人体焦電センサモジュールの改造

 もう何年になるだろうか?かなり前に秋月電子さんで「焦電センサーモジュール<完成品>」(※下写真参照)と言うものを買い、動作させてみたのですが、 裸電球以外の負荷を接続すると、おかしな動作をするので、使い物にならないと思い、倉庫にしまっていました。ところが昨今の省エネブームで、「無駄な電気は使わない 」と言う家族のお達しがあり、なんとかせねばと考えていたところ、倉庫にあった焦電センサーモジュールを思い出し、何とかならないか考えたところ、【なんとかなりそうじゃないか!! 】と言うことになり、改造することになりました。結構時間がかかりましたが、出来上がったころは【俺は何をしていたのだろう!?】と思うほど、無駄な事をたくさんしてしまいました。おかげで内部の構造や仕組みがある程度理解できるようになりました。
 なお、ここで行う改造は勝手に個人がやっているだけで、真似をしてケガや事故、故障、感電など起こしても当方は一切責任は持ちませんので、自己責任にて実施して下さい。自信のない方は絶対に真似をしないように!AC100Vの高圧を扱いますので危険です。

 2011年5月現在、秋月電子さんのホームぺージにはもう載っていませんでした。恐らく扱いが終わったと思われます。もし、眠っているものをお持ちであれば、 改造するメリットはあると思います。
 製品名「PIR Motion Sensor」、型式:NS-300、概要は外が暗くなれば、設定した時間だけ負荷が'ON 'されるものです。設定時間は、5秒〜5分、入力はAC100V、負荷は最大100Wの白熱電球のみ、センサーは110°の視野角 があります。センサーの感度調整付きで、1.5m〜24mの検出能力があるそうです。外の明るさが20ルクス以下になれば動作する

 改造経緯と内容

 秋月電子さんのセンサーモジュールを使った改造はWeb上でも結構ヒットしますがどれも、裸電球を負荷にした物でした。冒頭でも述べましたが、 裸電球以外の負荷が何故不安定なのかを調査しなければなりません。ちなみに裸電球より省エネの、電球型蛍光灯と言う物を負荷に接続したところ、 センサー'ON'時に異常音が発生し、激しいちらつき動作をしました。壊れたのではないかと思いました。結論としてこのままでは、誘導負荷はダメと言うことになりました。どこかのサイトで、このセンサーを使って 誘導負荷を接続するとダメだったのを質問サイトに投稿しているのを見ましたが、誰かの回答に「スナバかバリスタを挿入すると良い」とありましたが、 それは接続する負荷によってだと実験で判明しました。いずれにせよ、誘導負荷はダメの様です。では何故ダメなのか、回路図が公開されていましたのである程度予想したいと思います。

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 細かなことは説明できませんが概要として、左の回路図のIC1 CS9803GPが制御ICで、10Pinから トライアックを駆動するトリガパルスを出力しているようです。一応このICには交流波形のゼロクロスを検出する端子( 12Pin)があるようですが、どうもチラつき異常の原因は、このゼロクロスが関係しているのではと思っています。本当にゼロなのか検証すればよかったと、後で後悔しています。 波形を見ればすぐにわかるのですが、もしそうであっても位相までは調整できないようです。普通で言うSSRスイッチ調光器スイッチ の様な回路になっているようです。


 トライアックスイッチには普通、ノイズ誤動作防止スナバ(CR)を入れるのですが、この回路にはありません。 負荷を限定しているからでしょうか? 唯一、この回路のすごいところは、消費電流がかなり小さいと言うことです(IC単体でトライアック駆動で2.5mAです)。 スイッチ'OFF'時では実測で1W以下でした。回路も結構工夫されているのである意味驚きです。エネルギーが要らないので、回路の電源はD1ダイオード 1本で半端整流したもので間に合うようです。
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 私はどうしても省エネランプを点灯させたかったので、この回路にあるトライアックの使用をやめて、外に 別のSSRスイッチを取り付けることにしました。省エネ回路には魅力がありますが、白熱電球だけでは用途が限定されます。そこで、制御ICについてWebで検索すると、 中国語バージョンと2ページばかりの英語バージョンがありました。ここでは割愛致します。
 トライックを使わないので、トリガーモードを「RELAY」モードとして利用する事にします。この回路についてもデータシートに出ていましたので、 下記に載せておきます。2種類ありましたので両方載せておきます。

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 いずれにせよ制御ICの11PinからNPNトランジスタN-ch FETなどでドライブして、リレー なりSSRなりを駆動させるようです。今回はSSRを考えているのですが、基本的にケースに入ることを前提とし、AC100V/2A定格の物を探していましたところ、 手持ちに一つだけありました。

OMRON社製、SSR G3MB-202PL

← このSSROMRON社製G3MB-202PLと言うもので、AC250V/2Aが定格のドライブ能力です。 駆動はDC5Vですが、入力インピーダンスが440Ωです。5Vだと約11.4mAの電流が必要になります。 上記の回路では結構な電流になります。
 このSSRにはゼロクロス機能は入っていませんが、スナバ回路は入っているようです。現在は G3MB-202PLは廃品で代替えはありませんが、ケースに入る形状はいくつかシリーズがありそうです。


