潜水艦救難艦ちはや一般公開                  in堺泉北港

2008.09.14


      大阪府は堺泉北港で行われた、潜水艦救難艦ちはやの一般公開に行ってきました。三連休の中日と言う事もあり、小
     さな子供を連れた家族連れがJR堺駅西口に列を成しています。ここから地本の用意してくれたシャトルバスに乗り、大浜
     埠頭まで約10分。ASR−403ちはやの堂々たるボリュームが感動的であります。


      ちはやには既に沢山の見学者が乗り込んでいますが、先ずは艦の外観を見て回ります。うーん、艦の中央部が左右イケ
     イケになっていて、何だか鉄工所みたい。せり出して来たDSRV(深海救難艇)を揚げ降ろしする為の滑車や支柱、ケーブ
     ル類がにょきにょきと突き出ています。艦橋の真下辺りから艦首にかけてが甲板一段分高くなっているのが不思議なデザ
     インですが、これは埠頭に接岸した時にDSRVを舷側から降ろしやすいように、艦中央部を一段低くしてあるのでしょう。


      ふと背後を見ると、大阪地本の業務用車両がありました。ものすごく古いセドリックのワゴン。本当に物を大切に使って
     いるんですねえ。ウルトラセブンに出てきても何の違和感もありません。


      受付のテントにて手荷物検査と金属探知機の洗礼を受け、ちはやに乗り込みます。初めての潜水艦救難艦ちはやは、
     やっぱりどこかの工場に入ったみたいな雰囲気です。巨大なクレーンのレールをつけたフレーム状の天井、ケーブルをま
     とめた巨大なドラム、見上げた所にはLSOみたいなガラス張りの小部屋があります。DSRVの揚げ降ろし時の管制室で
     しょうか。どれも護衛艦では見られない設備です。
      艦中央部をぶち抜いている生簀スペースにはグレーチングカバーみたいなのが載せてあり、隙間からは暗い海面が見
     えました。


      艦首方向はDSRVの格納庫になっていて、まるで小屋に収まった爆弾みたいにDSRVが鎮座しております。思ったより
     も巨大で、下から見上げると押し潰されそうな迫力がありますね。舷梯を上がって最初に見えるのがこれなので、見学者
     はそのインパクトに一様に驚きの表情です。隣では、テレビの取材クルーがハンディカメラを回していました。


      どうやら格納庫内から艦内に入れる様ですが、DSRVが格納庫ギリギリのサイズなので、壁との隙間にズリズリと体を
     入れて行く感じです。格納庫内はかなり薄暗く、高い天井のクレーンの隙間から照らしているオレンジ色の照明が、何とも
     雰囲気を出しています。
      DSRVのスペックが掲示されていましたが、球殻が超高張力鋼、船体はチタン合金製。凄いお金がかかってるんだろう
     なあ。

      後部に回ると、巨大な船体に不釣り合いな程小さなスクリューがついています。何だかフグみたいでカワイイ。
      格納庫の奥から艦内へ。戦闘艦ではないので、艦内はスッキリと広く感じます。途中で艦長室の扉が開いてたので中を
     覗いてみましたが、明るいながらも質実剛健とした造りでした。
      さらにラッタルを上がって行くと、艦橋らしき部屋に出ました。しかし、何か雰囲気が違うなあ。窓がやけに高い所にあっ
     て、殆ど外は見えません。舵輪や速力指示計もなく、沢山のディスプレイやジョイスティック、機器類が詰まっています。
     入った事はありませんが、映像資料で見る護衛艦のCICに近い雰囲気があります。甲板の一部が高くなっていて、何だ
     か宇宙船の操縦席みたいな不思議な雰囲気。
傍にいた隊員さんに尋ねると、
      「はい、ここはこの艦のCICに当たります。正確にはRIC、レスキュー・インフォメーション・センターって言うんですよ」
      遭難した潜水艦の救助作業を指揮管制する重要な区画で、船務長がここで指揮を取るとの事。ちなみにこの艦の艦長
     は、潜水艦艦長を経験した人が就任するそうです。


