映画古今東西
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『六月の蛇』 塚本晋也/2002年・日本

セックスレス夫婦に内在するエロティシズム、その妄想と解放を描いた、ある種痛快な官能活劇。これは塚本晋也によって大胆に変奏された『アイズ・ワイド・シャット』だ。このキューブリックの遺作のラストと『六月の蛇』のラストで示される結論の意味は同じである。前者は言葉で、後者は映像で表したまでのこと。面白いのは、テーマが同じでありながら作風は全くの正反対になっているという点。粒子の粗い青いモノクロ、キャメラの激しいブレとズーム、目まぐるしいカット割り、雨、夫婦の容姿、音楽、湿気のある映像、といった『六月の蛇』の要素は見事なまでに『アイズ・ワイド・シャット』を構成している要素と対照的になっている。だからどうしたと言われればそれまでだけれど、私的にはとても興味深く感じられた。夫婦を演じる黒沢あすかと神足裕司、どちらも絶品。黒沢あすかの表情と肉体と声は凄い。倒錯的エロスの塊みたいな女優だ。方やデブハゲなオヤジの神足裕司は抜群の滑稽味を見せる。風呂掃除、秘密クラブ、雨中の自慰など笑いを誘う名(?)シーンがてんこ盛り。それにしても夫の名前が辰巳重彦・・・ってシャレになってませんがな(爆)。

『ローサのぬくもり』 ベニト・サンブラノ/1999年・スペイン

重厚で見応えのある人間ドラマでした。同時期に作られた『オール・アバウト・マイ・マザー』が女性(または女性になろうとした男)に捧げられた映画なら、本作はまさに母親そのものを描いた映画だと思います。生活苦や中絶問題で心に余裕がないマリアは母の行ないや言動にいちいち反抗的な態度しかとれません。が、徐々に母のぬくもりを感じ取る事によって平静さを取り戻していきます。窓辺に佇む母の姿、温かい母の眼差し、母の料理、母の毛糸、母と娘の写真・・・これら何気ない描写や小道具の数々が本当に素晴らしい。母と娘の関係、絆は母と息子のそれとはまた違って何か特別なものなんでしょうねぇ。改めて母親の存在の重さについて強く意識させられる作品でした。ローサ役のマリア・ガリアナは仕草と表情だけで見事に母親を演じきっていて絶品。それだけに少ないセリフがより一層重みを増して響いてきます。ラストの描写がやや説明過多なのが残念です。

『路地へ 中上健次の残したフィルム』 青山真治/2000年・日本

何の変哲もない風景が淡々と流れながら、車は緩やかに目的地へと向かいます。作家・中上健次の故郷"路地へと"・・・しかし、それは既に失われています。映画監督・井土紀州が小説に描かれた"路地"を朗読するのは、分断された過去と現在を再統合するための儀式なのかもしれません。それに呼応するかのように挿入される在りし日の"路地"の情景の断片フィルムが鮮烈なイメージの対比となって目に突き刺さるのですが、それはもはや過去と現在が繋がらないことを残酷なまでに露呈させるのです。この作品は切なくも愛に満ちた中上健次への鎮魂歌だと言えます。最後に映し出される夕日に染まる紀州の海の閑寂な美しさ。中上健次の本を読んでみたくなりました。