 当初のモジュールの回路よりRELAYモードにすることと、電流は多く取るため、いくつか変更します。まずD1ダイオード1本での整流をやめ、ブリッジダイオードに変えます。次にトライアック駆動に関連する部品2個( TR1、R11)を外します。
 次にZD6V)ですが電圧を実測すると約4.8Vと若干低めだったので、 部品を調べたところ、5Vツェナーでした。次に位相を検出する必要が無いので、R91MΩ )を取り、R8470kΩ)をショートしました。またSSRを駆動するため、 FETスイッチTND012MP)を追加し、トライイアックが差し込まれていた穴2か所OUTIN)だけを差し込み、FETGNDピンは足を曲げてジャンパー配線 しました。ブリッジダイオードAC入力の1か所−マイナス足を基板に差し込み、残りは 空中によるジャンパー配線です。ツェナーダイオードは場所移動してブリッジダイオードの上に空中配線 しています。ブリッジダイオードを使うため、AC入力周りのパターンを2か所ほど切断しています。

←上2枚の写真を含め、無理やり部品を移動させたり、追加している様子が見えると思います。裏のパターンは、TRIAC10Pin)から R11330Ω)へ行くパターンを切断し、R11RELAY11Pin )へジャンパー配線しています。
 一口で言うと、AC入力ブリッジ整流回路に変更し、出力系統はTRIACの出力を切断し、 RELAY出力に切り替えただけです。


 回路電流の増量を考えなければなりません。現行のモジュール回路にあるAC100V入力ラインにD1C110.1uF・AC250V )とR1047Ω-1/4W)とZD6V)とで決まる容量定数があります。周波数 50Hzとすると、I=√E/R2+(1/(2×π×f×C)2 と言うざっくり計算になります。これを計算すると、約3mA になります。先程のSSRを駆動することはできませんので、ここではCの容量をあげます。手持ちの部品の関係で、1uFを選択しました。 これだと先程の計算で行くと、電流約10倍30mAまで取れそうです。C は基板に乗りませんので、外付けしました。誤動作防止を兼ね、Cには並列に200kΩの抵抗を取り付けました。外付けしたSSR と共に下記の様になりました。

 ここで問題発生!容量を上げると、全体の制御電圧が4.8V→5.3Vまで上昇する。このため、CDSの検出電圧が変わり、再調整の必要が出てきました。仕方ないので、 これまで取り付いていたR6200kΩ)を取り外し、代わりに半固定VR200kΩ)を取り付けて、 現場に合わせて調整できる様にしました。(※ 下写真参照)
 ここまで来るのに3日もかかってしまいました。いくつか原因があるのですが、納得のいく回路解析は出来たのですが、肝心の人体検出動作がしない事があり、 悩んでいたところ、半田のブリッジを発見しました!参りました!・・・・・やっと解決です。基板をケースに収めます。

 何とかケースに収まりました。上の左から2枚目の写真に見える半固定抵抗は、CDS
感度調整用のボリュームです。ケースに入れる前に、調整をしておきます。 この調整を
しっかりしておかないと、センサーが動作しないとか、昼間でも点灯してしまうと言う不具合が
生じてしまいます。


 動作チェック

 では蛍光灯型電球を取り付けて動作させて見たいと思います。

 異常音もすることなく、点灯も良好です。点灯していない時のAC入力側の電流を計測すると、1W以下でした。非常に効率の良い照明ツールになりました。このモジュールに使用されている制御ICはかなり優秀なICだと分かりましたが、 秋月電子さんではもう扱っていない事が残念です。
 ・・・・・おしまい

 追記:応用編

 上記のセンサーモジュールを使い、2011年5月23日アップした「AC100V直接入力型LED照明もどき」を取り付けて見ました。

 LEDに取り付けた放熱器は確か秋月電子さんで売られていたものです。大きさは 47×50×17mm@\50リーズナブルなものです(P-02951 で検索できます)。LEDを取り付ける穴が無いので、両目放熱用シールを貼るか、取付穴を空けるかのどちらかをしなければなりません。私は3か所のM3タップ穴を空け、 樹脂ネジで止めました。 上記のLEDには約220mAの電流を流すように放熱器の下に10W/10Ωの抵抗を取り付けていますが、放熱器の大きさが抵抗に マッチしていてあまり目立たないようになっています。
 動作は良好で、センサ大きさからあまり違和感が無いと思うのは、自分だけでしょうか?ホームセンターなどで売られているこの手の照明機器は、ライトがやたらでかく、センサ部は小さかったように思えます。 明るさの面で言えばかなり明るいです。もちろん直視できないので、光を拡散するレンズを取り付けています。あとは防水処理をすれば屋外 などでも使えそうです。
 今回はLEDに応用しましたが、AC100V100W程度の負荷であれば、殆どの物が取り付けられます。