映画古今東西
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『スカーフェイス』 ブライアン・デ・パルマ/1983年・アメリカ

ハワード・ホークス監督作「暗黒街の顔役」(1932)のリメイクで、酒をコカインに置き換えてあるところがオリジナルとの大きな違いです。白い粉によってのし上がり、その粉によって破滅していく男の壮絶で滑稽な生き様。それをクールな映像美と演出、容赦のない暴力描写とスラングを交えながら展開させていきます。さすがにギャング映画だけあって共感できる部分というのはほとんどないのですが、トニー・モンタナというアクの強いアンチヒーロー像のインパクトは強烈でした。アル・パチーノの演技と存在感は尋常ならざるもので、観終った後もパチーノ=モンタナというイメージが残ってしまいそうなくらい完璧にキャラクターと同化していましたね。デ・パルマらしい凝ったキャメラワークも随所に見られます。また美術ではモンタナ邸の豪華な内装や壁一面鏡ばりのクラブなどビジュアル面を意識した作りが素晴らしかったです。出演者ではパチーノ以外にヒロイン・エルビラを演じる若き日のミシェル・ファイファー(気だるそうな表情と非健康的な肉体が何ともデカダン)やモンタナの相棒マニー役のスティーブン・バウアーが良かったです。170分と長尺ですが長いとは感じませんでした。ところで、この作品、恐らく映画史上で最も多く「fuck」という言葉が出てくる映画なんじゃないでしょうか?北野映画の「バカヤロー!」なんてこれに比べれば可愛いものですね(笑)。

『醜聞』 黒澤明/1950年・日本

マスコミ批判をテーマにした社会派ドラマと思いきや、どんどん湿度の高いヒューマン・ドラマになっていくのでちょっと戸惑いましたが、随所で黒澤監督らしい力強いショットに唸らされる佳作でした。でも紳士的で都会的な三船敏郎は違和感ありまくり。「静かなる決闘」と言いどうもインテリ役だと演技のマズさが際立ってしまう気がします(要するに落ち着いたセリフ廻しが似合わない^^;)。チョイ役ながら強烈な存在感を見せる左ト全が最高でした(顔と声がとにかく絶品!こういう個性的な脇役って最近いないなぁ)。

『助太刀屋助六』 岡本喜八/2001年・日本

岡本喜八は職人ですね〜。88分という物語の簡潔さ、構成とキャラクターのバランスの良さ、それに歳を感じさせない演出のフットワークの軽さもお見事。古き良きプログラム・ピクチャーの香りが漂ってくるような良質の小品でした。俊敏・軽快な真田広之!しかし鈴木京香は・・・微妙かも?(^^;

『スコルピオンの恋まじない』 ウディ・アレン/2001年・アメリカ

正統保守派監督・ウディ・アレンの余裕しゃくしゃくな職人芸が小気味良い、小さくて高性能なスクリューボール・コメディ。ルビッチにキャプラ、ワイルダーにホークスをチャンポンして悪酔いしないのはウディの錬金術のなせるワザ!まったくもってお見事。ジーン・アーサーやロザリンド・ラッセルばりの"デキる女"をヘレン・ハントが熱演すれば、シャーリーズ・セロンはローレン・バコールを気取って妖艶に迫る。丁々発矢の掛け合い劇に、くさびを打ち込む謎の呪文「コンスタンティノーブル」と「マダガスカル」、その唐突さ、可笑しさ。まさに絶妙。アメリカ映画史の厚みを感じさせてくれるウディ・アレンの作品はいつでも古くて新しくて映画ファンを心地良くさせてくれる。

