PAL盤のススメ Vol.5 〜仏盤を観る〜
驚きの雑誌付録DVD 『東京行進曲』


 
作品解説

雑誌「キング」に連載されていた菊池寛の同名小説の映画化で、溝口健二が日活太奏時代に撮った黒白サイレント映画。元々はフィルム10巻の長編作品だったが、その大半が失われてしまい、現存するのは半分以上も尺が縮まったダイジェスト版である。物語は、ブルジョワ階級の青年二人が、ある日出会ったプロレタリア階級の娘に恋をするという三角関係を描いたホロ苦いロマンスで、当時、美人女優として日活現代劇部の双璧であった夏川静江と入江たか子が共演している。ただ、入江たか子の出演シーンはほとんど残されていない。いわゆる長廻しを駆使した後年の溝口スタイルではなく、細かいカット割りや多重焼きによるモダンで若々しい映像演出が、初期の溝口健二を知る上で非常に興味深いと言えるだろう。なお、この「東京行進曲」は映画主題歌第一号とも言われており、作詞・西條八十、作曲・中山晋平、歌・佐藤千夜子による同名の主題歌は、映画との相乗効果で25万枚もの売り上げを記録する大ヒットとなった。

パッケージ

本作は、映画史家であるベルナール・エイゼンシッツが編集長を務める『cinema』というフランスの映画雑誌、その第5号に付録として封入されているDVDに収録されています。シネマティーク・フランセーズで修復されたフィルムがマスター素材として使われています。雑誌の中身は勿論オール・フレンチなのでチンプンカンプンなのですが、厳選された美しいスチルとテクストだけで構成されたシンプル極まりないデザインが、まるでブレッソンの映画のような厳格でストイックな精神性を感じさせますね。



仕様、その他のデータ

原題:東京行進曲
[Disc]
・発売元:Leo Sheer
・Region 2 - PAL
・本編28:50min(PALtime)
・画面仕様:1:1.33
・チャプター:無し
・字幕:仏語
・価格:EUR20,00

[Links]

レオ・シェール書店のHP

amazon.fr


本編の平均ビットレート


DVD所感

さすがにシネマティーク・フランセーズの修復フィルムがマスターだけあって鮮度の高い黒白映像が堪能できます。かなり目立つフィルム傷も散見されはしますが、1929年という製作年代を考えれば十分過ぎるほどのクオリティだと思います。高コントラストの艶やかな黒白は本当にお見事。日本映画史を代表する巨匠の貴重な初期作品が、高質のDVDとして、しかも雑誌の付録として発売されてしまうのですから、やはりフランスはシネマの国、映画芸術の最大の擁護者なんですねぇ。わが日本でも、ヴェンダースの『都市の夏』や、エリセの『対決』を雑誌付録で出してくれる気骨のある出版社ってないものでしょうか。

画質:  
音質:
特典:

本編キャプチャ集


本編字幕の翻訳

本DVDは字幕の部分がすべて仏語に置き換えられています。そこで作品理解を深めるために、無謀ながらも翻訳にチャレンジしてみました。辞書やオンライン翻訳を使っての意訳なので、かなりいい加減だったり、間違っている箇所もあるとは思いますが、そこは"ド"がつく素人の翻訳ということで、大目にみてやってください。参考にしていただければ幸いです。ちなみに仏語が堪能な方の「ここはそうじゃない!」というツッコミも大歓迎です(笑)。

Apres une dure journee de travail a l'usine, Michiyo et une amie rentrent chez elles...
「工場での仕事を終えた道代と友人は帰途についた」

Orpheline, Michiyo vit chez son oncle et sa tante...
「孤児である道代は叔父と叔母の元で暮らしていた」

"J'ai perdu mon travail a l'usine. Qu'allons nous devenir ?"
「工場をクビになってしまったのよ。これからどうしましょう?」

"Si Michiyo devenait geisha comme me l'a propose la patronne du "Jardin des Fleurs", on pourrait s'offrir un beau petit commerce"
「この前、「花園」の旦那があたしに持ちかけたみたいに、道代が芸者に出てくれさえすれば、ちょっとした店でも出せるのにねぇ」

"Je ne peux pas faire ca a la fille de ma defunte soeur, mais ma situation est desesperee...Je dois y reflechir."
「死んだ姉さんの子にそんなことさせられるかい。でも今の状況は最悪だしなあ・・・考えて見るか」

Cette nuit-la...
「その夜・・・」

... Michiyo revoit en songe la mort de sa mere...
「道代は夢の中で母の死を回想した」

"Michiyo, ecoute-moi. Quand j'etais geisha, j'ai connu ton pere et je l'ai aime, mais il m'a abandonnee avant ta naissance."
「道代、お聞き。芸者の頃、お前の父さんに出会って愛し合ったけれど、お前が生まれる前に私は棄てられたのよ」

"Ne tombe jamais amoureuse, ne fais jamais confiance aux hommes, mais apprends a les seduire."
「恋に落ちては駄目だよ。決して人を信じてはいけない。お前には人を惹きつける魅力があるのだから」

Dimanche... Des jeunes gens fortunes s'adonnent a leur sport favori au-dessus des quartiers pauvres.
「日曜日。裕福な若者たちは貧しい界隈の高台でお気に入りのスポーツに熱中していた」

