静浜基地航空祭

2005.05.15


      さて、2005年一発目の空自イベントは、静岡県静浜基地航空祭です。前夜の土曜日、仕事を終えてから長距離夜行バス
     に乗り込み、翌朝には浜松入り。空は少し雲が出ていますが、まずまずの天気です。天気予報では雨はなさそうでしたし、
     今回こそは雨男を返上できるかどうか。
      その後JR藤沢駅まで移動し、基地行きのシャトルバスに乗り込みます。途中の道路では航空祭目当てらしき大渋滞に巻
     き込まれそうになりましたが、シャトルバス専用の道路を設けてあったらしく、スムーズに基地に入る事が出来ました。
      初めて訪れた航空自衛隊浜松基地は、戦闘機部隊が所属しない基地と言う事で、全体的になんだかのほほんとした雰囲
     気です。
規模も小松に比べると小ぢんまりしていて、その分滑走路がとても近くに感じます。
      以前プロレスマニアの友人が、レスラーと観客の距離が近い地方興行の良さを力説していましたが、なるほど通じるもの
     があるのかもしれません。

      基地の駐車スペースにはもう沢山の車が。しばらく歩くと、屋台の群れが見えて来ました。定番の焼きそば、たこ焼き、串
     焼き
などのいいニオイが漂ってきて、いやあ、お祭りだなあ。
      朝食を摂った後だと言うのに、誘惑に負けてしまい牛カルビ串焼きを買ってしまいました。やけに固い肉を噛みしめつつ
     基地内をウロウロ歩きます。正門で配布されていたパンフレットを入手。事前に発表されたスケジュールに変更は無し。と
     言う事は、今日は午前中はエプロン付近で航空祭の雰囲気を満喫しつつ、午後からは順行になる滑走路反対側の駐車場
     からブルーインパルスを撮影してみましょう。

      航空祭開始までまだ間があるので、エプロンに出て地上展示機を見て回ります。滑走路が短くジェット戦闘機が離着陸出
     来ないため、プロペラ機やヘリ、輸送機が中心になっていました。
      おお、私が2番目に好きな飛行機、T-6テキサン!お馴染みのまっ黄色のカラーリングがカワイイですが、曇り空の下で
     はちょっとくすんで見えますね。とは言え、スッキリとシンプルで何とも綺麗なフォルムです。
      そのテキサンのすぐ横の隊舎には、ほんの一ヶ月前に訓練中の事故で無くなったロック岩崎さんの遺影が掲げられてい
     ました
。もうちょっと滑走路に近い所に設置してほしかったなあ…。
      
      既にエプロンは黒山の人だかり。首都圏に近いと言う事もあり、なかなか盛況です。そう言えば、バス利用者観覧席券
     言うのを貰っていたのでした。マイカーや電車で来る人たちよりも基地入りが遅くなるバス利用者向けに、あらかじめ席を確
     保しておいてくれたのでしょうか。なかなか気が効いたアイデアです。
      観覧席入り口で隊員さんにチケットを提示し、中に入ります。一面シロツメクサの広場に、ざっと数百個のビールケースが
     整然と並べられています。
そこに座ってみると、後ろの方にいても滑走路が良く見えます。立ち見を余儀なくさせられる上に、
     前に背の高い人が居ると滑走路が見えなくなるエプロン間際よりも、格段に環境がいいですね。

      さて、いよいよ航空祭が始まります。先ずは静浜基地ならではの、T-3、T-7練習機による混成飛行展示。いやあ、プロペ
     ラ機はいいですねえ。なんというか健気で。ひらりひらりと機体を軽快に翻しながら、大空を自由自在に飛び回っている感じ
     が凄くイイ!
      「そんなに力まなくても、空は飛べるんだよ〜」
      そんな風に言われているような、何だか体の無駄な力が抜けて行くような気がします。
      着陸してもあっという間に減速し、ぱらぱらと乾いたエンジン音を立てながらすぐ目の前をタキシング。タキシーウェイを挟
     んでも、滑走路が本当に目の前です。いいなあ、静浜基地…。気に行ってしまいました。
      続いては、浜松基地からリモートのT-4。目の前でテイクオフを見る事が出来ないのは残念ですが、進入方向の上空を眺
     めながら「まだかなまだかな…」とワクワクするのもいいものです。
      薄靄の中をついて、T-4が接近してきました。ギアを下ろしたまま、低空を二機編隊でパス。ああ、やっぱりジェット機もい
     いですねえ、力強くて。ちゃんと撮影できたかな?

