呉地方隊展示訓練

2005.07.24


      広島県能美島沖で行われた、呉地方隊展示訓練に初参加してまいりました。これまで単艦での体験航海と一般公開の
     経験しか無い私は、展示訓練と言う大掛かりなイベント参加は初めてなので、朝からテンションが上がります。
      当日の天候は、雨男の私にしては見事な快晴。先に広島入りしていた友人のJ君と合流し、呉に向かいます。
      呉線の普通列車は、いかにもソレっぽい人たちでいっぱい。途中に車窓から見えた海には暗灰色の護衛艦が浮かんで
     いました。いよいよです。
      約45分でJR呉駅に到着。駅構内には真っ白な制服姿の隊員さんが居て、『展示訓練会場行きバス乗り場』の案内板が
     出ています。迷うことなくバスに乗り込み、そこから約10分で自衛隊桟橋に到着。朝から暑い中、既に沢山の人が桟橋前
     に集まってきています。
      おお、手前にははつゆき型護衛艦。そしてその奥には、ひときわ巨大な艦橋構造物にベッコウを貼りつけたこんごう型。
     本日乗艦させてもらう、DDG−173護衛艦こんごうです。
      桟橋入口の受付テントにて乗艦手続きを済ませ、手荷物検査に向かいます。ここで2人そろって見事に金属探知機で陽
     性反応が。

      WAVEの方がにこやかに
     「カメラや携帯はお持ちでしょうか?」
      どっちも持ってます、と答えると、
     「じゃあ結構です、どうぞ〜」
      うーん、こんなザルなセキュリティでいいのかなあ…と首をかしげつつEバースへ向かいます。ふと見ると、出港準備でそ
     の場回頭を行っているはるしお型潜水艦を発見。
本日参加する艦なのでしょうか。へー、タグボートなしであんなにコンパ
     クトに動けるのか、凄いなあ、潜水艦って。

      そしていよいよ護衛艦こんごう乗艦!しかし、7000dクラスになると流石にでかいです。実に頼もしい。
      業務用テントで乗艦券を渡すと、パンフレットこんごうウチワを貰いました。この後の酷暑を考えると、有効なアイテムか
     もしれません。
      ラッタルを上がると、まずは隊員さんが敬礼でお迎えです。。既に沢山の人たちが乗艦していて、右舷から飛行甲板に回
     ります。やっぱりイージス艦は斜め後方からの眺めがカッコいいなあ。ヘリ格納庫が無い分、凄くすっきりとしていますね。
     後部VLSのハッチには立ち入り禁止のロープが張ってありましたが、その支柱がスタンダードミサイルの形をしていて笑っ
     てしまいました。

 

      左舷舷側を伝って前甲板に回ります。目の前には巨大な127o単装速射砲が。艦橋も速射砲も、あまりのデカさに上手
     くフレームに収まってくれません。艦首の立ち入り禁止エリアギリギリまで下がって、ようやく撮影出来ました。
      出港までもう少し時間があるので、第一甲板へのラッタルを下ります。炎天下の甲板と違い、空調が効いていて実に快適。
     
艦内に入ってしまうと他の護衛艦と大して変わらない風景ですが、通路はかなり余裕があります。昨年乗せて貰った護衛艦
     ゆうぎりは、こんごう型の半分の排水量だったのでえらく狭かったなあ。
      先ずはトイレを見てみましょう。おお、広い。ちょっとした大きな駅のトイレぐらいのスペースがあります。300人近くが乗り込
     む訳ですから、当然なのでしょう。

      CICは当然クローズ。一度入ってみたいものです。
      機関室兼応急室では、十人近い乗組員が出港前のチェックを行っていました。
      科員食堂。艦内で一番広い区画とは言え、満席でも80人位しか座れません。それでも大型艦らしくTVモニターが三台もあ
     ります。壁には『肥満防止の適切な食べ方』のパネルがありますが、やはり皆さん、ふてぶてしい体型の方が多いみたい…。
     あと、こんごうグッズの販売はやっていないのでしょうか?ぜひ識別帽を買いたいんですが。

      医務室、散髪室と見て回り、次は先任海曹室です。筆書きの迫力のある看板が、道場の如く入口に掛けられています。こ
     れは若い隊員さんはビビるだろうなあ。中に入ってみると、ありました!こんごうグッズ販売!しかし識別帽は昨日のうちに
     売り切れとの事で、がっかりです。

