あとがき代わりに20の質問

「ある双子兄弟の異常な日常」

1.この小説を書き終えた、今現在の心境を一言で簡潔に言い表してください。

放心・虚脱状態(笑)

2. この小説を書く上で、一番書きやすかったところはどこですか?

素の状態の時の兄弟の絡みや本音トークかしら…?
逆にあーだこーだといらんことを考えてぐるぐるしている2人のぎこちない接し方は、  本人達もやりにくそうだけど、作者もしんどかったです。

3. この小説を書く上で、一番苦労したところはどこですか?

第三部の中盤のJ・B戦の辺り。
心理戦をやりたいなんて、欲張ったことを考えて、結局私の頭がついていかず、中途半端なことになったよう気がします。無念。

4.ボツにしたタイトル、仮タイトル、執筆中のコードネームなどありましたら教えてください。


タイトルの候補は他になく、もういいや、これにしようって適当さで決めちゃいました。
一度携帯小説サイトに提供してた時、これじゃタイトル長すぎるからって担当さんに変えられたことがあります。
「アザー・ハーフ」
相棒って意味のこっちのタイトルの方が、すっきりしてよさげですね。
普段は、略して『双子』って呼んでました。

5. タイトルの由来(意味)は何ですか?

ウラジミール・ナボコフ著「ある怪物双生児の生涯の数場面」をもじって決めました(内容は一切関係ないです)。
そんな決め方するくらいだから、双子もののお約束を詰め込んだ、もっとコメディ・タッチの話を書こうとしてたんでしょうね。

6.この小説を書き始めるきっかけはなんでしたか?

オルソン兄弟は、そもそも別の長編「愛死」に敵役として出したのが最初でした。最後は壮絶な死を迎えた彼らに、うっかり思い入れができてしまって、もっと彼らを描きたい…と少年時代の物語をつづることにしたんです。
実は、「愛死」でのキャラ設定を考えてい時は、ほんのチョイ役で、兄弟とは考えてたけど普通に強面のおっさんにしようかと思ってたんですけどねぇ…私好みの美形双子にしたばかりに、こんな長い付き合いになりました。

7.この小説を書く上で、何か影響を受けたもの(他の作品や、他媒体の創作物など)はありますか?


このサイトでも紹介したことのある、双子スキーの私のバイブル「戦慄の絆」でしょうか。

8.これがあったから、この話がかけました!(これがなかったら、かけませんでした!)というものはありますか。

うーん、萌えられる双子小説が読みたい、という欲求でしょうか。
上記の「戦慄の絆」を超える作品にはなかなかお目にかかれないので、それなら自己発電でがんばろうと一念発起。
取りあえず、マイ・双子萌えポイントはほぼ押さえた…かな…?

9.ボツにしたストーリー展開を教えてください。

第三部のJ・B戦というのは、そもそもあんな大がかりなものになるはずではありませんでした。
クリスターが昔やりこめた不良グループのボスがいて、そのボスの復讐によって彼は大怪我をさせられ、アメフトを断念せざるを得なくなるという筋書きはありました、ただ、あんまりシンプルすぎたので、もっとドラマチックにしようといじっていくうちにあんなことに…ジェームズというキャラ自体も初期はただのワルみたいなイメージでした。書き出してからもどんどん変わっていきましたね…彼のキャラが変わるにつれ、ストーリー展開も変わっていった感じです。

10.プロット(思惑)どおりに進みましたか?

J・B戦の辺りは、書いてるうちにプロットどんどん変わっていきました。ジェームズ自体が本当は何をしたいのか、私にもよく分からなかったし、それに対するクリスターのスタンスも状況に応じてどんどん変わっていきましたからね。
実際、ある程度まで書き進んだ所で、こりゃ整合性がなさすぎるって、後からちょっと書き直した部分もあります。
ダウンロード版が滞っているのは、そんな事情でして…また改めて読み直して矛盾点を修正してから、ダウンロード版の続きも公開したいと思います。

11.これが書きたくてこの話を書きました、という部分はどういうものですか?

クリスターとレイフの間にある、究極の絆ってやつです。

12.一番こだわったところはどこですか?


