2008.09.21
石川県で行われた小松基地航空祭に今年も参加してきました。週末直撃が予想された台風はどうにかやり過ごしたも
のの、当日の石川県の降水確率は30〜40%。九州から関東全域にかけて雨雲に覆われるため、雨はどうにも避ける事
は出来なさそう。例年なら西日本からの参加者でにぎわう大阪駅北陸線ホームも、今年は閑散としています。
まあここまで来たら行くしかありません。夏の終わりとは思えない肌寒さの中、すかすかの急行きたぐには大阪駅を定
刻に出発です。
0247、JR小松駅着。車窓から見た小松市内はモロに路面がウェットでした。高揚感と気の重さとが絡みあったまま、恒
例の小松駅夜明かしの体勢に入ります。駅前のロータリーに出ると、結構な勢いで雨は降り続いています。
0600、雨がやや弱まった中、小松駅からタクシーで小松基地正門へ移動。まだ小雨が降り続いているせいか、正門前
には60人ほどしか集まっていません。いつもの1/5も居ないなあ。
それでも開門直前には相当な人数が正門前に詰め掛けていました。しばらくして開門されましたが、今年は開門ダッシュ
も少なめで、殆どの人がぼちぼちと歩いています。この人数なら走らなくても最前列は余裕なのでしょう。私も小雨に打た
れつつホテホテとエプロン目指して歩きます。
クランク状のコーナーを抜けると、ドカンと開けた場所に出ます。濡れたエプロン。何かフランス書院っぽいなあ…と余計
な事を考えながらも、やっぱりこの広さには感激です。Tー4、F−4、F−2、RF−4、Fー15に混じって、米軍のF−18
も地上展示されていました。どれもこれも灰色の雲の下で雨に打たれていますが、晴れた空の下で眺めるのとはまた違っ
た、重量感のある兵器としての凄味を漂わせています。
気象隊の隊舎前には身長2m程の巨大なてるてる坊主がいて、名前は『きっとハレルヤ』。全然晴れてねーよ!
と思わず突っ込みそうになりましたが、彼もどうしていいのか分からない…と言った気弱な表情だったので、それなりに責
任を感じているのかもしれません。ちょっと気の毒だったので、今回は不問に付す事にします。
降り続く小雨の中、のんびり地上展示機を撮影して歩きます。ブルーインパルスの向こうには、UH−1J、AH−1S、T
−7、E−2C、P−3C、C−130と続きます。UH−60JとU−125Aが少し離れた場所にいるのは、この後のオープニン
グの落下傘降下展示の為でしょうか。
その後は防空隊の車輛展示を見て回ります。
エプロンからはUH−60Jのエンジン音が響いてきました。すぐに柵の前に駆け付けますが、人出の少なさのお陰で難
なく最前列に着く事が出来ました。パラシュートを担いだ迷彩服姿の隊員乗り込んだ後、UH−60Jは離陸。U−125Aも
続きます。
そしていよいよオープニングフライトが開始です。F−15が、アフターバーナーを煌めかせながら頭上をパス。腹の底に
響く強烈な爆音が凄いですね。降り続く雨で今ひとつ盛り上がりに欠けるエプロンですが、二機のF−15は雨に煙る暗い
空をバックに、これでもかとばかりに飛びまくります。あああ、やっぱり来て良かったなあ(泣)。
頭上の救難ヘリからは、メディックの人達が次々とパラシュート降下。あれ?いつもの丸いパラシュートじゃなくて、長方
形の落下をかなりコントロールできるタイプのパラシュートを使用していて、ゆっくりゆっくりと降りてきます。それぞれが大
きな旗みたいなのを装着していて、多分続けて読むと『小松基地』になっていたのだと思いますが、生憎の強風で旗が巻
きついてしまい、はっきりと読めなかったのは残念でした。
救難ヘリと救難捜索機は、無事役目を終えてランディング。エプロンの定位置に戻ると、すぐに機付員がとりついて機体
の点検を始めます。
その後はいよいよ、小松ならではのF−15二個飛行隊による機動飛行展示。F−15はベイパーを引きまくり、強烈な
機動を見せつけます。うーん、何度見ても凄いなあ。あの大柄なF−15が、その重量を全く感じさせないとてつもなくパワ