Yoshiki, le fils du riche homme d'affaires Fujimoto.
「良樹は大富豪・藤本の息子である」

"Que cette jeune fille est jolie !"
「綺麗だな、あの娘!」

"J'ai pris une photo d'elle, je te la donnerai en souvenir."
「せっかくだから記念に写真を撮っておいたよ」

Quelque temps plus tard, au "Jardin des Fleurs" , la maison de geishas dont M.Fujimoto est un client assidu...
「しばらくして、「花園」。藤本が懇意にしている芸者小屋である」

Michiyo a accepte de devenir geisya. Elle s'appelle desormais Orie.
「道代は芸者になることを承諾し、今は折江と名乗っていた」

"Elle est vraiment jolie !"
「いや実に綺麗だ!」

A la banque ou travaillent Yoshiki et son ami Yukichi sakuma...
「良樹と友人の佐久間は銀行で働いていた」

"Et si nous allions au "Jardin des Fleurs" , Yoshiki ?"
「良樹、花園に行かないか?」」

"Oui, si tu veux."
「好きなようにしなよ」

"De toutes ces geishas, laquelle preferes-tu ?"
「気に入った芸者はいたかね?」

"Je les trouve toutes jolies, mais toutes a plaindre."
「どの娘も綺麗なんですが、どうも気乗りがしません」

"Comment, il n'en veut pas ? Eh bien je le servirai quand meme !"
「なぜ召し上がらないの?それじゃ私がお酌をしてあげる!」

"Yoshiki, j'adore cette nouvelle geisha !"
「良樹、新入りの芸者にゾッコンだったな!」

Le vieux Fujimoto est lui aussi tombe sous le charme d'Orie.
「老人・藤本は折江の魅力に夢中になっていた」

"Ma petite Orie cherie !"
「私の可愛い折江!」

"Je ne veux pas de vos cadeaux ! Laissez-moi partir !"
「贈り物など入りません!放して下さい!」

"Madame, je vous en prie, je veux rentrer chez moi !"
「女将さん、お願いです、わたくし家に帰りたい!」

Fujimoto reconnait la bague qu'Orie a perdue pendant leur dispute.
「藤本は口論の際に折江が落とした指輪に見覚えがあった」

"Desormais, je ne verrai plus cette geisha."
「もう、この芸者とは会わないよ」

"Ne soyez pas triste, Monsieur Yoshiki, Orie vous attend."
「悲しむことはないわよ、良樹さん。折江さんはあなたをお待ちしていますわ」

Dans la piece voisine, Sakuma, lui aussi, attend Orie...
「その頃、佐久間も折江を待っていた」

"Orie, je vous aime !"
「折江さん、好きだ!」

"Je vous ai fait attendre, Monsieur Sakuma."
「お待たせしました佐久間さん」

"C'est Monsieur Yoshiki qui me l'a donne."
「良樹さんが私に下さったんです」

"Qu'as-tu, Sakuma ?"
「どうした佐久間?」

"Qui. j'aime Orie depuis longtemps, depuis le premier jour ou je l'ai vue."
「最初に会ったときから、ずっと折江のことが好きだった」

"Un heritier de la famille Fujimoto ne peut pas epouser une geisha, mon fils."
「藤本家の跡取りを芸者と結婚させるわけにはいかない」

"Crois-moi, il est impossible que tu l'epouses."
「分かってくれ。結婚することはできないんだ」

Contre tous les usages, Fujimoto a demande a Orie de venir chez lui.
「仕来りに反して藤本は折江に家へ来るように言った」

"Tu connais Yoshiki ?... C'est mon fils."
「良樹を知ってるな?あれは私の息子だ」

"Il veut t'epouser..."
「結婚したいのだな」

"Pour son bonheur, j'y consentirais... mais c'est impossible..."
「幸福のためなら承諾してやりたい。しかし無理なんだ」

"Si la bague que tu portes t'a ete donnee par ta mere... alors, Orie... tu es ma fille !"
「お前の持っている指輪が母親のものだとしたら、折江、お前は私の娘だよ!」

"J'epouserai Orie, meme si je dois lutter contre toute ma famille !"
「私は折江と所帯を持つんだ。家族に反対されたってかまいやしない!」

"Pere, que fait-elle ici ?"
「父さん、何があったんです?」

"Yoshiki, Orie est ta soeur !!"
「良樹、折江はお前の妹なんだ!!」

Chez Sakuma...
「佐久間の家」

Orie est venue se recueillir sur la tombe de sa mere.
「折江は母の墓参りに来ていた」

"Yoshiki est mon frere !"
「良樹は私の兄なんです」

"Orie, je vous aime moi aussi !"
「折江、私だってお前のことが好きなんだよ!」

Quelque temps plus tard, on celebre le mariage d'Orie et sakuma.
「しばらくして、佐久間と折江は結婚式を挙げることになった」

"Je vais partir au loin et chercher l'oubli."
「私は遠くに行って、何もかも忘れてしまいたい」

"Mon bonheur ne sera jamais complet, puisque je te perds, Yoshiki."
「私は決して幸福ではないよ。君という友人を失うのだから」

"Ceci t'appartient desormais."
「これは君が持っているべきだ」

FIN


 

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