「電球ちゃんと買ったし……なあ、これで全部だよな?」
指を折り、目線を上にして、買ったものを思い出すような顔をする佐伯に、ゆきは片手にある買い物袋を高く上げる。
「うん。ゴミ袋もオーケー、シュガーポットも大丈夫。あとはお砂糖も買ったよ」
「よし、じゃあ買い出しはこれで完了、って感じだな」
荷物を持っていない片手をジーンズのポケットにかけ、佐伯はふう、と息を吐く。
「じゃあ、お茶でも飲もっか!」
「それ、賛成。しっかし、ホントに寒いよな。雪でも降りそうなくらい。息が真っ白だ……。凍える!」
ゆきの言葉に相づちをうつ佐伯は、はぁ、と長く息を吐きだしたあと、目を細めて空を見つめる。
十二月は最初の日曜日、店の買い出のため、人が溢れるショッピングモールを佐伯と共に歩いている。
たいした量じゃないから付き合わなくてもいいと佐伯は言っていたが、特にこれといって日曜の予定がなかったゆきは、「一人、家でぼうっとしてるのも心苦しいから」と笑って役目を買って出たのだった。
午後の待ち合わせから、熱心にあれこれ必要なものを買い揃えていたら、あっという間。まだ四時を過ぎたばかりだというのに、日は傾き、辺りは暗くなり始めていた。イルミネーションが妙にきらきらと輝いて見え、きれいに感じたのは、暗くなってきたせいもあるようだ。
雨は降らないといっていたが、一日頭上にはグレイの厚い雲が立ちこめていて、佐伯が言うように、今にも白いものがふわふわと降りてきそうな空模様。空気はこの時期にしては身が縮まるほど冷たい。出がけに見た天気予報では、十二月下旬の寒さだと言っていたような気がする。
吐く息は白く、長い尾を引く。指先もとても冷たくて、ゆきは手袋をしてくればよかったな、と店を出たあと少しだけ後悔をしていたのだった。
それは佐伯も同じらしく、彼の指先はゆきに負けず劣らず、寒さで赤くなっている。
「アハッ、瑛くんが凍えちゃう前に、暖かいもの飲んで暖まろう? わたしも手が冷えてきちゃった」
ぐう、ぱあ、と何度か手を広げたり閉じたりを繰り返し、すん、と鼻を鳴らす。手だけでなく、おそらく鼻も少し赤くなっているはずだ。
「ああ、早く行こう。ボサッとしてたらマジで凍りそうだ! ……あぁ、俺、ホント寒いのやだ。体が強ばる」
寒っ! と身震いをした佐伯は、いつもぴんと伸ばしている背を軽く丸めて、足を進める。そんな彼の隣を歩いていたゆきは、海外雑貨を扱う店のショーウィンドウにふと目を奪われ、その足を止める。
「あっ……」
「ん?」
ゆきの短い声に反応し、数歩前に進んでいた佐伯も足を止めて振り返る。
「瑛くん見て、きれい! すっごくきれい! ブルーのクリスマスツリーだよ」
佐伯が足を止めたことにより、ゆきは寒さを少し忘れて足を弾ませる。額がくっつきそうなくらいの距離までウィンドウに近づき、ケースの中にある何本かのクリスマスツリーへと目をやる。
早いところでは十一月の頭から店頭にクリスマス商品が並んでいるが、本格的な品揃えになるのはやはり一ヶ月前ぐらいからだろう。何度かこの店の前を通っていたけれど、それほど目を奪われるようなものは飾られていなかったはず。
少し頼りなかったディスプレイは、いつのまにかクリスマス一色、それもクリスマスツリーで見事に飾られていた。
ツリーの大きさは家庭用のものがほとんどで、どれもそれほど背の丈が高くはない。代わりに、バラエティー豊かな品揃えとなっており、繊細なグラスファイバーでできているものや、多く飾られているダイオードで光るもの、オーソドックスな緑のもみの木をあしらったものと様々だ。
