ある日、弟とけんかしてお母さんに怒られた來未は、おばあちゃんの家への家出を決行する。しかしバスを乗りまちがえてしまい、知らない町へ。 來未はそこで、文字の読み書きができないおばあさんと出会う。このおばあさんは、いったい何者…!?


【コメントコーナー】

■現代をいきる来未ちゃんとワルルルさんとの出会いから、ワルルルさんの波乱含みの人生、そして未来につながるラスト。一冊からいろんなことを読み取ることができました。(M)
■前半のワルルルさんの半生記、胸のつまる事実なのですが、ワルルルさんのキャラクターで救われますね。だからこそ、震災直後、はたしてワルルルさんは無事なのか、無事であってほしいと、読者はヤキモキさせられます。(N)


【出版に至るまで】

 友だちが悲しんでいるときに何もできなくて、つらくなったことはありませんか 1995五年1月17日、わたくしは阪神淡路大震災を経験いたしました。あの未曾有の惨状をまのあたりにしたとき、この物語の主人公、来未と同じように、ただたちつくすしかありませんでした。
 テレビからの音が來未の耳にとびこんできた。
「ただいま、神戸市上空を西にむかってとんでいます。煙があちこちにあがっています。あ、火がでました。赤い炎がみえます」
 画面に映し出されている光景は、ベランダからみた光景とよくにている。もくもくと煙があがっている一角が大きくうつしだされた。赤い火がよろよろとたちあがりはじめる。
 ヘリコプターにのったアナウンサーが叫んだ。 「ただいま長田上空です。黒煙をあげ、さらに炎が、火があがっています」  來未はたちつくす。  (本文より)  この状況のなか、親しくなった在日一世のハルモニ「ワルルルさん」がいるということに、来未は気がつきます。そして……。  
 被害の少なかったわたくしは、いつもの日常がもどってくるにつけ、やるせない気持ちでいっぱいになりました。被災した友人や知人にお風呂や食事を提供し、たきだしに出かけ、送られてきた食器や衣類やお金をくばってまわりました。いくら働いても、心は晴れません……          ーあとがきからー