中部方面隊創隊48周年記念行事

2008.10.19


      兵庫県は伊丹駐屯地で行われた、中部方面隊創隊48周年記念行事に参加してきました。先週の八尾に続いての地元
     陸自イベントです。本日の空は抜けるような秋晴れで、実に気持ちの良いイベント日和。
      自宅からあっと言う間にJR伊丹駅に到着。駅前から出ている駐屯地行きシャトルバス乗り場の列に並びます。バス待ち
     の間に隊員の方が配ってくれたパンフレットを眺めていると、訓練展示は1145〜1200、との事。え?15分だけ?しかも訓
     練内容は『第10師団による統制のとれた銃動作』とあります。戦車や迫撃砲が出てくる戦闘訓練とはちょっと違うのでしょ
     うか。
     中部方面隊のお膝元での記念式典なので、さぞかし派手なのをやるのかと思っていましたが、ちょっと予想と違います。
     まあ私は陸自のイベント参加経験が少ないので、とにかく行ってみるのが一番でしょう。
      0840、シャトルバスが伊丹駅前に到着。15分程で伊丹駐屯地に到着です。初めて訪れた伊丹駐屯地ですが、何だか
     興住宅地に隣接した病院というか、大学みたいな雰囲気。
正門を通り、誘導に従って手荷物検査のテントに向かいます。
    かばんを開けて中身を見せると、
      「すみません、お手数ですがペットボトルの中身を一口飲んで頂けませんか?」
      ははあ、なるほど。記念式典の混雑にまぎれて、よからぬ事を企むヒマな人達が来ないとも限りませんからね。中身の
     水を一口飲んで、GUSOHとかではない事を証明します。


      と言う訳で手荷物検査をパスし、駐屯地内を歩きます。うーん、やっぱり何だか、自衛隊の施設って感じがしませんね。
     大学の研究施設か病院のよう。しかしよく見ると、あちこちにOD色のいかついトラックが停まっていたりします。おお、あ
     ちらの方には74式戦車も野外展示されています。やっぱり駐屯地でした。
      駐屯地のメインストリートに当たるさくら通りには屋台が沢山出ていて、早くも美味しそうな香りを漂わせています。ああ、
     お祭りなんですねえ。兵庫地本が丹波の黒豆の直売所を出していました。
      そして続々とつめかける一般客に交じって、ショッカーの戦闘員みたいな扮装をした隊員さんが歩いています。むこうに
     は獣神サンダーライガーもどきや、変な特撮戦隊モノらしき扮装の隊員さんも。子供向けのアトラクションかな?
      まずは午後から行われる74式戦車の体験試乗券を入手。受付テントには既に長蛇の列が出来ていましたが、1230か
     らの一番早い時間帯を選ぶ事が出来ました。
      さて、後はあちこち歩き回って色々見てみましょう。それにしてもお腹が減りました。今日は屋台を楽しむために朝食を
     抜いてきたので、とりあえず焼きそばの屋台に直行です。


      で、購入した焼きそばですが、作りたてと言う事もあってこれが実に美味しい!脂とソースが実にいい具合に麺に絡まっ
     ていて、野菜も豚肉もたっぷり。紅生姜と青海苔も掛かっていて、この内容とボリュームで250円は素晴らしいなあ。今ま
     で一番美味かったJSDF焼きそばは八尾駐屯地だったのですが、これはランキングが入れ替わりますね。パンフレットで
     確認するとどうやら伊丹の部隊だったので、これは来年も来てぜひ食べないと。
      さくら通りには西日本各駐屯地から集結した沢山の部隊が店を出していて、土地柄がよく分かります。三重の久居駐屯
     地からはサザエの壺焼き。
夏の海水浴場の様な潮の香りが堪りません。
      兵庫県の青野原駐屯地からは、手打ちそばの屋台が出ています。朱塗りのこね鉢と長い麺棒を使った本格的なもので、
     職人さん…いや隊員さんも揃いの法被で決めていて雰囲気満点。その手つきも昨日今日打ち始めた素人の動きとは思え
     ませんが、普段から駐屯地内の同好会か何かで活動しているのでしょうか?