キャラの性格や好みの細かい描写かしら。双子のクリスターとレイフの微妙な違いを対比させるのは、結構こだわりちゃこだわりだったかも。
気付いている人いたら、相当読み込んでてすごいと思うけど、ヘレナが妊娠した時、おなかの赤ちゃんのことを、弟希望のレイフはいつも「オレ達の弟か妹」って呼んでて、妹希望のクリスターは「僕達の妹か弟」って呼んでたんですよ。て、知ってました??

13.一番好きなキャラクターと、一番嫌いなキャラクターを、理由つきで教えてください。

一番好きなのは、甲乙つけがたく、クリスターとレイフです。こいつら、2人でセットですから…。
嫌いな人ってのは、いないですね。うん。

14. 実際にいたら嬉しいキャラクターと、実際にいたら厭なキャラクターを教えてください。


レイフは弟として、家に欲しいです…クリスターは、賢すぎて、どうつきあったらいいか分からないから、微妙…。
ジェームズは、いたら、普通にやばいですよね…ぶるぶる…。

15.この人にはこの言葉を言わせたかった!という台詞をキャラ別にどうぞ(実際に言わせていなくてもOK)。


クリスター 
『僕は完璧などではない。
おまえなしでは、ほら、僕は一人でまともに立って歩くこともできないんだよ。
それでも、僕は完璧であろうとしてきた。
おまえにとって最高の存在でありたかった。
たとえいつか離れることになろうとも、おまえが僕以外の誰かを選ぼうとも、必ず僕を必要とせずにはいられなくなるほど、忘れることなど不可能なほど、おまえにとって唯一の絶対的な存在になりたかった。
ああ、でも、もしかしたら―そんな努力などしてはならなかったのだろうか。』(第三部 第二章ミスター・パーフェクト)

レイフのためにやってきた努力の全てが覆されたクリスターの切なく苦しい心情がよく出て、好きですね。

レイフ
「そうさ、その通りだよっ。オレはクリスターとやってて、ものすごく感じたさっ。もう、この世の中にこんなに気持ちがいいことがあったなんて信じられないってくらい、死ぬほどよかったさ。あのまま、やりすぎて死んでしまってもきっと本望だった。こんなおいしい体験をさせてくれてありがとう、ごちそうさまって、おまえに礼を言いたいくらい、強烈によかったともさっ!」
(第二部 第二章 さびしい半分)

子供の頃のレイフには、よく笑わしてもらいました。

「終わった…終わっちまったよ、オレの…オレ達のフットボール、今夜でもう全部終わっちゃったよぉっ…」
(第三部 第7章 FAKE)
このストレートさが、いいんです…。

ジェームズ  危ないせりふなら、やはり、この方!

「汝の敵を愛せ―君がどんなに僕を憎もうと僕は君を愛するよ、クリスター」
 「愛死」でクリスターがカーイと無理心中(?)はかった時も同じようなこと言ってましたが…。
(第三部 第六章 最後の闘争)

「君の胸に深く刻み込まれて一生消えることのない傷跡に、僕はなりたい」 
(第三部 第六章 最後の闘争)
 ある意味究極の愛の告白かも。



16.この小説の登場人物たちを使って、別の話を書く予定はありますか?

クリスターとレイフの傭兵自体の話とか、また書いてみたいですね。

17.この小説の中でこの部分が一番会心の出来なのです! というシーン(か台詞)を抜粋してください。


 この一時、2人は日頃自分達を悩ませる様々な思い煩いを忘れ、当たり前のように寄り添いあい、支えあっていた。永遠に失われた肉親を悼む気持ちが、今、離れつつあった心と心をしっかりと結び付けている。
(僕達は今、同じ哀しみを共有しているんだ)
 そう思うと、クリスターは体の中心から温かさが全体に広がっていくような、何とも言えない不思議な気分になった。
 もしかしたら、こんな素直で正直な気持ちは、明日になれば、あれはただの感傷だったのだと忘れてしまうのかもしれない。それでも―。
 クリスターは静かに目を伏せ、弟も同じように感じていると確信しながら、ひっそりと噛み締めるように呟いていた。
(辛い時、哀しい時、こんなふうに何も言わずにただ一緒に時間を過ごすだけで癒される相手がいる…何て幸せなことなのだろうね、レイフ)
(第三部 第4章 黒い羊)
静かに寄り添いあっている双子の悲しいんだけれど、同時に心の温まるようなシーンでした。



