CinemaBoxA
私的名子役列伝

HOMECinema-BBsLINKS

映画に登場する子役は時にその存在感と魅力で並み居るベテラン俳優を食ってしまう事があります。特にヨーロッパ映画 に出てくる子役達はその多くが演技未経験でありながら信じられないような素晴らしいパフォーマンスをフィルム に刻みます。プロ意識を持つハリウッドの子役はきちんと演技をしている反面、ヨーロッパ映画の子役のような 瑞々しくて自然な雰囲気が感じられません。今回のCinemaBoxはそんなヨーロッパ映画に出てくる印象的な 子役達を中心に紹介していこうと思います。

Back

アナ・トレントAna Torrent

 1966年7月12日スペイン、マドリード生まれ。6歳の時、小学校で遊んでいるところをビクトル・エリセ監督に見出され『ミツバチのささやき』で映画デビュー。天才子役として一躍スペイン映画界のスターとなる。その後も『カラスの飼育』『エル・ニド』等に出演し印象的な演技を見せる。一時期映画から遠ざかっていたが、現在は復帰して精力的に活動している。純粋な一ファンとして是非彼女には『ミツバチ〜』以上の当たり役に巡り会って欲しいと願っています。
 ビクトル・エリセの『ミツバチのささやき』に興味を抱いたのは、ある映画書籍に載っていたリンゴを差し出す瞳の黒い少女の写真を見たのがきっかけでした。そして実際作品を目の当たりにし、その神秘的で限り無く純粋なアナ・トレントの存在感に圧倒され感動したのでした。本作とアナに出会えたことで自分の映画観が一変したと言っても過言じゃない、それほど衝撃的な映画体験だったのです。ちなみに自分の誕生日もアナと同じ7月12日だったりします。

イサベル・テリェリアIsabel Telleria

 ミツバチのささやき』では姉役を演じていたが、実際はアナと同い年。その後の彼女はこの作品限りで映画の世界から離れ普通の生活を送っている。
 『ミツバチ〜』の中での彼女は分別のある大人びた子供です。飼い猫ミシヘルに引掻かれて出血した際その血で口紅を引いてみたりと既に大人の性も匂わせています。何も知らない純真なアナはイサベルを通じて現実というものを知覚していきます。しかしその一方でアナに対し数々の悪戯をして面白がるという子供特有の残酷な無邪気さも持っています。彼女はどこか悪魔的なものを感じさせる恐い少女でもあるのです。端正な顔立ちで今頃さぞや美人さんに成長している事でしょう(ん〜惜しい・・・)。

アントン・グランセリウスAnton Glanzelius

 1974年4月11日、イェーテポリ生まれ。母親は女優、父親はジャズ・ミュージシャンで、彼自身はTV番組に小さな役で出ていたところをスカウトされた。本作の演技で、スウェーデンのグルドバッゲ賞主演男優賞、アメリカの子役のための賞であるヤング・アーティスト賞の特別賞を受賞。しかし俳優になる気は全くなく、その後の映画出演は、89年のTV映画『Husbonden』のみである
 『マイライフ〜』で彼が見せる、ちょっと照れ臭そうにしながら笑う仕草がとても好きだ。そして独特のハスキーで舌っ足らずな言い回しも。演技の上手さという事よりもこうした天性の魅力が彼の最大の持ち味なんだと思います。映画の神様が『マイライフ〜』でイングマル少年を演じさせる為だけに遣わした奇跡の子役、それがこのアントン・グランセリウスだったのですね。