      その後はいよいよ、小松からリモートのF-15が!滑走路左手上空に、ポツポツとゴマ粒の様なシミが見えたのもつかの
     間、あっという間にイーグルの形になって轟音を響かせながら頭上を通過して行きました。滑走路上空をパスしたのでしょう
     が、観客席から滑走路までがほんの目と鼻の先なので、殆ど頭上を通過していったかのような感覚です。
      その後F-15は大きく旋回し、再び会場左手から進入。ノーズギアの着陸灯が灰色の空に映えて見えます。ファインダーの
     中で、エアブレーキを展開していたのがはっきりと見えました。
      時には単機で、時には二機編隊で、エアブレーキを立てたりギアを降ろしたり、アレスティングフックを展開しながら、F-15
     は何度も何度も頭上を通過。最後はアフターバーナーを焚きながら強烈な衝撃波を残して低空をパスし、小松基地へと帰っ
     て行きました。いやあ、パワフルの一言に尽きますね。

      そしてこの後予定されていたRF-4の飛行展示は、天候の都合でキャンセルになりました。とほほ。確かに怪しげな空模
     様になりつつありますが、よりによってキャンセルとはなあ…もしかしたら離陸する茨城の方ではもっと荒れているのかもし
     れません。
      急にタイムスケジュールに空きが出来てしまいました。この時間を利用して滑走路反対側の駐車場に移動し、米軍のF−
     16を撮影して見ましょう。これだけ曇ってしまえば、順行も逆光もあまり関係なさそうですが。
      滑走路の端をぐるっと回ったところには、いにしえのF-104F-86が展示されていました。ロープが張っていないので、
     機体にばんばん触れます。それにしても初めて見るマルヨンは、なんとも異様なフォルムであります。こんなちっこい主翼で
     よく飛べるものだなあ。
思っていたよりも機体が小さいので、なおさらそう思いました。
      それよりも、マルヨンの主翼の下に潜り込んでお弁当タイムのひとときを楽しんでいる家族連れがいて、なんだか笑ってし
     まいました。
     
      結構歩いて駐車場到着です。既に沢山の人がいますが、だだっ広いのでエプロンよりも空いています。お祭り気分は乏し
     いですが、その分こちらは撮影優先!の人たちのようで、何か空気が引き締まっているような気がしました。バスーカ砲み
     たいな望遠レンズの人が沢山います。

      すぐにT-3のマスフライトがやってきました。ジェットエンジンとは一味違うレシプロの爆音を響かせて、9機編隊が整然と
     頭上をパス。ドーントレスの大編隊に襲撃される護衛艦みらいの気分であります。
      いかにも飛行教育隊の教官チームらしく、一つ一つの機動がカッチリと決まっています。派手さはありませんが、何かイイ
     ですねえ、こういうのも。
      ちなみにアナウンスの人ですが、着陸時のパイロット紹介では、
      「パイロット、○○一等空尉、特務機関ネルフ所属」
      「パイロット、○○三等空佐、ジオン公国防衛大学校出身」
      「△△一等空尉、職業、農家。趣味、パイロット」

     と、散々遊んでおられました。いい空気の飛行隊みたいです。
      そして次はいよいよ、アメリカ空軍三沢基地から参加のF-16です。このファイティングファルコンの機動がもう、凄まじい
     の一言。
徹頭徹尾アフターバーナーを使いまくり、
      「HAHAHA!重力だって?そいつは何の事だいベイビー(英語)!」
      とでも言わんばかりに、基地上空をコマネズミのように飛び回っています。うーん、あれ、一体何G出てるんだろう…。
      「どりゃあああああああああああああああ(英語)!!!」
      という米軍パイロットの怒鳴り声がここまで聞こえてくるかのよう。ああ、駄目です、カメラが、いや正確には私の腕が全然
     ついて行けません…。
      結局F-16は、静浜基地上空を好き放題に暴れ回って帰って行きました。何かストレスでもあるのか?と尋ねたくなるよう
     な、惚れ惚れする飛びっぷりでした。

      再びエプロンに戻り、今度はT-3jrの飛行展示に備えます。そろいのツナギを着込んだ機付員たちが、お子様を乗せての
     記念撮影を行っていて、なかなか盛り上がっています。よく見ると、これまたイカス風体のナイスガイがいました。
      飛行展示まで間もなくです。狭いメイン会場にギャラリーが押し寄せる中、どうにか前から二番目の好位置に着く事ができ
     できました。
      先ずは、今年一年で飛行機事故により他界された人たちに、黙祷。それぞれに思う所があるのか、お祭り騒ぎの基地内
     もこの時だけは厳粛な雰囲気に包まれます。
      そしていよいよ飛行展示開始。一気に会場が明るい雰囲気に包まれます。機付員が機体の点検を行い、離陸許可が出
     た所で一機ずつテイクオフです。しかし、可愛すぎるぜT-3jr…。

    

    

      この日の為にチーム一同で大真面目に訓練を重ねて来たらしく、一糸乱れぬ見事な編隊飛行。最後は3on3の空中戦ま
     で披露して、拍手と大歓声の中、T-3jrの展示飛行は終了。
      いやー、イイものを見せてもらいました。あと、914番機の機付長をしていたWAFが、T-3jrに負けず劣らず可愛かった
     です。