      RICから甲板一つ降りた所が艦橋でした。しかし艦橋に降りると言うのも、空母みたいで変な感じですね。艦橋はいかに
     も排水量が大きな艦らしく、左右に広々としています。天井は高いし蛍光灯は沢山付いているし、何だか民間の商船に乗り
     込んでいるみたいですね。壁には現在台湾沖にいる台風の進路予想図が貼り出してありました。
      窓から見下ろす前甲板には、速射砲もVLSも無し。妙にスッキリとしていて新鮮です。
      右ウイングから埠頭を見下ろすと、かなりの高さがあります。よく見ると空自の制服を着た女性自衛官がテレビ局のスタ
     ッフと談笑していました。何で空自の人が?と思ったら、傍らにいた子供が
      「あ!ケイコちゃんだ!」
      ケーブルテレビ大阪セントラルでお馴染みの自衛隊情報番組、「Mamoって!ケイコchan!」の撮影が行われていた模
     様。しかしこの子、よく分かったなあ。ケイコちゃんは大人気みたいです。
      ウイング後方の通路から、DSRV電池室に入ります。ひんやりとした室内には、巨大な電池がカバーをかけられて幾つ
     も並んでいました。その様子は何だか霊安室か解剖実習室みたいで、ちょっと不気味な光景であります。


      そこからラッタルを降りると、DSRV格納庫の真上に出ました。成程、この格納庫からDSRVを架台ごと生簀の上にせ
     り出して、そこから海中にドボン、という仕組。DSRV自体は巨大な架台に固定されていてよく見えませんが、海自艦艇に
     は見られないメカっぽさがカッコいいなあ。
      DSRVの甲板まで下ります。うーん、でかいケツです。よく見るとDSRVの船体には沢山の作業灯が付いていますが、水
     中で使うとても強力なライトらしく、発する熱で照明自身が持たない為、大気中では使用できないとの事。
      再び艦中央部の生簀前に。子供用に風船を膨らませて配ったり制服試着撮影コーナーを設けたり、乗員のみなさんは
     色々工夫して家族連れを楽しませています。
      ちなみにDSRVには『ちはや』と書かれています。DSRV固有の愛称は無いんでしょうか。傍にいた隊員さんに尋ねると、
     厳しそうな表情で
      「ありません」
      と、ばっさりと言われてしまいました。うーん、怖い人だったのか?それとも、愛称が無い事を常日頃から思い悩んでいて、
     素人の私に訊かれたのが悲しかったのでしょうか…。


      左舷に出て飛行甲板に向かって歩いて行くと、無人潜水機ROVがありました。何だか自動販売機をひっくり返したような
     風体で、まるっこいDSRVとは対照的。こっちの愛称は無いんですか?と隊員さんに尋ねると、
      「特に有りませんが、装備名のマリンアイと言う名前がありまして、そう呼んでますね」
      との事。ふと見るとマリンアイのエンブレムが貼ってありましたが、なんだかすぐに壊れそうなロボットが描かれていて、結
     構可愛らしいデザインであります。


      舷側からラッタルを上がり、飛行甲板に。おお、広い!昨年この場所で見学した輸送艦おおすみ程ではありませんが、か
     なりの広さがあります。空を見上げると、子供が放してしまった風船が舞っています。小沢健二の『天使たちのシーン』を思
     
い出してしまいました。


      さて、あとは右舷に回って上陸。艦内はあまり入れなかったなあ。売店も無かったのでちはや識別帽も買えず…と思って
     いたら、ありました、ちはやグッズ販売!入手したちはや識別帽にはリュウグウノツカイが刺繍されていてキレイでした。
      
      今回この潜水艦救難艦ちはやを見学させて頂いてつくづく思いましたが、それが自国の潜水艦であっても他国の潜水艦
     であっても、いざ出動となれば数十人の生命が掛かるとともに一分一秒を争う大変な仕事であります。今日のこの今も、ど
     こかの深海で誰にも知られず崇高な任務についている海自潜水艦乗組員の方にとっては、この艦はなによりも心強い存在
     であり続ける事でしょう。頑張れちはや!




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