く潰れ気味ですが、
何だかイラクはサマワの強烈な陽射しの下にいるみたいな感じです…と、撮影の腕の無さを誤魔化しておきましょう。日焼
けした太い腕の三等陸曹さんもソレっぽいですし。
やまゆきの出港準備の間に、手前のせとゆきが一般開放されていました。乗艦手続きまではまだ一時間近くあるので、先
にせとゆきの見学に向かいます。舷梯の横では、業務用白テントを出してせとゆきグッズの販売が行われていました。ここ
で二年前に買い損ねたせとゆき識別帽をゲット!これは嬉しい誤算です。
上機嫌でせとゆきに乗艦。艦尾の狭苦しいシースパロー甲板、ごちゃごちゃした艦橋構造物、独特の丸みを帯びた煙突。
うーん、いいなあ、はつゆき型。やっぱりカッコイイ!
艦首では、隊員さんが76o速射砲の訓練弾を持ち出して展示していました。『教練用弾薬包』という堅い表記が自衛隊ら
しいです。制作元はなんとダイキン工業梶I意外な会社が意外なものを作ってるんですねえ。
残念ながらせとゆきの艦内を見ることはできず、上甲板の公開のみ。二年前に度肝を抜かれたせとゆきアートを堪能しよ
うと思っていたのですが。
せとゆきを斜め後方から撮影。うん、はつゆき型はこの角度がイイなあ。独特の三段甲板が良く分かります。今風のすっ
きりした艦も機能的でいいですが、こういう一昔前のゴテゴテした後ろ姿も捨て難いものがあります。
さて、次はやまゆきを撮影しよう…と思ったら、やけに邪魔な所にトラックがあります。なんだこりゃと見てみると、呉音楽隊
のトラックでした。えええええ、呉から和歌山まで来たの!?演奏は午前中で終わっていた模様で、思わず冬木弘道ばりの
地団駄を踏んでしまいました。あちゃー、朝から来ればよかったなあ…。
そんなこんなでいよいよ乗艦受付けが始まりました。ラッタルを上がり、乗員の皆さんの敬礼を受けながらやまゆき乗艦。
飛行甲板に上がると、格納庫にてやまゆきグッズの売店を発見。こちらではやまゆき識別帽を買う事ができました。
薄暗い格納庫から甲板を見ると、あまりの日差しの強さに何もかもが真っ白に見えます。大して離れてないんですが、大
阪に比べると太陽が二割増しくらいで元気な気がします。空は突き抜けるように青いし雲は白いし、いい気分です。
出港までは艦内を見て回ります。この通路の狭さもはつゆき型の味わいですねえ。トイレスペースも極めてミニマムで、パ
ーテーションにはまり込むようにして小用を済ませます。艦の古さは否めませんが、それでも清掃は徹底されていて、艦内
通路はピカピカです。艦内のあちこちには
A 当たり前の事を
B ぼーっとせず
C ちゃんとやる
という掲示物が貼り出してありますが、なるほど見れば納得であります。
科員食堂。天井を這いまわるダクトやパイプが、護衛艦の艦内独特の圧迫感を醸し出しています。艦が古いせいか冷房
の効きがいまいちですが、扇風機が空気を循環させているので快適です。
冷たいお茶が入っていると思しき給水タンクもベコベコに凹んでいて、これも年季を感じさせます。
食堂の片隅には調味料類がまとめて置いてありました。醤油やソース、食卓塩、ワサビ、辛子、マヨネーズと言った定番
モノ以外にも、梅干しやフリカケ、味付け海苔、さらにはカレーホットなんかも。
通路を歩いていると、『パソコンは友だち!』というやけにカワイイポスターが。うーん、これ、どう見ても小学生が描いたと
しか思えないんですが、隊員さんの娘さんが描いたのでしょうか。何だか親バカっぽさが伝わってきて微笑ましいなあ。
パソコンの周囲にわーむ、2ちゃん、山田、くらっかーと書いてある悪者が居る所を見ると、機密漏洩防止の掲示物らし
いです。しかしこれは、せとゆきアートに匹敵するぐらいのカオスであります。
洗面所。一体型の使いやすい手洗い場の横には、何とも古びた二槽式の洗濯機がありました。確かにこっちの方が真水
の使用量が少なくて済むので護衛艦向きではありますが、新型艦との格差をまざまざと見せつけられた気がします。がんば
れはつゆき型!
