『セプテンバー11』 2002年・フランス
世界の映像作家11人が9・11テロを題材に11分9秒1という共通の時間枠で描いた短編オムニバス映画『セプテンバー11』を鑑賞しました。以下簡単な所感を紹介したいと思います。・サミラ・マフマルバフ(イラン)
9・11テロに関する教師と子供たちのやりとりが中東とアメリカの相互不理解、理想と現実の距離を暗示してるかのよう。煙突をビルに例えた映像が秀逸。モウモウと出る黒い煙が恐ろしい。
・クロード・ルルーシュ(フランス)
フランス人監督らしい9・11にまつわる男女の物語。ちょっとホッとできるファニーなお話です。
・ユーセフ・シャヒーン(エジプト)
映画監督とアメリカ軍兵士の幽霊との対話。民主主義の功罪。ラストのアメリカ批判が痛烈。
・ダニス・タノヴィッチ(ボスニア=ヘルツェゴビナ)
舞台はイスラム教徒であるムスリム人の村?劇中では村の女性達による集会、デモが描かれています。イスラム圏におけるウーマンリブは今や世界的な潮流になっているのでしょうか。
・イドリッサ・ウェドラオゴ(ブルキナファソ)
テロよりも日々の暮らし、そしてお金が問題だ!ビンラディン似の男をめぐる少年たちのユーモラスな奮闘記。
・ケン・ローチ(イギリス)
奇しくも同じ9・11に起きた自爆テロとチリの軍事クーデター。後者はアメリカ軍支援によるもので、その死者は前者を遥かに凌ぐという。。。何が正義で何が悪なのか?答えはない。
・アレハンドロ・ゴンザレス・イニャリトゥ(メキシコ)
真っ暗な画面にコーランが響く。9・11テロを報じる各国の言語。テロ現場でのあらゆる音。時折、一瞬だけ挿入されるビルから転落する人間。。。また聞こえてくるコーランの響き。やがて画面が白一色に染まり「神の光は我々に道を示すのか、それとも目をくらませるのか」という言葉が表示される。11本中最も衝撃的な作品でした。
・アモス・ギタイ(イスラエル)
テロが日常と化した街ではそれを報道する番組も「くだらない情報番組」になる。
・ミラ・ナイール(インド)
9・11以後、ニューヨークに住む良識あるイスラム教徒たちの苦しみは想像を絶するものでしょう。
・ショーン・ペン(アメリカ)
陽のあたらない部屋に住む妻を亡くした孤独な老人の話。ラストで唸りました。そうきたか!
・今村昌平(日本)
蛇人間の寓話。大東亜戦争を批判することで戦争の大義名分という国家の独善を弾劾する。
監督それぞれの独自の視点から戦争やテロ、そして民族や宗教について考察され表現されているとても示唆に富んだ濃い〜短編集でした。