私にとって、ヨーロッパを旅する楽しみの一つは、それほどメジャーすぎない、可愛い町を訪れることだったりします。だから、今回の旅でも、それを期待して、ベニスとフィレンツェを除いては、ちょっとマイナーな街を巡る計画にしたわけです。実際は、思ったよりも都会だったわという場所も多かったのですが、その中で、ラベンナは、まさに私が探していた場所でした。見所は色々あるけれど、街自体が小さいので、半日くらいで駆け足で回ることも可能だし、ボローニャやフィレンツェから日帰り旅行もできそうですが、そこはやはり一泊して、この街の魅力を堪能して欲しいです。

ラベンナの見所は、何といっても、この街に残る見事なモザイクの数々です。五、六世紀に作られたものだそうですが、何も知らずに訪れると、何でこんな地方の小さい街にこんな素晴らしいモザイク文化が花開いたんだろうって不思議に思うくらい。しかし、ただの田舎町と侮ってはいけませんでした。その昔には西ローマ帝国の首都であったこともあるそうです。確かに、ここにあるものは、まさにビザンチンの華よ、華。ビザンチン・モザイクというと、イタリアでは、ベニスのサン・マルコ寺院のそれがずっと印象に残っていて、今回の旅でも再度見にいってたんですが、モザイクに関しては、ラベンナの方が上かな。絵柄の濃やかさも色使いの鮮やかさも、見事の一言につきます。深い瑠璃色、柔らかな若葉の緑、暖かなピンク、荘厳な黄金色。それらの前に立つと時間のたつのも忘れてじっと見入ってしまいます(首が痛かった)。このモザイクの素晴らしさ故に、この街の七つの建造物が世界遺産に指定されているそうです(もう一つ、モザイクなしで指定されている場所もありますが)。

ラベンナにある数々のモザイクの中で、特に私がお勧めなのは、サンタポリナーレ・イン・クラッセという、町がちょっと離れた田園の中にぽつんとある聖堂のものです。バスで一五分程かかるので、日帰り旅行なら飛ばしてしまう所ですが、行ってよかった!色が緑が基調で優しく、羊に囲まれたキリスト(たぶん)の絵柄がなんだか可愛いのです。このモザイクの小さなコピーとかあったら、買って帰りたかったな。

ラベンナのツーリストインフォメーションでもらった街のパンフレットが手元にあるんですが、夏の間、音楽祭が催されて、クラシックやオペラ、ジャズなどを街のあちこちで楽しめるようです。それも、劇場だけでなく、歴史ある聖堂の中なんかでも開催されるらしい。上で紹介したクラッセ聖堂でもやるみたい。きらびやかなモザイクの下でコンサートなんて、うっとり浸れることでしょうね。

あ、モザイクとは離れた余談ですが、かのダンテが「神曲」を書いたのもこの街で、彼のお墓もここにあったりします。

有名なベニスやフィレンツェはもちろん必見だけれど、もし、時間があれば、足を伸ばして、ラベンナを訪れてみてください。あなたの胸の中に、他のどこにもまして色鮮やかな旅の思い出を残してくれることでしょう。
小さな宝石箱−ラベンナ−
この鮮やかな青が印象的でした
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人物の描き方の細かさも見事でした
クラッセ聖堂