フルな動きをしています。
あれを作り、あれを維持し、あれを飛ばしているのが同じ人間だと言う事が、何だか無性に嬉しいですね。その気にな
れば、人は重力なんかものともせずに飛ぶ事が出来のです!なんというエネルギー!本当に、空を飛べると言う事は凄
い事だなあ。
灰色の空を切り裂くようなベイパー、煌々ときらめくアフターバーナー。雨はずっと降り続いていますが、これ以上の本降
りにならない事を祈りながら、ファインダーの中で暴れ回るF−15を追いかけます。
次は岐阜から来た実験機のF−2による機動飛行展示。F−15に負けじと、こちらも雨の中元気いっぱいのフライトで
す。しかしこの、白い機体とバックの暗い空をキレイに撮影すると言うのは難しいですねえ。手に余る一眼デジなんかを買
ってしまったので、もうとにかく分からない事だらけです。カメラ教室かどこかに通おうかなあ…。
エプロンに一際甲高いエンジン音が響き渡ります。次の出番を待つF−4がエンジンスタートを始めた模様。そして重量
感のある機体を揺さぶるようにしてタキシング開始。やっぱり迫力があるなあ、F−4。
アナウンスによると、このF−4が所属する第8飛行隊は今年限りで改編され、小松で見る事が出来るのはこれで最後
との事。そうか、私にとってはこれが見収めです。光栄なような寂しいような、不思議な感覚。
そしてF−4はテイクオフ。F−15が大気を切り裂くようなシャープな上昇であるのに比べ、F−4は膨大なエネルギーを
爆発させてグイグイと押し上げるような上昇。余力はF−15の方がありそうですが、なんかこう、圧倒的な力強さがありま
すねえ。
退役されたさる空将の方が、著書の中でファントムの事を『空飛ぶダンプ』と表現されていました。その時は、戦闘機に
それは褒め言葉じゃないなあ…と思いましたが、何だか納得してしまいます。
リファインを繰り返したとはいえ、基本設計が半世紀前の機体。F−15やF−2に比べると鈍重な印象は否めませんが、
それでもF−4が好きだと言う人が多いのには納得です。いいなあ、F−4。
そして第8飛行隊のF−4は、小松での最後の展示飛行を終えてランディング。沢山の人垣の中から何とか撮影する事
が出来ましたが、いつもの事をいつものようにやっただけ…というクールな雰囲気のパイロット二人が印象的でした。
ここで救難展示を前にして一休み。今のうちに済ませておこうとトイレに向かいますが、凄い行列です。列の最後尾につ
きますが、尿意を覚えてから並んだのでは遅そうですね。何だかんだ言っても流石は小松です。
そうこうしているうちに救難展示が始まってしまい、結局見逃すことに(泣)。トホホであります。それにしても、BGMがど
こかで聴いた曲だなあと思ったら、キン肉マンのOPでした。まあ悪くないと思うんですが…。やっぱりワンダバにしましょう
よ〜。
その後は再びF−15による機動飛行。空は相変わらずどんよりと暗いままですが、いつの間にやら雨は止んでいます。
機動飛行は飛行隊最強の2人が担当しているそうで、実に力強く実にシャープ。素晴らしい展示でした。
さて、ここからは1時間の昼休みです。用意してきたコンビニおにぎりを急いでパクつき、防空隊の車輛展示や格納庫
の方を見て回りましょう。対空機関砲VADSの展示には、沢山の人が並んでいました。F−2の地上爆撃展示で、ブババ
ババババと敵役を務める事でお馴染みです。
格納庫内にはF−15が展示してありました。改めて見ても、見上げるような機体です。これが、あんなに軽快に飛び回
るんですから凄いなあ。その隣には架台に乗せたエンジンが展示してありましたが、機体の大きさとパワフルさを考えれ
ば、嘘みたいに小さいエンジンです。コックピット公開もやっていましたが、以前見たし行列が半端じゃなかったのでパス
します。
再びエプロンに戻ります。空はまだ灰色ですが、朝に比べると随分明るくなってきました。エプロンのあちこちもパッチ状
に乾燥していて、ブルーインパルスを前にしていい感じ。これなら行けるぜ!
