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『彼岸花』
小津安二郎/1958年・日本
娘の結婚をめぐる家族の悲喜交々。今や貴重とも言える封建的な父親像がストレートに、滑稽さを伴って描かれる(亭主関白丸出しの佐分利信が娘の相手を恋敵のようにやっかむ姿が可笑しい)。キャスティングが絶品で、父と娘の間で大らかな知性を持って立ち回る母・田中絹代、有馬稲子と桑野みゆきの爽やかな姉妹、京都弁と着物姿が美しい山本富士子と絶妙なコメディエンヌぶりを見せる浪花千栄子の賑やかな親子、サラリーマンの悲哀炸裂の高橋貞二(笑)など、主要キャラから脇役まで見事に調和のとれた人物配置が素晴らしい。折り目正しく挿入されるシンプルな風景、茶の間に置かれた赤いヤカンの存在感、さりげない伏線と劇的なセリフが排除された脚本、小津映画のとことん厳格で洗練された映画表現美と、人間への真摯な眼差しが生み出す豊かな世界に、ただただ感動し、唸り、感嘆のため息を漏らすばかりだった。アグファカラーの美しさも格別。
『ピクニック』
ジャン・ルノワール/1936年・フランス
ささやかなピクニックの情景が、究極の映画的モチーフになってしまうルノワールの小宇宙。柔らかく眩しい光線が、陽性の官能性と相俟って、何とも幸福感溢れる自然主義的な世界を生み出している。本作は「揺れの映画」と言っても良いと思う。水、馬車、木の影、草花、雲、ブランコ、ボート、男女の官能心理(どちらも等しく、健全(?)にスケベなのだ!)、映画を彩るあらゆる要素が揺れている。白いドレスをまとった華奢な婦人シルヴィア・バタイユが鮮烈な印象を残す。それとルノワール本人が演じる宿屋の主人も良い味を出している。フライパンを揺らしながら、ふくよかなマダムを見て一言「あれこそ女だ」。ん〜参りました(笑)。生命の芳香が濃厚に漂う、まさに至福の40分。
『ピクニック at ハンギングロック』
ピーター・ウィアー/1975年・オーストラリア
。
『非情の罠』
スタンリー・キューブリック/1955年・アメリカ
50年代のキューブリック作品は本当に格好良い。凝った照明、ドキュメント風に切り取られたニューヨークの街並(この作品はカサヴェテスの『アメリカの影』より4年も前に撮られている)、ローアングルとミラーショットの多用、ボクシング場面の迫力あるモンタージュ、突如眼前に広がるマネキンの群れなど、とにかく映像に魅せられる。話が平凡でも、撮り方ひとつでいくらでもクールな映画になるのだなあと感心しきり。見事なレトリックによる短編小説を味わったような充実の67分だった。
『ピストルオペラ』
鈴木清順/2001年・日本
。
『左利きの女』
ペーター・ハントケ/1977年・西ドイツ
なんとも地味なホームドラマ。小津映画を意識したという静かな日常風景は、確かにヴェンダース作品に通ずる心地良さがあるが、ショットの前後の繋がりがどうにもギクシャクしていて、作品世界に入り込む妨げになってしまっているのが少し残念だった。主人公が小津の無声映画『東京の合唱』を観に行ったり、部屋の壁に小津の写真が掛けてあったり、とにかく作品自体が小津へのオマージュになっているという感じ。ただ小津映画を一本しか観た事がない自分にはその良さも悪さも見えるはずがない。今の時点では個々のショットが美しいだけの退屈な映画だったことは確かだ
『必殺!THE HISSATSU』
貞永方久/1984年・日本
B級テイスト全開の時代劇。豪華ゲスト陣扮するヘンテコ仕事人や、顔面白塗り男たちによる変態殺人御輿など脇役が強烈で、肝心の中村主水とその仲間たちの印象は薄い。殺しの演出は凝っているが、いかんせん脚本と構成が粗すぎる。茶釜みたいな潜水艇には呆然(笑)。シュールだ。
『羊たちの沈黙』
ジョナサン・デミ/1991年・アメリカ
。
『人斬り』
五社英雄/1969年・日本
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『一人息子』
小津安二郎/1936年・日本
『東京物語』の原型とも言える作品。理想と現実のズレに戸惑う親子の葛藤をシビアに描いている。母と息子がオバケ煙突の見える原っぱに座り込んで語り合うシーンと、夜中のちょっとした諍いの後に挿入される長い空ショットが印象的だった。小津映画は各々のショットが本当に味わい深く、豊かな映画的時間が流れている。良妻の見本のような坪内美子の慎ましい存在感も美しい。
『ビートルジュース』
ティム・バートン/1988年・アメリカ
。
『ビートルズ イエロー・サブマリン』
ジョージ・ダニング、ジャック・ストークス/1968年・イギリス
。
『ビートルズがやって来る ヤァ!ヤァ!ヤァ!』
リチャード・レスター/1963年・イギリス
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『陽のあたる場所』
ジョージ・スティーヴンス/1951年・アメリカ
リズ・テイラーの輝きが強烈で、重い作品なのにどこか華やかな印象が残る。最後のセリフ「It seems like we always spend the best part of our time saying goodbye」が泣ける。
『ビバリーヒルズ・コップ』
マーティン・ブレスト/1984年・アメリカ
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『ビバリーヒルズ・コップ2』
トニー・スコット/1987年・アメリカ