『ロスト・ワールド/ジュラシック・パーク』 スティーヴン・スピルバーグ/1997年・アメリカ


『ロゼッタ』 リュック=ピエール・ダルデンヌ&ジャン=ピエール・ダルデンヌ/1999年・ベルギー=仏

どん底生活の中で必死に生きる少女を描いた作品ですが、まず驚いたのはその映像。ほとんどクローズアップのみで構成されていて、しかも手ブレしまくり、その生々しい雰囲気とロゼッタに密着したまま離れようとしないキャメラの動きはヘタなドキュメンタリー顔負けの迫力、緊張感を生み出しています。監督は長編映画を撮る前、労働者や移民を取り扱ったドキュメント番組をずっと製作してたんだそうです。そして、さらにそのリアリズム志向が顕著に現れているのが、映画音楽を一切排除している点です。音楽は、男友達リケがロゼッタに聴かせる、リズムの外れた素人バンドの演奏だけ(この曲に合わせて無理矢理2人が踊る場面は本作の中で唯一ユーモラスな箇所かも)。現実音がダイレクトに耳に入ってくるだけに物凄く臨場感があるんですよね。それと印象的だったのが、ワッフルスタンドで働くロゼッタの様子をワンカットの長回しでじーっと見守る場面。暗い描写ばかりの本作でここだけはホッと一息できる好きなシーンです(この前後はかなりドロドロしてるけど笑)。リケとの争いから突然訪れるラストはちょっと呆気にとられます。ロゼッタに差し出される救いの手は顔の見えないリケの手。まるで観ている自分が彼女を助けてあげているかのような錯覚を抱きました。それくらいロゼッタに感情移入していたという事なんでしょうか。最後に主演のエミリー・デュケンヌについて。演技経験のない素人は時に奇跡的なパフォーマンスを見せるものですが、彼女もまさにその一人と言えるでしょう。微妙な表情の変化も見事ですが、やや太めのデュケンヌ嬢が長靴を履いてドスドス力強く歩き回る姿は逞しく、また妙に愛らしくもあり存在感抜群でした。彼女はデビューとなった本作でいきなりカンヌの主演女優を獲ってしまったわけですが、今後これが重圧にならなければと思いますねぇ。

『ロッキー』 ジョン・G・アヴィルドセン/1976年・アメリカ


『ロッキー2』 シルヴェスター・スタローン/1978年・アメリカ


『ロッキー3』 シルヴェスター・スタローン/1982年・アメリカ


『ロッキー4/炎の友情』 シルヴェスター・スタローン/1985年・アメリカ


『ロッキー5/最後のドラマ』 ジョン・G・アヴィルドセン/1990年・アメリカ


『ロック、ストック&トゥー・スモーキング・バレルズ』 ガイ・リッチー/1998年・イギリス


『ロック、ストック&フォー・ストールン・フーヴズ』 シェリー・フォークソン/2000年・イギリス

ガイ・リッチーの出世作「ロック、ストック&トゥー・スモーキング・バレルズ」をTV版にリメイクした作品。TV映画だけに暴力シーンはかなり控え目、その分お笑い要素が強くなっています。ストーリーもキャラも一新されていますが、映像感覚や演出は基本的に同じなので新鮮味はなかったですね。単純に楽しんでそれで終りという典型的な娯楽作品だと思います。

『ロード・オブ・ザ・リング』 ピーター・ジャクソン/2001年・アメリカ=ニュージーランド

これはドラクエ世代にはたまらない映画ですね。昔テーブルトークRPGにハマったことのある自分は想像するしかなかった中世ファンタジーの世界が目の前のスクリーンに鮮やかに映し出されていることにすごく興奮しました。今までのファンタジー系映画とは明らかに違う圧倒的な説得力を持った映像世界です。ん〜恐るべしニュージーランド。三部作の序章ということもあって見えてこない部分が多く人物描写も感情移入ができるところまで踏み込んでいませんが、作品世界の魅力を知るには十分な出来映えだと思います。ただガンダルフの魔法描写はもっと見せて欲しかったですねぇ。見せ場である師サルマンやバルログとの対決シーンも淡白な気がしました(何か滑稽だし^^;)。この辺り原作ではどう描写されているのでしょうか、それが気になります。取り敢えず「旅の仲間」を読んでみますか。オークの大群とガッツ"トロール"石松(笑)の戦闘シーンは熱かったです。こんな雑魚どもに魔法は使えんわいっ!とばかりに剣で応戦するガンダルフの姿に胸キュン(爆)。