分隊先任室というのがありました。先任海曹室とはまた違うのでしょうか。
76o速射砲管制室横にも再びカオスなポスターを発見。さらに強烈だったのは、士官室の扉に貼られた機密漏洩防止の
ポスター!うーん、士官室の扉と言う事は、艦長さんも彼に命令されながら入室するのでしょうか…。そりゃあ、彼に言われ
たら逆らえませんよね。なんかいいセンスだなあ、やまゆき。
ラッタルの手前には小銃保管庫がありました。傍にいた隊員さんにお話を伺うと、出港後の洋上での小銃訓練はまず無く、
訓練は陸上で行っているそうです。保管庫内の明かりをつけて小窓から覗かせてもらいましたが、62式機関銃が2挺、ショ
ットガンが2挺、あとは64式小銃が40挺程あって、想像以上の重装備に驚きです。やるときゃやるぜ!といった感じでしょう
か。
さて、そろそろ出港準備。飛行甲板に向かいます。周囲には高い建物も無く、見渡す限りの青い空と白い雲。暑さも強列で
すが、ここまでスコーンと晴れ上がっているとその暑さすらも清々しい気分です。中に入ってみればそういい事ばかりでは無
いのはどこも同じでしょうが、いいなあ、こんな仕事って。
下士官が三人、甲板の手すりにもたれて談笑しています。ああ、何かいい光景ですねえ。
格納庫の飲み物販売コーナー。氷水に入った缶ジュースがやけに美味しそうだったので、マンゴージュースを購入。オッ
サン五秒前の私としては中性脂肪や血糖値という文字が脳裏をよぎり、やっぱりお茶にしようかと思いましたが、この暑さ
の中で飲むねっとりした甘さのマンゴージュースは最高ですね。
甲板士官の号令で、舫い作業が始まりました。眼下の狭いシースパロー甲板では、隊員さんがテキパキと動き回っていま
す。そして埠頭では地本の職員の方が舫い作業を担当しています。何気なく肩の階級章を見ると、空自か陸自の階級章だ
ったのでびっくり。畑違いとは思えない手慣れた舫いさばきです。近くにいた一等海曹さんに尋ねると、
「ああ、そりゃあ地連の人間はなんでもやりますよ!」
あ、この人、今地連って言ってました。まあ急に名称を変えられても、現場で身に染みついた癖はなかなか抜けませんよ
ね。
やまゆきはスムーズに出港です。先ほどの一等海曹さんが、長い竹竿の先に付けた赤白の旗を舷側に突き出しています。
別の隊員さんにアレは何ですかと尋ねると、
「海面に浮いている舫い綱がスクリューに絡まらないように、ウイングに合図してるんです。」
やまゆきは徐々に速度をあげ、和歌山港沖を目指します。前甲板に出ると、海風がとても快適。姉さん被りのおばちゃん
達が、珍しそうに76o速射砲に触っています。ボーイスカウトの集団もいました。
一段落したので艦橋に向かいます。左右に配置されたCIWSが、実にはつゆき型だなあ。グレーの基台に乗せられた真
っ白なレーダードームが、真っ青な空に映えています。ああ、こういう空を蒼穹って言うんでしょうか。
艦橋では、体験航海恒例のやまゆき賞受賞式の最中でした。艦番号にちなんで本日129番目に乗艦したのは、4歳位の
男の子。訳も分からないままに知らない人達に囲まれて賞状を持たされ、もの凄く嫌そうな表情で座っていたのには笑って
しまいました。
艦長さんらしき二等海佐の方が居ましたが、随分お若い艦長さんです。就任したばかりなのでしょうか、見るからに精気に