      愛知の春日井駐屯地からは五平餅。炭火の上でじりじりと焙られる五平餅が堪らなく美味そうだったので、一本購入し
     てみます。焼いている所を撮影させて下さいとお願いすると、わざわざ真っ赤に熾った炭火の上にお餅をのせてくれまし
     た。見事なホスピタリティです。      
      五平餅も絶品で、突きたてのお米に塗られた味噌だれが炭火で香ばしく焙られ、とても隊員さんのイベント片手間仕事
     とは思えない出来
です。うーん、これも来年もぜひ食べたいなあ。


      いやあ、我ながら単純だと思いますが、屋台の食べ物が美味いと駐屯地の印象がいいなあ。金沢からは焼きちくわ
     知山からは薩摩汁
米子からは天ぷら山口からは萩の焼き物即売会が。うーん、わざわざ山口から来ているのか。普
     通に車でも五時間はかかります。大変だなあ。
      通りのあちこちではコスプレ姿の隊員さんが練り歩き、ビニール風船の剣を持った子供たちと楽しそうに戦っています。
     おいおいそこの僕、君が攻撃しているのは多分正義の味方だぞ!それにしても、こうして見ていると隊員さんが一番楽し
     そう
ですね。どうも伊丹の隊員さんはノリのいい人が多そうです。屋台の売り子もそれに負けじと大声をあげ、お客さんを
     呼びこんでいます。天気もいいし、こういうお祭りは本当に楽しいですね。
      子供広場には全長15mはありそうな巨大な旅客機のエアトランポリンが設置され、中で子供が大はしゃぎしているのか
     ボヨンボヨンと不気味に動いています。そうそう、ここは空港の街でもあるんでした。
      野外展示の74式戦車の前は、子供の制服試着と記念撮影コーナーになっていました。更衣室のテントには沢山の子供
     達が楽しそうに並んでいて、WACの方が保母さんさながらにその場を上手く仕切っています。まるでジャブロー基地の育
     児施設の女性士官みたい。
いろんな人材が集まってるんですね。
      人通りの少ない一角には、糧食班の事務所が。外には発泡スチロールのトロ箱が山積みになっていて、見てみるとちゃ
     んと全て国産品を使用している模様。ホッとしました。変なものを食べて貰っちゃ困る人達ですし。
      装備品展示広場に出ました。偵察オート軽装甲機動車の隣にはバラキューダが展開していて、中では120o迫撃砲
     RT
81o迫撃砲L16が展示されてありました。しかしこのバラキューダという偽装網がかなりのスグレモノで、迷彩効果が
     抜群で外から中は見えませんが、中に入ってみると意外にも明るく、簡単なようで実によく出来ています。表裏が春夏と秋
     冬のリバーシブルになっているのも、なかなか芸が細かいですね。


      隣では野外炊具一号(改)手術ユニットが並んでおり、その前にはFH−70榴弾砲が両脚を踏ん張っていました。おお、
     ロープ越しではなく、間近で見るのは初めてです。流石にでかいなあ。ズドンと伸びた砲身が、秋の高い青空に映えていま
     すね。
      カマボコハウス状の迫撃砲指揮所というのもあり、これも初めて見ました。土嚢で補強した半円の波打ち鉄板にバラキュ
     ーダが被せてあり、中には弾道計算に使用するのかノートパソコンが置いてありました。


      さて、そろそろ記念式典の行われるグラウンドの方に行ってみましょう。おお!広い!頭上に何もないスコーンと開けた
     空間というのは、訳もなく感動的ですね。特に今日のように、抜けるような秋の青空だと尚更です。
      それにしても流石に中部方面隊の記念式典だけあって、会場正面のひな段が巨大です。それだけ招待客が多いと言う
     事なのでしょう。グラウンドを挟んで真正面には一般客用のひな段もありますが、ここもかなり埋まっています。空いていた
     ロープ際に場所を確保し、記念式典を待つことに。何分陸自記念式典は参加経験が少ないので勝手が分かりませんが、
     とりあえず順光だし、左右の視界も十分確保できるのでこの場所でいいでしょう。
      しばらくして、記念式典開始。先ずは伊丹駐屯地の所属部隊が順番に入場です。うーん、やっぱり先週の、航空部隊が
     中心の八尾とはまた違った雰囲気がありますね。


      「全体、休め!」で小銃のストックを地面につけるタイミングも完全に揃っていて、ザッ、という一瞬の短い音で収まります。
      整列した部隊はそのままの姿勢でしばらく待機。微かにそよぐ風が、色とりどりの隊旗を軽やかになびかせています。時
     刻は1030。10月下旬にしては、暑い位の陽射しになってきました。
      その後は各部隊の紹介。部隊名が呼ばれる度に、先頭の旗持ちの隊員さんが隊旗をビシッと垂直に掲げます。その間
     は全隊員が直立不動。実に絵になる光景です。


