舞鶴地方隊展示訓練

2007.7.29


      と言う訳で、舞鶴地方隊の展示訓練に行ってきました。前日のうちに舞鶴入りし、教育隊の敷地を一望できる宿で一泊。
     早朝からのイベントに備えます。前日の夕方には、訓練を終えて帰港するミサイル艇を見る事が出来ました。沖合では就
     役したばかりのイージス艦あたごが錨泊していますが、霧につつまれて見えるか見えないか…。
      
      で、翌朝です。舞鶴湾は昨日よりもはるかに強烈なガスに包まれて、殆ど何も見えません(泣)。霧の中にかすかに浮か
     んで見えるあたごは、それはそれで幻想的な光景ではありますが、大丈夫なんでしょうか、今日の展示訓練は…。
      それにしても肌寒い。夏真っ盛りの筈なんですが。


      シャトルバスの出る舞鶴駅前には、既に何人かのマニアの人たちがバス待ちしています。しばらくしてバス乗り場の看板を
     出しに来た隊員さんに話を伺うと、どうやら海上のガスは強烈らしく、何とか出港は出来ても昼からの展示訓練はキャンセル
     されるかもしれない、との事。
ああ、ここに来て不安要素がどんどん積み重なって行きます。
      バスの第一便が出る0815には、駅前にはかなりの数の人が集まってきました。東舞鶴のメインストリートをバスは進み、
     あっと言う間に基地正門をくぐって敷地内へ。
      乗艦手続きで手荷物検査と金属探知機検査を受け、当選はがきと引き換えに乗艦券をもらいます。この頃には空は随分
     明るさを取り戻し、ガスも朝の半分位になってきました。はやる気持ちを押さえつつ進むと、本日乗艦させて頂くDDG−175
     みょうこう
の艦尾が見えてきました。一昨年のこんごうに続いて二隻目のイージス艦であります。


      舷門へのラッタルの前には乗艦者の長蛇の列が。最後尾から見上げるみょうこうは凄い威容です。かっこいいなあ。
      ラッタルを上がり、舷門にて敬礼を受けながらみょうこうに乗艦。先ずはみょうこう識別帽を入手すべく、艦内に向かいま
     す。みょうこうは後甲板に格納庫が無いので、グッズ販売は先任海曹室か科員食堂で行われるはず…あ、ありました!
     員食堂のグッズ販売コーナーにて、護衛艦みょうこうの識別帽を確保です!
ついでにマグカップも購入。昨日のうちに売り
     切れてはいなかった模様です。いやあ、よかったよかった。売店では、みょうこうのはっぴ姿の隊員さんが忙しそうに売り子
     を務めていました。


      さて、取り敢えず目的の一つは達成です。次は艦内歩き回りと行きましょう。しかしこのみょうこう、もう新しい艦とは言えま
     せんが、どこもかしこもピカピカに磨き上げられています。海自艦艇はどれもそうですが、チリひとつ見当たりません。舷門
     近くにあった時鐘も光り輝いていて、ピカールの香りが漂ってくるよう。
      先任海曹室は、今回はクローズです。昨年のこんごうではここが売店になっていて、売り子が全員CPOというのも、かなり
     背筋を伸ばさざるを得ないものがありました。
      士官室前には群司令と隊司令、艦長のモットーが書き出されています。ちなみに艦長である由岐中一等海佐のモットーは、
     『職責を守れ』でした。何らかの仕事についてご飯を食べている人間にとっては、今一度襟を正させる言葉であります。


      後甲板に出ると、沢山の人が配られた毛布を広げて座りこんでいます。一足先に掃海艇が出港していきますが、恐らく航
     路上の漂流物のチェックに出かけたのでしょう。こういう沢山の地味な仕事が、今日の一大イベントを支えているという事を
     思うと、実に頭の下がる思いです。ふと見上げると、マストの上には海将旗がはためいていました。エライさんが乗り込んで、
     幹部の人も大変ですなあ。まあ、この艦ならもう慣れているでしょうか。
      いよいよ出港です。巨大なラッタルがマンパワーで収納され、音楽隊が行進してきました。前方に停泊しているDE−232
     せんだい
にはタグボートがとりつき、岸壁から引き離していきます。今どきの護衛艦に比べると後甲板の幅がやけに狭く、あ
     あいうDEにも乗艦してみたいなあ。


      その後は後方に停泊していたDDH−142はるなが出港。排水量が先ほどのせんだいの倍近いので、実に堂々たるボリ
     ュームです。さらにDE−229あぶくまが出港していく頃には我がみょうこうの舫い作業も終了し、隊員達が右舷に整列し始
     めました。そしてみょうこうは、音楽隊の軍艦行進曲に送られながら7000dの巨体をゆっくりと動かし始めます。


