狸寝入り



練習試合帰りのバスの中
さすがにみんな疲れてて寝てるひとも結構いて田中さんなんかはいびきをかいて寝てる
キャプテンと菅原さんはなにやら話をしてうぃるのが聞こえた

しばらく携帯やら窓の外を見て
ふと肩に重みを感じて隣を見ると日向が寝ていた
合宿とかの大の字になって小学生みたいに寝てる姿とは違ってよっぽど疲れたのか静かに目を閉じて寝息をたてている
いつもなら
「重い!」
と一蹴してたたき起こすところだけど
何故か気が向いたみたいでそのまま寝かせておくことにした
しばし暇つぶしに眠る姿を観察する
ガキみたいに無邪気な寝顔
年上の女性はこういうのを「かわいいー!」とか言うんだろうか
よくわかんねぇけど

ふんっと鼻をならして窓の外に目をうつす
日が暮れた窓ごしにも日向の寝顔
と、それに気づいて目を大きくする自分

かわいいか?

かわ・・・んんん?

どっちかつーとぶさいくだろ。この寝顔は

かわいいっつーんだったら顔よりこいつの場合無邪気だったり小動物みたいだったりするしぐさや行動の
方だろーな

・・・あれ?

ここまで考えて我に返る
なんでおれはこいつの可愛いところを探してるんだ
馬鹿か。俺は馬鹿なのか。

思わず頭を抱えた

「どしたの?影山」

声に顔を上げると前の席から菅原さんがこっちを見ている
「え、いや!なんでもないっす!」
焦る俺
「そう?なにか悩み事とかあったらいつでも聞くからなー」
にこにこ笑って座りなおす菅原さん

なやみごとって・・・
なにを悩んでて相談するんだおれは!!!

再び頭をかかえかけて落ち着こうと窓の外を見る
が、何故かとなりのやつの寝顔が気になるという異常事態だ

はあーーーっ

周りに気づかれないように静かに長いため息をはいた
こういうときは寝るに限る
まわりにも自分にも

そうだそれだ
寝たふりで乗り切ろう

目を閉じれば疲れた体には簡単に睡魔は訪れるはず
戸惑いを微睡んだ思考で濁して
気づきかけた何かに知らないふりをした



end.