NTSC-World Vol.1 〜北米盤を観る〜
『意志の勝利 スペシャル・エディション』


 
作品解説

アドルフ・ヒトラーが独裁体制を確立した直後の1934年ニュルンベルクにて行われたナチス党大会を記録したドキュメンタリー。宣伝省の全面協力により、莫大な費用を注ぎ込んで製作された本作は、撮影の全権を委ねられたレニ・リーフェンシュタールの類稀な映像センスによって、単なるプロパガンダ映画の枠を越えた芸術性を獲得する。大胆な撮影技法の数々、力強い構図、弁証法的モンタージュ、ワーグナーの音楽、これら要素によって捉えられたナチスの軍隊やヒトラーの演説には、全体主義の禍々しさと唯美的な精神が鮮やかに浮き上がり、悪魔的な魅力とでも言うべき"負のエナジー"(ドイツ国民にとって"正"であったことは言うまでもない)を放出している。リーフェンシュタールの芸術家としての才能と誇りが、政治的なテーマからは切り離された、一つの純粋なる映像美の世界を創出したことは間違いないだろう。しかし、それが結果として、ナチス、そしてヒトラーを限りなく神格化させてしまったことも、また揺るぎない事実なのである。リーフェンシュタールは戦後、不遇の作家人生を送ることになるが、映像の持つ凄まじい力をまざまざと証明してみせた本作は、プロパガンダ映画の金字塔として、いまなお輝きと驚異と畏怖を観るものに与え続けている。ちなみにドイツ本国では、その絶大な影響力のため、いまだに上映が禁止されているそうである。ベネチア映画祭金獅子賞、パリ国際芸術博でグランプリを受賞。

パッケージ

黒地に大きな深紅のハーケンクロイツが中央に配置されたシンプルながらも力強いデザインが秀逸。



仕様、その他のデータ

原題:Leni Riefenstahl's Triumph of the Will Special Edition
[Disc]
・Synapse films
・Region ALL - NTSC
・本編110min
・音声:独語DD Mono
・画面仕様:1:1.33(4:3)
・チャプター数:18
・片面2層
・字幕:新訳英語
・特典
  短編『自由の日』(約17分:字幕なし)
  史家Dr.Anthony R.Santoroによる音声解説
・発売日:2001/4/17
・価格:$34.95

Brand New Windowboxed Digital Transfer from a 35mm fine Grain

本編の平均ビットレート


DVD所感

フィルム傷が目立ち、映像S/Nも良くありませんが、第二次大戦前の記録フィルムとして見れば十分な画質だと思います。音もクリアではありませんが、かえってそれが生々しい臨場感を出しているとも言えます。映像特典の『Day of Freedom』(自由の日)は、ナチス国防軍の日常断片と演習風景を記録した短編で、かの高名な88o高射砲の射撃シーンが詳細に映し出されています。子供の頃、松本零士の戦場漫画シリーズが大好きだった自分は、この場面を見て、不謹慎ながらもワクワクしてしまいました。兵士を逆光で捉えた映像や、編隊を組んだ航空機の群れが、ヒトラーと幹部たちが見守る上を飛び去っていくシーンの見事な構図の美など、短いながらもリーフェンシュタールの映像感覚が垣間見れます。ちなみに本DVDに収められている『意志の勝利』と『自由の日』、そして『信念の勝利』をまとめて「党大会三部作」と言われています。

画質: 
音質:
特典: 

メニュー画面キャプチャ



メイン・メニュー(左上)、特典メニュー(左下)、チャプター画面(右上)、特典短編『自由の日』の一場面(右下)


 

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