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『ビバリーヒルズ・コップ3』
ジョン・ランディス/1994年・アメリカ
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『ヒマラヤ杉に降る雪』
スコット・ヒックス/1999年・アメリカ
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『秘密』
滝田洋二郎/1999年・日本
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『秘密と嘘』
マイク・リー/1996年・イギリス
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『緋文字』
ヴィム・ヴェンダース/1972年・西ドイツ=スペイン
「物語」を巧みに「物語る」ことができなかったヴェンダースの愛すべき失敗作。アメリカ東海岸のピューリタンの村が舞台でありながら、まるで西部劇のような斜面や丘や空の捉え方、村の空間造形が何とも魅力的で、広大な浜辺と奥まった入江というコントラストの効いたロケーションも素晴らしいです。室内ではある重要なシーンで、ラングのフィルムノワールを彷彿とさせる表現主義的なホラー演出が使われていたりもします。あとは何と言ってもイエラ・ロットレンダーでしょう。ピューリタンの村で一人赤い服をまとってしまう少女。緋文字の赤と共に強烈な視覚的アクセントになっています。リュディガー・フォーグラーとのやり取りがまた良いんですよね。「あの"A"は何だい?」「アッメーリカー!」(笑)。大好きなシーンです。後に『都会のアリス』で、20年後には『時の翼にのって』で再び再会することになる感動的なツーショット。ゼンタ・ベルガーの硬質な美しさも忘れ難いです。
『百万長者と結婚する方法』
ジーン・ネグレスコ/1953年・アメリカ
玉の輿を夢見る3人の女性が擦った揉んだの恋騒動を繰り広げるコメディです。ド近眼で大ボケかましまくるセクシー美女モンロー、煙草の吸い方が最高にキマッてるクールビューティー・バコール、地味だけど健康的な笑顔が魅力のベティ・グレイブル、この3人が奏でる軽快でユーモラスで艶やかなアンサンブルは観ていて気持ち良かったです。モンローのかけるイジワル女教師(笑)みたいな眼鏡がインパクト大です。あとローレン・バコールの「私は年上が好きなの。ルーズベルト、チャーチル、ボカート。みんな素敵よ」ってセリフが妙に可笑しかったですね(あのバコールがおノロケかますなんて^^;)。
『白夜』
ルキノ・ヴィスコンティ/1957年・イタリア
いや〜もぉ本っ当に最高!!っていうか最低とも言えるな(笑)。マストロヤンニのあまりの惨めさに今回も涙、涙の大泣き。エンドロールがないので、すぐに場内が明るくなるのが恨めしいくらいでした。げに恐るべきはヒロイン演じるマリア・シェルのかまとと振り。表情といい所作といいセリフ回しといい、まさに「西洋の大竹しのぶ」と呼ぶに相応しい(笑)。観ていて背筋の寒くなるようなシーンもチラホラありましたね。女は怖い。彼女との対比という位置付けで登場するうらぶれた娼婦の方がよほど清らしい存在に思えたのは単なる錯覚だったのか?それともヴィスコンティの辛辣なアイロニーが隠されていたのか?それにしても、街の造形や照明の素晴らしいこと。セット撮影の魅力が遺憾なく発揮されていますね。濃密な舞台的空間美に惚れ惚れしちゃいます。その一方で曇ったガラスや焚き火や風の効果音などの寒い冬の夜を感じさせる演出が細かく配置されている点も見事です。クライマックスの雪は、おそらく映画史上でも指折りの降雪シーンではないでしょうか。人工の雪が信じがたい美しさで舞い落ちてきます。このシーンを観れただけでも今回劇場に足を運んだ甲斐があったというもの。本当に美しいです。他にもジャン・マレーの男っぷり、灯台の明かりの演出、騒がしいマダム、マストロヤンニのヘンな踊り(館内爆笑の渦でした)などなど、愛すべき細部が沢山あってとにかく良い作品です。ヴィスコンティの中でも上位3本に入る大好きな作品ですね。
『百貨店大百科』
セドリック・クラピッシュ/1992年・フランス
百貨店というより百顔店と言いたくなるような個性豊かな表情のオンパレードが楽しい。従業員が一致団結してこそ経営もうまくいく?いえいえ、そこはお仏蘭西、何よりも個人主義が優先される国。勝手気ままでチャーミングな人間群像。大団円の合唱もその歌詞たるや!エスプリですなぁ。
『評決のとき』
ジョエル・シューマカー/1996年・アメリカ
。
『HERO』
張芸謀/2002年・中国=香港
凄まじい"色"の映画。イーモウは『紅いコーリャン』LDに収録されているインタビューの中で「北方人は原色などの強い色彩を好む」というようなことを言っていた。本作はイーモウの色彩感覚と、様式へのこだわりが暴力的なまでに解放されている映画だ。巨額を投じた大作で、こんなシュールな映画を撮ってしまうイーモウはエライ!(笑)。カンフー・アクションは信じられないくらい美しい。実写版「三国無双」しちゃってるシーンも圧巻だった(笑)。また黒澤明へのオマージュも感じられる。ずばりプロットは『羅生門』、モブ・シーンは『乱』(ワダエミ繋がりでもある)と言って良いと思う。
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