      ラッタルを下りると、トレーニングルームでした。正しくは保養室というらしいのですが、何かイメージが合いませんね。狭い
     室内にウエイトのマシンやトレッドミルがずらりと並び、床にマットを敷くと10人以上は同時に運動できそうです。
      士官室の横には、士官食器室というのがありました。
      そして艦橋に上がるラッタルの前には長蛇の列が。あー、出港風景を見ようとした乗艦者で一杯の模様です。しばらくは
     上がれそうにないので、飛行甲板から出港を見学する事に。
      桟橋では音楽隊による演奏が始まり、勇ましい行進曲が雰囲気をぐっと盛り上げています。

      後部甲板では舫い作業が行われています。真っ白な制服、日焼けした太い腕、黒いグローブが実にカッコイイ。キビキビ
     とした統制のとれた動きが、まさに『海の男』を感じさせます。
      そしてタグボートが近づいて来て、巧みな連携でこんごうを桟橋から引っぺがしにかかります。この作業は見ていて面白い
     ですね。そしていよいよ護衛艦こんごうは出港。
      音楽隊の演奏する軍艦行進曲が、一層高らかに響き渡ります。いや、出港はこの曲に限りますね。

      航跡の彼方には、先ほどまで係留されていたEバースが。最大望遠で見ると、出港準備が整った護衛艦ひえいの前で、
     先ほどの音楽隊の人たちが演奏しています。この炎天下に、都合五隻分も演奏する訳ですか…体力が無いと音楽隊は勤
     まりそうにありません。

      その後は瀬戸内海の島々を抜けて、一路能美島沖の訓練海域へと向かいます。空はスカッと晴れて波も無く、最高のコ
     ンディション。ここから訓練海域までは、約二時間の航海です。
      ここでJ君と、このあとの行動予定について打ち合わせ。そばにいた隊員さんに、本日の艦隊行動について詳しく伺います。
     どうやら左舷についていた方が見どころは多そうですが、同時に競争率も高いと言えます。
      その後は、ちょっと早いですが昼食を摂りました。私の昼食は、バナナと魚肉ソーセージ、琵琶酢ドリンクです。
      「Kさん咥えもので揃えましたか。ホモの練習か何かですか?プッ(笑)」
      「バナナで糖質とミネラルを、魚肉ソーセージでタンパク質と塩分を、酢のクエン酸で疲労回復!」
      J君はわざわざ米軍のMREを持ちこんでいます。このドマニアめ…。
      さて、艦内をもう一回りしてから艦橋へ上がる事にしましょう。

      酒保の前まで来た時、J君がいきなり袖を引っ張ってきました。
      「Kさん見て、これ!『グンゼブリーフ(M)売り切れ』!」
      「売り切れ!かっこえむかっことじる!転売屋の仕業か!」
      「あんたはやっぱりこういうネタが好きだと思ってました。やっぱりこれ、股間の所に
こんごうって書いてあるんです
     かね?」
      「強そうな○○○だねえ…」

      ここで艦内放送。前甲板にて武器操方展示が行われるとの事です。急いでラッタルを上がると、けたたましい警報の後に
     目に前の127o単装速射砲がぐるぐると回転を始めました。マンガっぽい作動音も無く、実にスムーズに動いています。
      180度回転した後は、砲身の仰角を大きくとってぴたりと停止。何か艦橋に狙いを定めているような…
      「多分、中の隊司令を狙ってたんでしょ」
      その後は艦橋ふもとのCIWSです。鈍重そうな見かけとは裏腹に、これも軽快に上下左右に狙いを定めつつ、チェーン
     ソーのような音を立てて砲身を回転させていました。
      さて、そろそろ艦橋へ上がってみましょう。ラッタル前の狭い通路は順番待ちの人たちでごった返していましたが、30分
     程すると急に動きがありました。どうやら先に上に上がっていた人達が入れ替わりで降りて来た模様。狭いラッタルを4層
     分上がると、艦橋の後方に出ました。

      こんごうの艦橋は、7000dと言う巨体の割にはそれほど広くなく、4500dのむらさめ型とそう変わらない印象です。
     しかし艦橋の左右が大きく後方に回り込んでいる為、なかなか開放感があります。隊員さんに尋ねると、イージスシステム
     が稼働している時はウイングに出れないので、艦橋内からも十分外の見張りが出来るようにそうなっているそうです。

