映画古今東西
<< top____home >>
 50音別 INDEX
[] [] [] [] []

[] [] [] [] []

[] [] [] [] []

[] [] [] [] []

[] [] [] [] []

[] [] [] [] []

[] [] [] [] []

[] [] []

[] [] [] [] []

[] [数字]


<< Cinema-BBs


『酔いどれ天使』 黒澤明/1948年・日本


『用心棒』 黒澤明/1961年・日本


『欲望』 ミケランジェロ・アントニオーニ/1966年・イタリア=英


『欲望という名の電車』 エリア・カザン/1951年・アメリカ

あまりにも激烈な演技とドラマに観終わってグッタリしてしまった。初めは生活に疲れたちょっと神経質な中年女性という印象を与えるヴィヴィアン・リー(あのスカーレット・オハラがここまで老醜を晒すなんて!)。しかし、それすらも仮面であったかのように徐々に病める精神をあらわにしていくスリリングでグロテスクな人間描写、その"負の熱気"には圧倒された。筋肉オバケのマーロン・ブランドは肉体だけでなく、演技の存在感も抜群にある。窮屈で息苦しい室内劇にあって、彼のダイナミックな動きと叫び声は映画にある種の躍動感をもたらしている。当時の厳しい検閲制度によって最後はやや分かり辛くなってしまっているものの、人間に内在する凶暴さと脆さという二面性が、きわめて劇的で繊細な演出によって描かれている見事なニューロティック(異常心理)映画だと思う。

『汚れた血』 レオス・カラックス/1986年・フランス

大胆で挑発的なショット。映像の疾走感。全編に若さと才気がほとばしっている。散漫な脚本や語り口の荒さはさして気にならない。むしろそれが有難いと思えるくらい映像そのものにのめり込んでしまう。真夜中、ドニ・ラヴァンとジュリエット・ビノシュが取り留めのない会話をする長い長いシークエンスのとてつもない濃密さと緊張感。言葉は何一つ心に響いてこないけれど、突然刺し込んでくるような鋭いショットは無数に散らばっている。夜の街をラヴァンが疾走し、ジュリー・デルピーが颯爽とバイクを駆り、ビノシュは走りながら両手を広げて微笑む。それだけの映画。これこそが映画。

『世にも怪奇な物語』 1967年・イタリア=仏

『黒馬の哭く館』(ロジェ・バダム)。

いかんせん演出がショボすぎる。不気味でもなし怖いでもなし。映像も凡庸。主人公のジェーン・フォンダもまったく魅力的に感じられなかった。短編でこんなに退屈するなんてある意味すごい(笑)。

『影を殺した男』(ルイ・マル)

一種のドッペルゲンガーもの?具現化した自己の良心と悪心の対決という図式が面白かった。アラン・ドロンはやっぱり絵になる男ですね。ブルジット・バルドーのクールな美しさも印象的。

『悪魔の首飾り』(フェデリコ・フェリーニ)

文句なしのNo.1。退廃的で夢魔的なイメージの奔流。後半の疾走感溢れる映像演出も圧巻の迫力だった。テレンス・スタンプ、赤い空、いかがわしいパーティ、暴走フェラーリ、電飾のトンネル、白い玉、生首、少女の笑顔。フェリーニだけが"映画"になっている。"映画"を感じさせてくれる。


『夜』 ミケランジェロ・アントニオーニ/1961年・イタリア

末期ガンの友人を見舞ったことから発露する欺瞞の夫婦関係が、緩慢な流れとともにジワジワあぶり出されていく、しかし決定的な破局には至らない、その曖昧さ、退屈さ、そしてスリリングさ。漠然とした孤独感と不安感が全編にわたって不気味に寄り添う。昼の街をさまよう妻が遭遇する何の脈絡もない情景の数々とか、夜のパーティで夫婦の前に現れる謎めいた男女との奇妙なやりとりとか、現実であって現実ではない、夢や妄想の世界を見ているような錯覚を抱かされる。作品のほぼ中間に配置された、昼と夜のパートを繋ぐ妖しげな黒人のダンス・シーンも良い。ねっとりした濃密感とジャズの響きが、本作の不条理で物憂げな雰囲気にぴたりとマッチしている。シュールだ。

『夜と霧』 アラン・レネ/1955年・フランス

人類が犯した20世紀最大最悪の蛮行の記憶が、驚くほど簡潔なモンタージュと恐ろしく抑制されたナレーションによって静かに冷たく描かれていく。わずか30分という尺の中で示される映像と言葉、そのとてつもない重み・・・。開高健はアウシュビッツについて"すべての言葉はナンセンスで枯葉一枚の役にも立たない"と言っている。確かにそうかもしれない。ひたすら沈黙するしかないような気がする。ただ、このドキュメンタリーが、人間はここまで堕ちることができるのだという事実の貴重な証左となっていることは間違いないだろう。本作の最後は以下の言葉で締めくくられている。

冷たい水が廃墟の溝を満たす

悪夢のように濁って

戦争は終わっていない

今 点呼場に集まるのは雑草だけ

見捨てられた町

火葬場は廃墟に ナチは過去となる

だが900万の霊がさまよう

我々の中のだれが戦争を警戒し知らせるのか

次の戦争を防げるのか

今もカポが将校が密告者が

隣にいる

信じる人 信じない人

廃墟の下に死んだ怪物を見つめる我々は

遠ざかる映像の前で希望が回復したふりをする

ある国のある時期の話と言い聞かせ

絶え間ない悲鳴に耳を貸さぬ我々がいる


Copyright © 2004 Ginbanseikatsu. All Rights Reserved. email:ana48705@nifty.com