デジタルオシロスコープ内臓バッテリー交換

交換するデジタルオシロスコープ日本テクトロニクス社THS720です。 お持ちの方は朗報です!

主な仕様

 ■ 名称:ハンディースコープ
 □ 型式:THS720
 ■ アナログ周波数帯域:100MHz(20MHz帯域制限機能付き)
 □ サンプルレート:500MS/s
 ■ レコード長:2500
 □ 各チャンネルのフローティング測定可能:最大600Vrms
 ■ カーソルおよび21種類の自動測定が可能

 □ 同一チャンネルまたは別々なチャンネルでのオシロスコープ機能と
   デジタルマルチメーター機能が同時に操作可能
 ■ パルストリガーおよびビデオトリガー装備
 □ ハードウェア-ピーク検出/アベレージ/エンベロープ機能


 このデジタルオシロスコープはもう10年くらい前に購入したもので、私個人としては3代目です。オシロスコープ機能の他に、マルチメータ機能まで 搭載されていて、また各チャンネルが独立した測定が行え、フローティング測定が可能なのが魅力でした。
 当時にしては大枚を叩いて購入し、大蔵大臣には大変迷惑をかけた記憶がございます。 このオシロスコープは2000年7月23日に一度メーカーでのオーバーホールと校正を実施しております。

 さて最も威力を発揮したのが、やはりバッテリー駆動での計測で、とある大学での波形測定に活躍しました。この時、数百ボルトの浮いた電源に、パルスが重畳する波形を測定するのに使用しており、 波形の保存もかなりのメモリー(確か10個以上の波形が保存できたはずです)があったので助かった記憶があります。このバッテリー駆動はカタログではフル充電連続2時間計測ができるそうですが、当時の内蔵電池はNi-Cd電池で、単二相当の電池が4本直列 になったものが使用され、容量は4.8V/2.8AHと書かれたものです。ちなみにメーカー型番は「THS7BAT」と言うものでした。

 ある日、この電池がいよいよい最期を迎え、充電できなくなりました。仕方がないので付属のAC-DCアダプタ12V/1A)を使っておよそ8年間使ってきました。 その後、この機種はTHS7xxAシリーズ変わり、現在は生産されておりません。

付属のAC-DCアダプタ     付属品と秋月電子が販売している同容量のAC-DCアダプタ。大きさ比較!

 上の写真は付属のAC-DCアダプタと秋月電子が販売するスイッチング電源の大きさ比較です。取り換えて使用できました。付属のものは幸いDCジャック部がφ2.1のものを使っていたので、7 秋月電子製のものをそのまま差し込めました。ラッキー\(^^\)(/^^)/チャチャチャ

 さて、いよいよ内臓バッテリーです。右の写真がそれです。10年たった今ではもうほとんど手に入らず、どうしようかと困っておりました。そんなとき、 ふと秋月電子のサイトを見た所単二型の充電できる電池を発見しました。何気に寸法を調べて右のバッテリーと比べたところ、なんとほとんど同じ寸法をしているではないですか !( ̄ロ ̄|||)なんと!?


↑ 秋月電子に売られていた単二型の充電できる電池です。お値段は800円/1本、型番は400CHCGP社の電池です。

 左の写真の電池を見て下さい。実はテクトロニクス社は専用の急速充電器(下写真)を用意しており、 この穴にバッテリーを差し込んで充電するため、電極を両端に設けているのではなく、左図の赤丸印が「 +極」、青丸印が「−極 」になっています。

←専用急速充電器


 今回、秋月電子から購入した単二型充電電池400CHCを使うため、上記の電極を自作してみました。

 ←電極の構造をよく観察すると、幅約6mm厚み0.3mm前後(?)の を使って、下まで伸ばしているのが分かります。右側の写真ではもっこり電極部が盛り上がっているのが分かるでしょうか?これと同じものを作ってみたいと思います。
 但し、4本全てを包み込むもの(テクトロニクス社の場合恐らくし
熱収縮チューブを使っているものと思われます)はなく、 オシロ本体のバッテリー挿入部が400CHCそのものがすんなり入る構造なので、あえて全体をつないで包み込むことはしないと決めました。