      左ウイングに出てみますが、ここは既に多くのマニアの人たちが場所を押さえていて、動く気配は全くありません。そのや
    や後方に空いたスペースがあったので、そこに陣取ります。
      ここで一時間後の艦隊合流に向けて、後方についていた旗艦ひえいをこんごうの前に移動させるとの事。
      「当艦の航海長、W一等海尉の操艦技術をどうぞご覧ください!」
      との艦内放送が流れます。
      後方から護衛艦ひえいが増速しながら接近し、こんごうと肩を並べた所で上部指揮所にいた航海科隊員が手旗信号を開
     始。一分間に80文字というスピードで、次々と信号を送ります。
      ジャイロレピーターと測距儀にとりついた隊員からは、刻一刻と自艦とひえいとの間の距離、方角が読み上げられます。

      左舷すれすれを追い越して行ったひえいは、一気にこんごうの鼻先に艦尾を持ってきて、正確な操舵でテールスライド。
     5000dの巨体を巧みに操り、きっちりと艦位を入れ替えて見せました。
      そして後方からは、ありあけ、さわぎりがいつの間にやら距離を詰めてきて、4艦による密集の単縦陣が完成です。うー
     ん、お見事!

      その後ウイングに再び人の動きがあり、たまたま空いた柵の前のスペースに入る事が出来ました。おお、何も考えてな
     かったのに、こんないい場所についてしまいました。ラッキーです。
      その後は隣り合わせたマニアの人元潜水艦艦長の二等海佐の人を交えて話に花が咲きました。元潜水艦艦長さん
     と話す機会なんて滅多になく、お陰で色々と貴重なお話を伺う事が出来ました。
      この若い頃の永六輔をぐっと男前にしたようなシブイ二等海佐さんは、現在呉資料館で実物の潜水艦を地上展示する
     という凄い企画
を進めているそうで、一同「おおっ!」と色めき立ちます。見せる事が出来る所は全部見れるようにして行
     きたい、と仰っていました。二年後の公開となる予定だそうです。二等海佐さん頑張れ〜!
      その後は、航空機による編隊飛行展示です。小松島からのSH−60J、小月からのT−5、徳島からのTC−3、最後は
     はるばる那覇からのP−3Cです。
      そして左舷前方の水平線の彼方より、海上の薄靄を突き破るようにして護衛艦の艦影が見えて来ました。デジカメ最大
     望遠で、くっきりと6本のマストを確認。岩国港を出港した、やまゆき、まつゆき、せとゆきです。まさに対馬沖でバルチック
     艦隊を迎え撃つ、連合艦隊の気分であります。

      二つの艦隊は徐々に距離を詰めて行き、先ずはやまゆきとすれ違います。ウイングに出ている隊員達が一斉に敬礼!
      続いてまつゆきです。呉地方隊総監が乗艦しているらしく、マストに海将旗が翻っていました。総監への敬意を表して、ラ
     ッパが吹奏されます。

      三番目のせとゆきとすれ違った直後からは、いよいよ艦隊合流です。先頭を進むひえいが大きく左に転舵し、続いて我が
     こんごうも取り舵一杯。こんごうは凄い角度で回頭していきます。凪いだ海面を切り裂くようなコーナーリング(とは言わない
     か)。お見事!W航海長!!
      回頭の一番深い所に来ると、先行する4艦と後続の2艦が一望できます。こんごう型の高い艦橋位置もあり、凄い大パノ
     ラマです。

      後続の2艦も次々と180度回頭を決めて、護衛艦7隻からなる単縦陣が完成しました。
      そして左舷後方より、先ほどのSH−60Jが低空進入。よく見るとカーゴドアが全開です。
      「あれ、中にカメラマンが乗り込んでます。手ぐらい振っておいたら、広報で使ってくれるかもしれませんよ」
      と元艦長さん。ははは、そんな子供みたいな真似は…と言おうとしたら、J君きっちりと手を振っていてびっくり(笑)。君は
     子供か!?