      さてこの後は、F-2のフライトまで小一時間の休憩。売店広場で焼きそばを食べたりブルーインパルスの2005ツアーパッ
     チを買ったりして、お祭りを満喫します。
      さて、そろそろ滑走路向こうの駐車場に移動しようか、と思った所でぽつぽつと雨が降り始めて来ました。朝から怪しい天
     気だとは感じていましたが、ついに…。通り雨である事を祈ります。
      しかし雨脚は強まるばかり。こりゃいかんと近くの隊舎に飛び込んで雨宿りです。
      そしていよいよ雨は土砂降りに。空も真っ暗になり、雨は一向にやむ気配がありません。これではF-2どころかエプロンに
     も近づけそうにありません。おいおい勘弁してくれよ…という雰囲気の中、無情にもF-2のフライトがキャンセルになった、と
     のアナウンスが…。あちゃー。

      この時点で早々にブルーインパルスも諦めてか、シャトルバス乗り場に向かう人たちが続出します。うーん、全然止みそう
     な気配が無いなあ。一気にテンションも下がってしまったし、私も帰ろうかなあ…。
      しかし天気予報に無かった雨と言う事は、極めて一時的かつ局地的な通り雨ということかもしれません。まあ回復する可能
     性もないではないでしょうから、もうちょっと粘ってみましょう。
      半ば諦めながらも、祈るように空を見上げる人たち。そのまま30分、40分と土砂降りは続きましたが、徐々に空が明るく
     なってきたような…いや、気のせいでは無く、雨脚も少しずつ弱まっています。
      再び基地内アナウンスが。誰もが「まさか…中止?」と息をのむ中、現在降り続いている雨は1330頃に一旦止むと思わ
     れます、との事。1330って、ブルーインパルスの展示飛行開始時刻ぴったりです。
      「おいおい、出来すぎじゃないの?」と、疑る声が上がりますが、基地で使用している気象レーダーの分析です。周辺のご
     く狭い範囲の予報なら、十分な精度があるはず。これはひょっとして、昨年の小松に続いて大逆転があるかもしれません。
      そして空は一気に明るさを増していき、あれほど激しく降り続いていた雨が止みました。急激に広がって行く雲の切れ間か  
     らは、ややモヤってはいるものの青空が覗いています。
      時刻は1330。飛ぶ…のか?それまであちこちの隊舎や格納庫に引っ込んでいた人達が、ワラワラとエプロンに出て来ま
     した。誰もが空を見上げています。ここで三度基地内アナウンスが。
      「只今、当基地から20q離れた浜松基地より、ブルーインパルスが離陸致しました」
      おおおおお、と地鳴りのようにどよめく数万人。やったあ!しかし、それに水を指すように
      「基地上空にて気象条件のチェックを行い、その上でフライトを行うかどうかを改めて判断致します」
      おおおおお、と地鳴りのように落胆する数万人。
      モヤってはいるものの、基地上空は完全に晴れ上がっています。滑走路の向こうには雲が低い所まで下りてきていますが、
     大丈夫!飛べる!しばらくすると、もういい加減心臓に悪いアナウンスが。
      「お待たせしました!会場右手をご覧ください、間もなくブルーインパルスが編隊を組んで進入してまい
    ります!」

      エプロンを埋め尽くした数万人が、一斉に「頭、右!」     


      水蒸気に太陽光線が反射して空全体が銀色に鈍く光る中、見えた!五本のスモークを引いたT-4が低空を進入して来て、
     目の前を轟音を蹴立てて通過!エプロン全体から一斉に大歓声が上がります。凄い!
      この土壇場を乗り切って、目の前でブルーインパルスが飛んでいる!もうそれだけで、静浜まで来た甲斐があったという
     ものです。

      ブルーインパルスは、ここまでのフラストレーションを一気に解消させる見事なアクロを次々と展開します。肩をすり合わせ
     るようなタック・クロスの後は、お待ちかねのローリング・コンバット・ピッチ!3機編隊なのがちょっと寂しいですが、もう迫力
     迫力満点です。

          

                    

                    

       「さて、次はソロ2機によるコークスクリュー!背面飛行の1機の周りを、もう1機がスピードを合わせ
      てロールします!」

      …って、いつまで待っても来ないよ、ソロ2機…
       「失礼しました、2機はそのまま浜松基地へ帰投した模様…です」
      エプロン全体が「んあ〜」。初めて見ました、数万人が一斉にコケるところを…。
       それでも最後は、残った3機がラインアブレストの低空パスを見せて帰投。いやあ、よかったよかった。シメにブルーイン
      パルスがあるのと無いのとでは、天と地ほどの差がありますからねえ。


      アナウンスも笑わせてくれましたが、進行の方も大変だったのでしょう。リモートの上に上空でのウェザーチェック、さらに
     低空での高機動…燃料も使い切って、最後の方はガス欠寸前だった思います。地上も大変でしたが、飛んでる方はもっと
     大変だったのでしょうね。
      しかし今回も波乱含みで、どっと疲れました。でもこうしてブルーインパルスを楽しめましたし、十分満足のいく航空祭と言
     えるでしょう。次は9月の小松です。帰ったらさっそく計画を練らねば!

   


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