 電極作り

 最初に申し上げておきます。これから行うことは場合によっては非常に危険なことになりますので、自己責任 で行うことは必然で、メーカーのサポートは受けられなくなります。自信のない方は決して真似をしないで下さい。 最も怖いのは電池の「+極」と「−極」のショートです。最悪は破裂や火災を招きますので、細心の注意して行って下さい。

 t=0.3mm幅17mmの銅板を電池1個を巻き付けつ出来るくらいの長さ(少し長め(10mm〜20mm程度)が良い)に切断し、真円の銅の を作って半田付けしています。真円と言っても素人が作るわけですが、輪の大きさを決めたら印をして、ラジオペンチなどで歪まないよう挟み込み、その状態で半田付けします。 コテ先を充てたとたんに熱が逃げ、半田がうまくつかないことがありますが、しばらくコテ先を充てて、熱が行きわたるのを待ちます。(私の場合およそ10秒くらい)熱が均一に行きわたると、 さらに半田を少し追加して全体を滑らかに慣らします。冷えたらペンチから離し、盛り上がった半田をヤスリなどで平らに削ります。この時、削りすぎると銅の接合部がはがれますので、気を付けて下さい。 その後、真円を出すため、例えば丸い取っ手が付いたドライバーなど、銅の円が入るものを見つけ、歪みを補正します。小さなプラスチックハンマーなどで軽く (本当に軽くですよ!注意!)叩いて補正します。修正しては電池をはめて勘合を確認し、きつ過ぎないで、またブカブカにならない程度に 補正します。
 輪ができたら今度はの方です。t=0.3mm幅6mm長さ180mmに切断し、 まっすぐに伸ばします。この時、切断面にハサミなどの返りバリがあります。この時点でこのバリも修正します。ハンマーで軽く叩いて修正すると簡単です。
 言い忘れましたが購入した銅板の片面は、薄いビニール幕が貼っています。半田付けする直前まで、剥がさないで下さい。また剥がし忘れると半田が乗らないこともあります。 (私はこの失敗を2回もしてしまいしました (*ノ-;*)エーン
 さて、この帯を写真の様に、輪の外側に取り付けます(下図参照)。5mmほど当たり面を入れて半田付げしますが、取り付ける場所は輪の銅のつなぎ目付近がベストですが半田付けにテクニックが必要になります。 注意することは必ずまっすぐに取り付けることです。半田付けする際のコツは、余分な熱を他に与えず、帯の部分だけに熱を与え、半田上げすることです。(口で言うのは容易いですが、 実際はかなり難しい!)

 上は半田付け処理した後の写真です。結構いい加減についていますが、電池との勘合はかなり良く、挿入もスムーズになりました。右の写真は、輪の内面を映していますが、 今回内面の接合面には半田付けをしていません。(特に問題ありませんが、反り返るようではダメですので必ず修正します。)

 電池との勘合と電極の最終仕上げ

 右図は電極を電池にはめた状態のものです。この電池のみ電極を取り付けるわですが、オシロにはめ込む時にズレてしまってはダメなので、下側だけセロテープ2〜3周、電池と合わせて固定しますが、電極側には3mm前後だけテープを貼るようにし、一方上側は何も張らなくても大丈夫です。この状態で、一番下の電池が完成しました。