その中でもゆきが目を奪われたのは、ブルーのはっきりとした光を放つダイオードのツリーだ。
冴えるような青は、その明るさで目が疲れない程度の輝きを涼やかに発している。
「ここまですっきりしたブルーだと、やっぱりきれいだな。それに、余計な飾り付けとかしないほうがいいな、これだったら」
ゆきの視線がどこにあるのか察した佐伯は、ダイオードのツリーの前のガラスをとんとん、と軽く指さす。
「うん。でも、飾り付けするのも楽しみの一つなんだよね。小さい時、両親と一緒に飾り付けするのが凄く楽しかったもん。わたしも結婚して、子供ができたら一緒にクリスマスツリーの飾り付けしたいなぁ」
ショーウィンドウのガラスを吐息で曇らせて呟くと、ガラス越しに佐伯が目を細めて笑っているのが見える。
「あ、それもわかるな。でもさ、おまえと子供が一緒にやってたら、絶対におまえの方が何かしでかしそう。お子様二人、っていうカンジだ」
「お子様って……。もうっ、そんなことないよ! っていうかさ、瑛くんは横から絶対にわたしだけに文句を言うよね。下手したら『お父さんに貸してみなさい』って手を出してきそうだよ」
佐伯のことだから、おそらく手を出してくるはず。勿論最初は辛抱して見守ってくれるだろうけれど、もたつくゆきの姿を見て、しびれを切らす姿が目に浮かぶようだ。
「当たり前。だって見てらんないだろ。子供の手前、ちゃんとした飾り付けを見せてやらないとな。おまえじゃ危なっかしいよ。だから俺がやってやるんだ」
「えーっ、わたしだって楽しみたいよ!」
頬をふくらませて隣の佐伯を見上げるが、フッ、と息を吐いた佐伯は口元に意地悪そうな笑みを浮かべ、斜めにゆきを見下ろす。
「ダメです」
「ケチ!」
「わがまま言わないこと。ほら、お父さんの言うことを聞きなさい」
「やだよ!」
「…………ってさ」
「うん?」
「俺たち、その……なんで、一緒の……」
「え?」
言いづらそうに言葉を濁す佐伯を不思議に思い、まじまじと横顔を見つめていたけれど、その頬に僅かな赤みが差していることに気づく。そして、タイムラグこそあれど、彼の言葉が何をさしているのか、ゆきもやっと理解することができた。
「…………あっ」
「……な?」
「う、うん……」
わかった瞬間、顔から火が出そうなくらい恥ずかしくなる。おまけに胸の奥が妙に騒ぎ出すから余計に気持ちが落ち着かなくなる。
――は、恥ずかしい……。っていうか、なんであんなに自然に先のことまで話しちゃうんだろ、わたし……。
好きだともつきあってほしいとも言われていない。むしろケンカばかりだし、事情が事情とはいえ、学校や人前での彼はゆきに対してとても他人行儀だ。
そんな二人なのに。――そんな二人でも、ずっとそばにいるのが自然なような気がするのだから不思議だ。遠い未来の話にもかかわらず、今と同じようにちょっとだけ言い合いをしながらも、互いに変わらずそばにいるような、そんな気がしてならない。
けれど口をついて出るのは照れ隠しの言葉ばかり。
「そ、そうだよね。な、なんで瑛くんとわたしが一緒に……っ」
「俺だって、なんでおまえなんかと!」
頬が染まっているまま、佐伯は目を剥いてゆきを見る。
「なによ、その言い方。すっごく失礼だよ!」
「おまえこそ、なんだよ。俺とじゃ不満があるみたいじゃないか。っていうか、俺で何が悪い!」
早口で面白くなさそうにぶすっと言い捨てる佐伯だが、その言葉にゆきは一瞬ドキッとする。
「て、瑛くん?」
――俺で何が悪い、って……。それって、えーと……。