そしていよいよブルーインパルスの出番です。エプロン中央からなのでウォークダウンやタキシングは見えませんが、雨
も上がって沢山の人が固唾をのんで離陸を待っています。
そしていよいよT−4は離陸。きっちりと纏まった4機編隊でのテイクオフの後は、着陸灯を煌めかせながらスモークを引
いてターン。ああ、これを見たかったから雨の中をここまで来たんです。いいなあ、T−4。
しかし無情にも、途中からばらばらと大粒の雨が降り始めてきました。T−4はそれでも負けじとチェンジオーバーターン、
レベルオープナーと次々と大技を繰り出しますが、雨脚はさらに強まり、ファインダーの中の機体が霞んでいきます。
ああ、もう駄目かも…と思っていると、最前列の方からバラバラと引き上げる人たちが出始めました。エアバンを持った
人がいると言う事は、これにて雨天中止決定と言う事でしょう。んあー、残念。しかしギリギリまで頑張ってくれたブルーイ
ンパルスには感謝です。
その後は小松行きのシャトルバスの長い列に並びますが、交通整理の手際がいいのと十分な数のバスが用意されて
いた模様で、さほど待つ事もなくスムーズに駅まで辿り着く事が出来ました。小松基地の皆様、並びに当日雨の中交通
整理に当たった石川県警の皆様、この場にて御礼申し上げます。
航空祭の後は、今年も加賀温泉駅で途中下車して温泉に寄って帰ります。いつもは1日の汗を流して帰るのですが、今
年は雨に打たれて冷え切った体を温めなきゃ。航空祭の間はテンションが上がっていて気になりませんでしたが、さすが
に体はガチガチに冷えていました。熱い湯が冷え切った体を溶かしていくよう。ああ、今ならレトルトカレーの気持ちが分
かります。
久しぶりの山中温泉は、鄙び半分寂れ半分といった雰囲気で、山々にかかった霧がとてもいい感じ。雨のせいか人通
りも少ないですが、祭の準備をしている若い衆が沢山いて、何だか楽しそうでした。
加賀温泉駅からは大阪まで一直線。改札を通る時に駅員さんが
「いってらっしゃいませ」
と言ってくれたのにはちょっと驚き。なかなか気が利いていますね。
そして来た時にはバスの乗り継ぎで急いでいたので気がつきませんでしたが、駅の地下通路がリニューアルされて温泉
旅館の内装みたいになっていたのには笑ってしまいました。ご丁寧に暖簾までぶら下がっています。これは楽しい趣向だ
なあ。あ、さっきの「いってらっしゃいませ」も、温泉旅館の女将さん風の演出だったのでしょうか。
とっぷりと日の暮れた加賀温泉駅のホームにて、特急しらさぎ64号を待ちます。何処からともなく聞こえてくる地唄、旅
館から漂ってくる焼き魚とダシの香り。そして見上げると、そこにはロケットの様な巨大な観音像。うーん、なんじゃこりゃ。
今年は最後まで雨に翻弄された小松基地航空祭でしたが、やっぱり楽しかったなあ。来年はくっきりと晴れた空の下で、
F−15を存分に堪能したいものだと思いつつ、帰りの特急に乗り込みました。