銀盤比較 Vol.7
『ノスタルジア』 国内盤 VS イギリス盤 VS 北米盤


 
作品解説

ソ連から亡命したアンドレイ・タルコフスキーが、国外で初めて製作した作品。舞台はトスカーナ地方。亡命者たる自らの境遇を主人公に投影して描いた本作は、タルコフスキーの祖国に対する複雑な想いが、水と火、光と闇が静かに戯れる詩的な映像美の中で切々と語られていく。「死に至る病」とまで言われる亡命ロシア人の故郷への郷愁の念が、悲痛なまでの美しさとなって観る者の心に迫ってくる映画である。共同脚本はアントニオーニやアンゲロプロス作品の脚本も手がけているトニーノ・グエッラ。1983年のカンヌ国際映画祭で、創造大賞、国際映画批評家連盟賞、エキュメニック賞(全キリスト教会審査員賞)に輝いている。

ジャケット&ディスク紹介

国内盤北米盤UK-PAL盤

仕様、その他のデータ

[国内盤]

・ジェネオン エンタテインメント
・Region 2 - NTSC
・本編2:05:36
・音声:ドルビーデジタル/イタリア語/モノラル
・画面仕様:4:3 ビスタ・サイズ(1.66:1)
・チャプター数:14
・字幕:日本語
・片面・1層
・3,800円(税抜)
・発売日:2002/11/22

[北米盤]

・Fox Lorber
・Region All - NTSC
・本編2:00:00(?)
・音声:リニアPCM/イタリア語
・画面仕様:4:3 ビスタ・サイズ(1.66:1)
・チャプター数:8
・字幕:英語
・片面2層
・発売日:1998/10/6

フィルモグラフィー&受賞歴
予告編

現在廃盤

[UK-PAL盤]

・Artificial Eye Film
・Region 2 - PAL
・本編2:00:24
・音声:ドルビーデジタル/イタリア語/2.0ch
・画面仕様:16;9 ビスタ・サイズ
・チャプター数:11
・字幕:英語
・片面1層
・£24,99
・発売日:2003/2/24

[特典Disc]
タルコフスキー・ファイルin「ノスタルジア」
Time of a Journey(RAI製作)
インタビュー集(テキスト)
主要スタッフ&キャスト情報


メニュー画面比較


国内盤メニュー画面(左上)、国内盤チャプター画面(左中)、国内盤字幕選択画面(左下)、北米盤メニュー画面(中央上)、北米盤チャプター画面(中央中)、北米盤字幕選択画面(中央下)、UK-PAL盤メニュー画面(右上)、UK-PALチャプター画面(右中)、UK-PAL盤特典Discメニュー画面(右下)


平均ビットレート比較

[国内盤]

[北米盤]

時間表示がされない仕様になっていて、正確なビットレートが分かりません。しかし、片面2層収録されていることから、かなり高い数値であろうことが予想されます。

[UK-PAL盤]


画面比較

上が国内盤、中央が北米盤、下がUK-PAL盤

国内盤は明らかに赤いのが分かると思います。一番自然な感じなのはUK盤でしょうか。北米盤はかなり暗めですが、S/Nと解像度は一番良いですね。原版の色合いがどんなだったのか気になるところではあります。

上が国内盤、中央が北米盤、下がUK-PAL盤

国内盤は絵がボケボケですね。北米盤はやはり映像が暗いのですが、解像度が高いのが国内盤と比較しても良く分かると思います。UK盤は発色の良さが目立ちますが、映像自体はちょっとボケ気味。

上が国内盤、中央が北米盤、下がUK-PAL盤

国内盤はとにかくS/Nと解像度が悪すぎますね。北米盤の映像の暗さが際立ちます。UK盤は本来画面比1,66:1である本作を1,85:1の画面比でアナモ収録してあるせいか、少年の顔がちょっと潰されたような感じになってしまい、かなり不自然な映像になっていますね。

上が国内盤、中央が北米盤、下がUK-PAL盤

北米盤が素晴らしいですね。服のキメ細かい描写、手の質感、火の美しさ。国内盤は観ていて哀しくなります。服にクロスカラーが出ているので、恐らくコンポジット・マスターを使用しているのでしょう(泣)。UK盤もあまり良いとは言えませんね。北米盤と見比べてみると画面比が明らかにオカシイのが分かると思います。


総評

まずは一言、国内盤やる気なさすぎ!タルコフスキーの繊細な映像美をまったく無視するかのような、劣悪マスター素材を使ったとりあえず出しとけ的なDVD、その無神経さには呆れるしかありません。かくなる上は一刻も早く廃盤になって、タルコフスキー作品に深い理解のあるメーカーが権利を獲得してくれるのを願うのみです(ただ廃盤期間が長引くとと、この酷い盤が『ミツバチのささやき』みたいにオークションで超高値取引されるんでしょうねぇ)。北米盤は既に廃盤というのが残念ですが、クオリティは3本の中でもピカイチだと思います。映像の異様な暗さは当初私もマイナス要素で捉えていましたが「amazon.co.jp」のレビューでその事に関する興味深い指摘がなされています。確かにタルコフスキーは著書「映像のポエジア」の中で「撮影されたフィルムが、思いがけないほど救い難く暗いことに衝撃を受けざるをえなかった」と書いています。この言葉に従えば、北米盤の画像の暗さはオリジナルに最も近いものだと言えるでしょう。まさに『ノスタルジア』の最も理想的なDVDなのです。国内盤は論外として、UK盤も単純に画質という面だけ見ればそこそこ良いのですが、映像はかなり明るいですし、画面比もオカシイのでお世辞にも褒められる盤ではありません。ただ、UK盤にはタルコフスキー・ファイルin「ノスタルジア」とTime of a Journey(RAI製作)という貴重なドキュメンタリーが収録された特典Discが付いてくるので、ファンなら買いだと思います。ちなみに音質もリニアPCM収録されている北米盤が最も良かったです。

[国内盤]

画質:
音質:
特典:

[北米盤]

画質:  
音質: 
特典:

[UK-PAL盤]

画質: 
音質:
特典:  


[おまけ]

2004年にいつのまにかリリースされていたRUSCICO(ロシア映画協議会)盤の『ノスタルジア』。詳細のほどは分かりませんが、このDVDが決定盤である可能性は非常に高いと思います(残念ながら日本語字幕は無し)。いずれは購入しようと思っていますので、その時は「銀盤Introduction」で改めてレビューする予定です。

 

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