【025 迷路】
いつの頃からか
俺は
夜毎同じ夢を見る。
夢の中の俺はいつも同じ人と一緒にいて
その人と二人
とても楽しそうに話しをしたり
笑いあったりしている。
残念なことに
俺には
その人の顔はわからない。
まるで皆既日食のように
その人の周りはいつもまぶしい光で覆われてしまっていて
顔を見ることができないんだ。
けれども
不思議なことに
俺の目には見えないその表情は
今は隠れてしまっている太陽のような笑顔だと
夢の中の俺は確信している。
夢を見ている間はとても楽しい気分で一杯なのに
朝
目が覚めると
楽しい夢を見ていたこと意外は
何一つ覚えていない。
それでも俺は
独り
今夜も同じ夢を見る。
そして
独り
明日も同じ夢を見る。
夜毎繰り返し見るこの夢の世界から
俺は
いつか覚めることができるのだろうか。
それとも
覚めない方が幸せなんだろうか・・・。
(2008/05/13初出『月隠』を加筆修正)
BACK