      堂々の艦隊行動の興奮もさめやらぬうち、左舷前方からは展示艦艇部隊がやってきました。先頭を切るのは、特徴的な
     シルエットと巨体で一目瞭然の輸送艦くにさき。しかし何度見てもでかいなあ。
      続いて潜水艦が二隻。くろしおはるしおです。くろしおのラバーっぽい吸音タイルが鈍く光って不気味です。艦橋と潜舵
     の上では、見張り員が立哨しています。

      そして掃海艇海保の巡視船と続き、三たびSH−60Jが海面スレスレを舐めるようにして低空飛行。こんごうの高いウ
     イングから眺めると、目線より下を通過して行きました。
      さらにLCACが登場。ぶおーんと重低音を響かせながら後方より接近し、あっという間に抜き去って行きました。真夏の
     太陽を浴びて、ギラギラしたアルミ合金むき出しのボディにペイントされた自衛隊旗が、ひときわ鮮やかに映えています。
     すがは時速50Kt。滅茶苦茶に早い。

      この後は艦隊の180度回頭を経て、単縦陣から二列縦陣へ隊列を組みかえる艦隊運動。わがこんごうは左側の列に
     に組み込まれるので、見どころは右舷に移ります。
      本日二度目の180度回頭。取り舵いっぱいで左舷が見どころになりますが、ここで左ウイング後方の場所を放棄して右
     ウイングに移動です。
      舵を中央に戻すと、先行する2隻の護衛艦が一直線に並んでいるのが見えます。おお、すごく絵になるなあ。贅沢を言わ
     せてもらえれば、波一つない凪いだ海というのがちょっと残念です。波濤を乗り越えて突き進む護衛艦隊、という絵だった
     ら言う事なしなのですが

      後続の2艦も舵を戻し、再び7隻による単縦陣を形成。ここから二列縦陣に移行するため、先頭から奇数艦は左に、偶
     数艦は右に、一斉に舵を取ります。

      見事、ドンピシャのタイミングで二列縦陣を形成です。いやあ、ここまでカッチリした艦隊運動とは思いませんでした。さす
     が海上自衛隊、実に頼もしい。
      二列縦陣の間をSH−60Jが滑り込むように低空飛行。このまま小松島に向けて帰投するようで、機体を左右に大きく
     バンクさせながらすり抜けて行きました。
      そして再びLCAC。猛スピードで艦隊中央まで進入して、その場でねずみ花火のように何度もスピンターンを披露です。
     LCACって、あんな機動もできるんですねえ。中の人の目が回っていなければいいのですが。それにしても新しく出来たば
     かりで注目度の高い部隊だけに、たいしたサービス精神です。
      そして二隻のLCACは、あっという間に水平線のかなたに消えて行きました。      

      以上で展示訓練の主なプログラムは終了です。あっという間の一時間でした。
      ここで途中から合流したやまゆき、せとゆき、まつゆきの三艦は、隊列から離れて岩国港へと戻って行きます。つい先程
     まで艦隊行動を共にしていた僚艦が離れて行くのは、なかなか名残惜しいものでした。こんごうはこのまま、ひえい・ありあ
     け・さわぎり
とともに、一路呉自衛隊桟橋に向けて帰投します。
      この頃になって、ようやく護衛艦以外の景色に目を向ける余裕が出て来ました。小さな小島の浮かぶ瀬戸内海は、実に
     美しい風景です。
甲板で真夏の日差しにあぶられた人たちが、ぞろぞろと空調の効いた艦内に入って行きますが、乗組員
     の方々はひっきりなしに行きかう小舟や漁船、曳航される牡蠣の養殖いかだに注意を払い、安全航行に集中しています。

      私とJ君も科員食堂で休憩。疲労と酷暑にやられた体に、ポリバケツの氷水でキンキンに冷やされたスポーツドリンクが
     滅茶苦茶美味しい。黒豆きなこアイスの冷たさとともに、体中に沁みわたります。
      ひとごこちついたので再び後甲板に出てみると、丁度ラッパ吹奏展示が始まる所でした。なかなかイカしたキャラクターの
     二曹
が司会を務め、三曹と士長がラッパを担当しています。緊張の為かたまにトチりながらも、2人とも一生懸命吹いてい
     ました。拍手。

      そして1605、こんごうは自衛隊桟橋Eバースに帰投。天候にも恵まれ、初参加にしては非常に満足のいく展示訓練でした。
      その後は広島市内に出て、J君お勧めのお好み焼き屋でささやかな打ち上げです。疲れ切った体に、お好み焼きとビール
     の組み合わせが最高でした。




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