※原作・卒業後、おつきあい中。「我慢の限界」の少しあと。





熱い・・・!
頭が熱い。
身体が熱い。
喉が痛む。
節々が痛む。
ぞくぞくするのに布団の中が熱くてたまらない。
息が熱い・・・誰か、誰か助けてくれ・・・





手のひらの温もり





ふっと額に柔らかいものが乗せられた。
少しひんやりしてて優しいそれは、頭の熱をすっと取ってくれそうな気がした。

うっすら目を開けると、沢田の心配そうな顔。
じっとこちらを見つめている。
気持ちのいいものは沢田の手のひらだった。
熱が高いから、平熱の沢田の手がひんやり感じるのだ。

「大丈夫か?」

心配そうな低い声。
生え際をゆっくり撫でてくれる手が気持ちいい。

「ああ・・・」

なぜだかすごく安心して、うっとり眼を瞑った。
眼を閉じると温もりがよりはっきり感じられて安心感も増すようだ。
その心地よさに身を委ねて引き込まれていく。

「何か喰えるか?」

「う・・ん・・・わかんない。」

そう言うと、

「ちょっと待ってろ。」

沢田は手を離して立ち上がった。
どこへ行くのだろう。


急に一人になってしんとした部屋の中、少し寂しくなってくる。
ややあって足音が近づいてくるのが聞こえた。
戻ってきた沢田の手には小鉢があった。

「起きられる?」

沢田は、手を添えて上体を起こしてくれると、背に半纏をかけてくれた。
冷たい麦茶を渡してくれるから口を付けると、
思っていたよりも喉が渇いていて、あっという間に飲んでしまった。

「さ、これ。」

そう言って沢田が差し出したのはすりりんご。
思ってもいなかった物を急に出されたせいで吃驚してたら
私が動けないのだと思ったのだろう、

「自分じゃ食べるの無理か。」

そう言って、りんごを一口、スプーンで掬って口元に持ってきてくれた。
ちょっと恥ずかしいと思ったのは一瞬で、水分を欲する身体が反射的に反応してた。

「ん・・・(ぱくり)」

美味しい・・・
ずきずき痛む喉に、りんごの水分と甘みが優しく染み通る。
夢中になって飲み込んだ。
求めるように口を開くと、沢田は嫌がりもせず、一口ずつ差し出してくれる。
ずっと食べていなかったせいでお腹も減っていたのか、あっという間に食べてしまった。



一息ついて今の自分を振り返ったら恥ずかしくなった。

「ありがと・・・////」

「食べたな。よしよし。じゃ、薬飲んで。もう少し寝てろ。」

「うん・・・」

薬を飲んでもう一度寝かされると沢田が立ち上がろうとする。
咄嗟に服を掴んで引き止めた。

「どした?」

優しい顔して聞いてくるから、

「ん・・・もう少し、そばにいてくれ・・・」

そう言うとふっと笑ってそっと手を握ってくれた。
柔らかくて少しひんやりしてて、気持ちがいい。
優しい、心配そうな瞳がじっと見つめてくれている。
拠り所を失っていた心がすっと落ち着いていく。
なんだか身体まで楽になったみたいだ。

「弱ってるお前、なんか可愛いな。」

「・・・なんだそれ・・・」

「おとなしくて、どこにもいけないって感じがして、俺だけのものって思える。」

「ばか・・・////」

「ははっ。さ、もう寝ろよ。」

「うん・・・」

そう言うと、沢田はちゅっと額にキスをしてくれた。
柔らかくてちょっとひんやり気持ちよくて、
あたしはそのままゆっくり眠りに落ちた。





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尚様ファンの皆様、こんにちは。
ここまでお読みくださってありがとうございます♪

風邪で高熱を発して寝込んでいる久美子さんのもとに
りんごを持ってお見舞いにきた慎ちゃんです。
黒田の台所を借りて持ってきたりんごをすったのでしょうか(笑)
尚様がお描きになったとっても可愛くって素晴らしい
お見舞いのイラストにSSを付けてみました。
いつも素敵なイラストをありがとうございます!

2009.12.5
双極子



響子様へのお見舞いに描いた絵に、またしても双極子様が素敵なSSを書いて下さいました!

久美子さんを労る慎ちゃんと、甘える久美子さん、暖かさが伝わってくるお話をありがとうございました!
さりげなく手を握るシーンを入れて下さったのがうれしいですv
2009.12.6 尚