『スターウォーズ エピソード1 ファントム・メナス』 ジョージ・ルーカス/1999年・アメリカ


『スターウォーズ エピソード2 クローンの攻撃』 ジョージ・ルーカス/2002年・アメリカ

いや〜今回もCGが凄いことになってますね〜。もうこうなってくると実写作品なんだかフルデジタル・アニメなんだかって感じです(^^; 全体の印象としては前作よりもドラマ性が希薄になり娯楽性が強調されているような気がしました。「インディー・ジョーンズ」を彷彿させるアクション場面が随所に観られます。緊迫した物語の中で緩和材のように描かれるアナキンとパドメのバカンスエピソードも良かったです(映像も美しい)。クライマックスの大戦闘シーンはとにかく見所満載。最高に燃えます。ジェダイだらけの白兵戦も迫力ありますが、何と言ってもカッチョイイのはオイシイとこ全部持ってくヨーダ率いるクローン兵部隊!マシーンのように冷静で正確で手際良く行動するクローン兵の勇姿。この描写は明らかに海兵隊を意識していますね。そしてドゥークー卿VSヨーダで興奮は最高潮に!!おおっヨーダはやっ!ノミみたいに飛び跳ね回って微妙に格好良いゾ(笑)。ドゥークー卿も負けていません(って言うか勝ってる?笑)。オビワンとアナキンを手玉に取り、ジェダイ最強のヨーダと互角の闘い。クールでエレガントな雰囲気といい実に魅力的な悪役ですね。彼とクローン兵が本作の隠れた主役と言っても過言じゃないと思います。アナキンはヨーダ以上の素養の持主にはとても見えないし、人間的にも恐ろしく未熟、存在感も薄く主人公にしてはなんか地味です。ハイデン・クリステンセン。。。私的にはいまひとつ、かなぁ。あっ、でも目は良いですね。どことなく屈折した雰囲気があってこの部分だけはダークサイドを感じます(笑)。最後はラストについて。夕暮れの中「帝国のテーマ」をバックにスターデストロイヤー似の戦艦が次々と空に上がっていく。。。この映像めっちゃくちゃシビレました〜。構図がお見事!この不気味な威容さはまさに後の帝国軍そのものですね。このシーンが一番のお気に入りかも。

『スターウォーズ』 ジョージ・ルーカス/1977年・アメリカ


『スターウォーズ 帝国の逆襲』 ジョージ・ルーカス/1980年・アメリカ


『スターウォーズ ジェダイの復讐』 ジョージ・ルーカス/1983年・アメリカ


『スターシップ・トゥルーパーズ』 ポール・ヴァーホーヴェン/1997年・アメリカ


『スタア誕生(54年版)』 ジョージ・キューカー/1954年・アメリカ

ジュディ・ガーランド渾身の熱演が圧倒的な感動を呼び起こす、稀代の女優使いキューカー会心のミュージカル巨編。全編にわたってこれでもかと言うくらいジュディの歌と踊りが堪能できます。ノーマンが彼女の才能を知ることになる、深夜バーでの「The Man That Got Away」(その声量と表現力は圧巻!)、エスターが一夜にしてスターになる映画の中の映画(これだけを別の作品として観たいくらいに素晴らしい)、家中の物を使ってエスターがところ狭しと歌い踊る「Someone at Last」も最高に愉快です。ポチャッとして背も小さいし、それほど美人とは思えない彼女ですが、いったん声を発して踊りだすととてつもなく魅力的に見えてくるのだから不思議なものですね。それと忘れてはいけないのがノーマン役のジェームズ・メイスン。大スターの妻を持った夫の焦りやジレンマを痛々しいまでに絶妙に演じています(後半は彼が主役と言っても良いかも)。