クリスターは弟の顔の上に屈みこんだまま、しばらく、その寝顔をじっと見ていた。
 いつもなら、そのまま身を引くところだが、この時のクリスターはレイフから離れがたかった。その無心な寝顔をいつまでも見ていたかった。
 子供時代のように。何の迷いも疑いもなく、この子は自分のものだと信じていられた、あの遠い日のように―
 クリスターの手が上がり、レイフの頬に優しく触れた。
 レイフの肌の温もりが触れた部分からクリスターに伝わる。
 その瞬間、張り詰めた氷が一気に溶け崩れ、クリスターの中に熱く狂おしい感情が弾けた。
「レイ…フ…」
 クリスターの顔が切なげに歪んだ。目尻に薄っすらと涙が滲む。
(レイフ、レイフ、おまえだけが僕に―我を忘れさせる…!)
 クリスターはレイフの唇に己の震える唇を触れさせた。深く重ね、飢えたように貪った。
 たちまち電流に似た衝撃が体の隅々にまで走る。
 甘美で苦しく、そして痛い―。
 クリスターは打たれたかのようによろめき、立ち上がり、まさか目を覚ましはすまいかと恐れながら弟を見下ろした。
 レイフは身動き1つしない。
 それでも、二度と触れないと自らに課した誓いを破ってしまったことで、クリスターはひどく打ちのめされていた。しばしその場に呆然と立ち尽くした後、無力感にひしがれたまま、静かに弟の部屋を後にした。
 そして、クリスターが去った後の薄闇の降りた部屋の中―。
 眠っていたはずのレイフの胸が大きく上下した。
 固く閉ざされていた瞼が上がり、動揺のあまり揺れ動いている琥珀色の瞳が、つい今しがたクリスターが出て行った扉の方へ向けられる。
 レイフは力の入らない体を起こし、こみ上げてくる震えを抑えようとするかのごとく両肩を抱いた。
「あ…っ…」
 微かな嗚咽が漏れかける口をとっさに手で塞ぐ。
 その唇に触れたクリスター唇の感触。触れた先から伝わった電流のような衝撃が、痛くて、苦しくて―。
(第三部 第5章 深淵に潜むもの)
たったひとつのキスだけで、この葛藤…これが兄弟もののたまらん萌えです。



 ジェームズはフレイの腕から離れると、自力で身を起こすことも出来ずにもがいているクリスターに向かって、じわりじわりと這うように迫っていった。
「こうやって君に近づき、君の更に奥深い所に入り込んで、そこにある柔らかな部分に直接触れられる…この一秒一秒が僕にとっては至福の時間だ。これまでの無味乾燥な人生を耐えてきたかいがあったと思えるほどにね」
 クリスターはがちがちと鳴りそうになる歯を食いしばり、体を引きずるようにしてジェームズから逃げる。それを、やけに楽しげなジェームズが追いかける。
 悪夢のようだった。
「ほら、捕まえた」
 ジェームズは、壁に行き着いたクリスターの顔に両手を添え、ぐいと身を乗り出して、その目を覗き込んだ。
 喉から出かかった叫びを、クリスターはぐっと飲み込む。
「僕を見て、僕の目を見て、クリスター、そこに何があるのか確かめて…!」
(第三部第6章最後の闘争)
恐いですねぇ。クリスターじゃなくても、失神しちゃいますよ。