      エンジンの吸気ダクト辺りから出る航空機の様なエンジン音がひときわ高くなり、みょうこうは湾内の凪いだ海面を滑る様
     に行き足を速めて行きます。傍にいた隊員さんに、今何ノットぐらいですかと尋ねると、マストの方をちらりと見て
      「9ノット出てますね」
      うーん、さすが。思ったよりも速いですねと言うと、
      「ああ、陸地が近くにあると、速く感じるんですよねー」
      との事でした。なるほど。
      左舷前方から、沖止めしていたDDG−177あたごが見えてきました。みょうこうはサービス満点で、あたごのすぐ近くを
     ゆっくりと航行します。乾舷から格納庫の外壁がツライチになっていて、ボリュームはあるのにスッキリとしたシルエット。高
     い位置にあるフェイズドアレイレーダーも精悍な雰囲気を漂わせています。それにしてもやっぱりキレイですね、できたばか
     りの艦って。


      さて、ここから訓練海域までは約2時間の航海です。まずは展示訓練での艦隊の動きをリサーチせねば。パンフレットの
     展示内容を見ながら、隊員さんに一つずつ聞きこみを行います。潜水艦の浮上潜航、ミサイル艇の高速機動、ひえいによ
     る空包発射…などなど、瀬戸内海で行われる呉地方隊展示訓練ではお目にかかれない展示がいっぱいです。左舷でやる
     のか右舷でやるのか、前から来るのか後ろから来るのかで、とるべきポジションが大きく変わります。
      どうやら各展示内容が左舷と右舷に何度も入れ替わるようで、右舷に張り付いていると自衛艦敬礼やミサイル艇を見逃
     すし、左舷に張り付いていると潜水艦の浮上潜航やひえいの空包発射が見れません。うーん、これではウイングに張り付く
     意味はあまりありませんね。狭い艦橋で左右に動ける訳も無さそうですし。
      となると、自由にポジション移動が可能な前甲板か後甲板で、状況に応じて動き回るのがベストっぽいなあ。どうせ展示
     訓練が終わって帰港する時には艦橋は空いてくるし、前半は思い切って艦橋は捨てるとしましょう。
      と言う訳で、展示訓練の始まる昼までは艦内を練り歩く事に決定です。
      艦内通路の一部には『みょうこうミュージアム』という展示コーナーがあり、担当していた若手の海曹さんが話し好きだった
     ので大変盛り上がりました。なんでも戦闘糧食は年に1〜2回程度しか食べる機会が無く、基本的に陸自の余り物が回って
     くる
ので、メニューもほぼ固定されるとこのと。そうか、隊員でない私の方が沢山の種類を食べているみたいです。とり飯も
     五目飯も食べたと言うと、
      「いいなあ〜、一度食ってみたいですね。どうやったら食べれるんですか?」
      と、真顔で聞かれてしまいました。ちなみにみょうこうミュージアムの展示物は所謂みょうこうグッズを集めたものでしたが、
     さすがに注目度の高い艦だけあり、非売品の超レアアイテムが山のようにありました。お好きな方にはタマラナイ内容です。
      科員食堂は、やはりでかい艦だけあってとても広々。同時に72人が着席できます。ここも床から天井までピカピカです。
      洗身室。ステンレスのバスタブに湯がたっぷり入っていました。前日の残り湯なんでしょうか。でも、入浴時間が終われば
     すぐに清掃を始めると思うので、朝風呂でもあったのかもしれません。


      巨大な洗濯機と乾燥機がずらりと並ぶ洗面所も隅から隅までピカピカです。何か手を洗うのが申し訳ない様な気がします。
      理容室。よく見るとちゃんとした収納式の洗髪台が据え付けられていて、カットだけでなくシャンプーも出来るようになって
     いました。ここも海水なんでしょうか。
      酒保は閉店時間でしたが、価格表が表に出てあったので、どういうものが売られているのかよく分かりました。品目の半分
     以上がタバコ。あとはガムやポテトチップなどのお菓子類、歯磨き粉や髭剃りなどの日用品です。
      なにぶん艦がでかいので、うろうろと歩き回っているうちに武器操方展示の時間が近づいてきました。前甲板目指してラッ
     タルを駆け上がります。
      例によってけたたましい警報ベルが鳴り響いた後、艦首の127o速射砲が軽快に動き始めます。いきなりこちらに砲口を
     向けた時はさすがにぎょっとしましたが
、なかなかお茶目な砲手さんです。続いて艦橋前方のCIWSもカクカクと砲身を振り
     回し、チェーンソーの様な音を立てて回転しています。