『スタンド・バイ・ミー』 ロブ・ライナー/1986年・アメリカ


『スティング』 ジョージ・ロイ・ヒル/1973年・アメリカ


『ストリート・オブ・ファイヤー』 ウォルター・ヒル/1984年・アメリカ


『ストレイト・ストーリー』 デヴィッド・リンチ/1999年・アメリカ

どこまでも続く田園風景と1本の道。そこをトラクターがゆっくりと進んでいく。もうそのシンプルな映像だけで強烈に心を揺さぶられてしまいました。この緩やかでマイペースな旅はアルヴィンがこれまで歩んできた人生の速度そのものを現わしているようにも思えます。彼は心に深い傷を負っていますが、旅の途上で様々な人々と出会い、語り合うことによってその傷を少しづつ癒していく。その過程がとても感動的で観ている自分も一緒になって癒されていくようでした。そしてアルヴィンを演じるリチャード・ファーンズワースの演技を超えた存在感!もう本当に素晴らしいとしか言いようがないです。その年輪を刻んだ陰影の深い表情とクリクリした瞳がしばらく頭の中から離れそうにありません。またアルヴィンの娘ローズを演じるシシー・スペイセクも出番が少ないながら光る演技を披露しています。さらに出番が少ないと言えば、ラスト数分にしか登場しないアルヴィンの兄ライルを演じるハリー・ディーン・スタントン。セリフはほとんどありませんが、表情と所作だけで見事に最後を締めてくれます。静かで淡々とした描写が美しく、深い余韻が残る素敵なラストシーンでした。アンジェロ・パダラメンディのスコアも地味ながら絶品の味わい。

『ストレンジャー・ザン・パラダイス』 ジム・ジャームッシュ/1984年・アメリカ

どうしようもなく、さえなくて、ぶっきらぼうで、なげやりな青春を、とことん様式化した映像と演出と会話で、途方もなく格好良く描いてしまった凄い映画。ショットの切り返しを排したワンシーン・ワンショットによって登場人物3人の心の交感は拒否され続ける。その擦れ違いは、最後に多少の可笑しみを伴いながら、決定的な形として示されてしまう。心地良い流れを容赦なく寸断する黒味ショットは、ファジーな物語とは裏腹に人生の厳しさをやんわりと語りかけてくるようだ。雪と凍った湖しかないクリープランドではハンガリー語をまくし立てる老婆とカンフー映画が奇妙な温かみを与えてくれる。でも太陽と海があるフロリダはどこまでも寒々しい。海岸をぶらつく男2人と女1人、吹きつける潮風に自然と顔がほころんでくる。本作に出てくる笑顔はどれも素晴らしくて忘れ難い。寂しいし、空しいし、情けないけれども、この映画には人間存在へのシャイな優しさが溢れていると思う。それだけで十分じゃないか。自分にとってのジャームッシュ最高作、やっぱりこれしかありえない。

『素直な悪女』 ロジェ・ヴァディム/1956年・フランス

ブリジット・バルドーの放つ強力なフェロモン光線にメロメロのフニャフニャ状態。胸が尖がってる〜!(爆) 後半のクライマックス、酔ったバルドーがバーの地下で踊り狂うシークエンスが圧巻でした。濃厚な色彩美も鮮やか。

『スナッチ』 ガイ・リッチー/2000年・アメリカ


『砂の器』 野村芳太郎/1974年・日本


『SUPER 8』 エミール・クストリッツァ/2001年・イタリア=独

「ウンザ、ウンザ」のリズムに乗って陽気に突っ走るクストリッツァ版『ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ』。メンバー紹介とライブと楽屋風景が、クストリッツァ作品同様、いかがわしさ全開のエネルギッシュな演出で展開されていく。まるで音楽≒生命であるかのようなバルカンの民の新しいソウルに圧倒される。ただ、狂騒の背後に厳然と存在している荒廃した国土の姿を見逃してはならない。

『スパイダーマン』 サム・ライミ/2002年・アメリカ

面白い!120分はちょっと長く感じたが、とにかくアクション描写に抜群のキレがある。素早いカッティング、トリッキーな構図、糸移動の爽快感(超ロングショット!)。キルスティン・ダンストが微妙にさえないヒロインを好演している。あのホルスタインな胸は犯罪的(雨のシーンでは思わず喝采)。