『ロード・オブ・ザ・リング/二つの塔』 ピーター・ジャクソン/2002年・アメリカ=ニュージーランド

壮大な世界観、同時展開していく3つのストーリー、次々と現れる新キャラ。一作目よりもさらに拡大していく物語の中に主要キャラ達は徐々に埋没し、各個の存在感はどんどん希薄になっていく。主人公フロドはほとんど全くと言って良いほど印象に残らず、共に行動するゴラムやサムの描写が中心になっているのが面白い。ただ映画全体のリズム、テンポという面から見ると、いささか冗長である感は否めないと思う。中盤は明らかに中だるみしている。少なくとも原作を読んでいない自分にはそう感じられた。クライマックスの大攻防戦は凄まじい迫力だけれど、ここでも主要キャラはあくまで地味目に活躍し、スペクタクルな集団戦闘としての映像演出に重点が置かれている。前作同様ガンダルフの魔法描写がほとんど見られないのが残念。っていうか完全に武闘派ですね、このジイサマ(せっかく白くなって威厳も増したのにやることは全然変わらない^^;)。

『ロード・オブ・ザ・リング/王の帰還』 ピーター・ジャクソン/2003年・アメリカ=ニュージーランド

冗長かつ大味な点は前作『二つの塔』と同じ。物語ることに比重が置かれているので、各キャラクターの存在感がどうしても希薄になってしまっている。寄りとあおりを多用したスケール感のある攻城戦は確かに迫力があるけれど、それが無邪気な興奮、刺激というのとは違う質の感動でしかなかったのは悲しかった。やっぱり「優れたCGの質感はチープな実物の質感にも劣る」ということなんだと思う。それにしても従者サムのひたむきな頑張りには泣けた。実質的な主人公は彼だろう。

『ロード・トゥ・パーディション』 サム・メンデス/2002年・アメリカ

親子愛がテーマのギャング映画。とは言え作品全体の印象はクールで薄味。演出や映像のスタイリッシュな統一感はさすが『アメビュー』の監督(画面がパンしながらディゾルブで場面転換していくショットが格好良い!)。脚本はちょっと窮屈だけど、粋なセリフの数々は如何にもハリウッドらしい。主演のトム・ハンクスはさすがの芸達者ぶり。全然ギャングっぽくないところがかえってリアルだ(笑)。ただ、どんなに凄みをきかせ、人を殺そうと、やっぱり彼は首尾一貫良いパパに見えてしまう。これが本作のオチの感動を弱めてしまっていると思う。それにしてもジュード・ロウはサイコな役が良く似合う。

『ロープ』 アルフレッド・ヒッチコック/1948年・アメリカ

冒頭の首を絞められる男の甘美な表情が脳裏に焼き付いて離れない。ヒッチコックの作品にはこう言ったどうにも忘れ難いカットというのが必ず出てくる。シンプルな室内犯罪劇を「全編ワンシーン・ワンカットであるかのように見せる」技法で、独創的な映画にしてしまうヒッチコックはやっぱり凄いとしか言いようがない。ただジェームズ・スチュワートはミスキャストだったと思う。

『ロボコップ』 ポール・ヴァーホーヴェン/1987年・アメリカ


『ロマン・ポランスキー短編全集』 ロマン・ポランスキー/1957〜62年・ポーランド

『殺人者』

ナイフによる殺人を描いた僅か1分半の短編。学生時の作品ということで、試しにちょっとヒッチコックをやってみた、ってな感じでしょうか。殺しを遂行した男が一瞬笑みを浮かべるのが不気味です。

『笑顔』

これも2分足らずの短編。描かれる二つの笑い。女性の裸を見てニヤける男、歯を磨きながら無意識的に笑い顔になってしまう男。どちらも薄気味悪いのがポイントですね(笑)。

『パーティを破壊せよ』

賑やかなパーティ会場が、不良グループの乱入でメチャクチャにされてしまうという暗い作品。映像の生々しい臨場感はまるでカサヴェテスの『アメリカの影』を見るようでした。

