後にヌーヴェル・ヴァーグの面々を始め多くの映画作家たちから師と仰がれることになるニコラス・レイの記念すべき長編デビュー作品にして奇跡的な輝きを放つ傑作。エドワード・アンダースンの小説「Thieves Like Us」に目をつけた映画人ジョン・ハウスマンがレイに映画化を薦め、当時RKOの新しい製作主任に就任したばかりのドーリ・シャリーによって企画が実現した本作は、ボウイとキーチという若い男女の愛の逃避行を描いた悲劇的ながらも人間的な温もりに満ちた繊細なロマンスであり、陰鬱で冷たい感触を持つ一連のフィルムノワールとは一線を画すものになっている。47年9月に映画は完成するが、RKOは反共主義者のハワード・ヒューズによって買収されたために、共産主義者だったドーリ・シャリーは会社を去ることとなり、その結果『夜の人々』は長い間オクラ入りとなってしまう。ようやく映画が公開されたのはレイが四作目の『孤独な場所で』の撮影に取り掛かっていた49年11月のことであった。かのジャン=リュック・ゴダールはこの映画を「予算においてはB級だが、精神においてはA級である」と賞賛している。またヘリコプター撮影による俯瞰ショットを初めて本格的に導入した作品としても記憶されるべき作品だろう。ちなみにロバート・アルトマンが74年に撮った『ボウイ&キーチ』は本作のリメイクである。
[Disc1] ・editionsmontparnasse.fr ・Region 2 - PAL ・本編1:35:24(PALtime) ・音声:英語DD5.1ch/mono ・画面仕様:1:1.33(スタンダード) ・チャプター数:15 ・字幕:仏語(ON/OFF可能) ・特典 ドキュメンタリー「I'm a Stranger Here Myself」(約43分) 映画史家ヴェルナール・エイゼンシッツによる『夜の人々』解説(約25分) ファーリー・グレンジャーの回想(約10分) ・発売日:2004/11/16 ・価格:EUR 24,98
■本編の平均ビットレート
■DVD所感
1時間超の特典映像がディスク1枚に収録され本編の圧縮率が高くなってしまっているので、S/Nが悪く解像度もやや甘い画ですが階調表現は良好です。音声はモノラルと5.1ch(いずれも英語)の2種類収録。仏語字幕がオン・オフ可能仕様になっているのは嬉しいですね。特典では何と言っても「I'm a Stranger Here Myself」(わたし自身ここではよそ者)が貴重です。これは1974年に公開されたドキュメンタリー映画で、ニコラス・レイ本人を始めトリュフォーやナタリー・ウッド、『わたしたちは二度と故郷にもどれない』のスタッフたちによるインタビューで構成されています。ただ『わたしは邪魔された』(みすず書房)のフィルモグラフィーによると上映時間が58分となっているので、本ディスクに収録されているのは内容を一部カットしたフランス公開版なのかもしれません。