レイフが辛抱強く待っていると、やがて、クリスターの頭がレイフの肩の上にそっと置かれ、微かな震えがそこからレイフの体に伝わってきた。
(クリスターが、泣いている)
 抑制された、ごく静かな嗚咽に耳を傾けながら、レイフは、胸の中心から切ないながらも温かな感情がじわじわと広がっていくのを覚えていた。
(どうせ泣くなら、遠慮なんてせずに、もっと盛大に声をあげて泣けよ。ほら、オレはこうしてお前の傍にいて、黙って受け止めていてやるからさ)
 クリスターの肩越しに空港の彼方に広がる青い空を睨みつけている、レイフの目はいつの間にか潤んでいた。
(クリスター) 
 涙と共にこみ上げてくる愛しさに、胸が詰まりそうになる。
(おまえが二度と傷ついたり悲しんだりすることがないように、おまえがいつも幸福でいられるように…オレは全力を尽くす)
 レイフはクリスターの体に回した腕にぐっと力を込めながら、祈るかのごとく、心の中でそっと語りかけていた。
(オレはおまえを守り、幸福にするために生きているんだよ、クリスター。この世に、おまえ以上に大切なものなどあるものか)
 たとえ、人として許されないことでも、誰からも理解されないことだとしても、胸の奥から自然に溢れ出してくる、この熱い想いはごまかせない。
(おまえを愛している―)
 そのまま駐車場の片隅でレイフとクリスターがじっと身を寄せあっていた、その時、たまたま入り口から入ってきた男が、2人見つけて、ぎょっとなったように立ち尽くした。
 他人の視線に気付いたクリスターが、怯えたように身を固くする。
(せっかくいい雰囲気なのに、邪魔しやがって)
 レイフは眉根を寄せながら頭を傾けて、ぽかんと口を開けて自分達に見入っている中年の男を不機嫌そうに睨みつけた。どこか非難がましく感じられる他人の注視に悪びれるどころか、開き直って、にやりと不敵な顔で笑いながら言い放った。
「何、人のことを物珍しげにじろじろ眺めてやがるんだよ、おっさん。双子を見るのは初めてなのかい?」
(第3部 第7章FAKE)
このシーンを描くリサーチに、実際ボストンのローガン空港の辺りをうろついたり、空港前にある立体駐車場まで行ったりしました。ボストンに行かれることがありましたら、双子の足跡を探して、ぜひ、うろうろしてみてください(笑)



 「どこまで、行けるかなぁ…」
 胸にためていた息と一緒に吐き出したレイフの感慨に、傍らに立つクリスターが迷いのない声で答える。
「どこまでもだよ、レイフ…僕達が共にいても許される場所が見つかるまで―」
 レイフははっとなって、クリスターを振り返った。
 その決然とした横顔は、レイフと共に生きるために他の全て投げ打ってここまで来た、クリスターの揺るがぬ心を感じさせた。いつの間にか、その手はしっかりとレイフの手を握り締めている。
 レイフは大きく頷いて、クリスターが眺めているのと同じ光景へと再び視線を戻した。
 2人の琥珀色をした瞳は、遥か遠くの別世界を見据えて、炎のように激しく輝いている。
「ああ、もちろんだとも…どこまでもオレ達2人、あの地平の向こうのそのまた先へ、そう…」
 レイフは、長い間縛られていた心がクリスターのそれと共に解放されていく喜びに満ち、晴れ晴れと笑いながら、言い放った。
 そう、世界の果てまでも―!
(エピローグ 世界の果てまでも)
何も言うことないですね。
6年以上大事に温めてきたラスト・シーンです。

18.この小説で取り上げたテーマやアイデアに、もう一度別の形で挑戦してみたいですか?

双生児幻想は好きなテーマですし、この双子の出てくる別の作品という形で挑戦してみたいです。
まあ、中にはBL的にはNGだろうし、形にできるか微妙なものもありますが…双子の隠し子ネタとか…ごにょごにょ…。

19.何か、これだけはしておきたい言い訳というのはありますか?(笑)

最後には、クリスターとレイフは結ばれた訳ですが、それには家族の崩壊、父親の死という大きな不幸が伴っていました。
厳しいようですが、あえて、こんな展開にしたのは、そんなに簡単に幸せになれるほど現実は甘くない。彼らの愛が世の中の規範に反するものである以上、綺麗事にはできない、それを貫こうとするなら、何らかの犠牲を払わなければならないから―この場合、犠牲となったのは両親でした。そして、それは彼らがずっと背負っていくことになる十字架になりました。
その上で尚、彼らは一緒に生きる決意をした。それは、幸せだけでなく、罪も咎も2人で分けあって、もしいつか裁かれることになるなら、その罰も共に受けようという覚悟が根底にあってのことなのです。

20. 最後に一言どうぞ!
足掛け6年もの間続けられることができたのは、この作品を楽しみにして、感想や励ましの言葉を下さった方々のおかげです。
本当にありがとうございました。
またいつか、新たな舞台で、クリスターとレイフの新たな物語を書くことができましたら、その時は、またどうかお付き合いくださいませ。


この質問はこちらからいただきました。





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