      さて、艦隊合流が行われる自衛艦敬礼まであと一時間。この辺りで昼食を取っておきましょう。海はべた凪で殆ど揺れて
     ないので、快調にお腹が減ってきています。舷側の空いていたボラードに腰を落ち着け、パンを齧ります。海上のガスは相
     変わらずで、先行するあぶくまや後続のみねゆきも霞んで見える程。相当な暑さを覚悟してきましたが、海上の合成風力で
     半袖では寒い位です。
しかしこの、潮風に吹かれながらの昼食は美味しいもんですね。コンビニのカレーパンと焼きそばパ
     ン、烏龍茶が、陸よりも美味しく感じます。
周囲には、ぼちぼちお弁当を広げる家族が出てきました。
      出港して一時間と少し。いつの間にやら海が青黒くなっています。日本海の色ですねえ。
      さて、もう少し艦内を見て歩きましょう。ようやく暇そうになって来た科員食堂のグッズ売り場。いかにもキャラクターが良さ
     そうな隊員さんに、艦艇乗り組みの職業病について尋ねると、
      「うーん、職業病ですか?やっぱりメタボ・腰痛・水虫ですかねぇ」
      艦内ではスタンプラリーが行われており、子供達が楽しそうに歩き回っています。艦の特定の場所をポイントにせず、五人
     の先任海曹を探しだしてスタンプを貰う仕組みになっているので、艦内のあちこちで
      「○○せんにんごちょうはどこにいるのん?」
      「今なら配置はあっちの方だから、行って探してみてごらん」

      と、子供達と隊員さんとの間に自然にコミュニケーションが生まれています。これはなかなか素晴らしい企画ですね。艦内
     各所では、子供達に捕まった先任海曹の方々がスタンプをねだられていました。


      甲板に出てみると、なにやら霧による視界不良のために予定されていたF‐15の機動飛行が中止になった、との事で、あ
     ちこちからため息が。んあ〜、楽しみにしていたのでがっくりです。まあこのガスじゃあ仕方ないか。
      そうこうしているうちに、艦隊合流の行われる1200が近づいてまいりました。カメラのバッテリーも早めに交換しておきます。
      左舷について前方を凝視していると、しばらくしてガスの壁を突き破るようにして艦隊が単縦陣で現れました。先頭を切る
     のはDDH−142はるな。甲板にも艦橋にも、乗艦者が鈴なりです。隊司令がみょうこうに座乗しているので、先ずははるな
     からラッパが高らかに響きます。続いてDE−232せんだいPG−824はやぶさ、PG−825わかたか、MSC−680なが
     しま、MSC−678とびしま、
と続きます。最後のとびしまが目の前を通過した所で、ガラ空きになった前甲板右舷に移動。
      次はここから潜水艦の浮上を狙います。


      艦内放送で、只今右前方の海域に潜望鏡が露頂しました、との報告があり。急いで目を凝らしますが、海上のガスがきつ
     くてはっきり見えません。聞きこみの時に隊員さんに
      「近くまで来ても、肉眼ではなかなか見つけにくいものですよ」
      と言われていたので意地になって探しますが、うーん…。


      ん?遥か水平線のあたりにほんの少しだけ、航跡みたいな白いラインが見えますが、あれかな?でも、水平線より上の
     方に見えるなあ。雲にしては変な感じだし…。デジカメの最大望遠で見てみると、確かに不自然な白いラインが見えます。
     ああ、あれか!?すぐに潜望鏡も確認できました。浮上の瞬間を捉えるべく必死にファインダーの中で追いかけますが、そ
     の後は浮上の準備のために潜望鏡は海面から姿を消してしまいました。
      うーん、どこから出てくるのか分かりません。潜水艦と自艦の速度を大まかに考えて、今はこの辺りか、と見当をつけます。
     そのまま何もない海面をじっと睨み続けていると、ファインダー中央どんぴしゃで潜水艦が姿を現しました。半ばマグレ当り
     みたいなものですが、まあよく撮れたと言ってもいいでしょう。欲を言えばもう少し寄せて撮りたかったですが、まあ安物のコ
     ンデジですし、あまり贅沢は言えませんね。


      この後はミサイル艇の高速航行です。再び左舷にスパッと移動。後続のみねゆきの左後方から、探照灯を煌めかせて
     二隻のミサイル艇が白波を立てながら接近してきます。よくみると、二隻のとなりには海保の巡視船もついています。
      はやぶさとわかたかは、ファインダーの中であっと言う間に大きくなり、すごい勢いで追いぬいて行きました。滅茶苦茶速
     いなあ。
まさに韋駄天と言った感じです。