メリンダ・キンナマンMelinda Kinnaman

 1972年生まれ。候補者2,000人の中から選ばれた時は、全く演技の経験がなかったが、本作の演技でアントン・グランセリウス共々、ヤング・アー ティスト賞の特別賞を受賞。以後も女優を続け、ダニエル・ベルイマン監督の『日曜日のピュ』(92)で盲目の少女を演じた後、映画やTV、舞台に出演。英語のTV番組『Mary MotherJesus』(99)では若い頃の聖母マリア役、そして世界的なカメラマン、スヴェン・ニクヴィストの息子カール=グスタフが父の軌跡を追ったドキュメントタリー『Ljuset Haller Mig Sallskap(光が道連れ)』(2000)ではナレーターを務めた。
 母親の病気で気落ちするイングマルの前に突如颯爽と現れるガキ大将サガ。一人の少年が言います「あいつホントは女なんだ。秘密だけど」と。その瞬間「あぁこの作品は面白い」と何故か確信を抱いてしまいました(笑) サッカー、ボクシングとどちらも男勝りな彼女がイングマルに膨らんできた胸を見せてグチをこぼす場面は思春期の甘い香りに溢れています。個人的にはサッカーの試合でフリーキックの壁になったサガが胸に手を当ててイングマルに注意される場面が好きですね。そんな彼女が最後にとびきり女の子らしい格好を見せてくれた時は驚いたのと同時に心底ホッとしたものです(笑)

ナスターシャ・キンスキーNastassja Kinski

 1961年1月24日旧西ドイツ、ベルリン生まれ。父は怪優として知られたクラウス・キンスキー。ディスコに遊びに来ていたのをヴィム・ヴェンダース監督が見初めたのがきっかけとなり、彼の作品『まわり道』で映画デビューを果たす。その後『テス』『パリ、テキサス』等の作品でスター女優となるも、最近ではアメリカ映画中心にチョイ役での出演ばかりが続き何とも寂しい限り。
 ナスターシャ・キンスキーが映画『まわり道』で聾唖の少女芸人ミニョンを演じたのは13、4歳の時。劇中では一言も話さず(一度だけ口笛を吹く)態度も素っ気無い彼女ですが、その全てを見通すかのような窪んだ瞳のインパクトが強烈です。時折無邪気な行動をとったかと思うと直ぐに元の無愛想な顔になってしまう何とも掴み所のない存在で、そこがまた妙にミステリアスで気になります。突然道上で側転したり、所構わず逆立ちしたり、主人公の寝室のベッドの中で裸で待ち伏せてたり・・・とにかく目の離せない強い吸引力を持った存在感が素晴らしかったですね。もし旅先でこんな子に出会ったとしたらさぞや刺激的で面白い旅になるでしょう(絶対に会えっこないって笑)。

サルヴァトーレ・カシオSalvatore Cascio

 1979年生まれ。8歳の時に地元シチリアでオーディション受け、数百人の候補の中から主役に選ばれた。映画デビュー作『ニュー・シネマ・パラダイス』の世界的ヒットで一躍人気者になり、『ドッグ・イン・パラダイス』『みんな元気』『Diceria Dell' untore』(1990)『法王さまご用心』(1991)『jackpot』(1992)と出演が続いた。日本ではテレビCMにも起用された。
 彼の魅力は何と言っても映画を観ている時に見せるあの無邪気な笑顔!これに尽きるのではないでしょうか。演技云々というよりそのありのままの素直な可愛さがカシオ君の良さですね。いつまでも彼のような表情で映画を観ていたいものです。

ナタリー・ポートマンNatalie Portman

 1981年6月9日イスラエル、エルサレム生まれ。11歳の時にスカウトされ、いきなり『レオン』のヒロイン役に抜擢。存在感抜群の演技で鮮烈な映画デビューを飾る。今最も期待される若手女優の一人である。
 映画『レオン』で初めて彼女(マチルダ)を観た時の衝撃は今でも鮮明に憶えている。アパート内の階段に足を下ろし寂しげな表情でタバコを吸う少女・・・。その透明感のある美少女ぶりにドキッとした。そして彼女が次々と有名人の物真似をする場面ではそのあまりのキュートさに抱きしめたくなるような愛しさを感じ、その後DVDで観た完全版でのシャンペングラスを片手にひたすら笑い続けるマチルダの姿にまたキュンと・・・(笑) 未だにマチルダ以上のトキメキをその後の彼女の出演作から感じる事はないのです。