『スパイダーマン2』 サム・ライミ/2004年・アメリカ

今回も面白い。妙に人間臭いというか情けないヒーローっぷりが良いですね。悩めるトビー・マグワイヤの澄み切った笑顔が気味悪くてナイス。メンタルな部分で能力が使えなくなる展開は『魔女の宅急便』のキキを彷彿させます(笑)。でもだからこそ電車を止めるシークエンスが熱かった!それにしてもスパイダーマンの移動アクションは爽快感抜群ですね。まさに摩天楼のターザン。MJとめでたく結ばれたので、「3」は親友ハリーとのホモセクシャルな愛憎対決でキマリでしょうか?(笑)

『素晴らしき哉、人生!』 フランク・キャプラ/1946年・アメリカ


『素晴らしき日曜日』 黒澤明/1947年・日本

中盤以降の饒舌すぎる脚本と湿度の高い演出がどうにもあざとく感じられてしまった。戦争直後の作品だけに、頑張れニッポン!という監督の想いはひしひしと伝わってくるのだけれど、それが個としての作品の寿命を短くしていることは否めない。そんなにリキまなくても、と思ってしまう。でも、その抑えのきかない激烈な精神こそが黒澤明の黒澤明たる所以なのだし・・・。どうしたって可愛らしい小品にはなりっこない。やっぱり肉食人種なんだ(笑)。主役のカップルが小雨降る上野公園を走り抜けるシーンが印象に残る。ロケ・シーンが思ったよりも少ないのが残念。どうせならデ・シーカの『自転車泥棒』みたいにオール・ロケで戦後の風俗や風景を徹底的に見せて欲しかったなあ。

『素晴らしき放浪者』 ジャン・ルノワール/1932年・フランス


『スパルタカス』 スタンリー・キューブリック/1960年・アメリカ


『スピード』 ヤン・デ・ボン/1994年・アメリカ


『スプリング−春へ』 アボルファズル・ジャリリ/1985年・イラン

親と生き別れになってしまった少年と、森に住む孤独な老人の交流を描くことによって、戦争の罪悪性を浮き彫りにする。イラン北部の厳しい冬、雨がちで薄暗い森の雰囲気は、乾燥した荒野と容赦ない陽光が照りつける他のイラン映画とはだいぶ趣が異なっている。やがて訪れる春に希望を託し、少年を励ます老人の姿には、イラン・イラク戦争の終結を望む監督の切実な想いが込められていたのだろうか。85年という戦争の最中に撮られた作品だけに、複雑な含みを持った、喜ぼうにも喜べないハッピー・エンディングになっている。音楽もひたすら哀しい。とても重い映画だった。

『スペシャリスト』 ルイス・ロッサ/1994年・アメリカ


『スペーストラベラーズ』 本広克行/2000年・日本

5分で銀行強盗を成功させようと企てた3人組みが思わぬ事態にハマッていくという内容で、終始銀行内を中心に話が展開していく典型的なシチュエーション・ドラマです。思ったより楽しめる作品でした。いかにも最近の邦画っぽいギャグの数々にはちょっとマンネリを感じてしまいましたが、どんどん変化していく状況とテンポの良さで全く飽きがこないのはさすが「踊る〜」の監督ですね。最初、銀行強盗する動機がメチャクチャ非現実的だったので、「何だかな〜」と思いましたが、そもそも映画の内容自体が非現実的な展開を見せるので、これはもう細かい事は抜きにして素直に楽しんじゃった方が得よ!ってなもんです(笑)。ただ残念だったのは、ラストがあまりにも強引過ぎた点でしょうか。個人的にはもうちょっと捻って欲しかったですね。「本当にそれで終わりなの?」っていう感じがして今ひとつすっきりしませんでした。まぁ、ぶっちゃけ深津絵里が可愛かったから、それだけでオッケーなんですけどね(爆)。国際テロリストを演じる謙さんもカッコ良かったです。正直、主役の3人組みが一番目立ってなかったかも。金城武も何か印象が薄かったですね(無口な男を演じる池内博之が3人の中で最も存在感があるというのが何とも皮肉^^;)。