      続いて再度右舷に移動し、後方からのはるなを待ちます。いよいよ空包射撃。位置を変えながら三回発射するらしいので、
     一回目はタイミングだけ取って、接近してくる二回目と三回目を狙うとしましょう。
      先ずは一発目。はるな艦首の砲塔から発射煙が吹き出た後、数秒遅れたタイミングで遠雷の様な発射音が響いてきまし
     た。
ああ、そうか。音の方がずっと遅れて届くんだ。となると、発射音を待ってシャッターを押していては間に合わないと言う
     訳か。
      艦内放送の『撃てーっ!』の言い始めから撮影開始。連射のチャッ、チャッと言う音がやけに遅く感じます。五コマ目辺りで
     はるな砲塔から発射煙が吹き出るのが見えました。
んん〜、どうにか写っているかな?
      しかし、空包とは言え凄い迫力です。まるで雷が落ちたような音でした。後から隊員さんに聞くと、実弾発射時はもっと迫力
     があるそうで、頭上を実弾が飛んで行く『ガガガガガガガガーッ』という音がするとの事。


      興奮冷めやらぬ中、三たび左舷に向かいます。今度は左側への180度回頭。ガスのお陰でくっきりとは言えませんが、後
     続する艦隊を見る事が出来ました。うーん、実にカッコイイ。艦隊は再び単縦陣を形成。後続のみねゆき越しに、艦が一直
     線に並んでいます。


      そろそろ頃合いかと、艦橋に上がるラッタルに向かいます。第一甲板から艦橋までは、五層分のラッタルを上がらないと
     行けないので大変です。
さすがイージス艦だなあ。
      2年ぶりのこんごう型イージス艦の艦橋は、左右が後方に回り込んだ独特のスタイル。艦橋は艦の大きさ相応に広いです
     が、沢山の隊員さんが詰めているので手狭に感じます。


      ウイングに出ると、さすがに高さがあるので開放的な気分になります。徐々に夏らしい日差しになってきて、海風がとても
     心地よい。幸運なことに、たまたま空いた左ウイング正面やや横に位置する事が出来ました。ついてました。
      ここで丁度いいタイミングでミサイル艇の高速航行が始まりました。左舷後方からはやぶさが突入してきて、舷側ギリギリ
     を高速で通過した後は、小さな船体を傾斜させての360度フルターン。真っ白い航跡がキレイな円を描いて、相当な横Gが
     掛かっているみたいです。滅茶苦茶カッコイイ。


      くるりと艦隊後方に回り込んだ後は、今度はIRフレアを発射です。その瞬間は撮り逃してしまいましたが、フレアは海上を
     漂流しながら激しく燃焼しています。流れて来た白煙が艦を包み、なんだか日露戦争の日本海海戦みたいな気分です。


      今度は飛行展示。SH−60Jが三機編隊で、P−3Cは単機で上空を通過します。
      そして再び後方からはやぶさとわかたかが高速接近。まるでジェットスキーのように艦を左右に振りながらの高速航行で
     す。
あんなに軽快に動けるとは思っても居ませんでした。しかもよく見ると、艦橋の後方に乗組員が整列して、自衛隊旗や
     帽子を振っています。あれ、何気なくやって見せていますが、かなり怖いんじゃあないでしょうか。凄いスピードを出してるし。


      今度はSH−60Jが低空をパスしていきます、開け放たれたカーゴドアからは乗組員が大きく手を振っていました。
      最後は本日二度目の武器操方展示。今度は後甲板で行われますが、予定されていたVLSのハッチの開放はキャンセル
     されてしまいました。なんでも、昨日やってみたがあまり評判が良くなかったとの事。実弾発射時はハッチが勢いよく跳ね上
     がるので迫力があるそうですが、ハッチを開放するだけだと、ぎこっ、ぎこっ、ぎこっとしか動かず、拍子抜けだったそうです。
     うーん、それでも見てみたかったなあ…。
      以上で展示訓練は終了です。F−15やVLS開放のキャンセルこそありましたが、初めて参加した舞鶴地方隊展示訓練は
     大満足でした。
呉では見れない空包発射や潜水艦の浮上潜航なども見れましたし、大好きなミサイル艇は大盤振る舞いで
     したし。
      舞鶴入港までのわずかな時間を惜しむように、艦内を歩き回ります。思ったよりも暑くなかったので、体力的には余裕でし
     た。それでも首や腕はしっかりと焼けています。
      甲板に上がると、みょうこうは舞鶴港の複雑な水道に差し掛かっていました。特に狭い部分では、大きな汽笛を鳴らしてい
     ます。
      そして音楽隊の演奏に迎えられるようにして、埠頭に接岸。海と護衛艦をめいっぱい楽しめた一日でした。


      ちなみに前日の夜は東舞鶴市内で夕食を食べたのですが、名物なのか市内のあちこちにホルモン焼きの店がありました。
     試しに入ってみましたが、すっきり甘辛味のタレに辛味が効いていて、ジョッキのビールに実に合う味でした。なんかこう、
     いかにも造船所のオジサンや若い船乗りがビールをグイグイやりながら食べそうな、シンプルかつパワフルな料理ですね。
     また来る時にも、是非食べたいなあ。




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