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私がベニスを訪れるのは、これで二度目だったりします。前回は、3年前の2月、カーニバルが始まる直前でした。本当は、カーニバル見たかったんですが、どうしても日程があわず、直前でも雰囲気は味わえるかなぁと思ったんですが、やっぱお祭り本番を見るべきでしたね。前回も今回も、ベニス自体にいた時間は短かったので、もしまた機会があれば、ゆっくりと1週間くらいかけて滞在し、隅から隅まで探索したいです。それくらいの価値はある街です。
ベニスの何がそこまで魅力的かというと、そりゃあ確かに歴史的な建造物や美術館もたくさんありますが、街自体の独特の風情でしょうか。どこかのアンケートで、「世界遺産に指定された街で印象に残った場所」としてベニスが一位に選ばれていました。何がそれほど旅人の心を惹きつけるのか。もしかしたら、滅びつつあるものの美しさ、今にも燃えつきそうな炎が最後に放つ輝きのようなものに魅せられるんじゃないかなぁとか、漠然と私は思ってしまいました(いや、勝手に滅ぼしてはいけませんね)。ベニスには、影がある。死にいこうとしている美女めいていた艶かしさ?そう言えば「ベニスに死す」なんて耽美な映画もありましたね。世界有数の観光地なのだから、もっとがさがさしていてもよさそうになのに、何かしらひっそりと静まり返っている。観光客の行き交う道を少し外れて細い路地に迷いこめば、そこにはもうこの街の経てきた何百年もの長い時間が息づいているし、運河に面して建つひどく古びた朽ちかけた廃屋に打ち寄せてる波なんか見てると、この街自体が、ゆっくりと海に沈みこんでいくんじゃないかってないかって錯覚を覚えます。でも、それが束の間この地を訪れてまた去っていく旅人にとって、たまらない切なさと愛しさを抱かせるのではないかと。、いつかもう一度この地を見ることができるのだろうか、同じ姿で残っていてくれるのだろうか。諸行無常なんて言葉がふと頭をかすめたり。似た雰囲気の街、日本にあるかなぁ…熱海?ちが〜う!いや、世界中どこを探しても見つからないでしょう。私も、主にヨーロッパをあちこち旅してきましたが、「ベニス」は、やっぱりここだけ。「○○のベニス」なんて安易に使うのやめて欲しいです、ほんと。
ベニスを訪れるのはいつがいいかなんですが、秋はよかったですよ。冬も雰囲気あったんですが、高潮の為に街が水没することがあるので、それはちょっと嫌かも。夏場はどんなもの分かりませんが、運河が臭うって話も聞いたので、それもあまり美しくないなぁと。時間帯は、夕方、日没前の一時なんてうっとりするくらいに綺麗です。サンマルコ広場辺りから、暮れなずむアドリア海を眺めて、ぼうっとする一時、贅沢な旅情に浸れます。
さて、ちょっと前に読んだ小説が、ベニスの雰囲気をよく描いていたので、ついでに御紹介。アン・ライスの「トニオ・天使の歌声」というカストラートになった少年の物語なんですが、丁度イタリアの旅に出る前に読んだので、一八世紀辺りのベニス、イタリアってあんな感じだったのかと想像しつつ街を歩けて、楽しかったです。
ベニス、耽美な旅(笑ってよ)がお望みのあなたに、ぜひ一度訪れてもらいたい街です。

サンマルコ寺院
ヴェネツィアのタンビニアン