『すべての美しい馬』 ビリー・ボブ・ソーントン/2000年・アメリカ

ん〜ちょっと期待外れ。状況が二転三転する話なんですが、どのエピソードも中途半端な描き方で全体的にチグハグした印象を受けました。期待のペネロペ嬢もほんの顔見せ程度だし(泣)。ただ、シネスコに映し出される大パノラマは素晴らしかったです。これも西部劇の一つの醍醐味ですね。

『すべてをあなたに』 トム・ハンクス/1996年・アメリカ


『スミス都へ行く』 フランク・キャプラ/1939年・アメリカ

いや〜〜〜さすがはキャプラ監督!話が抜群に面白くてのっけからぐいぐい引き込まれていっちゃいました。アメリカの正義、民主主義の理想を高らかに謳い上げた本作ですが、堅苦しい雰囲気など一切感じることなく笑いとペーソスが適度に盛り込まれた見事な娯楽映画になっています。それとスミスを演じるジェームズ・スチュワートがすごく良い!スラッとした長身で、誠実そのものと思わせるような表情と雰囲気が劇中のスミスという人物と完璧にシンクロしているので思わず余計に感情移入してしまうんですよね〜。有名なラストの大演説シーンも、理屈抜きで感動しちゃいました(スミスに好感を抱く議長を演じる俳優が絶品です!)。映画が終わるほんの数分前まで、ハラハラとさせるその演出、脚本の妙。本当に見事ですねぇ。

『スモーク』 ウェイン・ワン/1995年・アメリカ=日本


『スリ』 ロベール・ブレッソン/1960年・フランス

孤独な貧乏青年がスリにのめり込んでいく過程を冷厳な眼差しで描いていく作品です。スリを行なう直前の表情やスる瞬間の無感動で機械的な描写が、かえって異様な緊張感と映画的興奮を生み出しています。数人で行なう組織的なスリの手口など手品でも見てるような鮮やかさ。執拗に反復される手のアップと指の動きがすごく生々しいです。モンタージュの素晴らしさも特筆に価しますねぇ。『ラルジャン』もそうでしたがブレッソン監督は人間の顔よりも手や身体の動きで映画を表現し語らせるのが特徴みたいですね。ヒロインがメチャ美人でした。

『スリーパー』 ウディ・アレン/1973年・アメリカ

SF・ナンセンス・ドタバタ・風刺コメディ。『2001年宇宙の旅』を思いっきりチープにしたようなセットがたまらない。後半ではなんとあのHAL(?)までカメオ出演するというサービスぶり(声は勿論ダグラス・レイン!)。麻薬水晶と快感増幅装置でフニャフニャになってしまうアレンが最高に可笑しい。

『スリーピー・ホロウ』 ティム・バートン/1999年・アメリカ

やっぱり映像感覚が抜群に良い。人が大勢死ぬし、残酷な描写も多いけれど、バートン一流の遊び心や茶目っ気のせいで、陰鬱になるどころか終始ワクワクしながら楽しんで観れた。首なし騎士の造形が最高。疾走感と重量感が凄い。クリストファー・ウォーケンの怪物メイクも素敵すぎ(笑)。

『スリング・ブレイド』 ビリー・ボブ・ソーントン/1996・アメリカ


『スール/その先は…愛』 フェルナンド・E・ソラナス/1988年・アルゼンチン=仏

軍事政権の時代を厳しく批判し揶揄しながら、マジック・リアリズム的な映像世界によって、夫婦の絶望と孤独、そして再生するまでを綴っていく切なくも美しい愛の寓話。深い青の闇、祭りの後を思わせる道路上の膨大な紙片、無邪気に走り回る子供たちの幻想、白い靄に包まれた閉鎖的な空間、陽気な亡霊(軍政時に殺された主人公の友人)、これらが軍事独裁によって荒廃し疲弊した国と国民の姿を見事に象徴化している。現在と過去が渾然一体となった複雑な構造が、作品に厚みと深みを与えているし、物語が夜に始まり夜明けで終わるというのも、暗い時代が終焉して新しい時代の幕が開けるという希望を感じさせる。哀愁を帯びたアルゼンチン・タンゴの旋律が印象的。

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