勘違いしてしまいそうと思いつつも、どんどん耳が熱くなっていくのを止められない。
佐伯もゆきの反応を見て、はっとしたような顔を見せる。
「あっ! いや、その……、そうだ! た、例えば……っていうか」
「例えって……、なんの?」
「そのぉ、将来のためのリサーチというか、なんというか……」
「リサーチ……」
どんどん話が見えなくなっていきそうだが、佐伯の言葉をついつい鸚鵡返しに呟いてしまう。……というか、ほんの少し彼の反応が面白かったりするのだ。
堪えきれず小さく笑って肩を揺らすと、瞼を閉じた佐伯が、照れているとも怒っているともつかない顔で口を開く。
「ああ、もう、いいだろ! ……つーか、俺、もう帰る!」
「ええっ!? 帰るって……ちょっ――」
いつも突っ込まれるのは自分ばかりなので、彼のうろたえる姿は珍しく、調子に乗ってついつい話を引っ張りたくなるが、ヘソを曲げられ回れ右をされてしまっては話が別だ。
ウインドウから体を離し、すたすたというよりもズカズカと人ごみを縫って歩いていく後姿をゆきは慌てて追いかける。
「ちょっと、瑛くん! 待ってったら!」
名前を呼んでもその歩調は変わらず、立ち止まる気配も無い。このままでは本当に家に帰ってしまいそうだ。
――あぁ、もう! また拗ねちゃうんだから……。
怒るのはいつも佐伯。
そして彼を追いかけるのは、いつもゆきの役目。
仕事をしているときの彼は人当たりがよく、とても大人びて見えるのに、実際の彼は怒りっぽくて、乱暴で、ちょっと――いや、かなり子供っぽいところを持ち合わせているごくごく普通の男の子。
彼と知り合って間もない頃、このギャップに驚いたけれど、付き合い慣れた今では、かんしゃくを起こした彼の背中を追いかけるのも、もう慣れっこだ。
慣れているなら、どたばたとせわしく追いかける前に、彼の機嫌を損ねなければいいだけなのだが、その心得は、残念ながらまだゆきには備わっていない。
はぁ、はぁ、と白い息を切らしながら、やっと背の高い後姿に追いつく。ストライドの差はもちろんだが、賑わう街中、一つの背中を追いかけるのはなかなか大変だ。
――追いかけたおかげで、体が熱くなってきたかも。
そんなことを思いながらも、大きく息を吐いて呼吸を整える。
信号待ちで立ち止まっている佐伯の斜め後ろにいるゆきは、彼の名前を呼ぶでもなく、そっと手を伸ばしてその指先に触れる。瞬間、驚いたように佐伯は振り返る。
「な……」
おそらくゆきが追いついたことは、『いつものこと』というのもあり、振り向かずとも佐伯は分かっていたはず。けれど、まさか手に触れてくるとは思わなかったのだろう、言葉に詰まったままだ。
驚きの色に照れも混ざって見えるのは、気のせいではない。
なにやってんだよ、ときつく言われるのは避けたいと、ゆきは僅かに視線を落とし、そっと呟く。
「……寒いから」
「え?」
佐伯を追いかけたことにより体が暖まったのは事実だが、仲直りするきっかけが欲しい。いつまでも背中を追いかけ、なかなか縮まらない距離を走るのは、ちょっと切ない。
回れ右をした彼の前に立って、ごめんね、とひとことを言いたい。
つまらないことで言い合いをするのは日常茶飯事だが、いつものことだからといって、謝ることなく帰りたくない。
寒く感じるのは、冬の寒さに凍える体だけで十分。せめて心は温かいままでいさせてほしい。
「寒いから、手をつないでいれば、少しはあったかいかと思って……だから――」
「別に、寒くなんか……」
拗ねたような口調。けれど、手を解かないでいてくれるのがなんだか妙に嬉しくて、ゆきは小さく笑みを浮かべた。
