PAL盤のススメ Vol.5 〜独盤を観る〜
『青の光』


 
作品解説

ドイツ舞踏界の花形から映画界へと転身、アーノルド・ファンクの山岳映画でヒロインを演じ、映画女優として成功したレニ・リーフェンシュタールは、映画製作にも強い関心を抱くようになり、巨匠ファンクの元でその技術を吸収していった。そして自ら映画を作るべく"レニ・リーフェンシュタール・スタジオ・フィルム会社"を設立し、作家であり映画理論家でもあったハンガリー人ベラ・バラージュの協力を得て撮られた作品が長編デビュー作『青の光』である。この時レニ・リーフェンシュタールは若干29歳。キャメラは『死の銀嶺』『モンブランの嵐』のハンス・シュネーベルガーが受け持った。ドロミーテン山岳地方に伝わる伝説にヒントを得たという幻想的な愛のメルヘンは、大自然の美しさと人間の肉体美が調和したレニならではの芸術センスが光る傑作として高い評価を受け、ベネチア映画祭で銀賞を獲得する。そして当時ドイツの首相に就任したばかりのアドルフ・ヒトラーが本作を絶賛し、レニはナチ党大会の記録映画製作を依頼される。このような経緯で撮られたのが映画史上最も美しいプロパガダンダ・フィルムと言われる『意志の勝利』である。しかし、この作品によって彼女の人生は苦難の道を歩むことになる。

パッケージ




仕様、その他のデータ

原題:Das blaue Licht
[Disc]
・Kinowelt Home Entertainment
・Region 2 - PAL
・本編79min/67min
・音声:独語DD Mono
・画面仕様:1:1.33(4:3)
・チャプター数:16
・片面2層
・字幕:なし
・特典
  レニ・リーフェンシュタール略歴
  プロダクションノート
  『青の光』予告編
 [予告編集]
  『死の銀嶺』
  『運命を分けたザイル』
  『彼方へ』
・発売日:2005/3/22
・価格:EUR 14,99
 

本編の平均ビットレート


DVD所感

最新のレストアを施された79分版の画質は映像S/Nが甘く、画像が乱れる箇所もありますが、解像度は高く、黒の階調表現もしっかり出ている中々良質のモノクロ映像です。67分版は古いマスターを使用しているせいか画質は良くありません。こちらはあくまでも特典映像と考えるべきなのかもしれません。ちなみに字幕は英語はもちろんドイツ語も収録されていませんが、素晴らしいショットの数々、ヒロイン演じるレニ・リーフェンシュタールの美しさは観る者を大いに陶酔させてくれますし、セリフを極力排した、映像に重点を置いた映画なので、言葉が分からなくても映画的な面白さはまったく損なわれないと思います。どんな話なのか気になる方は、ネット上で発見した『青の光』の物語解説のテクストを本ページの最下部にアップしておきますので、ドラッグ反転してお読みください。ただ、物語上重要な部分のネタバレが含まれているので、DVDを観た後に読むことを強くオススメします。

画質: 
音質:
特典: 

*特典は67分版の収録を評価してのものです。

メニュー画面キャプチャ



メイン・メニュー(左上)、特典メニュー(左下)、チャプター画面(右上)、『青の光』52年公開版の冒頭(右下)


物語解説

ユンタは村の異端者である。誰も構ってくれない乞食娘だ。山猫のように荒っぽい。そして誰の子だかも判らない。村の男からも女からも蛇のように嫌われている、彼女の眼差しは満月の夜、高い岩角に光を放つあの「青の光」の様に怖れられている。百姓達は彼女を魔女だと思っている、そして子どもが時たま崖から転げ落ちて死ぬのを彼女のせいだと信じていた。ドイツの画家ヴィーゴーはひと夏、牧歌的詩情に満ちたこの村に来た。彼は村人達の迷信を聞いて一笑に付した。しかし次の満月の夜また子どもが崖から落ちた。次の日、村の百姓達はユンタに出会って投石しようとした、ヴィーゴーの計らいで事なきを得、ユンタは山へ逃れ、友達である羊飼の少年の所に隠れた。ユンタの不思議な魅力にひかれてヴィーゴーは彼女の後を追った。やがて二人は羊飼の小屋に住むこととなる。だが彼女は子供じみた信頼の念と救われた感謝の念とを以て彼を好いていただけで男性としての彼に近づこうとはしなかった。麓の村からもう一人ユンタに対する憧れから地主の子トニオが訪れるが彼も期待を失望に変えて戻らねばならなかった。二度目の満月の夜は来た。村人達の迷信的な恐怖は広まった。ヴィーゴーは不安に堪えられなくなり、外に出ていつとはなしにモンテイリスタロに輝く青い光を見入ったとき、突然ユンタの姿が月光に照らし出された。彼女は道のない道をよじ登ってゆくのである。ヴィーゴーは恋と悩みに駆り立てられ彼女の後を追った。百姓の子トニーも同じ時刻、青い光に向かって登っていた。けれど彼にはユンタの姿が見えない。そして彼は転落して行った。ヴィーゴーは遂に青の光に達することが出来た。それは月光を受けて煌めく水晶の窟であった。案の定そこにユンタは佇んでいた。憑かれた者のように彼女は青白い光を反射する水晶に見入っていた。翌日、ヴィーゴーは青い光の謎を村人に知らせようと思い立った。谷間の村に下った彼は村人に水晶窟へいたる道を教えた。村は忽ち湧き返るような騒ぎとなった。水晶は探検隊の手によって幾塊となく持ち帰られた。ヴィーゴは幸福感に浸りながら待たせてあるユンタを訪ねて再び山へ帰っていった。少なくとも彼は善い事をしたと思っていた。彼はユンタに対する世人の誤解を解いてやり、彼女を憐れな境遇から解放できたと信じていた。だが山の小屋に辿り着いたとき彼の目に映ったものは何だったろう。それはたった一つの慰めであり、夢である窟を破壊されたユンタがモンテイリスタロの遥かな崖下に冷たい死体と化して横たわる悲しい光景だった。
 

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