      観閲官である中部方面総監の陸将が入場。パンフレットで見て驚いたのですが、名前がなんと火箱さん!こんな事を言
     っては失礼ですが、仕事のイメージとピッタリですね。
      部隊着剣をきちきちとした動作で行った後、国旗登壇。その後の国旗掲揚と君が代斉唱では、きっちり揃った捧げ銃を
     見せます。来場者は全員起立ですが、中には考えがあっての事なのか無いのか分かりませんが、座り込んだままの人
     ごく少数ですがいました。ちょっと残念なことです。
      観閲官の部隊観閲を経た後は、来賓による祝辞。現在は参議院議員となられたイラクのヒゲ隊長こと、佐藤正久氏も来
     ておられました。披露された祝辞も実に身の引き締まるような内容で、ギリギリの現場に身を置いて実際に汗を流した人は
     やっぱり違うなあ…と、思わず襟を正させられる思いでした。
      その後に続くのは我らが大阪府知事、橋下君です。こちらは先走る熱い気持ちに、今ひとつ言葉がついて行っていない
     印象。やっぱり佐藤議員の後というのは、辛い順番ですね。余計に若造っぽさが拭えないのはちょっと気の毒でもありまし
     た。しかし、朝日新聞についてバッサリと切り捨てた発言にはびっくりしました。
      「世の中、口先ばかりで何もしない、人の悪口しか言う事の出来ない、まるで朝日新聞の様な人達が沢山居ます・・・」
      会場のあちこちからは、どよめきと拍手が巻き起こっていました。うーん、頼りなげと見せながらも最後はビシッと鷲掴み。
     やっぱりタダ者ではありません(笑)。パチパチ。
      その後も来賓による祝辞が続き、整列した部隊は退場。部隊による観閲行進を前にして、散水車がグラウンドを潤しま
     す。ついでに私も水分補給。
      会場奥から、先ずは音楽隊の行進が始まりました。やけに大人数なのは、中部方面音楽隊第三師団音楽隊の合同
     による演奏でした。さすがに大した迫力があります。


      その後は参加各県ごとの県旗を掲げた車輛が行進。さらに指揮通信車が続いた後は、レンジャー有資格者による部隊
     が登場。フェイスペイントに彩られたその風貌は、引き締まった猛獣の様な迫力がありました。頭のてっぺんから足の指先
     まで徹底的に鍛え上げられた雰囲気
が、ビリビリと伝わって来る様。途中からは
      「レンジャー!!レンジャー!!」
      と掛け声をあげながら、掛け足で走り抜けて行きました。うーん、凄い。


      偵察オートが現れましたが、残念ながらジャンプはかなり遠いところで行われていました。そうかー、来年のポジショニン
     グの参考にしよう。
      その後は偵察警戒車、軽装甲機動車、高機動車、FH−70榴弾砲を牽引したトラックが続きます。高機動車に牽引され
     ているのは師団通信システムでしょうか。
      さらにホーク、近SAM、無線通信車、救急車、重レッカー、自走架柱橋、後はもう素人の私には何が何やら分からない
     車輛がどんどんと出てきます。車輛の巻き上げる砂埃も凄いなあ。


      92式地雷原処理車が、キャタピラを軋ませながら通過。真四角の愛嬌のある不思議な車体から、運転手の頭がぴょこ
     んと突き出ているのが何だかユーモラスです。しかしその迫力と重量感はものすごく、砂煙の量も強烈。
      そしてメインは、74式戦車4輌による行進。隊旗を掲げて観閲官の前を通過した後は、砲塔部を軽快に振り回しながら
     目の前を通り過ぎて行きました。動いている戦車をこんな近くで見たのは初めてなので、ちょっと感動です。


      最後は航空展示。OH−6D観測ヘリを先頭に、UH−1J多用途ヘリ、AH−1S対戦車ヘリと続き、トリを務めるのは
     AH−64D攻撃ヘリアパッチ!
合計6機のヘリによる異機種編隊飛行を披露です。飛行中のアパッチを見る事が出来
     たのは嬉しいなあ。残念ながら昨今の原油価格高騰のアオリを食らい、派手な機動が出来なかったそうなのですが、そ
     れでも飛んでくれただけ有り難いと言うものです。


      そしていよいよ、第10師団普通科部隊による小銃取扱展示。放送ではガンドリルと言っていましたが、英語ではそう言
     うんですね。一つ勉強になりました。
      会場奥から60名以上の普通科隊員が、89式小銃を抱えて密集隊形で行進してきました。全員の背の高さが揃ってい
     るので、何だかCGの映像を見ているかのような気分にさせられます。マシーンの様な正確な動作で整列した後は、一斉
     の駆け足でグラウンドに展開。BGMのある車輛展示とは違い、隊員達の足音だけがしんと静まり返った会場に響きます。