『タンスと二人の男』

シュールでユーモラスな短編。海からやってきた無垢で善人な二人の男が、常にタンスを持っていることから、ことごとく周りに除け者扱いにされてしまい、また海へと戻っていくという、何やら社会批判めいたホロ苦い寓話です。クシシュトフ・コメダの緩急のあるジャズ演奏が良いですね。

『灯り』

人形の店が火事になるというだけの作品なんですが、なすすべもなく焼かれていく人形たちの無残な姿は露骨にナチスによるユダヤ人大量虐殺を連想させます。外を行く人々がそのことを知ってか知らずか、平然と店の前を通り過ぎていく様が恐ろしかったです。

『天使たちが失墜するとき』

残酷で切ないファンタジー。過去をカラーで表現する演出や、最初と最後に映される街の俯瞰ショットをミニチュアにしてファンタジー色を強めているのが面白いです。映像がとても美しく、過去のシークエンスには後年の『テス』に繋がるような官能と叙情があります。ポランスキー自身が演じている老婆のメイキャップは必見の気持ち悪さ(笑)。白黒ということもあってとんでもなくリアルです。

『太った男と痩せた男』

これまたシュールな感覚炸裂の作品。太った男と痩せた男のユーモラスなやり取りは、近代におけるブルジョワとプロレタリアの関係に置き換えて揶揄しているようにも受け取れます。本作でもポランスキー自身が痩せた男をコミカルに演じています。ファーストモーションも効果的でしたね。

『哺乳動物たち』

スラップスティック調のナンセンス喜劇。全編にファーストモーションを使用した、人物の動きの掛け合いを楽しむ純粋コメディで、舞台が雪一面の世界というのがユニークです。やはりクシシュトフ・コメダの音楽が良い味を出しています。


『ロミオ&ジュリエット』 バズ・ラーマン/1996年・アメリカ

言わずと知れたシェークスピアの超有名な悲恋物語を現代風にアレンジして甦らせたもので、ド派手な銃にアロハシャツという奇抜なスタイル、そしてトリッキーな映像とコッテコテの色彩感覚を合わせた何とも豪勢な作品です。原作を知らない自分にはイマイチ登場人物の相互関係が掴みきれず、最初はちょっと困惑しましたが、歯切れの良いテンポと異様なテンションの高さでグイグイ作品世界に引き込まれていきましたね。ヒップホップ系の音楽も自分好みではありませんが映像とのマッチングは良かったです。スタイリッシュという表現がピッタリ当てはまる作品だと思います。黒人のマキューシオやアロハを着た背中に十字架の刺青を持つ神父さん等、キャラも実に個性的で楽しめました。そしてクレア嬢。もうキュートな笑顔にク〜ラクラ(笑)。彼女ってショットによっては?なところもあるのですが、とにかく笑った顔が可愛らしいんですよね〜。演技も上手いし!何だかすっかりファンになってしまいました。今現在(2000/12/12)、ペネロペ・クルスと並んで最も気になる女優の一人ですね。デカプリオは・・・それなりに好演だったと思います(どうも『ギルバート・グレイプ』のインパクトが強すぎて、その後の彼の演技はすべてイマイチに感じられてしまうなぁ)。

『ローラーとバイオリン』 アンドレイ・タルコフスキー/1960年・ソ連

微笑ましくも切ない少年と青年の友情。ローラーとバイオリンという組み合わせは、社会格差に対するタルコフスキーの悲観と楽観の交錯を象徴しているのだろうか。アスファルトと資材置き場を、水と光だけで詩的な空間に変えてしまう繊細な映像感覚はさすがの一言。「少女とリンゴ」というタイトルを付けてしまいたくなるような音楽教室でのサスペンスフルでユーモラスな一場面も素晴らしい。ビャチェスラフ・オフチンニコフによる寂しげな旋律のオルガンも忘れ難い。45分間の淡き夢。

『ロリータ(61年版)』 スタンリー・キューブリック/1961年・イギリス


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