伊崎充則Mitsunori Isaki

 1977年3月17日、東京都生まれ。『親子ジグザグ』『スタンドバイミー気まぐれ白書』『ホットドッグ』NHK大河ドラマ『春日局』など数多くのTVドラマで達者な演技を披露していて当時ナンバーワンの子役だった。本作の前に出演した映画でも『木村家の人々』『』で難しい役柄を見事にこなしている。
 日本の子役の演技は独特の臭みを感じさせます。そういわゆる学芸会風セリフ回しがそれです(^^; 大袈裟かつ1本調子な発音は時に観ている方が気恥ずかしくなってしまうのですが、彼の見せる演技はとても自然で活き活きとした子供らしさを感じさせます。どちらかと言えば素朴な容姿ですが『八月の狂詩曲』では演技といい存在感といい他の出演者(特に子供達)を食ってしまうほどの印象を残しました。

イェラ・ロットレンダーYella Rottlander

 生年月日は不明。ヴェンダース監督は『都会のアリス』の前作『緋文字』でヒロインの私生児の娘パール役を演じた彼女を気に入り、『都会のアリス』ではヒロインに抜擢した。現在は映画の衣裳担当しているというアリスことイェラを、もう一度映画に出したいと願っていたヴェンダース監督は、『時の翼にのって』で天使役で彼女を登場させて念願を果たした。
 不機嫌そうな顔と態度をとりながらも淡々とジャーナリストについて歩くアリス。見た目は子供でも時折発する彼女の言葉の大人っぽさには思わずドキリとさせられます。単語当てゲームで答えが「夢」と判ると「現実にあるものじゃなきゃ駄目!」と怒ったり、トイレでは「マナーよ」と言ってマッチを擦ったり・・・。そんな彼女の特技は頬杖。いつでもどこでも詰まらなそう〜に頬杖をついている。それでもアリスはひたすらジャーナリストと行動を共にして行く。そんな2人の関係がいつしか恋人同士のように見えてくるのが奇妙でもあり当然のような気さえしてきます。最後、ようやく書く意欲が湧いてきたジャーナリストにアリスはいつものように頬杖をつきながらこう言い放ちます「ああ落書きのことね」と。。。

ダーヴィット・ベネントDavid Bennent

 1966年9月9日スイス、ローザンヌ生まれ。俳優ハインツ・ベネントとダンサーのディアーナの間に生まれる。ミュンヘンのオペラ劇場でドラムを習っていた時、フォルカー・シュレンドルフ監督に見出され、『ブリキの太鼓』(79)の主役オスカル少年でデビュー。そこでの熱演が大きな反響を呼ぶ。その後映画のほかに、パトリス・シェロー演出、ジュネ原作の舞台『屏風』などで特異なキラャクターを演じている。
 彼が『ブリキの太鼓』で演じるのは、大人になる事を拒み、3歳で肉体の成長を止めてしまうオスカルという子供です。その異様に窪んだ瞳から放たれるクールな視線はあらゆる欲望に塗れた醜悪な大人達を見つめていきます。中でも叔父と従妹マリアのセックスを眺める彼の表情は忘れられません。素人同然ながらもこれほどの存在感を発揮してしまうヨーロッパの子役に改めて感嘆させられました。

Back

さて、今回の子役特集いかがだったでしょうか?本当はもっと紹介したかったのですが、資料不足だった為にとりあえずこの10人で妥協する事にしました。凄まじく偏った人選だけに納得しない方もいるのではないかと思います(笑) もし「この子役を忘れては困る!」とか「この作品の子役が素晴らしかった」等の意見がありましたら是非こちらにカキコしてくださいね!お待ちしております。

HOMECinema-BBsLINKS

Copyright © 2004 Ginbanseikatsu. All Rights Reserved. email:ana48705@nifty.com