      先ずはバディ同士で交互の銃を点検し、状況に応じた様々な射撃姿勢を披露。立った状態、膝立ち状態、しゃがみ込ん
     だ状態、伏せた状態。そして、ひと動作終わるたびに
      「オウ!」
      という短い掛け声が。さらに故障時や弾倉交換時のバックアップ、2名および4名による警戒姿勢等を次々とやって見せ
     ました。終わってみれば空包射撃一つない訓練展示ではありましたが、それでも普段から小銃を扱いなれているキビキビ
     とした迫力ある展示は見事。いやあ、いい物を見せて貰いました。


      最後は観閲官が降壇し、午前中のプログラムは終了。あっという間にお昼になってしまいました。さて、この後は戦車の
     体験試乗です。指定された集合場所に向かうと、整理券と引き換えに真っ白いカリフラワーみたいなふわふわの帽子を渡
     されます。よく見ると先に並んでいた人も全員被っていて、アフロなおじいさんが整列しているみたい
      二等陸曹さんの説明と注意を受けた後、いよいよ74式戦車に搭乗です。整備庫を抜けると、そこには4両の74が待ち
     構えていました。車体後部のエンジンの上にはカゴ状の手すりが取り付けられていて、どうやらあそこに乗る模様。
      荷物を預け、年季の入っていそうな思い鉄帽を渡されます、ああ、成程、この鉄帽を被る為の白アフロだったのか。鉄帽
     自体はさほど汚れてはいませんでしたが、やっぱり中の皮の部分には長年の汗や頭皮の脂やその他モロモロが、じわじ
     わとダシの如く
染み込んでいるのでしょうか。


      いよいよ74に搭乗です。地面から見るよりも高さがあり、靴の底には堅い鉄の塊の感触が。10人ほどが乗り込むと、
     74はエンジン始動。丁度足元がエンジンなので、まさに轟音といった表現がぴったりのド迫力です。
      そして74は、でかくて重い車体を震わせて発車。おおおおお、揺れる揺れる!両手で手すりをしっかり掴んで居ないと、
     あっと言う間に振り落とされそうです。建物の角では慎重に減速し、意外にも軽快なコーナーリングを披露。直線では4速
     までシフトアップし、かなりのスピードで走ります。変速ショックが思ったよりも大きかったのですが、これは路面がコンクリ
     ートだからなのかもしれません。隊舎の周囲をぐるりと回って体験試乗は終了。想像以上のド迫力でした。さすがにパワ
     フルだなあ。


      9時過ぎに屋台の焼きそばと五平餅を食べたきりなので、そろそろ小腹がすいてきました。朝食としてはかなりのボリュ
     ームでしたが、興奮していたせいかすっかりお腹グーであります。さくら通りに取って返し、串焼きの屋台で牛串を三本購
     入。よっちゃんイカを分厚くしたような、赤身の牛肉が串に刺さって一本150円。
      これが滅茶苦茶美味しくてびっくりでした。さほどいい肉を使っているとも思えないのにこの美味さは一体…と思いつつ
     屋台の中を覗き込むと、大きな鉄板の上に沢山の牛肉が並んで焼けていて、その上から塩コショウをばさばさと振りかけ
     るというシンプルかつワイルドなもの。成程、朝からずっと焼き続けて、鉄板の上で煮詰まった肉汁が最高のソースになっ
     ている模様。
朝イチではこの美味さは出なかっただろうなあ。とにかくこれはビールには最高でしょう。


      それにして伊丹駐屯地、屋台の充実っぷりには目を見張るものがあります。記念式典や観閲行進、訓練展示も素晴らし
     いものがありましたが、とにかく屋台が素晴らしい。来年は手打ちそばやサザエ壺焼きにも挑戦してみたいなあ。

      最後はもう一度戦車の体験試乗を見に行きました。ふと横を見ると、身長制限の絡みなのか戦車に乗せて貰えなかった
     と思しきちびっこが、ノリノリで走り回る74をしょんぼりと眺めていました。その背中がちびっことは思えないイイ背中だった
     ので、記念に一枚頂きました。頑張って勉強して沢山食べて運動して、どうせなら本職の戦車乗りになっちゃえ!
     
 ちびっこの男の背中に大いにエールを送りつつ、大満足の伊丹駐屯地創立記念行事の締めとしました。




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