「でも、瑛くん、指先冷たいよ?」
「……そりゃ、これだけ寒ければ冷たくもなる」
「あの、ね……こういうの、やっぱり、いや?」
触れている指先をほんのちょっと動かす。
時折手を繋ぐことはあるが、こういうときは随分前に彼が口にした『手とか繋がない主義だから』といった何気ない言葉が浮かんでしまい、少しだけ不安になる。
小さく尋ねたゆきの言葉にはすぐに返事はなかったが、言葉の代わりにぎゅっと手を握られる。
「……いやなわけあるか。……バカ」
言い方はぶっきらぼうだが、くちびるにやわらかく浮かぶ笑みを見て、ゆきはほっと安堵する。
「ヘヘ。よかったぁ……」
時間はまだ早いが、あたりはすっかり暗くなってしまっている上に、冷たい風が髪を煽る。手先だけでなく、鼻がつん、と冷たくなるこの寒さは、やはり冬ならではのもの。ほんのちょっと視界が潤むのは、北風が目に沁みたからだ。
そんな寒さの中、ぎゅっと握り返された手の温もりがとても嬉しくて、笑顔で佐伯を見つめる。
「風、冷たいね」
「……うん。強く吹いてきたような気がする」
風の吹くほうへと目を細めた佐伯は、信号へと視線を移す。もう少しで信号は青へと変わるようで、信号待ちのゲージが残り僅かだ。
もしこのまま彼が信号を渡ってしまうならゆきも一緒についていくが、それは今日のデートが終わってしまうことを意味する。
――このまま帰っちゃうのは、なんとなく寂しいな……。せっかく瑛くん、笑ってくれたのに。
心うちのそんな呟きが届いたのかどうかは分からないが、佐伯が深いため息のあと、ぼそっと呟く。
「コーヒー」
「ん?」
「早く店に入って、コーヒー飲みたい」
「瑛くん……」
足元では枯葉が風に煽られ、かさかさと音を立てる。一斉に青信号の歩道を渡っていく人の波から避けるべくゆきの手を引き、歩く人の邪魔にならない場所で再び立ち止まる。
「帰らないんだよね?」
念のため尋ねてみると、申し訳なさそうに眉を寄せたまま佐伯が頷く。
「ゴメン。……悪かったよ」
「ううん。わたしも、ごめんね」
繋いでいる手に改めて力を込める。言いたかったひとことが、やっと言えた。そしてもう一つ。
「あとね」
「なに?」
「さっきの……」
何を言っているのかわからないといった顔で首を傾げる佐伯に、ゆきはその先の言葉を躊躇う。
「え、えと……」
照れ隠しに荷物を持ったままの手の甲で額をごしごしと軽く擦り、やっとの思いでぼそぼそと呟く。
「不満なんて、ない……よ?」
「……なにが」
「ちょっと前に……俺とじゃ不満があるみたいじゃないか、って……。さっき瑛くんが言った言葉のこと」
「へっ? あ、ああ。……当たり前だろ? っていうか、不満なんてあったらチョップだ」
驚いたように目を丸くしたあと、ちょっと意地悪そうに笑う佐伯がゆきの額を軽く突付く。
「えー。……チョップはいやでーす」
冗談めかしてゆきが言ったあと、互いに肩を揺らして笑い合う。そして、「行こう」と佐伯に手を引かれて、来た道を今度は二人で一緒に戻る。
吹く風はとても冷たいが、きらきらと輝くイルミネーションの美しさに目を奪われ、寒さは気持ち半減する。なにより、繋いでいるこの手がとても暖かい。
――よかったぁ。仲直り……っていうか、またこうして笑いながら一緒にいることができて、ホントによかったよ。
笑顔がこぼれるゆきの隣を歩く佐伯が、おもむろに口を開く。
「あのさ、コーヒー飲んだら、さっきの店に、戻ってもいいかな」
「さっきの店?」