溢れるような、やる気の塊みたいな面構えが頼もしい。確かにゴルゴのポスター程度では、いささかも動じそうにありません。
これからどんどん大きな艦にキャリアアップしていくのでしょう。頑張って頂きたいですね。
再び涼しい艦内へ。科員食堂では調理室のディッシュアップが開放されて中が丸見えでした。中では2人の給養員がマシー
ンの様に調理作業を行っています。体験航海で人手を取られた為なのか(スミマセン)、本日の夕食はどうやらお弁当の模様。
とても美味そうな香りが漂ってきます。
それにしても、思ったよりも広い調理室です。一度に200人分近い食事を作るのですからそれもむべなるかな、ですが、よ
く考えたら今まで見た艦の調理室は潜水艦ふゆしおの調理室だけなので、それと比べれば広く見えるのも当然です。
艦内のあちこちに見られるやまゆきのエンブレムですが、描かれているのは鯉でしょうか。やまゆきは確か呉地方隊所属
なので、もしかして広島カープと関係が?
艦内通路を艦尾付近まで歩いて甲板に出ると、丁度やまゆきは港に向かって反転する所でした。いつの間にやら結構沖
まで出ていたみたいです。
甲板では、シースパロー発射機の操方展示が開始されました。対空ミサイルを8発格納した巨大な筐体が、ぐるんぐるんと
軽快に動き回っています。
傍にいた隊員さんに、先ほどのやまゆきエンブレム広島カープ疑惑について尋ねると、
「よくお分かりになりましたね!なんでもこの艦が出来た年に広島カープが優勝したらしく、当時の上の人が強烈なカープ
ファンだった事もあって、鯉がデザインされたんです」
うーん、艦齢を感じさせるいいエピソードだなあ。
「でもそのせいで、退艦する時のラッパまで広島カープの応援歌なんですよ〜。私は個人的にカープファンじゃないんで、
ちょっと複雑な気分っていうか、やっぱり『チッ!』ってなりますねえ…」
うーん、良すぎるエピソードだなあ…。
甲板の端っこには、洋上射撃訓練の標的が載せてありました。ぶっ壊さないように敢えて標的を外して射撃すると聞いて
いましたが、よくみるとど真ん中に命中弾の痕がありました。割と小さな穴なので、CIWSの20o機関砲かと思いましたが、
隊員さんに聞いてみると艦首の76o速射砲の弾痕だそうです。ああ、そうか。訓練弾だから、命中しても爆発する訳では
ないんですね。弾速が強烈なのか、きれいにまん丸の穴がすぽんと空いていました。当てた人は果たして上手かったのか
下手だったのか、褒められたのか怒られたのか、どっちだったんでしょう。
そうこうしている間にも、やまゆきは和歌山港を目の前まで来ていました。ああ、やっぱり展示訓練に比べると90分の体験
航海って短いなあ。くるくる歩き回って撮影して、隊員さんにお話を伺うだけであっという間に終わりです。
埠頭が河口付近にあるせいか、やまゆきはゆっくりゆっくりと接岸。すぐに待機していた地本職員の方々が舷梯を掛ける
作業に入りますが、車輛展示に来ていた陸自隊員が、すかさず力仕事をお手伝い。うーん、エライ!
一方やまゆきでは若手の三等海尉さんが、明るく張り切って舷梯の設置を仕切っています。年かさの先任海曹さんにも物
怖じせずに話しかけていて、溌剌とした様子が非常に好印象。頑張れ〜!またいつか、別の艦でお会いしましょう!
護衛艦やまゆき、護衛艦せとゆき並びに和歌山地方協力本部の皆様、暑い中大変お疲れさまでした。
三等海尉ジャーンプ!