 次に残り3個の電池を横一列に密着して並べます。
この状態で、上図で言うと右側が「 +極」なので、帯を曲げる位置をある程度決め、印をします。


 ↑ 帯の「+極」側の曲げる位置が決まったところで、ややRを描くように直角に曲げます。 曲げた先端が電池の円周を越えるようであれば、帯が長すぎたことになりますので、写真の様な位置まで切り取って下さい。これで電極は完成したと思いますが、まだ一つやっておくことがあります。 それは長く延びた帯の部分に1枚それテープを張っておきます。貼り方は、一般テープの幅がおよそ14mmです。長い帯の部分は約60mmあるので、 60mmのテープを帯の真ん中に貼り付けます。できれば電池側から貼り付けます。帯の幅が6mmなので、両端に4mmづつはみ出しています。銅の厚み分を差し引いても、 3.5mm弱テープが両端にはみ出ています。しわが寄らないように反対面に折り返して貼り付けると全体がテープに包まれた状態になります。この作業は万一のための処置です。 必ずしておきましょう!また先ほども言いましたが薄いビニールの幕が貼ってあったらこの時点で曲げた帯の「+極」の電極側のみ剥がすことを忘れないように!(私はこれを忘れて、オシロスコープがONならず少し悩みました。 ポリポリ (・・*)ゞ

 オシロスコープ本体に電池を挿入する

 左の写真は電池本体を持ってオシロスコープに挿入しているところです。右の写真は最初の1個が本体に挿入されるところですが、決して帯を持ってむりやり押し込まないで下さい。 帯が曲がってしまいますので、注意して下さい。うまく銅の輪が完成していれば、そんなに力を入れなくても入っていきます。また、1個目が右写真くらいまで入ったら、 次の1個を上から重ねて挿入していき、同様に3個目、4個目と入れていきます。電池の極性には十分注意して下さい。

 最後に上図写真の様に、左から全ての電池が入った状態で、電池の蓋を真上において(左から2枚目)、 まっすぐ下に押しつけます(左から3枚目)。そのまま時計方向に回転して(左から4枚目)ロックします。 これで完成です。心配なら一度蓋をあけてみます。
 また電池を取り出すときは、蓋を開けたとたん、下からのスプリングの力で電池が持ち上がってきますので、その状態でオシロ本体を静かにさかさまにすれば電池はスルスルと出てきますの、 最後に一番下の電池だけが残ります。帯を持って静かにまっすぐに引き出します。(さかさまの状態で取り出すのがベストです)

 オシロスコープ本体の電源をONにする

無事に電源が入りました!
ヤッタァー!\(`∇\)(/`∇)/ヤッタァー!

 元の電池はNi-Cd、4.8V/2800mAhで今回交換した電池が、Ni-Mh、4.8V/4000mAh約4割増しになりました。 電池の種類も違うので放電特性も改善されているはずです。また、充電についてはACアダプターからも行えるそうですが、電池を取り出して別の充電器を使ってやりたいと思います。

 おまけ

 秋月電子で電池購入したついでに、充電器を探していたところ、なんと600円単一から単三まで −儼方式の急速充電できるものが売られていましたので購入しました。しかし、日本語の取扱説明書がなく、英文で書かれているものが1枚だけあり、これだけでは何もできません。 その取説をよく読むと、これは充電器の土台であって、電池パックは別にあるそうです。もともとは車用らしく、箱には6V/5セルと書いてありました。 この充電器の元電源は車のシガライターですが、秋月電子で販売している12V/2A(\1,000で販売)クラスが使え、 DC-JACK端子に接続します。(同じφ2.1なのでそのまま差し込むことが来ます)
 一方、出力は電極をヤスリで軽く削り、私の場合、みの虫クリップを付けた0.3スケアの赤黒2芯線を直に半田付けしてやりました。 (下の写真)
 まだ使用していませんが上記の電池を充電するときは、ホームセンターなどで電池ホルダーを購入してそれぞれ直列接続してこの充電器で充電する予定でいます。


 最後に、とにかく安くできました!電池と充電器、D12V/2A電源全て合計して¥\4,800です。本来メーカー純正の電池は恐らく1万5千円前後はすると思います(2万円近くしたような?)。 電池そのものは現在メーカーでも製造しておらず、手に入らないと思われます。しかし、オシロスコープは元気に動作しています。電池駆動できることにより、外での活躍が期待されます。