「うん。ツリーがあった店。ほら、うちの店のツリーも、少し新しい飾りがあったほうがいいしさ。さっきの店の中に、オーナメントもたくさんあったから、ちょっと見てみたいんだ。いいのがあったら、買って帰ろう」
ウインドウに目を奪われていたので店の中までは気が回らなかったが、おそらく佐伯の言うように、様々なオーナメントがあったのだろう。
すでに珊瑚礁にはオーソドックスなもみの木タイプツリーが飾られている。佐伯やマスターと共に楽しく飾りつけをしたのはつい最近のこと。
クリスマス仕様のちょっと賑やかになった店内に、また新たなオーナメントが加わると思うと、それだけで心がうきうきする。
「じゃあ、わたしも一緒に選んでいい?」
自然と浮かぶ笑顔のまま、佐伯を見上げると、目元を柔らかくした佐伯が笑ってゆきを見かえす。
「いいよ。一緒に選んだら、飾り付けも一緒にするんだぞ? そこんとこ責任もてよ?」
「うんっ! 喜んで!」
冷たい風が吹き抜ける中、ホント調子のいい奴だな、と笑いながら肩を竦める佐伯が、声のトーンを落としてそっと呟く。
「風、冷たいけどさ……暖かいな」
指先にそっと力が込められる。
「……おまえの手、あったかい」
白くたなびいていく息を見送り、ゆきは少し俯いて佐伯の手を握る。
「うん……」
暖かく感じるのは、ゆきも一緒だ。
――手袋、やっぱりいらないや。次も、この先も、手袋なしでいいかな。だって、そうすれば、こうして瑛くんと手を繋ぐ口実ができるもの。でも、そんなふうに思っていることを言ったら、瑛くん怒るかな。『俺は手袋じゃないぞ』って。でも、それでもめげないんだ。だって、人の温もりは、こんなに心を穏やかにするもの。ちょっとだけドキドキするけれど、でも、あったかくて、ほっとして――嬉しいんだ。
「一人じゃこの寒さは耐えられないけど、おまえが一緒なら平気っぽい、俺」
「瑛くん……」
照れて笑う端正な横顔が、イルミネーションの色に縁取られ、淡く輝く。髪も、睫毛の先も金色に輝き、はっと目を奪われる。
なんて綺麗なんだろう――彼の横顔を見て、ゆきはそう思わずにはいられなかった。いつも見慣れていても、この一瞬の彼の穏やかな笑みは、ゆきの胸の奥をぎゅっと掴んで離さなかった。
「寒さに耐えられなかったら、いつでも付き合うよ?」
「そりゃ助かる」
「わたしでよければ、いつでも暖めてあげるね」
――他にはなにもできないけれど。ただそばにいるだけしかできないけれど、それでもいいって言ってくれるなら、いくらでも。
ゆきの言葉に驚いたように目を丸くする佐伯が、ややあって深く――それこそ深いため息を落とす。
「あのさ、おまえの場合、他意はないってのは分かってるけど、俺、勘違いしそう……ハァ……」
「え、なになに?」
「なんでもない。――じゃあ……来週も、再来週も頼んだ。もちろん元旦も」
明るい声で言われ、ゆきもバーガーショップの店員の如く弾んだ声で言葉を返す。
「あはは、ご予約ありがとうございまーす!」
「他に予約入れるなよ? 絶対だぞ」
笑みの残る顔を暗くなった空へと向けながら、佐伯が呟く。空からはその白い吐息に混ざって、今にも雪が降ってきそうだ。
「うん。わたしの体はひとつしかないもの」
「まぁ、な。……っていうか、それから先もなるべくなら、な?」
ちらりと視線を流す彼に、ゆきは笑みを浮かべて頷いた。
「はい」
――勿論。だって、こころもひとつしかないもの。
そのたったひとつは、隣にいる、あなたに。
この手を繋いでいてくれる、他の誰でもないあなたに。
――誰も変わりはできないの。それ、知ってる? 瑛くん。
いつか、教えてあげたい。
End.
2006.11.27UP